StudyMed医師国家試験

一番伸びるのはいつ?―「1年で25cm」の乳児期と思春期の成長スパート

第109回医師国家試験 B問題 第20問

国試問題にチャレンジ

第109回 B問題 第20問

身長について誤っているのはどれか。

  1. a.出生時の平均は50 cmである。
  2. b.出生時は4頭身である。
  3. c.11歳の女児は男児より高い。
  4. d.12歳で出生時の3倍になる。
  5. e.思春期に1年間の伸び率が最大になる。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、子どもの身長の発育について、基本的な数値と成長のパターンを問う問題だ。「誤っているのはどれか」という形式だから、事実と違う記述を一つ探すことになる。カギは「1年間の伸び」がいつ一番大きいか、という点だよ。まず、出生時の身長はどれくらいだったかな。
医学生医学生
約50 cmです。小児科の講義で、体重約3,000 g、頭囲約33 cm、胸囲約32 cmとセットで覚えました。
ドクタードクター
完璧だね。新生児では頭囲が胸囲よりやや大きく、1歳頃に両者がほぼ等しくなって、その後は胸囲の方が大きくなる。この数値の感覚が、成長の評価の出発点になるんだ。では、体のプロポーションはどうだろう。
医学生医学生
新生児は頭がとても大きくて、4頭身くらいでしたよね。産科の実習で赤ちゃんを抱っこしたとき、頭の大きさに驚きました。
ドクタードクター
その感覚は正しい。頭部は胎児期・乳児期に先行して発育するから、新生児は4頭身で、上肢と下肢の長さもほぼ同じだ。その後、頭の成長は早めに頭打ちになり、体幹、とくに下肢が伸び続ける。2歳で5頭身、6歳で6頭身、12歳で7頭身、成人で約8頭身と変化していくよ。
医学生医学生
次は身長の増え方ですね。たしか「1歳で1.5倍、4歳で2倍」でしたっけ。
ドクタードクター
そう、そしてもう一つ「12歳で3倍」をセットで覚えておこう。50 cmが1歳で約75 cm、4歳で約100 cm、12歳頃で約150 cmになる。だから12歳で出生時の3倍という記述は正しい。
医学生医学生
11歳の女児が男児より高いというのは、少し意外でした。最終的には男性の方が高いので、ずっと男児が上だと思っていました。
ドクタードクター
そう思う人は多いね。ポイントは思春期の開始時期の男女差だ。二次性徴とそれに伴う成長加速は、女児では9〜10歳頃、男児では11〜12歳頃に始まり、女児が約2年早い。だから10〜11歳頃には、女児の平均身長が男児を一時的に上回る「逆転」が起きるんだ。
医学生医学生
小学校の高学年で、女子の方が背が高かった記憶があります。あれはそういう理由だったんですね。
ドクタードクター
まさにそれ。男児は思春期が遅く始まる分、それまでの成長期間が長く、成長加速のピークも大きいので、最終身長は男性の方が約13 cm高くなる。では残る記述、「思春期に1年間の伸び率が最大になる」はどうだろう。
医学生医学生
思春期は成長スパートがあるので、一番伸びる時期だと思っていました。これが正しいのでは……。
ドクタードクター
そこがこの問題の落とし穴なんだ。さっきの数字を思い出してほしい。出生時50 cmが1歳で約75 cm。つまり生後1年間で約25 cm、率にして約50%も伸びている。一方、思春期の成長加速のピークでも、年間の伸びは女児で7〜8 cm、男児で9〜10 cm程度だ。
医学生医学生
思春期に身長140〜150 cmくらいの子が年に10 cm伸びても、伸び率では1割にも届きませんね。絶対値でも乳児期の25 cmにはかなわない。
ドクタードクター
その通り。だから1年間の伸び率が最大になるのは乳児期で、思春期とする記述が誤り、つまりこれが正解だ。小児の成長速度は一定ではなく、速く伸びる時期が2回ある。胎児期から乳児期が第一発育急進期で、人生で最も成長速度が大きい。幼児期から学童期は年5〜6 cm程度の比較的一定したペースになり、思春期に第二発育急進期を迎える。
医学生医学生
思春期の成長は「再加速」であって、最大ではないということですね。
ドクタードクター
いい表現だね。ここから臨床の話を少ししよう。思春期の成長加速は性ホルモンと成長ホルモンの作用で起こり、その後、性ホルモンによって骨端線が閉鎖して身長の伸びは止まる。だから思春期が早く来すぎる思春期早発症では、一時的に背が高くなっても、骨端線が早く閉じて最終身長が低くなることがあるんだ。
医学生医学生
小児科の外来実習で、成長曲線を見ながら診察している先生がいました。一回の身長の値より、曲線のカーブの変化が大事だと教わりました。
ドクタードクター
それはとても大切な視点だよ。成長曲線から外れていく、あるいは伸びが急に鈍る場合には、成長ホルモン分泌不全や甲状腺機能低下症などの内分泌疾患、慢性疾患、虐待やネグレクトなどを考えるきっかけになる。標準的な数値を知っているからこそ、異常に気づけるんだ。
医学生医学生
体重も「3〜4か月で2倍、1歳で3倍」と一緒に覚えておくと、乳児健診で役立ちそうです。
ドクタードクター
その通り。身長と体重の目安をセットで押さえておけば、健診や外来で成長を評価するときの土台になるよ。

まとめ

小児の身長は出生時約50 cmで、1歳で約1.5倍、4歳で約2倍、12歳頃で約3倍になり、新生児は4頭身で成長とともに成人の約8頭身へ近づきます。思春期の成長加速は女児が男児より約2年早く始まるため、10〜11歳頃には一時的に女児の平均身長が男児を上回ります。1年間の伸びが最大なのは思春期ではなく生後1年間で、約25 cm(伸び率約50%)伸びるのに対し、思春期のピークは年10 cm前後にとどまります。成長速度には乳児期と思春期の2つの発育急進期があり、思春期の伸びは性ホルモンによる骨端線閉鎖で止まります。こうした標準的な数値とパターンを押さえておくことが、成長曲線を用いて内分泌疾患や養育環境の問題に気づく臨床力の基礎になります。

解答・解説

正解はeです

小児の身長の発育に関する基本的な数値と、成長パターンの特徴を問う問題である。「誤っているのはどれか」と問われているので、事実と異なる記述を一つ選ぶ。 押さえておくべき骨格は次のとおりである。 ・出生時の身長は約50 cmである。 ・身長は1歳で出生時の約1.5倍(約75 cm)、4歳で約2倍(約100 cm)、12歳前後で約3倍(約150 cm)になる。 ・体のプロポーションは、新生児では頭部が大きく4頭身であり、成長とともに頭部の比率が小さくなって成人ではおよそ8頭身になる。 ・思春期の成長加速(growth spurt、急激な身長増加の時期)は女児が男児より約2年早く始まるため、10〜11歳頃には一時的に女児の平均身長が男児を上回る。 そのうえで、「1年間の伸び」が最も大きいのはいつかを考える。思春期には確かに成長が加速するが、生後1年間の身長増加(約25 cm、伸び率約50%)はそれをはるかに上回る。したがって、1年間の伸び率が最大となるのは乳児期(出生〜1歳)であり、思春期とする記述が誤りである。

選択肢考察

  1. ×a.  出生時の平均は50 cmである。

    正しい記述である。正期産児の出生時の身長はおよそ50 cmで、あわせて体重約3,000 g、頭囲約33 cm、胸囲約32 cmという値を覚えておくとよい。新生児では頭囲が胸囲よりやや大きいが、1歳頃に両者はほぼ等しくなり、その後は胸囲の方が大きくなる。

  2. ×b.  出生時は4頭身である。

    正しい記述である。新生児は頭部が相対的に大きく、身長は頭の高さのおよそ4倍(4頭身)にあたる。また、上肢と下肢の長さがほぼ等しいのも新生児の特徴である。その後、頭部の成長は早い時期に頭打ちとなる一方で、体幹、とくに下肢が伸び続けるため、2歳頃に5頭身、6歳頃に6頭身、12歳頃に7頭身となり、成人では約8頭身に近づく。

  3. ×c.  11歳の女児は男児より高い。

    正しい記述である。二次性徴と、それに伴う思春期の成長加速は、女児では9〜10歳頃、男児では11〜12歳頃に始まり、女児の方が約2年早い。このため10〜11歳頃には女児の平均身長が男児をわずかに上回る「逆転」がみられる。男児はその後に大きく伸び、成長の終わる時期も遅いため、最終身長は男性の方が高くなる。

  4. ×d.  12歳で出生時の3倍になる。

    正しい記述である。12歳の平均身長は男女とも約150 cm前後であり、出生時の約50 cmのほぼ3倍にあたる。目安として「1歳で1.5倍、4歳で2倍、12歳で3倍」とセットで覚える。

  5. ○e.  思春期に1年間の伸び率が最大になる。

    誤った記述であり、これが正解である。1年間の伸び率が最大なのは生後1年間(乳児期)である。出生時約50 cmの身長は1年で約25 cm伸びて約75 cmとなり、伸び率は約50%に達する。思春期の成長加速のピーク時でも、年間の増加はおおよそ女児で7〜8 cm、男児で9〜10 cm程度(12 cm前後に達する例もある)であり、そのときの身長(140〜150 cm前後)に対する伸び率は5〜8%程度にすぎない。思春期は乳児期以降で成長速度が再び高まる「第二の発育急進期」ではあるが、伸び率としても絶対値としても乳児期には及ばない。

身長・体重の発育の目安

・身長:出生時約50 cm → 1歳で約1.5倍(約75 cm) → 4歳で約2倍(約100 cm) → 12歳頃で約3倍(約150 cm) ・体重:出生時約3 kg → 3〜4か月で約2倍 → 1歳で約3倍(約9 kg) → 2歳半で約4倍 → 4〜5歳で約5倍 ・頭囲:出生時約33 cm → 1歳で約45 cm

発育急進期

小児の成長速度は一定ではなく、速く伸びる時期が2回ある。第一発育急進期は胎児期から乳児期で、人生で最も成長速度が大きい。幼児期から学童期にかけては年間5〜6 cm程度の比較的一定したペースとなり、思春期に第二発育急進期(growth spurt)を迎える。思春期の成長加速は性ホルモンと成長ホルモンの作用によって生じ、その後、性ホルモンによって骨端線(成長板)が閉鎖して身長の伸びは止まる。

体のプロポーションの変化

頭部は胎児期・乳児期に先行して発育するため、新生児は4頭身と頭が大きい。その後、四肢、とくに下肢が大きく伸びることで頭部の比率は小さくなり、2歳で5頭身、6歳で6頭身、12歳で7頭身、成人で約8頭身となる。

男女差

思春期の開始は女児が約2年早く、10〜11歳頃には平均身長で女児が男児を上回る時期がある。男児は思春期の開始が遅い分だけ思春期前の成長期間が長く、成長加速のピークも大きいため、最終身長は男性が約13 cm高くなる。

POINT

・出生時身長は約50 cm、1歳で1.5倍、4歳で2倍、12歳頃で3倍 ・新生児は4頭身、成人では約8頭身 ・思春期の成長加速は女児が約2年早く、10〜11歳頃は女児の方が高い ・1年間の伸び(伸び率・絶対値とも)が最大なのは生後1年間であり、思春期ではない

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。