StudyMed医師国家試験

触れないしこりの正体を探る―検診マンモ異常の「次の一手」は超音波

第109回医師国家試験 E問題 第40問

国試問題にチャレンジ

第109回 E問題 第40問

50歳の女性。乳がん検診のマンモグラフィで乳癌を疑われ精査のため来院した。腫瘤は触知しない。検診のマンモグラムを別に示す。  次に行うのはどれか。

第109回 E問題 第40問の問題画像
  1. a.CT
  2. b.PET/CT
  3. c.超音波検査
  4. d.経皮的針生検
  5. e.マンモグラフィ再検

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、乳がん検診のマンモグラフィで異常を指摘された人に、まず何の検査をするかという問題だ。ポイントは、乳癌の精査には決まった「順番」があるということ。画像でよく調べる、組織で確定する、広がりを調べる、という流れを意識して考えてみよう。
医学生医学生
検診で引っかかったなら、癌かどうかをすぐ確かめたいので、針生検でしょうか。
ドクタードクター
気持ちはわかるけれど、ここはまだ「乳癌の疑い」の段階だよ。マンモグラムでは、左右の乳房を斜め方向から撮った内外斜位方向撮影で、右乳房の上方、上外側を中心に周囲の乳腺より濃い腫瘤影がある。ただ、この影が線維腺腫や嚢胞といった良性病変である可能性も十分にあるんだ。
医学生医学生
確かに、嚢胞だったら針を刺して組織を取る意味はあまりないですね。
ドクタードクター
その通り。だから最初は、体への負担が少なくて情報量の多い画像検査で病変の性状を詳しく見る。それが乳房超音波検査だ。これが正解になる。
医学生医学生
乳腺外科の実習で、外来の先生がマンモの画像を横に置きながらすぐにエコーを当てていたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにそれが日常の流れだね。超音波は被曝がなく、何度でも簡単にできる。中が無エコーなら嚢胞、充実性なら腫瘤と、すぐに区別できる。さらに境界が不整か、縦横比が大きいか、境界部に高エコー像があるか、後方エコーが減弱しているか、といった点から悪性らしさを評価できるんだ。
医学生医学生
縦横比が大きいと悪性を疑う、というのはCBTの勉強で覚えました。組織の層構造に沿わずに縦に伸びていくから、でしたよね。
ドクタードクター
そういうイメージで理解しておくといい。それから、乳腺が多い高濃度乳房では、マンモグラフィだと病変が乳腺の白い影に隠れやすいけれど、超音波なら見つけやすい。お互いの弱点を補い合う関係なんだ。では針生検はいつやると思う?
医学生医学生
超音波で悪性が疑われたら、その後に行うということですか。
ドクタードクター
そう。針生検は病理で確定診断するための欠かせない検査だけど、侵襲的だから、画像で位置と性状、採る必要があるかを判断してからになる。しかも多くは超音波で針の位置をリアルタイムに見ながら行うから、超音波より先にやることはまずない。超音波で見えない石灰化病変なら、マンモグラフィで位置を決めるステレオガイド下生検を選ぶよ。
医学生医学生
CTやPET/CTは、全身をしっかり調べられる分、むしろ確実な気がしてしまいます。
ドクタードクター
よくある誤解だね。CTは乳房内の小さな病変の良悪性を見分ける力が超音波やマンモグラフィより劣るし、被曝も多い。PET/CTは小さな癌や悪性度の低い癌では集積が乏しいことがあり、逆に炎症のある良性病変にも集積しうる。どちらも、診断が確定した後にリンパ節や遠隔臓器への転移を調べる、病期診断のための検査なんだ。
医学生医学生
マンモグラフィをもう一度撮るのはどうですか。より詳しく見られそうですが。
ドクタードクター
精査で頭尾方向撮影や、病変部を圧迫・拡大して撮るスポット撮影を追加することは実際にあるから、追加撮影そのものが間違いというわけではない。ただ、すでに腫瘤影が指摘されている状況で同じ撮影を繰り返しても新しい情報は少なく、被曝も増える。得意分野の違う超音波で見るほうが次の一手としてふさわしいね。
医学生医学生
まとめると、画像で精査、針生検で確定、それからCTやPET/CTで広がりを調べる、という順番ですね。
ドクタードクター
その通り。確定後には、乳房内での広がりや同じ側・反対側の別の病変を見るために造影MRIも使う。さらに病理でホルモン受容体やHER2、Ki-67などのサブタイプを評価して、手術・薬物療法・放射線療法の組み合わせを決めていくんだ。
医学生医学生
マンモグラフィと超音波の得意・不得意も、セットで整理しておく必要がありそうです。
ドクタードクター
大事な視点だね。マンモグラフィは微細石灰化を見つけるのが得意で、非浸潤癌の発見に役立つ。悪性を疑う所見としては、スピキュラを伴う不整形の腫瘤、多形性で線状・分枝状や区域性に分布する微細石灰化、構築の乱れなどがある。一方、超音波は嚢胞と充実性腫瘤の区別が得意だけど、石灰化だけの病変は描出しにくく、検査する人の技量にも左右される。ちなみに日本の乳がん検診は、40歳以上の女性に2年に1回のマンモグラフィが基本で、視触診だけの検診は推奨されていないよ。

まとめ

検診のマンモグラフィで腫瘤影を指摘された段階は、まだ「乳癌の疑い」にすぎず、線維腺腫や嚢胞などの良性病変も含まれます。精査はまず被曝がなく簡便な乳房超音波検査で、嚢胞か充実性か、境界・縦横比・後方エコーなどから悪性の可能性を評価します。悪性が疑われれば超音波ガイド下の針生検で病理学的に確定し、その後にCT、PET/CT、造影MRIなどで病期や広がりを調べます。マンモグラフィは微細石灰化の検出に、超音波は高濃度乳房での腫瘤の検出や嚢胞の判別に強く、両者を組み合わせて使うのが基本です。「画像による精査→組織診断→病期診断」という順序を押さえることは、乳癌に限らず、がん診療で検査を組み立てる考え方の土台になります。

解答・解説

正解はcです

所見の整理

・50歳の女性。乳癌の発症が最も多い年代(40歳代後半~60歳代)にあたる ・乳がん検診のマンモグラフィ(乳房X線撮影)で異常を指摘され、精密検査(精査)のために受診した ・腫瘤は触れない。触れないほど小さい病変か、乳腺の奥にある病変と考えられる ・示されたマンモグラムは、左右の乳房を斜め方向から撮った内外斜位方向撮影(mediolateral oblique、MLO)である。慣例に従い、向かって左側に右乳房を並べている。右乳房の上部(MLOで上方に写る範囲で、上外側が中心)に、周囲の乳腺より濃い腫瘤の影がある。

診断の考え方

検診で腫瘤影を指摘された段階では、まだ「乳癌の疑い」にすぎない。線維腺腫や嚢胞(液体のたまった袋)といった良性病変の可能性もある。精査では、まず負担が少なく情報の多い画像検査で病変の性状を詳しく調べ、悪性が疑われる病変を選び出す。そのうえで組織を採取して病理診断で確定する。確定後に、病変の広がりや転移を調べる検査(造影MRI、CT、骨シンチグラフィ、PET/CTなど)を行う。この順序が原則である。

設問の考え方

「次に行う」検査なので、精査の最初の段階にあたるものを選ぶ。マンモグラフィの所見を補い、病変を直接とらえられる検査は乳房超音波検査である。超音波検査では、腫瘤が嚢胞か充実性か、境界・形・内部エコー・後方エコー・縦横比(腫瘤の縦の長さと横の長さの比)・血流などを評価し、良性か悪性かの見当をつける。さらに、針生検を超音波で見ながら行うための位置確認にも役立つ。

選択肢考察

  1. ×a.  CT

    CT(コンピュータ断層撮影)は、乳癌の診断がついた後に、腋窩などのリンパ節や、肺・肝臓といった遠隔臓器への転移を調べる目的で行う検査である。乳房内の小さな病変について良性か悪性かを判断する能力は、超音波検査やマンモグラフィより劣る。そのうえ放射線被曝も多く、精査の最初に行う検査としては適さない。

  2. ×b.  PET/CT

    PET/CTは、ブドウ糖に似た放射性薬剤(FDG)が代謝の盛んな細胞に集まる性質を利用して、全身のがん病巣や転移を探す検査である。乳癌では、診断が確定した後の遠隔転移の検索や、再発の評価に使われる。小さな乳癌や、悪性度の低い乳癌では集積が乏しいことがあり、良性病変でも炎症があれば集積することがある。そのため、乳房内の病変の質的診断には向かず、費用も高い。精査の最初に行う検査ではない。

  3. ○c.  超音波検査

    乳房超音波検査は被曝がなく、何度でも簡便に行える。検診のマンモグラフィで指摘された病変が実際にあるかを確かめ、性状を詳しく見るための検査として、最初に行うべきものである。嚢胞(中が無エコー)か充実性腫瘤かをすぐに区別でき、境界が不整か、縦横比が大きいか、境界部に高エコー像(halo)があるか、後方エコーが減弱しているか、などから悪性の可能性を評価できる。高濃度乳房(乳腺が多く、マンモグラフィで病変が隠れやすい乳房)でも病変を見つけやすい。必要と判断すれば、続けて超音波ガイド下の針生検に進める。

  4. ×d.  経皮的針生検

    針生検(コア針生検、吸引式組織生検など)は、組織を採って病理学的に確定診断するための検査であり、乳癌の診断に欠かせない。ただし体に針を刺す侵襲的な検査なので、超音波検査などの画像評価で、病変の位置や性状、採取が必要かどうかを判断してから行う。多くの場合、超音波でリアルタイムに針の位置を見ながら行うため、超音波検査より先に行うことはない。超音波で見えない石灰化病変であれば、マンモグラフィで位置を決めて行うステレオガイド下生検を選ぶ。

  5. ×e.  マンモグラフィ再検

    精査では、頭尾方向撮影(craniocaudal、CC)や、病変部を部分的に圧迫・拡大して撮るスポット撮影を追加することがあり、マンモグラフィの追加撮影そのものが誤りというわけではない。しかし、本例はすでに検診のマンモグラムで腫瘤影が指摘されている。同じ撮影を繰り返すだけでは新しい情報が少なく、被曝も増える。次の一手としては、マンモグラフィと得意分野の違う超音波検査で病変を評価するのが適切である。

乳癌の診断の流れ

1. 発見:自覚症状(しこり、乳頭からの分泌など)や検診 2. 画像による精査:マンモグラフィ(必要に応じて追加撮影)と乳房超音波検査を組み合わせる 3. 病理学的な確定診断:超音波ガイド下の針生検(コア針生検、吸引式組織生検)。石灰化病変ではステレオガイド下の吸引式組織生検。穿刺吸引細胞診が補助的に行われることもある 4. 病期診断・広がりの診断:造影MRI(乳房内での広がりや、同じ側・反対側の別の病変の評価)、CT、骨シンチグラフィ、PET/CT(遠隔転移の検索) 5. 治療方針の決定:ホルモン受容体(ER、PgR)、HER2、Ki-67などのサブタイプ評価をもとに、手術・薬物療法・放射線療法を組み合わせる

マンモグラフィと超音波検査の特徴

・マンモグラフィ:微細石灰化を見つけるのが得意で、非浸潤癌の発見に役立つ。ただし、乳腺の多い高濃度乳房(若年者に多い)では病変が乳腺に隠れやすい。標準的な撮影はMLOとCCの2方向 ・超音波検査:被曝がなく、高濃度乳房でも腫瘤を見つけやすい。嚢胞と充実性腫瘤の区別が得意。微細石灰化だけの病変は描出しにくく、検査する人の技量に左右されやすい

マンモグラフィで悪性を疑う所見

・腫瘤:形が不整、境界にスピキュラ(周囲に放射状に伸びる棘状の影)がある、境界が不明瞭 ・石灰化:微細な石灰化が多形性で、線状・分枝状に、または区域性に分布する ・構築の乱れ:乳腺の正常な走行が引きつれて乱れる ・局所的な非対称性陰影

日本の乳がん検診

・対象は40歳以上の女性で、2年に1回、マンモグラフィによる検診を行う(国の指針) ・視診・触診だけによる検診は推奨されていない

POINT

・検診で乳癌を疑われたら、まず非侵襲的な画像検査(超音波検査、必要に応じてマンモグラフィの追加撮影)で病変の性状を評価する ・確定診断は針生検による病理診断で行う(超音波ガイド下が基本) ・CT、PET/CT、骨シンチグラフィなどは、診断確定後に転移や病期を調べるために用いる ・精査の順序は「画像による精査 → 組織診断 → 病期診断」と覚える

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。