StudyMed医師国家試験

1日180 Lをろ過して1.5 Lに―ネフロンの「分業」で読む正常な腎機能

第109回医師国家試験 E問題 第33問

国試問題にチャレンジ

第109回 E問題 第33問

正常な腎の機能について正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.心拍出量の約5%の血液量が腎臓に供給される。
  2. b.1日に約14 Lの原尿が生成される。
  3. c.アミノ酸は近位尿細管で再吸収される。
  4. d.ブドウ糖はHenle係蹄で再吸収される。
  5. e.尿濃縮は主に髄質部集合管で行われる。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、正常な腎臓の働きを問う基礎的な問題だ。押さえるべきは2つ。腎血流量や原尿量といった「数字のスケール感」と、ネフロンのどの部位が何を再吸収しているかという「場所の分業」だ。まずは数字から見ていこう。腎臓には心拍出量のどのくらいが流れていると思う?
医学生医学生
腎臓は片方150 gくらいの小さな臓器なので、5%くらいかなと思ってしまいます。
ドクタードクター
重さから考えるとそう感じるよね。でも実際は心拍出量の約20〜25%、1分間に1〜1.2 Lもの血液が腎臓に流れ込んでいる。重さあたりで見れば全身でもトップクラスの血流量なんだ。
医学生医学生
そんなに多いんですか。腎臓自体がそれほど酸素を使うんでしょうか。
ドクタードクター
いい疑問だね。この大量の血流は酸素需要のためというより、血漿をたくさん濾過して老廃物を取り除くためのものなんだ。5%では到底濾過機能を保てない。では、その濾過で1日にどれだけ原尿ができるか、GFRから計算してみよう。
医学生医学生
生理学の講義でGFRは約100〜125 mL/分と習いました。100 mL×60分×24時間で……約144 L。14 Lじゃなくて、桁が1つ違いますね。
ドクタードクター
その通り。1日の原尿はおよそ150〜180 Lにもなる。逆に14 L/日をGFRに直すと約10 mL/分で、これは透析導入を検討するような末期腎不全の水準だ。実際の尿量は1日1〜1.5 Lだから、原尿の99%前後が尿細管で再吸収されていることになる。
医学生医学生
ほとんど全部を回収しているんですね。その回収の主役が近位尿細管でしたっけ。
ドクタードクター
そう。近位尿細管は「大量・等張性の再吸収」の場で、Na⁺と水の約60〜70%、HCO₃⁻の大部分、そしてブドウ糖とアミノ酸はほぼ全量をここで取り戻す。管腔側のNa⁺共輸送体などのトランスポーターがその担い手だ。だからアミノ酸が近位尿細管で再吸収される、というのは正しい。
医学生医学生
ブドウ糖もやっぱり近位尿細管ですよね。Henle係蹄で再吸収されるというのは違和感があります。
ドクタードクター
正しい感覚だ。ブドウ糖は近位尿細管前半のSGLT2が約90%、後半のSGLT1が残りを回収する。Henle係蹄の太い上行脚で再吸収されるのはNa⁺・K⁺・Cl⁻で、NKCC2という共輸送体が担っている。ここはループ利尿薬の作用部位でもあるね。ブドウ糖の再吸収はしないんだ。
医学生医学生
薬理の講義でSGLT2阻害薬が出てきました。近位尿細管でブドウ糖の再吸収を邪魔して尿に糖を出す薬ですよね。
ドクタードクター
その通り。部位と輸送体を知っていると、薬の作用もすっと理解できる。では最後、尿の濃縮はどこで行われると思う?
医学生医学生
対向流増幅系のイメージが強いので、Henle係蹄が濃縮の場所かと思っていました。
ドクタードクター
そこは多くの人が混同するところだ。Henle係蹄は、下行脚が水を通し、上行脚が水を通さずNaClを汲み出すという性質の違いで、髄質の間質を高浸透圧にする、いわば「勾配づくり」の役割を担う。実際に尿から水を引き抜いて濃くするのは集合管なんだ。バソプレシンが集合管主細胞のV2受容体に結合すると、水チャネルのアクアポリン2が管腔側膜に挿入されて、高浸透圧の髄質間質へ水が移動する。
医学生医学生
勾配をつくるのがHenle係蹄で、その勾配を使って濃縮するのが集合管。浸透圧が一番高いのは髄質だから、髄質部集合管が主な場なんですね。
ドクタードクター
完璧だ。だから正解はアミノ酸の近位尿細管での再吸収と、髄質部集合管での尿濃縮の2つになる。
医学生医学生
臨床につなげると、この分業が崩れたときの病気がありそうですね。
ドクタードクター
いい視点だ。近位尿細管の再吸収が全般的に障害されるFanconi症候群では、アミノ酸尿、腎性糖尿、リン酸尿、近位尿細管性アシドーシスがそろって出る。集合管側では、バソプレシン分泌が低下する中枢性尿崩症や、V2受容体・AQP2の異常、リチウムや高Ca血症・低K血症などで腎がバソプレシンに反応しなくなる腎性尿崩症があり、どちらも低張の多尿になる。
医学生医学生
臨床実習の内分泌内科で、水制限試験とバソプレシン負荷で中枢性か腎性かを見分けていたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにその試験は、集合管がバソプレシンに反応できるかを見ているんだ。生理学の分業を理解していれば、検査の意味も病態もつながって見えてくるよ。

まとめ

腎臓は体重の0.5%ほどの臓器ですが、心拍出量の約20〜25%の血液を受け、GFR約100〜125 mL/分、1日約150〜180 Lの原尿をつくり、その99%前後を再吸収して1〜1.5 Lの尿にしています。ブドウ糖(SGLT2/SGLT1)とアミノ酸は近位尿細管でほぼ全量が再吸収され、Henle係蹄ではNKCC2によるNa⁺・K⁺・Cl⁻の再吸収と対向流増幅系による髄質の浸透圧勾配形成が行われます。最終的な尿濃縮は、バソプレシンがV2受容体を介してアクアポリン2を管腔側膜に挿入させることで、主に髄質部集合管で行われます。この部位ごとの分業は、Fanconi症候群や尿崩症の病態、SGLT2阻害薬やループ利尿薬の作用部位を理解する土台となります。数値のスケール感と各部位の役割をセットで押さえることが、腎生理から臨床へつなげる近道です。

解答・解説

正解はc, eです

腎臓の基本的な生理機能(血流量、糸球体濾過量、尿細管での物質の再吸収部位、尿濃縮のしくみ)に関する知識を問う問題である。

数値の把握

腎臓は左右合わせて約300 g程度と体重の0.5%ほどにすぎないが、心拍出量の約20〜25%(約1〜1.2 L/分)という非常に多くの血液を受け取っている。この豊富な血流の一部が糸球体で濾過され、原尿(糸球体濾液)となる。糸球体濾過量(GFR)は健常成人で約100〜125 mL/分であり、1日に換算すると約150〜180 Lに達する。実際に排泄される尿は1日1〜1.5 L程度なので、原尿の99%前後が尿細管で再吸収されていることになる。

部位ごとの役割

近位尿細管は「大量・等張性の再吸収」の場であり、濾過されたブドウ糖・アミノ酸はほぼ全量、Na⁺と水は約60〜70%、HCO₃⁻の大部分がここで回収される。Henle係蹄(ヘンレループ)は対向流増幅系により髄質の浸透圧勾配をつくり、遠位尿細管・集合管は ホルモン(アルドステロン、バソプレシン)による微調整を担う。最終的な尿の濃さは、バソプレシンの作用を受けた集合管、とくに高浸透圧の髄質間質を通る髄質部集合管での水の再吸収量によって決まる。 これらの数値と部位の役割を整理しておけば、各選択肢の正誤は容易に判断できる。

選択肢考察

  1. ×a.  心拍出量の約5%の血液量が腎臓に供給される。

    誤り。腎血流量(RBF:renal blood flow)は心拍出量の約20〜25%(約1/4〜1/5)を占め、成人で約1〜1.2 L/分である。組織重量あたりでみると全身の臓器の中で最も血流が多い部類に入る。この大量の血流は、酸素需要のためというより、血漿を大量に濾過して老廃物を除去するために必要なものである。5%では腎臓の濾過機能を維持できない。

  2. ×b.  1日に約14 Lの原尿が生成される。

    誤り。原尿の量はGFRから計算できる。GFRを約100〜125 mL/分とすると、100 mL/分 × 60分 × 24時間 = 144 L/日、125 mL/分なら180 L/日となり、1日の原尿量はおよそ150〜180 Lである。14 L/日はGFRに換算すると約10 mL/分に相当し、これは末期腎不全(透析導入を検討する水準)の値である。桁が一つ違うことに注意する。

  3. ○c.  アミノ酸は近位尿細管で再吸収される。

    正しい。糸球体で濾過されたアミノ酸は、近位尿細管の管腔側膜にあるNa⁺共輸送体などのトランスポーターによって、ほぼ100%再吸収される。近位尿細管はアミノ酸のほか、ブドウ糖、リン酸、HCO₃⁻、尿酸、低分子蛋白なども回収する部位である。近位尿細管の再吸収機能が全般的に障害されるFanconi症候群では、アミノ酸尿・腎性糖尿・リン酸尿・近位尿細管性アシドーシスなどがみられ、この部位の役割を裏付ける臨床例となる。

  4. ×d.  ブドウ糖はHenle係蹄で再吸収される。

    誤り。ブドウ糖も近位尿細管で再吸収される。主に近位尿細管前半(S1・S2セグメント)のSGLT2(Na⁺・グルコース共輸送体2)が約90%を、後半(S3セグメント)のSGLT1が残りを回収する。Henle係蹄、とくに太い上行脚ではNa⁺・K⁺・Cl⁻(Na⁺-K⁺-2Cl⁻共輸送体:NKCC2)、さらにCa²⁺・Mg²⁺が再吸収されるが、ブドウ糖の再吸収は行われない。なお、SGLT2阻害薬はこの近位尿細管でのブドウ糖再吸収を抑えて尿糖排泄を増やす糖尿病治療薬である。

  5. ○e.  尿濃縮は主に髄質部集合管で行われる。

    正しい。Henle係蹄の対向流増幅系と尿素の再循環によって腎髄質の間質は高浸透圧(最大約1,200 mOsm/kg)に保たれている。下垂体後葉から分泌されたバソプレシン(抗利尿ホルモン:ADH)が集合管主細胞のV2受容体に結合すると、水チャネルのアクアポリン2(AQP2)が管腔側膜に移動・挿入され、水の透過性が上がる。すると集合管内の尿から高浸透圧の髄質間質へ水が移動し、尿が濃縮される。浸透圧勾配が最も大きいのは髄質であるため、最終的な尿濃縮は主に髄質部集合管で行われる。Henle係蹄は濃縮に必要な勾配をつくる役割を担い、実際に濃縮された尿をつくるのは集合管である。

腎臓に関する主な基準値(成人)

・腎血流量(RBF):約1〜1.2 L/分(心拍出量の約20〜25%) ・腎血漿流量(RPF):約600 mL/分 ・糸球体濾過量(GFR):約100〜125 mL/分(約150〜180 L/日) ・濾過率(FF=GFR/RPF):約20% ・1日尿量:約1〜1.5 L(原尿の約1%)

ネフロン各部位の主な働き

・近位尿細管:Na⁺・水の約60〜70%、ブドウ糖・アミノ酸のほぼ全量、HCO₃⁻の約80〜90%、リン酸などを再吸収する。等張性の再吸収である。障害されるとFanconi症候群となる。 ・Henle係蹄:下行脚は水を通しNaClを通しにくい。上行脚は水を通さず、太い上行脚ではNKCC2によりNa⁺・K⁺・2Cl⁻を再吸収し、Ca²⁺・Mg²⁺も傍細胞経路で再吸収される(ループ利尿薬の作用部位)。この性質の違いにより対向流増幅系が成立し、髄質の浸透圧勾配が形成される。 ・遠位曲尿細管:Na⁺-Cl⁻共輸送体(NCC)によるNaCl再吸収(サイアザイド系利尿薬の作用部位)。Ca²⁺再吸収にも関わる。 ・集合管:アルドステロンによるNa⁺再吸収とK⁺・H⁺分泌、バソプレシン(V2受容体→AQP2)による水再吸収と尿濃縮を担う。

水の再吸収の配分(おおよそ)

近位尿細管で約60〜70%、Henle係蹄(下行脚)で約15%前後、残りが遠位ネフロン・集合管で調節される。集合管での再吸収量はバソプレシンの量によって大きく変わり、これが尿量・尿浸透圧の調節の中心となる。

関連する病態

・中枢性尿崩症:バソプレシン分泌低下→集合管で水が再吸収されず低張多尿。 ・腎性尿崩症:V2受容体やAQP2の異常、高Ca血症、低K血症、リチウムなどでバソプレシンに反応しない。 ・Fanconi症候群:近位尿細管の全般的再吸収障害。

POINT

・腎血流量は心拍出量の約20〜25%(約1〜1.2 L/分)。 ・GFRは約100〜125 mL/分、原尿は1日約150〜180 L、尿量はその約1%。 ・ブドウ糖・アミノ酸は近位尿細管でほぼ全量再吸収される(ブドウ糖はSGLT2/SGLT1)。 ・Henle係蹄は髄質の浸透圧勾配をつくり、尿の最終的な濃縮はバソプレシン依存性に髄質部集合管で行われる(V2受容体→AQP2)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。