StudyMed医師国家試験

朝いちばんの鼻水は誰のしわざ?―通年性アレルギー性鼻炎で「犯人」を突き止める検査

第109回医師国家試験 A問題 第50問

国試問題にチャレンジ

第109回 A問題 第50問

19歳の女性。鼻漏を主訴に来院した。数年前から鼻漏と鼻閉とが出現し,2週前から増悪したため受診した。通年性に症状があり起床時に激しい。右鼻腔の内視鏡像を別に示す。  行うべき検査はどれか。

第109回 A問題 第50問の問題画像
  1. a.細菌検査
  2. b.病理組織検査
  3. c.好中球機能検査
  4. d.抗原特異的IgE検査
  5. e.末梢血白血球分画検査

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は慢性の鼻漏・鼻閉から疾患を推定し、次に何を調べるべきかを考える問題だ。注目してほしいのは「通年性」「起床時に強い」という症状の出方と、内視鏡で見える鼻粘膜の色と鼻汁の性状。まず内視鏡像を言葉にしてみよう。下鼻甲介の粘膜が蒼白でむくんだように腫れていて、鼻腔には水っぽい透明な鼻汁がある。出血や腫瘤、膿のような鼻汁は見当たらない。この所見から何を考える?
医学生医学生
蒼白で浮腫状の粘膜と水様性鼻漏なので、アレルギー性鼻炎でしょうか。耳鼻科の臨床実習で、花粉症の患者さんの鼻の中が白っぽかったのを覚えています。
ドクタードクター
いい観察だね。アレルギー性鼻炎の三主徴は、発作性反復性のくしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉。ただ、ほかの疾患も順に除外しておこう。鼻かぜ、つまり急性鼻炎はどうかな。
医学生医学生
最初は水っぽくても数日で粘っこくなって、1〜2週で治りますよね。数年続いているので合いません。
ドクタードクター
その通り。副鼻腔炎なら粘膿性の鼻漏や後鼻漏、中鼻道の膿が目立つ。腫瘍や肉芽腫性疾患なら片側性の鼻閉や血性鼻漏、腫瘤がみられることが多い。今回はどれにも当てはまらない。
医学生医学生
花粉症も通年性なので違いますね。季節性ではなく1年中ということは、原因は室内にあるものでしょうか。
ドクタードクター
鋭いね。通年性アレルギー性鼻炎の代表的な原因はハウスダストとダニだ。ダニは寝具に多いから、夜間ずっと抗原にさらされて、起床直後にくしゃみや鼻水が強く出る。これをモーニングアタックと呼ぶ。
医学生医学生
そうなると、次にやるべきは「本当にアレルギーか」と「何に反応しているか」を確かめることですね。
ドクタードクター
まさにそこが設問の核心だ。アレルギー性鼻炎はIgEが関与するI型アレルギーだから、血清中の抗原特異的IgE抗体を測れば、どの抗原に感作されているかがわかる。ハウスダストやダニに加えて、カビ、ペットの上皮、スギなどの花粉もまとめて調べることが多い。だから行うべき検査は抗原特異的IgE検査になる。
医学生医学生
原因抗原がわかると、治療にもつながるんですか。
ドクタードクター
直結するよ。寝具の掃除や防ダニカバーといった抗原の除去・回避の指導ができるし、ダニやスギなら舌下免疫療法の適応も判断できる。では、他の選択肢も確認しよう。細菌検査はどうだろう。
医学生医学生
膿性の鼻汁や発熱があれば起炎菌を調べる意味がありますが、今回は水様透明なので優先度は低いと思います。
ドクタードクター
その通り。病理組織検査は、腫瘤や潰瘍、出血しやすい病変があって腫瘍や肉芽腫性疾患を疑うときに行う侵襲的な検査だから、今回は必要ない。好中球機能検査は慢性肉芽腫症のような食細胞機能異常症を疑うとき、つまり幼少期から細菌や真菌の感染を繰り返す患者に行うものだ。
医学生医学生
末梢血の白血球分画で好酸球が増えていれば、アレルギーの裏付けにはなりそうに思えるんですが。
ドクタードクター
そう考えたくなるよね。でもI型アレルギーでの末梢血好酸球の増加は軽度で、寄生虫や薬剤など他の原因でも増えるから特異性が低い。何より原因抗原はわからない。アレルギー性鼻炎で好酸球を見るなら、末梢血ではなく鼻汁を塗抹して調べる鼻汁好酸球検査が役に立つんだ。
医学生医学生
好酸球を見るなら「鼻汁で」なんですね。CBTの勉強では見落としていました。
ドクタードクター
大事なポイントだから押さえておこう。診断の進め方としては、典型的な症状に加えて、鼻汁好酸球検査、皮膚テストまたは血清特異的IgE検査、鼻誘発テストのうち2つ以上が陽性なら確定できる。皮膚テストにはプリックテストや皮内テストがあり、15〜20分後の膨疹や紅斑をみるけれど、抗ヒスタミン薬を飲んでいると偽陰性になりうる。その点、血清特異的IgEは採血で複数の抗原を一度に調べられ、服薬の影響を受けにくい。
医学生医学生
症状が似ていてもIgEや皮膚テストが陰性なら、血管運動性鼻炎のような非アレルギー性鼻炎も考えるわけですね。
ドクタードクター
その通り。治療は抗原の回避に加えて、第2世代抗ヒスタミン薬や鼻噴霧用ステロイド薬、抗ロイコトリエン薬などの薬物療法、アレルゲン免疫療法、重い鼻閉には下鼻甲介粘膜の焼灼などの手術もある。どの治療を選ぶにしても、まず「犯人」を特定することが出発点になるんだ。

まとめ

数年来の通年性の鼻漏・鼻閉が起床時に強く、内視鏡で蒼白・浮腫状の下鼻甲介粘膜と水様透明な鼻汁を認める場合は、ハウスダストやダニによる通年性アレルギー性鼻炎を考えます。I型アレルギーであることと原因抗原を確かめるために、血清の抗原特異的IgE検査(または皮膚テスト)を行い、その結果が抗原回避の指導や舌下免疫療法の適応判断につながります。細菌検査は膿性鼻汁、病理組織検査は腫瘤性病変、好中球機能検査は易感染性がある場合の検査であり、好酸球を評価するなら末梢血ではなく鼻汁で調べます。症状の時間的パターンと局所所見から病態を推定し、治療方針に直結する検査を選ぶ姿勢は、アレルギー疾患全般の診療に通じる基本です。

解答・解説

正解はdです

所見の整理

・19歳の若年女性で、数年来の鼻漏と鼻閉がある(慢性・反復性の経過)。 ・症状は1年を通してみられ(通年性)、特に起床時に強い。 ・内視鏡像では、下鼻甲介の粘膜が蒼白で浮腫状に腫れ、鼻腔内に水様で透明な鼻汁が認められる。出血、腫瘤、膿性鼻汁はみられない。

診断へのプロセス

鼻漏・鼻閉を起こす主な疾患を順に考える。 ・急性鼻炎(いわゆる鼻かぜ): 初期は水様鼻汁でも数日で粘性~粘膿性に変わり、咽頭痛や発熱を伴って1~2週で治まる。数年にわたる通年性の経過とは合わない。 ・急性・慢性副鼻腔炎: 粘膿性の鼻漏や後鼻漏、中鼻道の膿汁や浮腫が特徴であり、水様透明な鼻汁とは合わない。 ・鼻・副鼻腔腫瘍や肉芽腫性疾患: 片側性の鼻閉、血性鼻漏、腫瘤性病変を示すことが多いが、本例ではそのような所見はない。 ・季節性アレルギー性鼻炎(花粉症): 症状が花粉飛散期に限られるため、通年性の経過とは合わない。 以上から、通年性アレルギー性鼻炎が最も考えられる。原因抗原としては室内のハウスダストやダニ(ヤケヒョウヒダニなど)が代表的であり、寝具などに多いこれらの抗原に夜間さらされることもあって、起床直後にくしゃみ・鼻漏が強く出やすい(モーニングアタック)。なお、アレルギー性鼻炎の三主徴は、発作性反復性のくしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉である。

設問の考え方

アレルギー性鼻炎を疑ったら、次に行うべきことは「本当にⅠ型アレルギーか」と「何が原因抗原か」を確かめることである。原因抗原がわかれば、抗原の除去・回避(寝具の掃除、防ダニカバーの使用など)や、ダニ・スギを対象としたアレルゲン免疫療法(舌下免疫療法)といった治療方針に直結する。そのための検査が、血清中の抗原特異的IgE抗体の測定である。

選択肢考察

  1. ×a.  細菌検査

    鼻汁の細菌検査(塗抹・培養)は、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌などによる細菌性の鼻副鼻腔炎を疑い、膿性鼻汁がある場合に起炎菌と薬剤感受性を調べる目的で行う。本例の鼻汁は水様透明で、膿性所見や発熱などの感染徴候はなく、細菌感染を示唆する根拠に乏しいため優先されない。

  2. ×b.  病理組織検査

    生検による病理組織検査は、鼻腔・副鼻腔の良性・悪性腫瘍(乳頭腫、扁平上皮癌、悪性リンパ腫など)や肉芽腫性疾患(多発血管炎性肉芽腫症など)を疑って、腫瘤や潰瘍、易出血性の病変がある場合に行う。本例の粘膜は蒼白・浮腫状で腫瘤はなく、侵襲を伴う組織採取を行う理由はない。

  3. ×c.  好中球機能検査

    好中球機能検査は、好中球の遊走能、貪食能、殺菌能(活性酸素産生能など)を評価する検査で、慢性肉芽腫症などの先天性食細胞機能異常症を疑うときに用いる。これらの疾患では幼少期から細菌・真菌感染を繰り返すのが特徴である。本例はアレルギー性の病態であり、易感染性を示す病歴もないため不要である。

  4. ○d.  抗原特異的IgE検査

    アレルギー性鼻炎はIgEが関与するⅠ型アレルギー反応による。血清中の抗原特異的IgE抗体を測定すると、患者がどの抗原に感作されているかがわかる。通年性で起床時に悪化する経過からは、ハウスダストやダニが原因として最も疑われ、これらに加えてカビやペットの上皮、スギなどの花粉も含めて測定する。結果は抗原の除去・回避の指導や、アレルゲン免疫療法の適応判断に必要であり、本例で最優先に行うべき検査である。皮膚テスト(プリックテスト、皮内テスト)も同じ目的で用いられる。

  5. ×e.  末梢血白血球分画検査

    Ⅰ型アレルギーでは末梢血の好酸球が軽度増加することがあるが、その変化は軽く、アレルギー性鼻炎以外の多くの原因でも増加するため、診断に役立つ特異性は低い。また、原因抗原を特定することはできない。アレルギー性鼻炎の診断で有用なのは、末梢血ではなく鼻汁中の好酸球を調べる鼻汁好酸球検査である。したがって、抗原特異的IgE検査より優先されない。

アレルギー性鼻炎の概要

・鼻粘膜で起こるⅠ型アレルギー疾患である。吸入された抗原がマスト細胞(肥満細胞)表面のIgEと結合すると、ヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質が放出され、くしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉を起こす。 ・通年性: 主な原因はハウスダスト、ダニで、ほかにカビ、ペット(イヌ・ネコ)の上皮などがある。 ・季節性: スギ、ヒノキ、イネ科、ブタクサなどの花粉による(花粉症)。 ・鼻内所見: 下鼻甲介粘膜が蒼白で浮腫状に腫れ、水様性の鼻汁がみられる(ただし発作時には粘膜が発赤することもある)。

診断の進め方

典型的な症状があり、鼻汁好酸球検査、皮膚テストまたは血清特異的IgE抗体検査、鼻誘発テストのうち2つ以上が陽性であればアレルギー性鼻炎と確定できる。 ・鼻汁好酸球検査: 鼻汁を塗抹し、好酸球の増加を確認する。アレルギー性か非アレルギー性かの鑑別に役立つ。 ・皮膚テスト: 前腕に抗原液を付けて皮膚を軽く刺す(プリックテスト)、または皮内に注射する(皮内テスト)。15~20分後の膨疹・紅斑をみる。抗ヒスタミン薬の服用中は偽陰性になりうる。 ・血清特異的IgE抗体検査: 採血で複数の抗原を同時に調べられ、服薬の影響を受けにくい。 ・鼻誘発テスト: 抗原を染み込ませた紙片を下鼻甲介に置き、症状が出るかをみる。

鑑別すべき疾患

・非アレルギー性の鼻炎(血管運動性鼻炎など): 症状は似るが、特異的IgEや皮膚テストは陰性である。 ・好酸球性鼻炎: 鼻汁中の好酸球は増えるが、抗原への感作は証明されない。 ・副鼻腔炎: 粘膿性の鼻漏と後鼻漏が中心である。

治療の概要

抗原の除去・回避(掃除、寝具の管理、防ダニカバーの使用など)、薬物療法(第2世代抗ヒスタミン薬、鼻噴霧用ステロイド薬、抗ロイコトリエン薬など)、アレルゲン免疫療法(ダニ・スギに対する舌下免疫療法)、重い鼻閉に対する手術(下鼻甲介粘膜の焼灼など)がある。

POINT

・通年性、水様性鼻漏、蒼白で浮腫状の下鼻甲介は、通年性アレルギー性鼻炎を示す。 ・通年性の原因はハウスダスト・ダニ、季節性の原因は花粉が代表的である。 ・起床時に症状が強い(モーニングアタック)のが特徴の一つである。 ・原因抗原の特定には、血清の抗原特異的IgE検査や皮膚テストを行う。 ・好酸球をみるなら末梢血ではなく鼻汁で調べる(鼻汁好酸球検査)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。