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こすった線が浮かび上がる―井桁状の膨疹が教える皮膚描記法と蕁麻疹

第109回医師国家試験 B問題 第23問

国試問題にチャレンジ

第109回 B問題 第23問

皮膚検査の陽性所見の写真を別に示す。  この検査はどれか。

第109回 B問題 第23問の問題画像
  1. a.針反応
  2. b.硝子圧法
  3. c.皮膚描記法
  4. d.皮内テスト
  5. e.光線テスト

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、写真の陽性所見から皮膚検査の名前を当てる問題だ。注目してほしいのは「反応の形」と「反応の種類」の2つ。皮膚検査はそれぞれ、どんな刺激を、どんな形で加えるかが違うから、所見の形を見ればかなり絞り込めるんだ。写真の前腕には何が見えるかな。
医学生医学生
井桁のような「#」の形に、少し盛り上がった赤い線が出ています。自然にできた皮疹には見えません。
ドクタードクター
いい着眼点だね。こんな幾何学的な形の皮疹は、自然には生じない。誰かが皮膚を線状にこすった跡に一致して反応が起きている、と読むのが自然だ。そして盛り上がっているということは、単なる紅斑ではなく、真皮の浮腫による膨疹ができているということ。
医学生医学生
こすって膨疹が出る、というと蕁麻疹ですね。皮膚科の講義で「人工蕁麻疹」という言葉を聞いた覚えがあります。
ドクタードクター
その通り。爪楊枝の頭やボールペンの先など、先の鈍いもので皮膚をこすって反応を観察する検査を皮膚描記法という。機械的刺激で肥満細胞が脱顆粒し、ヒスタミンが放出されて、こすった線に沿って紅斑、続いて膨疹が出る。これが蕁麻疹、とくに機械性蕁麻疹でみられる陽性所見なんだ。だから正解は皮膚描記法だね。
医学生医学生
でも、こすると赤くなるのは自分の腕でも起こりますよね。それも陽性なんですか。
ドクタードクター
鋭い疑問だ。こすった跡が一時的に赤くなるだけの赤色皮膚描記症は、健常人でもみられる。診断的に意味があるのは膨疹ができること、つまり隆起性皮膚描記症のほうだ。逆に、こすった部位が白くなる白色皮膚描記症は、アトピー性皮膚炎に特徴的な所見として知られている。
医学生医学生
同じ検査でも、赤・盛り上がり・白で意味が違うんですね。では、ほかの選択肢も確認させてください。針反応はBehçet病の検査でしたよね。
ドクタードクター
そう。滅菌した注射針を皮膚に刺して、24〜48時間後に刺入部に紅暈を伴う丘疹や無菌性膿疱ができるかを見る。軽い刺激に対して好中球が過剰に集まる皮膚の過敏性を反映していて、Behçet病の診断基準の検査所見の一つになっている。所見は針を刺した点に限られるから、線状にはならないし、時間も1〜2日後と遅い。
医学生医学生
硝子圧法は、ガラス板で押して色が消えるかを見る検査ですね。
ドクタードクター
正解。透明な板で圧迫すると、血管拡張による紅斑は血液が押し出されて退色するけど、血管外に漏れた赤血球による紫斑は消えない。紅斑と紫斑を見分ける基本手技だね。サルコイドーシスや尋常性狼瘡のような肉芽腫性病変では、圧迫するとリンゴゼリー様の黄褐色が透けて見えることもある。いずれにせよ、こすった跡の反応を見る検査ではない。
医学生医学生
皮内テストも膨疹で判定するので、少し迷いました。
ドクタードクター
迷うポイントだね。皮内テストはアレルゲンや薬剤の希釈液を真皮内に少量注射して、15〜20分後の膨疹と紅斑の大きさで即時型アレルギーを判定する。膨疹という点は同じでも、注射した部位にできる円形の膨疹だから、井桁状にはならない。抗原を体内に入れるのでアナフィラキシーの危険があり、通常はより安全なプリックテストやスクラッチテストを先に行う。
医学生医学生
光線テストは光線過敏症の検査ですよね。
ドクタードクター
そう。背部などに紫外線や可視光線を照射して、紅斑が出る最小の照射量である最小紅斑量を測ったり、原因となる波長を調べたりする。反応は照射野に一致した四角形などの紅斑として現れるから、これも形で区別できる。
医学生医学生
点なら針反応、円形なら皮内テスト、四角なら光線テスト、こすった線なら皮膚描記法、と形で整理すると覚えやすいです。
ドクタードクター
とても良い整理だ。関連して、Darier徴候も押さえておこう。色素性蕁麻疹、つまり皮膚肥満細胞症の色素斑をこすると、その部位が膨疹になる。肥満細胞が集まっている場所だからこそ起こる反応だ。それから、こすって表皮がずるっと剥がれるのはNikolsky現象で、天疱瘡やブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群でみられる。「こする」検査でも見ているものが全く違うんだ。
医学生医学生
臨床実習の皮膚科外来で、慢性蕁麻疹の患者さんに先生がボールペンの頭で腕をなぞっていたのは、これだったんですね。
ドクタードクター
まさにそれ。皮膚描記法は道具もいらず、外来ですぐにできる。機械性蕁麻疹の人は、衣服やベルトのこすれ、掻いた跡に沿って膨疹が出るので、問診で「掻いたところがミミズ腫れになる」という訴えを拾えると診断に近づける。治療の基本は原因となる刺激を避けることと、抗ヒスタミン薬だね。

まとめ

皮膚を鈍的にこすった線に一致して膨疹が形成されるのは皮膚描記法の陽性所見で、機械的刺激による肥満細胞の脱顆粒を反映し、蕁麻疹、とくに機械性蕁麻疹でみられます。こすって赤くなるだけの赤色皮膚描記症は健常人にもみられ、白くなる白色皮膚描記症はアトピー性皮膚炎に特徴的です。針反応はBehçet病、硝子圧法は紅斑と紫斑の鑑別、皮内テストは即時型アレルギー、光線テストは光線過敏症に用いられ、点状・円形・照射野に一致した形など、所見の形からも区別できます。Darier徴候やNikolsky現象など「こする」ことで現れる他の徴候とあわせて整理すると、外来での簡便な診察手技として臨床でも役立ちます。

解答・解説

正解はcです

写真の所見

前腕屈側の皮膚に、井桁(#)状の線に一致して境界明瞭な淡紅色の膨疹(わずかに盛り上がった浮腫性の紅斑)が形成されている。自然に生じた皮疹ではあり得ない幾何学的な形であり、検者が皮膚を線状にこすった跡に一致して反応が起きていることがわかる。

考え方

先端の鈍いもの(爪楊枝の頭、ボールペンの先、指先など)で皮膚を線状にこすり、その部位に生じる反応を観察する検査が皮膚描記法(dermographism)である。こすった部位に一致して膨疹が生じる所見は、機械的刺激によって肥満細胞からヒスタミンなどが放出されて起こる反応で、蕁麻疹、特に機械性蕁麻疹(人工蕁麻疹)でみられる陽性所見である。 写真では線状の形と膨疹の形成という二点がそろっており、皮膚描記法の陽性所見と判断できる。他の皮膚検査は、刺入点に生じる小さな膿疱(針反応)、注射部位の円形の膨疹(皮内テスト)、照射野に一致した四角形の紅斑(光線テスト)など、それぞれ特徴的な所見の形をとるため、写真の形状から区別できる。

選択肢考察

  1. ×a.  針反応

    針反応(pathergy test)は、滅菌した注射針を皮膚に刺入し、24〜48時間後に刺入部に紅暈を伴う丘疹や無菌性膿疱が生じるかをみる検査である。軽微な刺激に対して好中球が過剰に集まる皮膚の過敏性を反映し、Behçet病で陽性となる(Behçet病の診断基準の検査所見の一つ)。Sweet病や壊疽性膿皮症などの好中球性皮膚症でも同様の現象がみられる。所見は針を刺した点状の部位に限局し、写真のような線状の膨疹にはならない。

  2. ×b.  硝子圧法

    硝子圧法(diascopy)は、透明なガラス板やプラスチック板で皮疹を圧迫し、色の変化をみる検査である。血管拡張による紅斑は、圧迫で血液が押し出されて退色する。一方、血管外に漏れ出た赤血球による紫斑は、圧迫しても消えない。このように紅斑と紫斑の鑑別に用いられる。また尋常性狼瘡やサルコイドーシスなどの肉芽腫性病変では、圧迫により黄褐色(リンゴゼリー様)の色調が透見される。こすった跡の反応をみる検査ではない。

  3. ○c.  皮膚描記法

    皮膚描記法は、鈍的なもので皮膚をこすり、その部位の反応を観察する検査である。写真のように、こすった線に一致して紅斑に続き膨疹が形成される(隆起性皮膚描記症)のは、機械的刺激で肥満細胞が脱顆粒してヒスタミンが放出されるためで、蕁麻疹、特に機械性蕁麻疹でみられる陽性所見である。なお、こすった跡が一時的に赤くなるだけ(赤色皮膚描記症)なら健常人でもみられ、診断的意義は膨疹の形成にある。反対に、こすった部位が白くなる白色皮膚描記症はアトピー性皮膚炎に特徴的な所見である。

  4. ×d.  皮内テスト

    皮内テストは、アレルゲン抽出液や薬剤の希釈液を少量、皮膚の真皮内に注射し、15〜20分後の膨疹と紅斑の大きさで即時型(I型)アレルギーの有無を判定する検査である。感度は高いが、少量とはいえ抗原を体内に入れるため、アナフィラキシーを起こす危険がある。通常はより安全なプリックテストやスクラッチテストを先に行う。所見は注射部位の円形の膨疹であり、写真のような線状・井桁状の形にはならない。

  5. ×e.  光線テスト

    光線テストは光線過敏症の診断に用いる検査で、背部などの皮膚に紫外線(UVB、UVA)や可視光線を照射し、紅斑が生じる最小の照射量(最小紅斑量:MED)を測定したり、光線過敏の原因となる作用波長を調べたりする。光接触皮膚炎の原因物質を調べる光パッチテストもこれに含まれる。反応は照射野に一致した四角形などの紅斑として現れ、線状の膨疹にはならない。

皮膚描記法の反応と意義

・赤色皮膚描記症:こすった部位が一過性に赤くなる。健常人でもみられる。 ・隆起性皮膚描記症(人工蕁麻疹):こすった部位に一致して膨疹が形成される。蕁麻疹、特に機械性蕁麻疹で陽性。膨疹は通常30分〜数時間以内に消える。 ・白色皮膚描記症:こすった部位が白くなる。皮膚の血管が収縮しやすいことを反映し、アトピー性皮膚炎に特徴的。 ・Darier徴候:色素性蕁麻疹(皮膚肥満細胞症)の色素斑をこすると、その部位が膨疹化する。肥満細胞の集簇を反映する。

主な皮膚検査と目的のまとめ

・針反応:Behçet病(好中球の過剰反応) ・硝子圧法:紅斑と紫斑の鑑別、肉芽腫性病変の色調確認 ・皮膚描記法:蕁麻疹(膨疹形成)、アトピー性皮膚炎(白色化) ・プリックテスト、皮内テスト:即時型(I型)アレルギー。15〜20分後に判定 ・パッチテスト:遅延型(IV型)アレルギー(接触皮膚炎の原因検索)。48時間後、72時間後などに判定 ・光線テスト、光パッチテスト:光線過敏症 ・Nikolsky現象:正常にみえる皮膚をこすると表皮が剥離する。天疱瘡、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群などで陽性

POINT

・皮膚をこすった跡に一致して線状の膨疹が出現すれば、皮膚描記法の陽性所見(蕁麻疹・機械性蕁麻疹)である。 ・白色皮膚描記症はアトピー性皮膚炎の特徴である。 ・Darier徴候は色素性蕁麻疹(肥満細胞症)でみられる。 ・針反応はBehçet病、硝子圧法は紅斑と紫斑の鑑別、皮内テストは即時型アレルギー、光線テストは光線過敏症に用いる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。