死因究明は医療計画の外側にある―都道府県が描く「地域医療の設計図」を読み解く
第109回医師国家試験 B問題 第18問
国試問題にチャレンジ
医療計画に含まれないのはどれか。
- a.監察医の確保
- b.救急医療の確保
- c.基準病床数の設定
- d.二次医療圏の設定
- e.地域医療支援病院の整備
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
医療計画は医療法に基づき都道府県が策定する計画で、計画期間は6年です。主な記載事項は、二次・三次医療圏の設定、基準病床数、5疾病・6事業と在宅医療の医療連携体制、地域医療構想、地域医療支援病院などの整備目標、医師確保計画を含む医療従事者の確保、医療安全の確保です。一方、監察医は死体解剖保存法に基づき死因不明の死体の検案や行政解剖を担う医師で、医療計画の記載事項には含まれません。救急医療は6事業の一つ、地域医療支援病院は1997年の改正で整備目標が記載事項に加わったなど、法改正の流れとあわせて整理しておくと、医療制度の問題に強くなり、地域医療の仕組みを理解する土台にもなります。
解答・解説
正解はaです
医療計画は、医療法(第30条の4)に基づいて都道府県が定める計画である。地域の実情に合わせて医療提供体制を確保することを目的とする。1985(昭和60)年の第1次医療法改正で導入された。当初は病床数の地域的な偏りと増えすぎを抑えることが主な狙いで、医療圏の設定と基準病床数(当時は必要病床数)が中心だった。その後の改正で記載事項が段階的に広がり、現在は次のような内容を含む。 ・医療圏(二次医療圏・三次医療圏)の設定 ・基準病床数 ・5疾病(がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、精神疾患)と、事業(救急医療、災害時における医療、新興感染症等の感染拡大時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療)ごとの医療連携体制 ・在宅医療の確保 ・地域医療構想 ・地域医療支援病院の整備の目標など、医療機能を考慮した医療提供施設の整備の目標 ・医師確保計画や外来医療計画を含む、医療従事者の確保 ・医療の安全の確保 本問では、これらの記載事項に当たらないものを選べばよい。監察医は死因究明のための制度であり、死体解剖保存法に根拠がある。医療計画の記載事項ではない。
選択肢考察
- ○a. 監察医の確保
監察医は、伝染病・中毒・災害などで死亡した疑いのある死体や、死因の明らかでない死体を検案し、必要に応じて行政解剖を行う医師である。根拠法は死体解剖保存法(第8条)で、政令で定める地域(東京23区、大阪市、横浜市、名古屋市、神戸市)に知事が置くこととされている(現在実際に監察医制度が運用されているのは一部の地域に限られる)。医療計画にも医師・看護師などの医療従事者の確保に関する事項はあるが、監察医の確保は記載事項に含まれない。したがって本問の正解である。
- ×b. 救急医療の確保
救急医療は、医療計画で医療連携体制を定める「事業」の一つである。事業には救急医療のほか、災害時における医療、新興感染症等の感染拡大時における医療(2024年度からの第8次医療計画で追加)、へき地の医療、周産期医療、小児医療(小児救急医療を含む)がある。都道府県は、初期・二次・三次救急の体制や、搬送と受入れのルールなどを計画に定める。医療計画に含まれる事項である。
- ×c. 基準病床数の設定
基準病床数は、医療計画の導入当初からの中核的な記載事項である。療養病床と一般病床は二次医療圏ごとに、精神病床・結核病床・感染症病床は都道府県全体で算定する。既存の病床数が基準病床数を超える地域(病床過剰地域)では、病院の開設や増床について都道府県知事が勧告を行えるなど、病床整備を調整する仕組みになっている。医療計画に含まれる事項である。
- ×d. 二次医療圏の設定
医療圏は、医療計画で都道府県が設定する地域の単位である。一次医療圏は日常的な医療を受ける範囲で、おおむね市町村単位にあたる。これは法律上の設定対象ではない。二次医療圏は、入院を含む一般的な医療がおおむね完結する範囲で、複数の市町村から成る。三次医療圏は、高度・特殊な医療を提供する範囲で、原則として都道府県単位(北海道は複数)である。医療計画で定めるのは二次医療圏と三次医療圏であり、二次医療圏の設定は医療計画に含まれる。
- ×e. 地域医療支援病院の整備
地域医療支援病院は、1997(平成9)年の第3次医療法改正で創設された。かかりつけ医を支援し、地域医療の中心となる病院であり、都道府県知事が承認する。主な承認要件は、紹介患者への医療の提供(紹介率・逆紹介率の基準)、病床や医療機器の共同利用、救急医療の提供、地域の医療従事者に対する研修、原則200床以上の病床である。同じ改正で、地域医療支援病院の整備の目標が医療計画の記載事項に加えられた。医療計画に含まれる事項である。
医療法改正と医療計画の変遷
・第1次改正(1985年):医療計画制度を創設し、医療圏と必要病床数(現在の基準病床数)を定めた。 ・第3次改正(1997年):地域医療支援病院を創設し、その整備目標などを医療計画の記載事項に追加した。 ・第5次改正(2006年):4疾病5事業ごとの医療連携体制を記載事項とした。2013年度からは精神疾患を加えて5疾病5事業に在宅医療が加わった。 ・2014年の改正:地域医療構想(2025年の医療需要を見すえた病床機能ごとの必要量)を医療計画に位置付けた。 ・2018年の改正:医師確保計画と外来医療計画を医療計画の一部として追加した。 ・第8次医療計画(2024年度から):6事業目として新興感染症等の感染拡大時における医療を追加した。
計画期間
医療計画の計画期間は、2018年度からの第7次医療計画以降6年である(それ以前は5年)。在宅医療など一部の事項は3年ごとに中間見直しを行う。
医療機関の類型
・地域医療支援病院:都道府県知事が承認する。かかりつけ医の支援、共同利用、救急医療、研修を担う。 ・特定機能病院:厚生労働大臣が承認する。高度医療の提供・開発・研修を担い、原則400床以上である。 ・臨床研究中核病院:厚生労働大臣が承認する。質の高い臨床研究の中心となる。
監察医制度と死因究明
監察医制度は死体解剖保存法に基づく。監察医が置かれていない地域では、異状死体の死因究明は警察の検視・調査や、大学法医学教室などによる解剖(司法解剖・調査法解剖・承諾解剖)で対応している。
POINT
・医療計画は医療法に基づき都道府県が策定し、計画期間は6年である。 ・主な記載事項:二次・三次医療圏の設定、基準病床数、5疾病・6事業と在宅医療の医療連携体制、地域医療構想、地域医療支援病院などの整備目標、医師確保計画・外来医療計画を含む医療従事者の確保、医療安全の確保。 ・5疾病:がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、精神疾患。 ・6事業:救急医療、災害時における医療、新興感染症等の感染拡大時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療。 ・監察医は死体解剖保存法に基づく制度であり、医療計画の記載事項ではない。
