最終月経より胎児が正直―CRLで書き換える分娩予定日
第108回医師国家試験 E問題 第40問
国試問題にチャレンジ
22歳の女性。初妊婦。今朝,市販のキットで妊娠検査を行ったところ陽性であったため来院した。1週前から空腹時に悪心を感じている。最終月経からは妊娠12週2日と推測される。月経周期は不順である。腟鏡診で分泌物は白色少量である。子宮は手拳大で軟。経腟超音波検査で胎児には心拍動を認め,頭殿長〈CRL〉を計測した。経腟超音波像を別に示す。最終月経開始日から280日目は2014年2月15日である。 この女性の分娩予定日として適切なのはどれか。

- a.2月15日
- b.2月22日
- c.3月1日
- d.3月8日
- e.3月15日
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクター
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ドクターまとめ
最終月経開始日から280日目(40週0日)を分娩予定日とする計算は、28日周期で月経開始から約14日目に排卵するという前提に基づくため、月経不順の女性では信頼性が低くなります。妊娠初期(おおむね8〜11週)の頭殿長〈CRL〉は胎児発育の個人差が小さく、週数推定に最も信頼できる指標であり、最終月経からの予定日と7日以上ずれる場合はCRLに基づいて予定日を修正します。本例ではCRL 21.8 mm(9週2日相当)と最終月経からの12週2日に3週のずれがあるため、2月15日に21日を加えた3月8日が修正後の分娩予定日となります。内診による子宮の大きさは誤差が大きく週数決定には用いず、また中期以降の計測値で予定日を後から変更すると胎児発育不全を見逃すおそれがある点にも注意が必要です。初期に正確な予定日を確定することは、その後の発育評価や早産・過期産の判断の土台となります。
解答・解説
正解はdです
所見の整理
・22歳の初妊婦。市販の妊娠検査薬(尿中hCG〈ヒト絨毛性ゴナドトロピン〉を検出する)で陽性となり受診した。 ・1週前からの空腹時の悪心は、つわり(妊娠悪阻に至らない程度の妊娠初期の消化器症状)と考えられる。 ・最終月経から数えると妊娠12週2日に相当するが、「月経周期は不順」と明記されている。 ・経腟超音波で胎児心拍を確認し、頭殿長〈CRL: crown-rump length、胎児の頭頂から殿部までの長さ〉を計測している。画像内の表示は CRL 21.8 mm、妊娠週数換算 9週2日である。
考え方
最終月経開始日を妊娠0週0日とし、280日目(40週0日)を分娩予定日とする計算(ネーゲレ概算法の考え方)は、月経周期が28日型で規則的であり、月経開始から約14日目に排卵したことが前提になっている。月経周期が不順な女性では排卵日が大きくずれるため、この前提が成り立たず、最終月経から求めた予定日は信頼できない。 一方、妊娠初期のCRLは胎児の発育の個人差がごく小さく、妊娠週数を推定する最も正確な指標の一つである。わが国の産婦人科診療ガイドライン(産科編)では、妊娠初期(おおむね妊娠8〜11週ごろ、CRL 14〜41 mm程度の時期)に正確に計測したCRLから求めた予定日と、最終月経から求めた予定日との差が7日以上ある場合には、CRLに基づいて予定日を修正することが推奨されている。 本例では最終月経からの推定が12週2日、CRLからの推定が9週2日で、実際の妊娠週数は最終月経からの計算より3週(21日)短い。したがって分娩予定日は、最終月経から求めた予定日(最終月経開始日から280日目=2014年2月15日)を21日後ろへずらして修正する。
計算
2014年は閏年ではないので2月は28日まである。2月15日から2月28日までが13日、残り8日で3月8日となる。 2月15日+21日=3月8日 なお、子宮が手拳大という内診所見は妊娠12週前後の大きさの目安とされるが、内診による子宮の大きさの評価は誤差が大きく、週数の決定には用いない。妊娠週数の確定は超音波計測値が優先される。
選択肢考察
- ×a. 2月15日
最終月経開始日から280日目をそのまま予定日とした日付である。月経周期が不順な女性では排卵日が推定できず、最終月経による計算の前提が崩れている。CRLによる週数(9週2日)と最終月経による週数(12週2日)の差は3週あり、ガイドラインで修正が必要とされる7日以上のずれに該当するため、この日付は採用できない。
- ×b. 2月22日
2月15日を1週(7日)だけ後ろへずらした日付である。これはCRLが妊娠11週2日相当だった場合の修正に当たる。実際のずれは3週であり、補正が不足している。
- ×c. 3月1日
2月15日を2週(14日)後ろへずらした日付であり、CRLが妊娠10週2日相当だった場合の予定日になる。本例のCRLは9週2日相当なので、まだ1週分補正が足りない。
- ○d. 3月8日
CRL 21.8 mmから求めた妊娠週数は9週2日であり、最終月経から推定した12週2日より3週(21日)短い。7日以上のずれがあるのでCRLによる週数を採用し、最終月経から求めた予定日2月15日に21日を加えると、2月は28日までなので3月8日となる。これが修正後の分娩予定日である。
- ×e. 3月15日
2月15日から4週(28日)後ろへずらした日付であり、CRLが8週2日相当だった場合の予定日である。本例のずれは3週なので、補正が1週過剰である。
分娩予定日の求め方
・最終月経開始日を0週0日とし、40週0日(280日目)を分娩予定日とする。満期産(正期産)は37週0日〜41週6日である。 ・ネーゲレ概算法:最終月経の月から3を引く(引けなければ9を足す)、日に7を足す。28日周期を前提とした簡便法である。 ・月経周期が28日より長い(短い)場合は、その差の日数だけ予定日を後ろ(前)へずらすのが原則である。周期が不規則な場合や最終月経が不明な場合は、超音波計測で週数を決める。
超音波による妊娠週数の推定
・妊娠5週ごろ:胎嚢〈GS: gestational sac〉が見え始める。 ・妊娠6週ごろ:胎児心拍が確認できるようになる。 ・妊娠8〜11週ごろ:CRLが週数推定に最も適した時期である。個体差が小さく、誤差は数日程度とされる。簡便な目安として「CRL(cm)≒ 妊娠週数 − 7」があり、本例の2.18 cmからは約9週と見積もれ、画像表示の9週2日と整合する。 ・妊娠12週以降はCRLの精度が落ち、児頭大横径〈BPD: biparietal diameter〉などを用いるが、週数が進むほど発育の個人差が大きくなり推定精度は下がる。そのため予定日の確定・修正は妊娠初期に行うのが基本であり、中期以降に胎児計測値が小さいからといって予定日を後から変更すると、胎児発育不全を見逃すおそれがある。
妊娠初期の症状・所見
・つわりは妊娠5〜6週ごろに始まり、12〜16週ごろまでに軽快することが多い。空腹時に増悪しやすい。 ・子宮の大きさの目安:妊娠8週で鵞卵大、12週で手拳大とされるが、内診による評価は主観的で誤差が大きい。
POINT
・最終月経からの予定日計算は28日周期・14日目排卵を前提とする。月経不順ではこの前提が成り立たない。 ・妊娠初期(おおむね8〜11週)のCRLは週数推定に最も信頼できる指標である。 ・CRLからの予定日と最終月経からの予定日が7日以上ずれていればCRLによる予定日へ修正する。 ・本例は12週2日→9週2日で3週のずれがあるため、2月15日+21日=3月8日となる。 ・超音波画像に表示された計測値・週数は重要な情報源であり、必ず読み取る。
