黒と赤紫で真菌を捕まえる―Grocott染色とPAS染色の使い分け
第109回医師国家試験 E問題 第37問
国試問題にチャレンジ
真菌の染色法として適切なのはどれか。2つ選べ。
- a.Grocott染色
- b.Masson染色
- c.PAM染色
- d.PAS染色
- e.SudanⅢ染色
対話形式の解説
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医学生まとめ
真菌の細胞壁はグルカン・マンナン・キチンなどの多糖類に富み、その多糖類を酸化して発色させるGrocott染色(黒、背景は緑)とPAS染色(赤紫)が真菌検出の基本です。Grocott染色は感度が高く、Aspergillus・Candida・Cryptococcusのほか放線菌やPneumocystis jiroveciiのシストも黒く染め出します。一方、PAS染色はグリコーゲンや粘液、基底膜も陽性となり、真菌に特異的ではありません。PAM染色は腎の糸球体基底膜、Masson trichrome染色は膠原線維、SudanⅢ染色は脂肪の観察に用いるもので、真菌検索の標準ではありません。特殊染色を「何を染め、どの場面で使うか」とセットで覚えておくと、病理所見の読み取りや臨床での検査依頼に直結します。
解答・解説
正解はa, dです
組織標本や検体の中に真菌がいるかどうかを確かめるには、真菌に特有の構造を選んで染め出す染色法を使う。真菌の細胞壁は、細菌の細胞壁(ペプチドグリカン)とは成分が異なり、グルカン、マンナン、キチンといった多糖類を豊富に含む。真菌染色の多くはこの細胞壁多糖類を標的にしている。 代表的なものが二つある。一つはGrocott染色(Grocott methenamine silver stain、GMS)で、クロム酸で多糖類を酸化してアルデヒド基を作り、そこにメセナミン銀を還元させて沈着させる。真菌は黒色に染まり、背景は緑色(ライトグリーンの後染色)になるので、コントラストが強く、少数の菌体でも見つけやすい。もう一つはPAS染色(periodic acid-Schiff、過ヨウ素酸シッフ染色)で、過ヨウ素酸で多糖類を酸化して生じたアルデヒド基をSchiff試薬で赤紫色に発色させる。 この問題は、各染色法が何を染めるかを覚えているかを問う知識問題である。膠原線維を染めるもの、基底膜を染めるもの、脂肪を染めるものを除けば、真菌に使う2つが残る。
選択肢考察
- ○a. Grocott染色
真菌の細胞壁多糖類をクロム酸で酸化し、メセナミン銀で黒色に染め出す鍍銀染色である。Aspergillus、Candida、Cryptococcus、ムコール目の真菌など多くの真菌を染められ、放線菌(Nocardia、Actinomyces)も染まる。Pneumocystis jiroveciiのシスト(嚢子)は、カップ状あるいはヘルメット状の黒い壁として見え、ニューモシスチス肺炎の確定診断に役立つ。背景が緑色なので菌体が目立ち、真菌検索で最も感度の高い組織染色の一つである。
- ×b. Masson染色
Masson trichrome(マッソン・トリクローム)染色は、3種類の色素で組織成分を染め分ける方法である。膠原線維が青色、細胞質や筋線維が赤色、核が黒褐色~紫黒色になる。肝線維化や腎の間質線維化、心筋の線維化など、線維化の程度を評価するのに用いられ、真菌の検出には使わない。
- ×c. PAM染色
PAM染色(periodic acid-methenamine silver、過ヨウ素酸メセナミン銀染色)は、糸球体基底膜やメサンギウム基質、尿細管基底膜などを黒く染め出す染色である。主に腎生検で使われ、膜性腎症で基底膜の外側に見られる棘状突起(spike)や、膜性増殖性糸球体腎炎で見られる基底膜の二重化などの観察に適している。銀を使う点はGrocott染色と同じだが、臨床で真菌の検出に使う染色としてはGrocott染色を選ぶのが標準であり、本問の正解にはならない。
- ○d. PAS染色
過ヨウ素酸で多糖類を酸化してアルデヒド基を作り、Schiff試薬で赤紫色に発色させる染色である。真菌の細胞壁にはグルカンやマンナンなどの多糖類が多いため、菌体が赤紫色に染まる。皮膚生検での皮膚糸状菌(白癬菌)やCandidaの検出にもよく使われる。真菌以外にも、グリコーゲン、粘液(中性ムチン)、基底膜、腺癌の細胞内粘液、Whipple病のマクロファージ内封入体などがPAS陽性になるので、真菌に特異的ではない点に注意する。
- ×e. SudanⅢ染色
SudanⅢ(ズダンⅢ)は脂溶性の色素で、中性脂肪などの脂質を橙赤色に染める脂肪染色である。パラフィン包埋の過程で脂肪は溶け出すので、凍結切片や尿沈渣、便などで使う。例として、ネフローゼ症候群の尿中の卵円形脂肪体や脂肪円柱、脂肪便の確認、脂肪肝の評価などがある。真菌は染まらない。
主な特殊染色と染まるもの
・HE染色(ヘマトキシリン・エオジン):核が青紫、細胞質が赤紫。病理の基本染色 ・PAS染色:多糖類、グリコーゲン、粘液、基底膜、真菌が赤紫 ・Grocott染色:真菌、Pneumocystis、放線菌が黒 ・PAM染色:糸球体基底膜、メサンギウム基質が黒 ・Masson trichrome染色:膠原線維が青 ・Elastica van Gieson染色:弾性線維が黒、膠原線維が赤 ・Congo red(コンゴーレッド)染色:アミロイドが橙赤色。偏光顕微鏡で緑色の複屈折(apple-green birefringence)を示す ・Berlin blue染色:ヘモジデリン(鉄)が青 ・SudanⅢ染色/Oil red O染色:脂肪が橙赤~赤 ・Alcian blue染色:酸性ムチンが青
微生物を見つけるための染色・検査
・Gram染色:一般細菌。陽性菌は紫、陰性菌は赤 ・Ziehl-Neelsen染色、オーラミン染色(蛍光法):抗酸菌(結核菌など) ・Giménez(ヒメネス)染色:Legionella ・墨汁法:Cryptococcusの莢膜が、黒い背景の中で白く抜けて見える ・mucicarmine染色:Cryptococcusの莢膜が赤く染まる ・Giemsa染色:マラリア原虫、Pneumocystis(栄養型) ・KOH(水酸化カリウム)直接鏡検:皮膚・爪の白癬菌やCandidaを見る簡便な方法
POINT
・真菌の組織染色は、Grocott染色(黒)とPAS染色(赤紫)の2つが基本である ・どちらも真菌細胞壁の多糖類を酸化して生じたアルデヒド基を発色させる ・Pneumocystis jiroveciiのシストはGrocott染色で黒く染まる ・PAM染色は腎糸球体の基底膜、Masson染色は膠原線維、SudanⅢ染色は脂肪を染める
