StudyMed医師国家試験

眠ったまま目覚めない赤ちゃんを減らすために―SIDSのリスク因子と予防の3原則

第109回医師国家試験 E問題 第39問

国試問題にチャレンジ

第109回 E問題 第39問

乳幼児突然死症候群のリスクファクターはどれか。3つ選べ。

  1. a.騒音
  2. b.母乳栄養
  3. c.うつぶせ寝
  4. d.家族内喫煙
  5. e.低出生体重児

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は乳幼児突然死症候群、いわゆるSIDSのリスク因子を選ぶ問題だ。暗記で解くこともできるけれど、「なぜその因子が危険なのか」を発症の考え方とセットで理解すると、迷わず選べるようになる。まずSIDSとはどういう病態か、覚えているかな。
医学生医学生
小児科の講義で、元気だった乳児が睡眠中に突然亡くなる病気と習いました。原因はわかっていないんですよね。
ドクタードクター
そう。原則1歳未満で、既往歴から予測できなかった乳児が主に睡眠中に突然死亡し、死亡状況の調査と解剖をしても死因が特定できないものをいう。つまり除外診断で、窒息などの事故、虐待、感染症、先天代謝異常などとは区別しなければならない。
医学生医学生
原因不明なのに、リスク因子ははっきりしているんですか。
ドクタードクター
仕組みは完全には解明されていないけれど、疫学研究でリスク因子は確かめられているんだ。有力なのは、脳幹の呼吸・循環調節、とくに低酸素や高二酸化炭素のときに目を覚ます覚醒反応が未熟だったり弱かったりする、という考え方。そこに睡眠時の環境ストレスが重なると発症すると説明される。脆弱な乳児、発達上の危険な時期、外的なストレスの3つが重なるとする「triple risk model」だね。
医学生医学生
その枠組みで考えると、うつぶせ寝は外的なストレスにあたりそうです。
ドクタードクター
その通り。うつぶせ寝は最も重要で、しかも避けられるリスク因子だ。自分の吐いた息を再び吸い込んで二酸化炭素がたまりやすく、熱がこもりやすく、覚醒反応も起こりにくくなると考えられている。1990年代に欧米や日本で「あおむけ寝」キャンペーンが行われ、SIDSによる死亡は大きく減った。
医学生医学生
家族内喫煙もリスクですよね。でも、受動喫煙が呼吸器に悪いのはわかるんですが、突然死とどう結びつくのかが少しイメージしにくいです。
ドクタードクター
いい疑問だね。ニコチンなどのたばこの成分が、胎児期から脳幹の呼吸・覚醒調節の発達を妨げると考えられているんだ。だから妊娠中の母親の喫煙も、出生後の受動喫煙も、どちらもリスクを大きく高める。両親ともに喫煙する場合、喫煙しない場合に比べてリスクが数倍になるという報告もある。
医学生医学生
低出生体重児は「脆弱な乳児」の側ですね。NICUの見学で早産の赤ちゃんの無呼吸発作のアラームが鳴っていたのを思い出しました。
ドクタードクター
よく結びつけたね。出生体重2,500g未満の低出生体重児や早産児は、呼吸や覚醒を調節する中枢神経系が未熟なことが多く、SIDSのリスクが高い。だから退院後の家庭では、あおむけ寝や禁煙をとくに徹底するよう指導するんだ。
医学生医学生
母乳栄養は逆に予防になる、と覚えていました。
ドクタードクター
正しい。リスク因子になるのは逆の人工栄養のほうだ。母乳で育つ乳児は睡眠中に目を覚ましやすいことや、感染症にかかりにくいことなどが、リスクを下げる理由として考えられている。日本でもできるだけ母乳で育てることが勧められているよ。
医学生医学生
騒音は、赤ちゃんが起きてしまうので悪そうに思えましたが、関係ないんですか。
ドクタードクター
騒音がSIDSのリスクを高めるという疫学的な根拠はないんだ。確立している環境因子は、寝かせる姿勢、たばこの煙、温めすぎ、柔らかい寝具などで、音環境は含まれない。なんとなく体に悪そう、という印象で選ばないことが大切だね。
医学生医学生
整理すると、うつぶせ寝・家族内喫煙・低出生体重児がリスク因子で、母乳栄養はむしろ予防因子、騒音は根拠なし、ということですね。
ドクタードクター
その通り。ほかのリスク因子も押さえておこう。乳児側では男児、早産児。時期では生後2〜6か月、とくに2〜4か月頃が多く、冬季、早朝から午前中に起こりやすい。環境では人工栄養、厚着や暖房のしすぎによる温めすぎ、柔らかい寝具がある。
医学生医学生
厚生労働省の呼びかけも、OSCE前の小児科の授業で出てきた気がします。
ドクタードクター
予防の3原則として、1歳になるまではあおむけに寝かせる、できるだけ母乳で育てる、たばこをやめる、の3つがある。毎年11月はSIDS対策強化月間とされている。海外のガイドラインでは、硬めのマットレスを使い、寝床に柔らかい枕やぬいぐるみを置かないことなども勧められているね。
医学生医学生
臨床で乳児の突然死に出会ったとき、すぐにSIDSと決めつけてはいけないということですね。
ドクタードクター
まさにそこが臨床での注意点だ。窒息や虐待、敗血症や髄膜炎などの感染症、先天性心疾患、QT延長症候群などの不整脈、脂肪酸代謝異常症などの先天代謝異常を鑑別する必要がある。解剖をしていない場合はSIDSとせず「不詳」として扱う。同時に、悲嘆の中にある家族への配慮も忘れてはいけないよ。

まとめ

乳幼児突然死症候群(SIDS)は、原則1歳未満の乳児が睡眠中に予測できない突然の死を遂げ、解剖などでも原因が特定できない症候群で、脳幹の呼吸・覚醒調節の未熟さに睡眠環境のストレスが重なって起こると考えられています。主なリスク因子は、うつぶせ寝、妊娠中の喫煙や受動喫煙、早産・低出生体重、人工栄養、男児、生後2〜6か月、冬季、温めすぎ、柔らかい寝具です。母乳栄養はリスクを下げる因子であり、騒音には疫学的根拠がありません。予防の3原則は「あおむけ寝・母乳育児・禁煙」で、診断は事故や虐待、感染症、代謝異常などを除外したうえで解剖により行う除外診断です。リスク因子の理由を理解しておくことは、保護者への具体的な予防指導と、乳児突然死の適切な鑑別の両方に役立ちます。

解答・解説

正解はc, d, eです

乳幼児突然死症候群(sudden infant death syndrome、SIDS)は、それまで元気で、既往歴から死亡を予測できなかった乳児(原則として1歳未満)が、主に睡眠中に突然亡くなる症候群である。死亡状況の調査と解剖を行っても死因が特定できないことが診断の条件になる。窒息などの事故や虐待、感染症、先天代謝異常などによる死亡とは区別しなければならない。 発症の仕組みはまだ十分にわかっていない。有力なのは、脳幹にある呼吸や循環の調節の働き、とくに低酸素や高二酸化炭素の状態になったときに目を覚ます反応(覚醒反応)が未熟であったり弱かったりする、という考え方である。そこに睡眠時の環境ストレスが重なると発症する、と説明される(いわゆる triple risk model。脆弱な乳児、発達上の危険な時期、外的なストレスの3つが重なるとする)。 リスク因子は疫学研究で確かめられており、次のようなものがある。 ・乳児側の因子:男児、早産児、低出生体重児 ・時期の因子:生後2~6か月(とくに2~4か月頃)、冬季、早朝から午前中 ・環境の因子:うつぶせ寝、保護者や同居家族の喫煙(妊娠中の喫煙を含む)、人工栄養(母乳で育てていないこと)、温めすぎ(厚着、暖房のしすぎ)、柔らかい寝具 設問では、これらに含まれるものを選べばよい。

選択肢考察

  1. ×a.  騒音

    騒音がSIDSのリスクを高めるという疫学的な根拠はない。SIDSの環境因子として確立しているのは、寝かせる姿勢(うつぶせ寝)、たばこの煙、温めすぎ、柔らかい寝具などであり、音環境はこれに含まれない。

  2. ×b.  母乳栄養

    母乳栄養はSIDSのリスクを下げる、つまり予防的にはたらく因子である。リスク因子になるのは逆の人工栄養である。母乳で育てられた乳児は、睡眠中に目を覚ましやすいことや、感染症にかかりにくいことなどが、リスクを下げる理由として考えられている。日本でもSIDS予防のため、できるだけ母乳で育てることが勧められている。

  3. ○c.  うつぶせ寝

    うつぶせ寝は、SIDSの最も重要な、しかも避けることのできるリスク因子である。うつぶせ寝では、自分が吐いた息を再び吸い込んで二酸化炭素がたまりやすい。さらに、熱が体にこもりやすく、目を覚ます反応も起こりにくくなる、と考えられている。1990年代に欧米や日本で「あおむけ寝」を勧めるキャンペーンが行われ、SIDSによる死亡は大きく減った。現在は、医学的な理由でうつぶせ寝を勧められている場合を除き、1歳になるまではあおむけに寝かせることが推奨されている。

  4. ○d.  家族内喫煙

    妊娠中の母親の喫煙や、出生後に乳児が受ける受動喫煙は、SIDSのリスクを大きく高める。ニコチンなどのたばこの成分が、胎児期から脳幹の呼吸・覚醒の調節機能の発達を妨げると考えられている。両親がともに喫煙する場合は、喫煙しない場合に比べてリスクが数倍になることが報告されている。日本でも、妊婦や乳児のそばでたばこを吸わないことが予防策の柱の一つになっている。

  5. ○e.  低出生体重児

    出生体重2,500g未満の低出生体重児や早産児は、呼吸や覚醒の調節を担う中枢神経系が未熟であることが多く、SIDSのリスクが高い。このため、退院後の家庭では、あおむけ寝や禁煙といった予防策をとくに徹底するよう指導する。

SIDSの疫学

・発症は生後2~6か月にピークがあり、1歳を過ぎるとまれになる ・男児に多く、冬季に多い。早朝から午前中の睡眠中に起こりやすい ・日本では乳児の死亡原因の上位を占めるが、あおむけ寝などの普及で死亡数は減っている

日本での予防の呼びかけ(厚生労働省)

・1歳になるまでは、寝かせるときはあおむけに寝かせる ・できるだけ母乳で育てる ・たばこをやめる(妊婦自身の喫煙と、周囲の人の喫煙の両方) ・毎年11月をSIDS対策強化月間としている

そのほかの予防策(海外のガイドラインなど)

・硬めのマットレスを使い、柔らかい枕や布団、ぬいぐるみなどを寝床に置かない ・厚着や暖房のしすぎによる温めすぎを避ける ・同じ部屋で寝る(ただし同じ寝床で寝ることには注意が必要) ・おしゃぶりの使用はリスクを下げるとする報告がある

鑑別すべきもの

・窒息などの事故、虐待(乳幼児揺さぶられ症候群などを含む)、感染症(敗血症、髄膜炎)、先天性心疾患、不整脈(QT延長症候群など)、先天代謝異常(脂肪酸代謝異常症など) ・SIDSは除外診断であり、確定には解剖が必要である。解剖をしていない場合は「乳幼児突然死症候群」とせず「不詳」として扱う

POINT

・SIDSは、原則として1歳未満の乳児が、睡眠中に予測できない突然の死を遂げ、解剖などでも原因がわからない症候群である ・リスク因子:うつぶせ寝、喫煙(妊娠中の喫煙、受動喫煙)、人工栄養、早産・低出生体重、男児、冬季、温めすぎ ・母乳栄養はリスクを下げる因子であり、リスク因子ではない ・予防の3原則:あおむけ寝、母乳育児、禁煙

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。