白い帯とくびれが目印―腹腔鏡で「結腸」を見抜く3つのサイン
第108回医師国家試験 E問題 第21問
国試問題にチャレンジ
腹腔鏡の写真を別に示す。 矢印で示す臓器はどれか。

- a.胃
- b.空腸
- c.回腸
- d.結腸
- e.直腸
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生まとめ
腹腔鏡で腸管を見分けるときは、大腸に特有の外観である結腸ヒモ(長軸に走る白い帯状の縦走筋)、結腸膨起(ハウストラ:ヒモの間の袋状の膨らみとくびれ)、腹膜垂(ヒモに沿う脂肪の房)の3つを探します。これらがそろう腸管は結腸と判断でき、外表が平滑な空腸・回腸、上腹部の大きな袋である胃、縦走筋が全周を覆いヒモを欠く直腸とは区別されます。結腸ヒモは大網ヒモ・間膜ヒモ・自由ヒモの3本で虫垂根部に集まるため、虫垂を探す手術時の目印になります。ハウストラは腹部単純エックス線写真で小腸のKerckringヒダと鑑別する際にも役立ち、腹膜垂炎は急性腹痛の鑑別に挙がります。消化管の外観の違いを理解しておくことは、画像診断から手術手技まで幅広く臨床の基礎となります。
解答・解説
正解はdです
腹腔鏡で観察した腸管の外観から、どの臓器かを見分ける問題である。消化管は外から見たときの形に特徴があり、とくに結腸(大腸)には小腸や胃にはない次の3つの目印がある。 ①結腸ヒモ(taenia coli):縦走筋が3本の帯状に集まったもので、腸管の長軸に沿って走る白っぽい帯として見える。 ②結腸膨起(ハウストラ:haustra):結腸ヒモが腸管より短いため、ヒモの間の壁が袋状に膨らみ、くびれ(半月ヒダ)と膨らみが交互に並ぶ。 ③腹膜垂(appendices epiploicae):結腸ヒモに沿って付着する、腹膜に包まれた小さな脂肪の房。
本画像の読み取り
矢印の腸管では、長軸方向に走る光沢のある白い帯状の構造(結腸ヒモ)が見られ、その両側の壁が分節状に膨らんでくびれを伴っている(結腸膨起)。周囲には黄色の脂肪組織が付着している。これらは結腸に特有の所見であり、矢印の臓器は結腸と判断できる。 胃であれば大弯・小弯や大網・小網との関係がみえるはずであり、空腸・回腸は表面が平滑でヒモやくびれがない。直腸は結腸に連続するが、結腸ヒモが広がって縦走筋層が全周を覆うため、ヒモ・膨起・腹膜垂がみられない。
選択肢考察
- ×a. 胃
胃は大きな袋状の臓器で、大弯には大網、小弯には小網が付着する。腹腔鏡では肝臓の下方、上腹部に広い平滑な壁として観察され、噴門・幽門へ向かう形態が手がかりとなる。胃の縦走筋は全周に分布し、結腸ヒモのような帯状構造や、分節状の膨らみ(膨起)はみられない。本画像の所見とは合わない。
- ×b. 空腸
空腸は小腸の口側約5分の2を占め、腸間膜で後腹壁につり下げられている。外表は平滑で、縦走筋は腸管の全周を均一に覆うため、結腸ヒモや結腸膨起、腹膜垂は存在しない。回腸に比べて口径がやや太く、壁が厚く、血管が豊富で赤みが強い。本画像のような帯状構造とくびれは空腸の特徴ではない。
- ×c. 回腸
回腸は小腸の肛門側約5分の3を占め、空腸と同様に腸間膜を持ち、外表は平滑で結腸ヒモ・結腸膨起・腹膜垂はない。空腸に比べて口径がやや細く壁が薄く、腸間膜の脂肪が多い。本画像の所見とは合わない。
- ○d. 結腸
矢印の腸管には、長軸方向に走る白い帯状の結腸ヒモと、その間が袋状に膨らんでくびれを伴う結腸膨起(ハウストラ)がみられ、周囲に脂肪組織(腹膜垂を含む)が付着している。結腸ヒモは大網ヒモ(横行結腸では大網が付着)、間膜ヒモ(横行結腸・S状結腸では結腸間膜が付着)、自由ヒモ(どちらも付着しない)の3本からなる。結腸ヒモ・結腸膨起・腹膜垂は、盲腸から結腸にかけての大腸に特有の外観であり、結腸と判断できる。
- ×e. 直腸
直腸はS状結腸に続く大腸の終末部で、骨盤腔内に位置する。S状結腸と直腸の移行部で3本の結腸ヒモが広がり、直腸では縦走筋が全周を均一に覆うため、結腸ヒモも結腸膨起も腹膜垂もみられない。また、直腸の下部は腹膜の外(腹膜外)にあり、腹腔鏡では骨盤底の深い位置に観察される。本画像の所見とは合わない。
消化管の外観による見分け方
・胃:上腹部の大きな袋状臓器。大弯に大網、小弯に小網が付着。 ・空腸:小腸の口側約2/5。太め・壁が厚い・赤みが強い。腸間膜の血管アーケードは1〜2列で直細動脈が長い。 ・回腸:小腸の肛門側約3/5。細め・壁が薄い。腸間膜の脂肪が多く、血管アーケードは多層で直細動脈が短い。粘膜にはパイエル板が多い。 ・結腸:結腸ヒモ、結腸膨起、腹膜垂の3つが特徴。 ・直腸:ヒモ・膨起・腹膜垂がない。
結腸の走行と腹膜との関係
盲腸 → 上行結腸 → 横行結腸 → 下行結腸 → S状結腸 → 直腸の順に続く。上行結腸と下行結腸は後腹壁に固定された二次性の後腹膜臓器であり、横行結腸とS状結腸は間膜を持ち可動性がある。
臨床とのつながり
・結腸ヒモは3本とも虫垂の根部に集まるため、手術で虫垂を探すときの目印となる。 ・腹腔鏡下結腸切除術などでは、腸管の外観から結腸と小腸を正しく見分けることが基本となる。 ・腹膜垂が捻転・梗塞を起こすと腹膜垂炎(epiploic appendagitis)となり、急性の限局した腹痛の原因となる。 ・結腸膨起は腹部単純エックス線写真でも、腸管を横切らない(壁の一部から出る)ひだとして見え、小腸のKerckring(ケルクリング)ヒダ(腸管全幅を横切る)との鑑別点となる。
POINT
・結腸の外観上の3大特徴:結腸ヒモ、結腸膨起(ハウストラ)、腹膜垂。 ・結腸ヒモは大網ヒモ・間膜ヒモ・自由ヒモの3本で、虫垂根部に集まる。 ・小腸(空腸・回腸)と直腸には結腸ヒモ・膨起・腹膜垂がない。 ・腹腔鏡で帯状の白いヒモと分節状の膨らみを持つ腸管をみたら結腸を考える。
