StudyMed医師国家試験

手のひらと足の裏に繰り返す膿疱、そして胸の痛み―掌蹠膿疱症を見抜く2つの手がかり

第109回医師国家試験 A問題 第25問

国試問題にチャレンジ

第109回 A問題 第25問

42歳の女性。両手掌と足底の皮疹の悪化を主訴に来院した。1年前から両手掌と足底とに皮疹が繰り返し出現している。半年前から両側胸鎖関節部に痛みがある。手足の写真(A)(B)を別に示す。  最も考えられる疾患はどれか。

第109回 A問題 第25問の問題画像
  1. a.扁平苔癬
  2. b.菌状息肉症
  3. c.掌蹠膿疱症
  4. d.尋常性狼瘡
  5. e.種痘様水疱症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、手のひらと足の裏という限られた場所に繰り返す皮疹から、皮膚疾患を絞り込む問題だ。着目点は2つ。皮疹の「部位と性状」、それから一見皮膚と関係なさそうな「胸鎖関節の痛み」だ。まず写真から、どんな皮疹が見えるか言葉にしてみよう。
医学生医学生
手掌と足底に紅斑があって、その上に黄色っぽい小さなブツブツがたくさんあります。膿疱でしょうか。
ドクタードクター
その通り。紅斑を土台に黄色調の小膿疱が多発していて、古いものは乾いて褐色の痂皮や鱗屑になっている。つまり、できたばかりの膿疱と治りかけの痂皮が同時に見える「新旧混在」の状態なんだ。
医学生医学生
膿疱というと、細菌感染を真っ先に考えてしまいます。
ドクタードクター
多くの人がそう考えるね。でもこの膿疱は無菌性で、中にあるのは好中球の集まりだ。感染ではなく炎症そのものが膿疱をつくっている。だから抗菌薬で治る病気ではないんだ。
医学生医学生
手のひらの皮疹なら、皮膚科の臨床実習で水虫や手湿疹もよく見ました。そのあたりとはどう区別しますか。
ドクタードクター
いい質問だ。手足の白癬も膿疱をつくることがあるから、実臨床では鱗屑を採ってKOH法の直接鏡検で真菌を否定しておくのが基本だよ。汗疱は季節の変わり目に指の側面などに小水疱が出るし、手湿疹は原因物質との接触歴がヒントになる。そして今回、決定的なのがもう一つの手がかり、胸鎖関節の痛みだ。
医学生医学生
皮膚の病気で関節が痛むというと、乾癬性関節炎を思い出しました。
ドクタードクター
発想は近い。掌蹠膿疱症では、一部の患者に骨関節症状が合併して、胸骨・鎖骨・肋骨の接合部、つまり前胸壁の骨関節炎が最も代表的なんだ。掌蹠膿疱症性骨関節炎と呼ばれる。手足の無菌性膿疱と前胸壁の痛み、この組み合わせで掌蹠膿疱症が最も考えられる。
医学生医学生
ほかの選択肢も確認させてください。扁平苔癬は、口の中に白いレース状の病変が出る病気でしたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。扁平苔癬は表皮の基底層がT細胞に傷害される炎症性疾患で、紫紅色で光沢のある扁平な多角形丘疹が特徴だ。表面にWickham線条という白い網目模様が見え、四肢屈側や口腔粘膜に好発する。手足に膿疱が多発する病像とは違うね。
医学生医学生
菌状息肉症は皮膚のリンパ腫で、血液内科の講義で名前を聞いた程度です。
ドクタードクター
菌状息肉症は皮膚原発T細胞リンパ腫の代表で、CD4陽性T細胞が皮膚で増える。紅斑期、局面期、腫瘤期と年単位でゆっくり進み、体幹や臀部など日光の当たりにくい部位に出やすい。手掌・足底に限局して膿疱が出ることはない。
医学生医学生
尋常性狼瘡は「狼瘡」とついているけど、SLEとは別物ですよね。
ドクタードクター
そこは混同しやすいね。尋常性狼瘡は皮膚結核の一型で、顔面や頸部に赤褐色のやわらかい小結節が集まる。ガラス板で圧迫すると黄褐色のりんごゼリーのような色が透けて見えるのが特徴だ。種痘様水疱症のほうは、小児期に日光の当たる顔や手背に水疱ができて陥凹性瘢痕を残す光線過敏症で、EBウイルス感染細胞の皮膚浸潤が関与する。どちらも露光部や顔面が中心で、今回とは合わない。
医学生医学生
部位と性状で整理すると、選択肢がきれいに分かれますね。手足限局の無菌性膿疱に前胸壁の痛みなら掌蹠膿疱症、と。
ドクタードクター
その理解で十分だ。発展として悪化因子も押さえておこう。扁桃炎やう歯、歯周病、副鼻腔炎といった病巣感染、喫煙、歯科金属などの金属アレルギーが悪化に関わるとされている。中年女性や喫煙者に多いのも特徴だ。
医学生医学生
だから歯科や耳鼻科への紹介や禁煙指導が大事になるんですね。治療は外用薬が中心ですか。
ドクタードクター
まずは悪化因子の除去、そのうえでステロイドや活性型ビタミンD3の外用、ナローバンドUVBなどの光線療法を組み合わせる。難治例ではエトレチナートやシクロスポリンのほか、近年はアプレミラストやIL-23を標的とする生物学的製剤も使えるようになった。エトレチナートには催奇形性があるから、妊娠可能な年齢の女性では特に注意が要る。
医学生医学生
骨関節炎のほうは画像で何か特徴がありますか。
ドクタードクター
骨シンチグラフィで胸鎖関節部への集積が牛の頭のように見えるbull's head signが知られている。滑膜炎・座瘡・膿疱症・骨化過剰症・骨炎の頭文字をとったSAPHO症候群の一部として扱われることもある。胸の痛みを訴える患者さんの手足もぜひ見る、という視点を持っておくといいね。

まとめ

手掌・足底に限局して紅斑の上に無菌性の小膿疱が多発し、痂皮や鱗屑へ移行して新旧の皮疹が混在する慢性再発性の経過は、掌蹠膿疱症の典型像です。胸鎖関節を中心とする前胸壁の骨関節炎を合併しやすく、SAPHO症候群の一部として扱われることもあります。扁平苔癬はWickham線条を伴う紫紅色丘疹、菌状息肉症は体幹に好発する皮膚T細胞リンパ腫、尋常性狼瘡は顔面の皮膚結核、種痘様水疱症は小児の露光部に生じるEBウイルス関連疾患で、部位と性状で区別できます。治療は病巣感染の治療や禁煙など悪化因子の除去を土台に、外用療法・光線療法・全身療法を組み合わせ、白癬はKOH法で除外しておきます。皮膚所見と関節症状を結びつけて考える姿勢は、皮膚疾患を全身疾患として捉える臨床の基本です。

解答・解説

正解はcです

所見の整理

・42歳の女性。両手掌と両足底という限られた部位に、1年前から皮疹が出たり引いたりを繰り返している(慢性・再発性の経過)。 ・半年前から両側の胸鎖関節部に痛みがある。 ・手足の写真では、手掌・足底に紅斑があり、その上に黄色調の小さな膿疱が多数散在している。古い膿疱は乾いて褐色の痂皮(かさぶた)や鱗屑(皮膚の剝がれ)となっており、新旧の皮疹が混在している。

診断へのプロセス

手掌・足底に好発し慢性に経過する皮膚疾患には、手湿疹(慢性湿疹)、手足の白癬、汗疱(異汗性湿疹)、掌蹠膿疱症などがある。これらはいずれも紅斑や鱗屑を示しうるが、本例では次の2点が決め手となる。 1)手掌・足底に膿疱が多発し、それが痂皮・鱗屑へと移行する像が混在していること。膿疱は細菌がいない無菌性膿疱であり、掌蹠膿疱症に特徴的である。 2)胸鎖関節部の痛みがあること。胸骨・鎖骨・肋骨の接合部(前胸壁)の骨関節炎は、掌蹠膿疱症に合併する骨関節症状として最も代表的なものである(掌蹠膿疱症性骨関節炎)。 この組み合わせから、掌蹠膿疱症が最も考えられる。なお、手足白癬でも膿疱をつくることがあるため、実臨床では直接鏡検(KOH法)で真菌を否定しておく。

選択肢考察

  1. ×a.  扁平苔癬

    扁平苔癬は、表皮の基底層がT細胞によって傷害される慢性の炎症性角化症である。紫紅色で表面に光沢のある扁平に隆起した多角形の丘疹が特徴で、表面に白い網目状の線条(Wickham線条)がみられる。四肢屈側、体幹、口腔粘膜(頬粘膜の白色レース状病変)に好発し、かゆみを伴う。原因不明のことが多いが、薬剤(降圧薬など)、歯科金属、C型肝炎ウイルス感染との関連が知られる。手掌・足底に膿疱が多発する病像ではなく、胸鎖関節炎との関連もない。

  2. ×b.  菌状息肉症

    菌状息肉症は皮膚原発T細胞リンパ腫の代表で、皮膚に親和性をもつCD4陽性T細胞が増殖する。紅斑期(体幹などの鱗屑を伴う紅斑)→局面期(浸潤を触れる局面)→腫瘤期と、年単位でゆっくり進行する。好発部位は体幹や臀部など日光の当たりにくい部位であり、手掌・足底に限局して膿疱が多発することはない。胸鎖関節炎も伴わない。

  3. ○c.  掌蹠膿疱症

    手掌・足底に限局して、紅斑の上に無菌性の小膿疱が多発し、痂皮・鱗屑へと移行しながら新旧の皮疹が混在する慢性再発性の経過は掌蹠膿疱症の典型である。さらに、胸鎖関節を中心とする前胸壁の骨関節炎は本症に合併する骨関節症状として最もよく知られており、本例の両側胸鎖関節部痛はこれに相当する。扁桃炎・う歯・歯周病・副鼻腔炎などの病巣感染や喫煙が悪化因子とされるため、これらの検索と治療・禁煙指導が重要である。

  4. ×d.  尋常性狼瘡

    尋常性狼瘡は皮膚結核の一型(真性皮膚結核)で、結核菌が皮膚で増殖して生じる。顔面や頸部に好発し、赤褐色でやわらかい小結節(狼瘡結節)が集まって局面をつくり、ガラス板で圧迫すると黄褐色のりんご・ゼリー様の色調が透見される(ガラス圧診)。慢性に経過して瘢痕や潰瘍を残す。手掌・足底の膿疱多発や胸鎖関節炎とは結びつかない。

  5. ×e.  種痘様水疱症

    種痘様水疱症は、主に小児期に発症する光線過敏症で、EBウイルスに感染したT細胞やNK細胞の皮膚浸潤が関与する(慢性活動性EBウイルス感染症の皮膚病変の一つとして位置づけられる)。顔面や手背などの日光露光部に、日光曝露後に紅斑・水疱が生じ、中心がくぼんで痂皮化し、天然痘の種痘痕に似た陥凹性瘢痕を残す。典型例は思春期頃までに軽快するが、重症型ではリンパ腫へ進展することがある。露光部ではない手掌・足底に皮疹が限局する本例とは合わない。

掌蹠膿疱症の概要

手掌と足底に無菌性膿疱が繰り返し出現する慢性の炎症性皮膚疾患である。わが国では中年(40〜60歳代)に多く、女性や喫煙者に多い。 ・皮疹:紅斑を基盤に小水疱・膿疱が多発し、数日〜1週間ほどで褐色の痂皮・鱗屑となって剝がれ落ちる。新旧の皮疹が混在するのが特徴である。発症初期や悪化時にかゆみを伴うことが多い。手掌では母指球・小指球、足底では土踏まずや踵に好発する。爪の変形を伴うこともあり、下腿・肘・膝などに乾癬に似た皮疹が出ることもある。 ・病理:表皮内に単房性の膿疱(好中球の集まり)を形成する。膿疱内は無菌である。 ・悪化因子:病巣感染(扁桃炎、う歯、歯周病、副鼻腔炎など)、喫煙、歯科金属などの金属アレルギー。

掌蹠膿疱症性骨関節炎

患者の一部に骨関節症状を合併し、胸骨・鎖骨・肋骨の接合部(胸鎖関節、胸肋関節)の痛みと腫れが最も多い。脊椎や仙腸関節が侵されることもある。骨シンチグラフィでは、胸鎖関節部の集積が牛の頭部のように見える(bull's head sign)ことがある。滑膜炎(Synovitis)、座瘡(Acne)、膿疱症(Pustulosis)、骨化過剰症(Hyperostosis)、骨炎(Osteitis)の頭文字をとったSAPHO症候群の一部として扱われることもある。

治療

・悪化因子の除去:禁煙、扁桃炎・歯性感染・副鼻腔炎などの病巣感染の治療(扁桃摘出術が有効な例もある)、金属アレルギーがあれば原因金属の除去。 ・外用療法:ステロイド外用薬、活性型ビタミンD3外用薬。 ・光線療法:ナローバンドUVB、エキシマライト、PUVA療法。 ・全身療法:エトレチナート(レチノイド、催奇形性あり)、シクロスポリン、ビオチン療法(効果は確立していない)など。近年、PDE4阻害薬(アプレミラスト)や、IL-23を標的とする生物学的製剤(グセルクマブ、リサンキズマブ)など、掌蹠膿疱症に適応をもつ薬剤が使用可能となっている。 ・骨関節症状:非ステロイド性抗炎症薬、重症例では生物学的製剤などを考慮する。

手掌・足底に皮疹をみたときの鑑別

・手足白癬:鱗屑を伴い、KOH直接鏡検で真菌を確認する。 ・汗疱(異汗性湿疹):季節の変わり目に指の側面などに小水疱が多発する。 ・接触皮膚炎・手湿疹:原因物質との接触歴、かゆみが強い。 ・膿疱性乾癬(汎発型):全身に膿疱と紅斑が広がり、発熱など全身症状を伴う。 ・第2期梅毒(梅毒性乾癬):手掌・足底に赤褐色の鱗屑性丘疹が出る。

POINT

・手掌・足底に限局した無菌性膿疱の多発+紅斑・痂皮・鱗屑が混在 → 掌蹠膿疱症。 ・合併する骨関節症状は胸鎖関節を中心とする前胸壁の骨関節炎が代表(SAPHO症候群の一部として扱われることもある)。 ・悪化因子は病巣感染(扁桃炎、う歯、歯周病、副鼻腔炎)、喫煙、金属アレルギー。 ・治療は悪化因子の除去(禁煙・病巣感染の治療)、ステロイドや活性型ビタミンD3の外用、光線療法。 ・扁平苔癬(紫紅色扁平丘疹・Wickham線条)、菌状息肉症(皮膚T細胞リンパ腫)、尋常性狼瘡(顔面の皮膚結核)、種痘様水疱症(小児の光線過敏・EBウイルス関連)は部位・性状で区別する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。