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「3歳でできない」は本当に遅れ?―マイルストーンの物差しで見抜く言語発達の黄信号

第108回医師国家試験 H問題 第5問

国試問題にチャレンジ

第108回 H問題 第5問

3歳児で発達の遅れとされるのはどれか。

  1. a.三角が書けない。
  2. b.二語文が話せない。
  3. c.スキップができない。
  4. d.おもちゃが片付けられない。
  5. e.服のボタンがかけられない。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、3歳の子どもで「できないこと」のうち、どれが本当に発達の遅れにあたるかを判断する問題だ。ポイントは、それぞれの能力が一般に何歳ころ獲得されるか、つまり発達のマイルストーンを物差しとして持っていること。「できない」だけでは遅れとは言えないんだ。
医学生医学生
3歳でできないことが全部遅れになるわけではない、ということですね。でも全部できそうな気もしてしまいます。
ドクタードクター
そこがこの問題の落とし穴だね。遅れと判断できるのは、その項目の獲得時期が3歳より明らかに早い場合だけ。逆に、もっと後で獲得されるものなら、3歳でできなくても正常範囲なんだ。では、まず図形の模写から考えてみよう。三角は何歳ころに書けるようになると思う?
医学生医学生
小児科の講義で、丸、十字、四角、三角の順と習いました。三角は5歳くらいでしたっけ。
ドクタードクター
その通り。丸が3歳、十字が3〜4歳、四角が4歳、三角が5歳、ひし形が6〜7歳という順番だ。だから3歳で三角が書けないのは当たり前で、3歳で確認すべきなのは丸が書けるかどうかなんだよ。
医学生医学生
スキップも運動会で年長さんがやっているイメージなので、3歳ではまだ早いですよね。
ドクタードクター
いい感覚だね。スキップは片足跳び、いわゆるけんけんより高度な協調運動で、けんけんが4歳ころ、スキップは5歳ころにできるようになる。3歳の粗大運動の目安は、三輪車をこぐ、両足をそろえて跳ぶ、片足立ちが短い時間できる、といったところだ。
医学生医学生
服のボタンかけはどうでしょう。指先を使うので3歳でもできそうな気がします。
ドクタードクター
ボタンかけは微細運動と目と手の協調が必要で、できるようになるのは3〜4歳ころ。資料によっては4歳とされることもあって、個人差も大きい。3歳でまだできなくても遅れとは言えないね。
医学生医学生
おもちゃの片付けは、正直うちの甥っ子も5歳でできていません……。
ドクタードクター
(笑)まさにそういうことだね。片付けはしつけや家庭環境、本人の性格の影響がとても大きい生活習慣上の行動で、発達の遅れを判断する指標にはなりにくい。排泄の自立なども同じで、それだけで異常と判断するのは早計なんだ。
医学生医学生
そうすると残るのは二語文ですね。二語文は2歳ころでしたか。
ドクタードクター
正解。言語発達の流れは、1歳ころに意味のある単語、つまり有意語が出て、1歳半ころに語彙が増え、2歳ころに「ママ、きた」「ワンワン、いた」のような二語文を話すようになる。3歳では三語文程度の文や、自分の名前が言えるのが目安だ。だから3歳で二語文が出ていないのは、明らかな言語発達の遅れであり、精査の対象になる。
医学生医学生
獲得時期が3歳より前なのは二語文だけで、ほかは3歳以降に獲得する項目、と整理すればいいんですね。
ドクタードクター
そういうこと。では、3歳児健診で言葉の遅れを見つけたら、まず何をすべきだと思う?
医学生医学生
臨床実習の小児科外来で、言葉が遅い子にまず聴力検査をしていたのを見ました。難聴の除外でしょうか。
ドクタードクター
その通り。聞こえていなければ言葉は育たないから、聴性脳幹反応や遊戯聴力検査などでまず難聴を除外することが大切だ。そのうえで、知的能力障害、自閉スペクトラム症、発達性言語障害、養育環境の問題などを鑑別していく。自閉スペクトラム症なら、視線が合いにくい、指さしが少ないといった対人コミュニケーションの特徴も一緒に確認するといい。
医学生医学生
言葉の遅れは、知的発達の遅れに早く気づく手がかりにもなるんですね。
ドクタードクター
そう。言語は知的発達と密接に関係するから、早期発見・早期支援の重要な入り口になる。1歳6か月児健診と3歳児健診は、まさにこうした発達の節目を確認する場だ。マイルストーンを年齢ごとに暗記するだけでなく、「この年齢でできないと困るもの」と「まだできなくて当然のもの」を区別して覚えると、実際の外来でも保護者に適切に説明できるよ。

まとめ

発達の遅れを判断するには、粗大運動・微細運動・言語・社会性の各領域について、一般的な子どもが何歳ころまでに獲得するかというマイルストーンを知っておく必要があります。二語文は2歳ころに話せるようになるため、3歳で話せない場合は言語発達の遅れと判断されます。一方、三角の模写とスキップは5歳ころ、ボタンかけは3〜4歳ころの獲得項目であり、片付けのようにしつけの影響が大きい行動は発達の指標になりにくいため、いずれも3歳でできなくても遅れとはいえません。言語発達の遅れをみたら、まず聴力検査で難聴を除外し、そのうえで知的能力障害や自閉スペクトラム症などを鑑別します。乳幼児健診で発達の黄信号に気づき、早期支援につなげるための基本的な物差しとして重要な知識です。

解答・解説

正解はbです

発達の遅れを判断するには、各能力(粗大運動・微細運動・言語・社会性/生活習慣)について「一般的な子どもの大多数がその年齢までに獲得している項目」、すなわちマイルストーンを知っておく必要がある。ある年齢で「できない」ことが遅れを意味するのは、その項目の獲得時期がその年齢より明らかに早い場合に限られる。逆に、獲得時期がもっと後の項目であれば、3歳でできなくても正常範囲である。 本問では、各選択肢の標準的な獲得時期を思い出して3歳と比較すればよい。三角の模写とスキップはおよそ5歳、ボタンかけは3〜4歳ころに獲得される項目であり、3歳の時点でできなくても遅れとはいえない。おもちゃの片付けは養育環境やしつけの影響が大きく、発達の指標としては用いにくい。一方、二語文は2歳ころまでに話せるようになるのが一般的で、3歳になっても話せない場合は言語発達の遅れと判断され、精査の対象になる。

選択肢考察

  1. ×a.  三角が書けない。

    図形の模写は、丸(3歳)→十字(3〜4歳)→四角(4歳)→三角(5歳)→ひし形(6〜7歳)の順に可能になる。三角が書けるのは5歳ころなので、3歳で書けないのは正常である。3歳で確認すべきなのは丸が書けるかどうかである。

  2. ○b.  二語文が話せない。

    言語発達はおおむね、1歳ころに意味のある単語(有意語)を話し始め、1歳半ころに語彙が増え、2歳ころに「ママ、きた」「ワンワン、いた」のような二語文を話すようになる。3歳では三語文程度の文や自分の名前を言えるようになる。したがって3歳で二語文が話せないのは明らかな言語発達の遅れである。原因として難聴、知的能力障害、自閉スペクトラム症、言語環境の問題などを考え、聴力検査や発達評価を行う。

  3. ×c.  スキップができない。

    スキップは片足跳び(けんけん、4歳ころ)よりさらに高度な協調運動で、5歳ころにできるようになる。3歳ではまだできなくて当然である。3歳の粗大運動の目安は、三輪車をこぐ、両足をそろえて跳ぶ、片足立ちが短時間できる、などである。

  4. ×d.  おもちゃが片付けられない。

    おもちゃの片付けは、しつけや家庭環境、本人の性格などによる個人差が非常に大きい生活習慣上の行動であり、できるかどうかで発達の遅れを判断する指標にはならない。

  5. ×e.  服のボタンがかけられない。

    ボタンかけは指先の細かな操作(微細運動)と目と手の協調を要し、3〜4歳ころに可能になる。個人差もあり、3歳でまだできなくても遅れとはいえない。

主な発達のマイルストーン(目安)

・1歳:つかまり立ち・伝い歩き、ひとり歩き(1歳〜1歳3か月ころ)、有意語(意味のある単語)が出る。 ・1歳6か月:ひとりで上手に歩く、意味のある単語をいくつか話す、なぐり書きをする。1歳6か月児健康診査で確認される。 ・2歳:走る、二語文を話す、積み木を数個積む。 ・3歳:三輪車をこぐ、丸を模写する、自分の名前を言う、三語文程度の会話、衣服の着脱を少しずつ手伝いながら行う。3歳児健康診査で確認される。 ・4歳:片足跳び(けんけん)、四角を模写する、ボタンかけが上手になる。 ・5歳:スキップ、三角を模写する、簡単なルールのある遊び。 ・6歳ころ以降:ひし形の模写が可能になる。

図形模写の順序

丸(3歳)→十字(3〜4歳)→四角(4歳)→三角(5歳)→ひし形(6〜7歳)

言語発達の遅れをみたら

まず難聴の除外(聴性脳幹反応や遊戯聴力検査など)が重要である。そのうえで、知的能力障害、自閉スペクトラム症(対人関係・コミュニケーションの障害を伴う)、発達性言語障害、養育環境の問題などを鑑別する。言語発達は知的発達の遅れを早期に見つけるための重要な手がかりである。

注意点

片付けや排泄の自立など、しつけの影響を強く受ける生活習慣には個人差が大きく、それだけで発達の異常と判断するのは早計である。

POINT

・二語文は2歳ころ。3歳で二語文が出ていなければ言語発達の遅れであり、まず難聴を除外する。 ・図形模写:丸3歳、四角4歳、三角5歳、ひし形6〜7歳。 ・粗大運動:三輪車3歳、けんけん4歳、スキップ5歳。 ・ボタンかけは3〜4歳ころ。 ・片付けなどしつけに依存する行動は発達の指標になりにくい。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。