黄色が青に変わるとき―BTB試験紙で見抜く前期破水
第109回医師国家試験 B問題 第24問
国試問題にチャレンジ
検査用の試験紙を別に示す。 この試験紙を用いて診断するのはどれか。

- a.妊娠悪阻
- b.前期破水
- c.妊娠糖尿病
- d.羊水過多症
- e.妊娠高血圧症候群
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
BTB試験紙はpHによって酸性で黄色、中性付近で緑色、アルカリ性で青色を示す試験紙で、産科では前期破水の診断に用いられます。妊娠中の腟内は乳酸桿菌の働きでpH 4.0〜4.5の酸性に保たれ、羊水はpH 7.0〜7.5の弱アルカリ性のため、羊水が腟内に流出すると試験紙が青変します。ただし血液・精液・尿・腟炎による偽陽性や、少量の漏出による偽陰性があるため、腟鏡診やIGFBP-1・癌胎児性フィブロネクチンの検出などと組み合わせて判断します。妊娠悪阻は尿ケトン体、妊娠糖尿病は75gOGTT、羊水過多症は超音波、妊娠高血圧症候群は血圧と尿蛋白で評価するといった、病態ごとの診断法もあわせて整理しておくことが大切です。破水は絨毛膜羊膜炎や臍帯脱出につながるため、検査の原理と限界を理解しておくことが、実際の妊婦対応の第一歩になります。
解答・解説
正解はbです
画像の読み取り
提示されているのは、ブロムチモールブルー(bromothymol blue:BTB)を染み込ませた検査用試験紙である。BTBは酸塩基指示薬で、pHがおよそ6.0以下の酸性では黄色、中性付近では緑色、およそ7.6以上のアルカリ性では青色を呈する。つまりこの試験紙は「検体が酸性かアルカリ性か」を色で判定する道具である。
考え方
産科領域でこの性質を診断に利用する代表的な場面は、破水の確認である。妊娠中の腟内は、常在菌である乳酸桿菌(デーデルライン桿菌)がグリコーゲンを分解して乳酸を産生するため、pH 4.0〜4.5程度の酸性に保たれている。一方、羊水はpH 7.0〜7.5程度の弱アルカリ性である。したがって、卵膜が破れて羊水が腟内に流れ込むと腟内pHが上昇し、腟内容や後腟円蓋の貯留液を付けたBTB試験紙は黄色から青色へと変化する。 よって「pHの変化を指標に診断する病態はどれか」と読み替えれば、羊水の漏出を確認する必要がある前期破水が該当する。他の選択肢はいずれも腟内pHの変化とは無関係で、それぞれ別の検査で診断される。
選択肢考察
- ×a. 妊娠悪阻
妊娠悪阻は、つわりが重症化して経口摂取が困難となり、脱水・体重減少・電解質異常・代謝異常をきたした状態である。飢餓により脂肪分解が進むため、尿ケトン体陽性が重要な所見となる。尿ケトン体の確認には尿検査用の試験紙を用いるが、これはBTB試験紙ではない。腟内pHを調べても妊娠悪阻の診断には結びつかない。
- ○b. 前期破水
前期破水(premature rupture of the membranes:PROM)は、陣痛が始まる前に卵膜が破綻して羊水が流出する状態である。正常妊娠の腟内はpH 4.0〜4.5の酸性であるのに対し、羊水はpH 7.0〜7.5の弱アルカリ性であるため、羊水が腟内に混入するとBTB試験紙が青変する。簡便かつ迅速に施行できるため、破水の診断で最もよく用いられる方法の一つである。ただし、血液・精液・尿・細菌性腟症やトリコモナス腟炎の分泌物なども腟内をアルカリ側に傾けるため偽陽性の原因となり、反対に少量の漏出や時間の経過で偽陰性となることもある点に注意する。
- ×c. 妊娠糖尿病
妊娠糖尿病(gestational diabetes mellitus:GDM)は、妊娠中に初めて発見または発症した、糖尿病に至っていない糖代謝異常である。診断は75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)で行い、空腹時92mg/dL以上、1時間値180mg/dL以上、2時間値153mg/dL以上のうち1点以上を満たせば診断される。腟内pHとは関係がなく、BTB試験紙は用いない。
- ×d. 羊水過多症
羊水過多症は、羊水量が異常に多く、母体に自覚症状や臨床症状を伴う状態である。羊水量の評価は超音波検査で行い、羊水ポケット(最大羊水深度)8cm以上、あるいは羊水インデックス(AFI)24〜25cm以上が羊水過多の目安とされる。卵膜は保たれており羊水が腟内へ漏れているわけではないため、BTB試験紙で診断するものではない。
- ×e. 妊娠高血圧症候群
妊娠高血圧症候群(hypertensive disorders of pregnancy:HDP)は、妊娠時に収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上の高血圧を認める病態の総称である。診断の中心は血圧測定であり、妊娠高血圧腎症の判断には尿蛋白(尿試験紙によるスクリーニングや蛋白/クレアチニン比)や臓器障害の評価を用いる。尿蛋白の試験紙はBTB試験紙とは別物であり、腟内pHの測定は診断に関与しない。
BTB試験紙の色調変化
pH約6.0以下:黄色(酸性) pH約6.0〜7.6:緑色(中性付近) pH約7.6以上:青色(アルカリ性)
破水の診断法
1. 視診:腟鏡診で外子宮口からの羊水流出や後腟円蓋への羊水貯留を確認する。妊婦に咳をさせたり子宮底を圧迫したりすると流出が確認しやすくなる。 2. pH検査:BTB試験紙(ニトラジン試験紙も同じ原理)で腟内容のアルカリ化を確認する。簡便で安価だが、血液・精液・尿・腟炎による偽陽性がある。 3. 羊水中の成分の検出:インスリン様成長因子結合蛋白-1(IGFBP-1)、癌胎児性フィブロネクチン(fetal fibronectin)、胎盤α1ミクログロブリン(PAMG-1)などを検出する検査キットがあり、pH法より正診率が高いが高価である。 4. シダ状結晶(fern test):腟内容をスライドガラス上で乾燥させると、羊水では塩化ナトリウムなどによるシダの葉状の結晶が観察される。 5. 超音波検査:羊水量の減少は補助的所見となる。
前期破水の臨床的意義
破水後は上行性感染による絨毛膜羊膜炎や、臍帯脱出のリスクがある。妊娠37週未満の破水は早産期前期破水(preterm PROM)と呼ばれ、感染予防の抗菌薬投与、胎児肺成熟のための副腎皮質ステロイド投与などを考慮しつつ、妊娠週数と母児の状態に応じて待機か分娩かを判断する。
POINT
・BTB試験紙はアルカリ性で青変する。 ・妊娠中の腟内はpH 4.0〜4.5の酸性、羊水はpH 7.0〜7.5の弱アルカリ性であり、破水するとBTB試験紙が青変する。 ・血液・精液・尿・腟炎は偽陽性の原因となる。より正確な検査としてIGFBP-1や癌胎児性フィブロネクチンの検出がある。 ・妊娠糖尿病は75gOGTT、羊水過多症は超音波、妊娠高血圧症候群は血圧測定と尿蛋白、妊娠悪阻は尿ケトン体などで評価する。
