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黄色が青に変わるとき―BTB試験紙で見抜く前期破水

第109回医師国家試験 B問題 第24問

国試問題にチャレンジ

第109回 B問題 第24問

検査用の試験紙を別に示す。  この試験紙を用いて診断するのはどれか。

第109回 B問題 第24問の問題画像
  1. a.妊娠悪阻
  2. b.前期破水
  3. c.妊娠糖尿病
  4. d.羊水過多症
  5. e.妊娠高血圧症候群

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、写真の試験紙が何の検査に使われるかを問う問題だ。まずは試験紙そのものが何を測る道具なのかを考え、それを産科のどんな場面で使うのかにつなげていこう。写真の試験紙には色の見本が並んでいるけれど、何の試験紙かわかるかな。
医学生医学生
黄色から緑、青へと色が変わる見本なので、BTB試験紙でしょうか。中学の理科で使った記憶があります。
ドクタードクター
そう、ブロムチモールブルーを染み込ませた試験紙だ。BTBは酸塩基指示薬で、おおよそpH 6.0以下の酸性で黄色、中性付近で緑色、pH 7.6程度以上のアルカリ性で青色になる。つまり、検体が酸性かアルカリ性かを色で判定する道具なんだ。では、産科でpHを測って診断する病態は何だろう。
医学生医学生
尿の検査でしょうか。妊婦健診では毎回、試験紙で尿糖や尿蛋白を調べていたと思います。
ドクタードクター
健診の尿検査をよく覚えているね。ただ、尿糖や尿蛋白、ケトン体を見る尿試験紙は、BTB単独の試験紙とは別物なんだ。ここでのカギは腟内の環境と羊水の性質の違い。妊娠中の腟内のpHはどのくらいだと思う?
医学生医学生
デーデルライン桿菌が乳酸を作るので、酸性に保たれているんですよね。微生物学の講義で自浄作用として習いました。
ドクタードクター
その通り。乳酸桿菌がグリコーゲンを分解して乳酸を作るので、腟内はpH 4.0〜4.5程度の酸性だ。一方、羊水はpH 7.0〜7.5程度の弱アルカリ性。だから卵膜が破れて羊水が腟に流れ込むと腟内のpHが上がり、腟内容を付けたBTB試験紙が黄色から青色に変わる。
医学生医学生
ということは、羊水が漏れているかどうかを確かめたい病態、つまり前期破水ですね。
ドクタードクター
正解。前期破水は陣痛が始まる前に卵膜が破れて羊水が流出する状態で、BTB試験紙は簡便で迅速なので、破水の確認に最もよく使われる方法の一つだ。ほかの選択肢がなぜ違うかも、それぞれの診断法と一緒に確認しよう。まず妊娠悪阻はどうかな。
医学生医学生
つわりがひどくなって食べられなくなる状態ですよね。尿ケトン体が陽性になるので、試験紙を使うといえば使う気がします。
ドクタードクター
そこが引っかけになりやすい。飢餓で脂肪分解が進むから尿ケトン体は重要な所見で、尿試験紙で確認する。でもそれはケトン体を検出する尿試験紙であって、pHを見るBTB試験紙ではない。腟内pHを調べても妊娠悪阻の診断にはつながらないんだ。
医学生医学生
妊娠糖尿病は75g経口ブドウ糖負荷試験で診断しますね。
ドクタードクター
その通り。空腹時92mg/dL以上、1時間値180mg/dL以上、2時間値153mg/dL以上のうち1点以上を満たせば診断となる。羊水過多症は超音波検査で羊水ポケットや羊水インデックスを測って評価するし、卵膜は保たれているから羊水が腟に漏れているわけではない。妊娠高血圧症候群は血圧測定が中心で、妊娠高血圧腎症の判断には尿蛋白や臓器障害の評価を加える。どれもBTB試験紙とは関係がないね。
医学生医学生
試験紙が青くなれば、破水と確定してよいのでしょうか。
ドクタードクター
いい質問だ。BTB試験紙は簡便な反面、偽陽性と偽陰性がある。血液、精液、尿、それに細菌性腟症やトリコモナス腟炎の分泌物も腟内をアルカリ側に傾けるので、羊水がなくても青くなりうる。逆に漏出が少量だったり、破水から時間が経っていたりすると青くならないこともある。
医学生医学生
性器出血を伴う妊婦さんだと、判定が難しくなりそうですね。
ドクタードクター
そう。だから破水の診断は複数の方法を組み合わせる。腟鏡診で外子宮口からの羊水流出や後腟円蓋の貯留を見るのが基本で、咳をしてもらうと流出が確認しやすい。より正確な方法として、IGFBP-1や癌胎児性フィブロネクチンなど羊水中の成分を検出するキットがあるし、腟内容を乾燥させるとシダの葉状の結晶が見えるfern testもある。超音波で羊水量の減少を見るのも補助になる。
医学生医学生
産婦人科の臨床実習で、「水っぽいおりものが出た」という電話相談を受けていた助産師さんがいました。あれは破水を心配していたんですね。
ドクタードクター
まさにそうだね。破水を見逃さないことが大事なのは、上行性感染による絨毛膜羊膜炎や臍帯脱出のリスクがあるからだ。妊娠37週未満の破水は早産期前期破水と呼ばれ、感染予防の抗菌薬や、胎児の肺成熟を促す副腎皮質ステロイドの投与を考えながら、週数と母児の状態に応じて待機するか分娩にするかを判断する。
医学生医学生
試験紙の色の変化から、腟と羊水のpHの違い、さらに破水後の管理までつながるんですね。
ドクタードクター
その通り。検査の原理を理解しておけば、偽陽性の原因も自然に思い浮かぶ。暗記ではなく、なぜ色が変わるのかから考える習慣をつけておこう。

まとめ

BTB試験紙はpHによって酸性で黄色、中性付近で緑色、アルカリ性で青色を示す試験紙で、産科では前期破水の診断に用いられます。妊娠中の腟内は乳酸桿菌の働きでpH 4.0〜4.5の酸性に保たれ、羊水はpH 7.0〜7.5の弱アルカリ性のため、羊水が腟内に流出すると試験紙が青変します。ただし血液・精液・尿・腟炎による偽陽性や、少量の漏出による偽陰性があるため、腟鏡診やIGFBP-1・癌胎児性フィブロネクチンの検出などと組み合わせて判断します。妊娠悪阻は尿ケトン体、妊娠糖尿病は75gOGTT、羊水過多症は超音波、妊娠高血圧症候群は血圧と尿蛋白で評価するといった、病態ごとの診断法もあわせて整理しておくことが大切です。破水は絨毛膜羊膜炎や臍帯脱出につながるため、検査の原理と限界を理解しておくことが、実際の妊婦対応の第一歩になります。

解答・解説

正解はbです

画像の読み取り

提示されているのは、ブロムチモールブルー(bromothymol blue:BTB)を染み込ませた検査用試験紙である。BTBは酸塩基指示薬で、pHがおよそ6.0以下の酸性では黄色、中性付近では緑色、およそ7.6以上のアルカリ性では青色を呈する。つまりこの試験紙は「検体が酸性かアルカリ性か」を色で判定する道具である。

考え方

産科領域でこの性質を診断に利用する代表的な場面は、破水の確認である。妊娠中の腟内は、常在菌である乳酸桿菌(デーデルライン桿菌)がグリコーゲンを分解して乳酸を産生するため、pH 4.0〜4.5程度の酸性に保たれている。一方、羊水はpH 7.0〜7.5程度の弱アルカリ性である。したがって、卵膜が破れて羊水が腟内に流れ込むと腟内pHが上昇し、腟内容や後腟円蓋の貯留液を付けたBTB試験紙は黄色から青色へと変化する。 よって「pHの変化を指標に診断する病態はどれか」と読み替えれば、羊水の漏出を確認する必要がある前期破水が該当する。他の選択肢はいずれも腟内pHの変化とは無関係で、それぞれ別の検査で診断される。

選択肢考察

  1. ×a.  妊娠悪阻

    妊娠悪阻は、つわりが重症化して経口摂取が困難となり、脱水・体重減少・電解質異常・代謝異常をきたした状態である。飢餓により脂肪分解が進むため、尿ケトン体陽性が重要な所見となる。尿ケトン体の確認には尿検査用の試験紙を用いるが、これはBTB試験紙ではない。腟内pHを調べても妊娠悪阻の診断には結びつかない。

  2. ○b.  前期破水

    前期破水(premature rupture of the membranes:PROM)は、陣痛が始まる前に卵膜が破綻して羊水が流出する状態である。正常妊娠の腟内はpH 4.0〜4.5の酸性であるのに対し、羊水はpH 7.0〜7.5の弱アルカリ性であるため、羊水が腟内に混入するとBTB試験紙が青変する。簡便かつ迅速に施行できるため、破水の診断で最もよく用いられる方法の一つである。ただし、血液・精液・尿・細菌性腟症やトリコモナス腟炎の分泌物なども腟内をアルカリ側に傾けるため偽陽性の原因となり、反対に少量の漏出や時間の経過で偽陰性となることもある点に注意する。

  3. ×c.  妊娠糖尿病

    妊娠糖尿病(gestational diabetes mellitus:GDM)は、妊娠中に初めて発見または発症した、糖尿病に至っていない糖代謝異常である。診断は75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)で行い、空腹時92mg/dL以上、1時間値180mg/dL以上、2時間値153mg/dL以上のうち1点以上を満たせば診断される。腟内pHとは関係がなく、BTB試験紙は用いない。

  4. ×d.  羊水過多症

    羊水過多症は、羊水量が異常に多く、母体に自覚症状や臨床症状を伴う状態である。羊水量の評価は超音波検査で行い、羊水ポケット(最大羊水深度)8cm以上、あるいは羊水インデックス(AFI)24〜25cm以上が羊水過多の目安とされる。卵膜は保たれており羊水が腟内へ漏れているわけではないため、BTB試験紙で診断するものではない。

  5. ×e.  妊娠高血圧症候群

    妊娠高血圧症候群(hypertensive disorders of pregnancy:HDP)は、妊娠時に収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上の高血圧を認める病態の総称である。診断の中心は血圧測定であり、妊娠高血圧腎症の判断には尿蛋白(尿試験紙によるスクリーニングや蛋白/クレアチニン比)や臓器障害の評価を用いる。尿蛋白の試験紙はBTB試験紙とは別物であり、腟内pHの測定は診断に関与しない。

BTB試験紙の色調変化

pH約6.0以下:黄色(酸性) pH約6.0〜7.6:緑色(中性付近) pH約7.6以上:青色(アルカリ性)

破水の診断法

1. 視診:腟鏡診で外子宮口からの羊水流出や後腟円蓋への羊水貯留を確認する。妊婦に咳をさせたり子宮底を圧迫したりすると流出が確認しやすくなる。 2. pH検査:BTB試験紙(ニトラジン試験紙も同じ原理)で腟内容のアルカリ化を確認する。簡便で安価だが、血液・精液・尿・腟炎による偽陽性がある。 3. 羊水中の成分の検出:インスリン様成長因子結合蛋白-1(IGFBP-1)、癌胎児性フィブロネクチン(fetal fibronectin)、胎盤α1ミクログロブリン(PAMG-1)などを検出する検査キットがあり、pH法より正診率が高いが高価である。 4. シダ状結晶(fern test):腟内容をスライドガラス上で乾燥させると、羊水では塩化ナトリウムなどによるシダの葉状の結晶が観察される。 5. 超音波検査:羊水量の減少は補助的所見となる。

前期破水の臨床的意義

破水後は上行性感染による絨毛膜羊膜炎や、臍帯脱出のリスクがある。妊娠37週未満の破水は早産期前期破水(preterm PROM)と呼ばれ、感染予防の抗菌薬投与、胎児肺成熟のための副腎皮質ステロイド投与などを考慮しつつ、妊娠週数と母児の状態に応じて待機か分娩かを判断する。

POINT

・BTB試験紙はアルカリ性で青変する。 ・妊娠中の腟内はpH 4.0〜4.5の酸性、羊水はpH 7.0〜7.5の弱アルカリ性であり、破水するとBTB試験紙が青変する。 ・血液・精液・尿・腟炎は偽陽性の原因となる。より正確な検査としてIGFBP-1や癌胎児性フィブロネクチンの検出がある。 ・妊娠糖尿病は75gOGTT、羊水過多症は超音波、妊娠高血圧症候群は血圧測定と尿蛋白、妊娠悪阻は尿ケトン体などで評価する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。