StudyMed医師国家試験

その手技、誰が担える?―資格法で読み解く「診療の補助」の境界線

第109回医師国家試験 E問題 第4問

国試問題にチャレンジ

第109回 E問題 第4問

 医師の指示の下に行う診療補助行為として適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. a.救急救命士による動脈血採血
  2. b.臨床工学技士による気管挿管
  3. c.臨床検査技師による静脈血採血
  4. d.看護師による胸部エックス線撮影
  5. e.診療放射線技師による造影剤投与のための静脈路確保

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、医師以外の医療職が医師の指示の下でどこまでの行為を担えるか、という問題だ。ポイントは「その職種の資格法に、その行為が書かれているかどうか」。医学的にできそうかではなく、法律上許されているかで判断するんだ。
医学生医学生
医療概論の講義で、医行為は医師法で医師しかできないと習いました。でも病棟では看護師さんが採血も点滴もしていますよね。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。医師法第17条で医業は医師の独占だけれど、看護師は保健師助産師看護師法、いわゆる保助看法に基づいて「診療の補助」を業として行える。そして臨床検査技師や診療放射線技師などのほかの職種は、それぞれの資格法で、保助看法の例外として医師の指示の下で行える行為が個別に列挙されているんだ。
医学生医学生
つまり職種ごとに「できること」のリストがあって、それに載っていなければ医師の指示があってもできない、ということですか。
ドクタードクター
その理解で大丈夫。では一つずつ確認しよう。臨床検査技師による静脈血採血はどうかな。
医学生医学生
臨床実習の初日に外来採血室を見学したとき、臨床検査技師さんがすごい速さで採血していました。これは適切だと思います。
ドクタードクター
正解。臨床検査技師等に関する法律で、医師の指示の下での静脈血採血が認められている。検体検査に加えて、心電図や超音波などの生理学的検査、鼻咽頭ぬぐい液などの検体採取も業務範囲だ。ただし、動脈からの採血は認められていないことも一緒に覚えておこう。
医学生医学生
動脈血採血といえば、救急救命士はどうでしょう。救急車の中でいろいろな処置をしているイメージがあります。
ドクタードクター
救急救命士は、心肺機能停止などの重度傷病者に対して、医師の具体的指示の下で特定行為を行える。静脈路確保と輸液、器具を用いた気道確保、アドレナリン投与、血糖測定とブドウ糖投与などだね。気管挿管は所定の講習と実習を修了した認定救急救命士に限られる。でも動脈穿刺による採血はこのリストに入っていない。動脈穿刺は出血や血腫、末梢の虚血といったリスクがあって、原則として医師が行う手技なんだ。
医学生医学生
看護師さんでも動脈血採血はしないんですか。
ドクタードクター
原則は医師だけれど、特定行為研修を修了した看護師が手順書に従って行う場合は認められている。逆に言えば、それだけ慎重に扱われる手技だということだね。次に、臨床工学技士による気管挿管はどうだろう。
医学生医学生
手術室で人工呼吸器を管理しているのは臨床工学技士さんなので、挿管もできそうな気がしてしまいました。
ドクタードクター
そこが引っかけだね。臨床工学技士の本業は、人工呼吸器、人工心肺、血液浄化装置などの生命維持管理装置の操作と保守点検だ。装置の操作に伴う静脈路確保などは追加されたけれど、気管挿管は含まれない。医師以外で医師の指示の下に気管挿管ができるのは、心肺停止患者に対する認定救急救命士だけ、と整理しておこう。
医学生医学生
看護師による胸部エックス線撮影は、看護師ならいろいろできるので迷いそうです。
ドクタードクター
看護師の診療の補助は範囲が広いけれど、放射線は別格だ。診療放射線技師法で、人体への放射線照射は医師・歯科医師・診療放射線技師に限られている。だから看護師は、医師の指示があってもエックス線撮影はできない。
医学生医学生
放射線部の実習で、撮影ボタンを押すのは必ず技師さんか医師だったのはそういう理由なんですね。では、診療放射線技師による造影剤投与のための静脈路確保は?
ドクタードクター
これは制度の変化が関わる選択肢だ。以前の診療放射線技師は、すでに確保された静脈路に造影剤注入装置を接続・操作することはできても、静脈路の確保そのものは認められていなかった。ところが医師の働き方改革を背景にしたタスク・シフト/シェアの推進で、2021年10月施行の法改正により、造影剤を使う検査や核医学検査のための静脈路確保が業務に加わった。所定の告示研修の受講が求められるけれど、現行制度では適切な行為なんだ。
医学生医学生
なるほど、静脈血採血の臨床検査技師と、静脈路確保の診療放射線技師が正しい組み合わせですね。法改正で答えが変わることもあるとは驚きました。
ドクタードクター
制度の問題は、常に現行の法令で判断するのが鉄則だよ。2021年の改正では、救急救命士が救急外来でも入院までの間に救急救命処置を行えるようになったり、臨床検査技師が採血に伴って成分採血装置を接続・操作できるようになったりと、ほかの職種の業務範囲も広がった。医師の時間外労働の上限規制が2024年4月から適用されたこともあって、この流れは今後も続くと考えられる。
医学生医学生
研修医になったら、どの職種に何をお願いできるのかを知っておかないと、チーム医療がうまく回らなさそうです。
ドクタードクター
まさにそうだね。各職種の業務範囲を正しく知っていれば、安心して仕事を任せられるし、逆に法的に許されない依頼をしてしまうことも防げる。指示を出す医師の側が責任を持って理解しておくべきことなんだ。

まとめ

医行為は医師法により原則として医師の独占業務であり、看護師は保助看法に基づく「診療の補助」として、ほかの医療関係職種は各資格法に列挙された範囲で、医師の指示の下に行為を行います。臨床検査技師は静脈血採血ができますが動脈血採血はできず、人体への放射線照射は医師・歯科医師・診療放射線技師に限られるため看護師は撮影できません。気管挿管を医師の指示の下で行える医師以外の職種は認定救急救命士のみで、臨床工学技士は行えません。2021年10月施行のタスク・シフト/シェアに関する法改正で、診療放射線技師が造影剤投与や核医学検査のための静脈路確保を行えるようになるなど業務範囲が拡大しており、制度問題は現行法令で判断することが重要です。各職種の業務範囲を正確に知ることは、医師としてチーム医療を安全かつ効率的に運営するための基礎となります。

解答・解説

正解はc, eです

問われていること

医療関係職種がそれぞれの資格法に基づいて、医師の指示の下で行うことのできる診療補助行為の範囲を問う問題である。

考え方

医行為(医師の医学的判断と技術がなければ人体に危害を及ぼすおそれのある行為)は、医師法第17条により原則として医師しか行えない。看護師は保健師助産師看護師法(保助看法)に基づき「診療の補助」を業とすることができ、それ以外の職種は、各資格法で保助看法の例外として、医師の指示の下で行える行為が個別に列挙されている。したがって、各選択肢について「その職種の資格法にその行為が明記されているか」を確認すればよい。 また、放射線の人体への照射のように、看護師であっても行えない行為があることに注意する。診療放射線技師法は、人体への放射線照射を医師・歯科医師・診療放射線技師に限っている。 近年は医師の働き方改革を背景としたタスク・シフト/シェアの推進により、2021年10月施行の法改正で臨床検査技師・診療放射線技師・臨床工学技士・救急救命士の業務範囲が拡大された。本問の選択肢eはこの改正により適切な行為となったものであり、現行制度に基づいて判断する。

選択肢考察

  1. ×a.  救急救命士による動脈血採血

    救急救命士は、医師の具体的指示の下で、心肺機能停止状態などの重度傷病者に対し特定行為(静脈路確保と輸液、器具を用いた気道確保、気管挿管、アドレナリン投与、血糖測定とブドウ糖溶液投与など)を行うことができる。気管挿管などは所定の追加講習・実習を修了した認定救急救命士に限られる。しかし動脈穿刺による採血は救急救命士の業務範囲に含まれていない。動脈穿刺は出血や血腫、動脈損傷、末梢の虚血などのリスクがあり、原則として医師が行う手技である(看護師でも、特定行為研修を修了した者が手順書に従って行う場合に限られる)。

  2. ×b.  臨床工学技士による気管挿管

    臨床工学技士は、医師の指示の下で人工呼吸器、人工心肺装置、血液浄化装置(血液透析など)、補助循環装置などの生命維持管理装置の操作と保守点検を行う職種である。2021年の法改正で、手術室などでの生命維持管理装置や輸液ポンプ・シリンジポンプの操作に伴う静脈路確保などの行為は追加されたが、気管挿管は含まれない。医師以外で医師の指示の下に気管挿管を行えるのは、心肺機能停止患者に対する認定救急救命士に限られる。

  3. ○c.  臨床検査技師による静脈血採血

    臨床検査技師等に関する法律により、臨床検査技師は医師または歯科医師の指示の下で、診療の補助として採血(静脈血)を行うことができる。あわせて、検体検査、心電図・脳波・超音波検査などの生理学的検査、鼻咽頭ぬぐい液などの検体採取も行える。2021年の改正では、採血に伴って静脈路を確保し成分採血装置を接続・操作する行為や、超音波検査のために静脈路に造影剤注入装置を接続する行為なども追加された。なお、動脈からの採血は認められていない。

  4. ×d.  看護師による胸部エックス線撮影

    看護師は診療の補助として静脈血採血や静脈注射(2002年の通知で診療の補助の範囲とされた)、薬剤の投与、医療機器の操作などを幅広く行うことができる。しかし、診療放射線技師法第24条により、医師・歯科医師・診療放射線技師以外の者が放射線を人体に照射することは禁止されている。したがって、看護師は医師の指示があってもエックス線撮影を行うことはできない。

  5. ○e.  診療放射線技師による造影剤投与のための静脈路確保

    出題当時、診療放射線技師は、医師の指示の下で既に確保された静脈路に造影剤注入装置を接続・操作することや、投与終了後の抜針・止血は行えたが、静脈路の確保そのものは認められていなかった。その後、医師の働き方改革に伴うタスク・シフト/シェアを目的とした法改正(2021年10月施行)により、診療放射線技師の業務として、造影剤を使用した検査や核医学(RI)検査のために静脈路を確保する行為が医師または歯科医師の具体的な指示の下で可能となった(改正に際しては所定の告示研修の受講が求められる)。したがって、現行制度では適切な診療補助行為である。

医行為と診療の補助

医師法第17条により医業は医師の独占業務である。看護師は保助看法に基づき「療養上の世話」と「診療の補助」を業とし、他の医療関係職種は各資格法で、保助看法の例外として医師の指示の下で行える行為が規定されている。

主な職種と医師の指示の下で行える代表的な行為

・看護師:静脈血採血、静脈注射、与薬、医療機器の操作など(特定行為研修修了者は手順書により動脈血採血、橈骨動脈ラインの確保などの特定行為も可能) ・臨床検査技師:検体検査、生理学的検査、静脈血採血、検体採取(鼻腔・咽頭ぬぐい液など) ・診療放射線技師:放射線の人体への照射、MRI・超音波検査、造影剤注入装置の接続・操作、造影剤投与や核医学検査のための静脈路確保(2021年〜) ・臨床工学技士:生命維持管理装置の操作と保守点検、装置操作に伴う静脈路確保(2021年〜) ・救急救命士:重度傷病者に対する特定行為(静脈路確保・輸液、器具による気道確保、気管挿管、アドレナリン投与、ブドウ糖投与など)。2021年改正で、救急外来でも(入院までの間)救急救命処置を行えるようになった ・理学療法士:運動療法、物理療法 ・作業療法士:手芸・工作などの作業を通じた応用的動作能力・社会的適応能力の回復 ・言語聴覚士:言語訓練、嚥下訓練、人工内耳の調整など ・視能訓練士:両眼視機能回復のための矯正訓練、眼科検査

タスク・シフト/シェア

医師の時間外労働の上限規制(2024年4月適用)に先立ち、医師の業務の一部を他職種に移管・共同化するため、2021年10月に関係法令が改正された。

POINT

・医行為は原則として医師のみ。他職種は各資格法に定められた範囲で、医師の指示の下に診療補助行為を行う ・臨床検査技師は静脈血採血ができるが、動脈血採血はできない ・放射線の人体への照射は医師・歯科医師・診療放射線技師のみ(看護師は不可) ・気管挿管を医師の指示の下で行える医師以外の職種は認定救急救命士のみ(臨床工学技士は不可) ・2021年10月の法改正で、診療放射線技師は造影剤投与や核医学検査のための静脈路確保が可能になった

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。