人工呼吸器も自宅で―「看護と介護」「往診と訪問診療」を取り違えない在宅ケアの基本
第109回医師国家試験 B問題 第2問
国試問題にチャレンジ
在宅ケアについて正しいのはどれか。
- a.人工呼吸療法は在宅で可能である。
- b.ケアプランは介護福祉士が作成する。
- c.訪問介護には医師の指示書が必要である。
- d.往診は計画的・定期的に行う在宅医療である。
- e.通所リハビリテーションには医療保険が適用される。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生まとめ
在宅人工呼吸療法は、気管切開下のTPPVもマスクによるNPPVも保険診療として在宅で行うことができ、ALSなどの神経筋疾患や慢性の高二酸化炭素血症を伴う呼吸不全が代表的な対象です。ケアプランは介護福祉士ではなくケアマネジャー(介護支援専門員)が作成し、医師の指示書が必要なのは訪問介護ではなく訪問看護です。計画的・定期的に訪れるのは訪問診療、求めに応じて臨時に出向くのが往診であり、通所リハビリテーション(デイケア)は介護保険のサービスです。訪問看護は原則介護保険でも末期がんや指定難病などでは医療保険になるといった例外も含め、サービスごとに担い手・根拠・保険区分を整理しておくことが大切です。主治医意見書や訪問看護指示書を通じて医師が在宅ケアの要となることを理解しておくと、多職種連携の実際がイメージしやすくなります。
解答・解説
正解はaです
在宅ケアの制度面の基本を問う問題である。押さえておくべき点は次の4つである。 1. 在宅でどこまでの医療ができるか(在宅酸素療法、在宅人工呼吸療法、在宅中心静脈栄養など、高度な医療も在宅で行える)。 2. ケアプラン(居宅サービス計画)を誰が作るか。 3. 医師の指示書が必要なサービスはどれか(訪問看護には必要、訪問介護には不要)。 4. 往診と訪問診療の違い、医療保険と介護保険のどちらが適用されるか。 「訪問看護」と「訪問介護」、「往診」と「訪問診療」は名前がよく似ていて取り違えやすい。それぞれ誰がどんな根拠で行うサービスなのかを整理しておけば、正解の a にたどり着ける。
選択肢考察
- ○a. 人工呼吸療法は在宅で可能である。
在宅人工呼吸療法(home mechanical ventilation:HMV)は保険診療として認められている。気管切開下陽圧換気(TPPV)と、マスクを用いる非侵襲的陽圧換気(NPPV)のどちらも在宅で行える。対象となる代表的な疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や筋ジストロフィーなどの神経筋疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺結核後遺症による慢性の高二酸化炭素血症を伴う呼吸不全、肥満低換気症候群などである。在宅で続けるには、主治医の訪問診療、訪問看護(医師の指示書にもとづく)、医療機器業者による保守点検、停電など災害時の対策、家族への吸引手技の指導といった体制づくりが欠かせない。
- ×b. ケアプランは介護福祉士が作成する。
介護保険の居宅サービスで使うケアプラン(居宅サービス計画)は、介護支援専門員(ケアマネジャー)が作成するのが原則である。ケアマネジャーは利用者の状態や希望を評価(アセスメント)し、要介護度ごとの支給限度額の範囲でサービスを組み合わせる。利用者本人や家族が自分で作る「セルフケアプラン」も制度上は認められている。一方、介護福祉士は入浴・排泄・食事などの介護を実際に行い、介護について指導する国家資格であり、ケアプランを作成する職種ではない。なお、要支援者の介護予防サービス計画は、主に地域包括支援センターが作成する。
- ×c. 訪問介護には医師の指示書が必要である。
医師の指示書が必要なのは訪問看護である。訪問看護では看護師などが医療的な処置や観察を行うため、主治医が発行する訪問看護指示書にもとづいて実施する。これに対し訪問介護(ホームヘルプサービス)は、訪問介護員(ホームヘルパー)や介護福祉士が身体介護(入浴・排泄・食事の介助など)や生活援助(調理・掃除・洗濯など)を行うもので、ケアプランにもとづいて提供される。医師の指示書は不要である。
- ×d. 往診は計画的・定期的に行う在宅医療である。
記述は往診ではなく訪問診療の定義である。訪問診療は、通院が困難な患者に対して診療計画を立て、同意を得たうえで定期的に(例:月2回)自宅などを訪れて診療するものである。往診は、急な発熱や容態の変化などで患者や家族から求めがあったときに、そのつど臨時に出向いて診療するものである。診療報酬のうえでも両者は別の項目として扱われる。
- ×e. 通所リハビリテーションには医療保険が適用される。
通所リハビリテーション(デイケア)は介護保険の居宅サービスである。要介護認定を受けた人が、介護老人保健施設・病院・診療所などに通い、理学療法士・作業療法士などによるリハビリテーションを受ける。利用する場合は介護保険が医療保険より優先され、ケアプランに組み込んで提供される。医療保険で行うのは、病院の外来で行う疾患別リハビリテーションなどである。
在宅医療・介護サービスと保険の区分(原則)
・訪問診療・往診(医師):医療保険 ・訪問看護:要介護認定を受けた人は原則として介護保険。ただし末期の悪性腫瘍、厚生労働大臣が定める疾病(ALS、パーキンソン病関連疾患などの神経難病)、急性増悪時の特別訪問看護指示期間などは医療保険となる。いずれの場合も主治医の訪問看護指示書が必要である。 ・訪問介護、訪問入浴介護、訪問リハビリテーション、通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア)、短期入所(ショートステイ)、福祉用具貸与など:介護保険
介護保険サービスを利用するまでの流れ
市町村に申請 → 認定調査と主治医意見書をもとに介護認定審査会が要介護度を判定 → ケアマネジャーがケアプランを作成 → サービスを利用する。自己負担は原則1割で、所得によっては2割または3割となる。要介護度ごとに、1か月に使える支給限度額が決まっている。
在宅で行える主な医療
在宅酸素療法(HOT)、在宅人工呼吸療法(HMV)、在宅中心静脈栄養法(HPN)、経管栄養(胃瘻など)、在宅自己腹膜灌流(CAPD)、在宅自己注射(インスリンなど)、麻薬による疼痛管理、在宅での看取りなど。
関連職種
介護支援専門員(ケアマネジャー):ケアプランの作成とサービス事業者との連絡調整を担う。 介護福祉士:介護を実際に行う国家資格。 訪問看護師:医師の指示書にもとづいて医療的な処置や観察を行う。
POINT
・在宅人工呼吸療法(TPPV・NPPV)は在宅で行える。 ・ケアプランを作るのはケアマネジャー(介護支援専門員)であり、介護福祉士ではない。 ・医師の指示書が必要なのは訪問看護。訪問介護には不要。 ・計画的・定期的に行うのが訪問診療、臨時に求めに応じて行うのが往診。 ・通所リハビリテーション(デイケア)は介護保険のサービスである。
