StudyMed医師国家試験

新生児に打腱器はいらない?―生後1日の診察で本当に見るべき神経所見

第108回医師国家試験 E問題 第16問

国試問題にチャレンジ

第108回 E問題 第16問

生後1日の新生児の診察に含まれないのはどれか。

  1. a.心音の聴取
  2. b.筋緊張の確認
  3. c.大泉門の診察
  4. d.Moro反射の確認
  5. e.膝蓋腱反射の確認

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、生まれて間もない赤ちゃんの診察で何を確認するかを問う問題だ。成人の診察で当たり前にやっている項目が、新生児にもそのまま当てはまるとは限らない。特に神経学的診察で、新生児ならではの評価法を意識できるかがポイントだよ。
医学生医学生
選択肢を見ると、どれもやりそうな気がしてしまいます。OSCEの神経診察で膝蓋腱反射は必ずやらされたので、外す理由が思いつかなくて。
ドクタードクター
成人の診察に慣れているほど迷うところだね。まず新生児診察の目的から考えよう。胎外生活への適応が順調か確認することと、先天異常や疾患の徴候を早く見つけることだ。先天性心疾患や神経筋疾患、頭蓋内の異常は、生後早期の診察で初めて疑われることが少なくないんだ。
医学生医学生
だとすると、心音の聴取は確実に入りますね。先天性心疾患は100人に1人くらいでしたっけ。
ドクタードクター
そう、出生児のおよそ1%だ。心雑音や心音の異常、心拍数・リズムの異常から見つかることが多い。しかも生後間もない時期は動脈管や卵円孔が閉じていく途中で、肺血管抵抗が下がるにつれて数日かけて雑音がはっきりしてくることもある。だから1回で終わらせず、繰り返し聴くんだ。大腿動脈の拍動を触れて大動脈縮窄症の手がかりを探すのもセットだよ。
医学生医学生
大泉門はどうでしょう。小児科の実習で、指導医の先生が赤ちゃんの頭をそっと触っていたのを覚えています。
ドクタードクター
大泉門の診察も欠かせない。前頭骨と左右の頭頂骨の間にある菱形の膜性部で、触って大きさと緊張度を確かめる。膨隆・緊満していれば頭蓋内出血や水頭症、髄膜炎などによる頭蓋内圧亢進を、陥凹していれば脱水を考える。小さすぎたりすでに閉じていたりすれば頭蓋骨早期癒合症、逆に大きすぎれば先天性甲状腺機能低下症なども鑑別に挙がるんだ。
医学生医学生
頭蓋内の状態を外から推測できる窓、ということですね。では神経の評価は何で行うんですか。
ドクタードクター
新生児の神経学的評価の柱は、姿勢と筋緊張、自発運動、そして原始反射だ。正期産の健康な新生児は四肢を曲げた屈曲優位の姿勢をとり、適度な筋緊張がある。手足を伸ばしてだらりとした蛙様肢位なら筋緊張低下で、低酸素性虚血性脳症、脊髄性筋萎縮症、Down症候群、低血糖、敗血症などを考える手がかりになる。
医学生医学生
筋緊張は診察に入る、と。Moro反射は原始反射の代表ですよね。小児科の講義で、両腕を広げてから抱きつくような動きをする動画を見ました。
ドクタードクター
そうそう。頭を支えて軽く持ち上げ、少し落とすようにすると、両上肢を伸展・外転して手を開き、続いて抱きつくように内転・屈曲させる。中枢は脳幹にあって、生後4〜6か月ごろに消えていく。反射がない、弱いなら中枢神経系の障害や全身状態の悪さを、左右差があれば腕神経叢麻痺や鎖骨骨折を疑うんだ。
医学生医学生
左右差で分娩外傷がわかるのは実践的ですね。そうすると、残る膝蓋腱反射が含まれない項目ということでしょうか。でも、新生児でも反射自体は出るんですよね。
ドクタードクター
いい疑問だ。膝蓋腱反射は腰髄L2〜L4を中枢とする深部腱反射で、新生児でも誘発することはできる。ただ、正常な新生児でも出方の個人差が大きく、亢進気味だったり出にくかったりするから、単独では異常かどうか判断しにくい。だから生後1日の通常の新生児診察の項目には含めない、というのが今回の答えだよ。
医学生医学生
成人なら亢進で錐体路障害、減弱で末梢神経障害と読めるのに、新生児ではその解釈が成り立ちにくいんですね。
ドクタードクター
その通り。新生児は中枢神経系が未熟で、成人と同じ物差しが使えない。代わりに、姿勢・筋緊張・原始反射という「新生児用の物差し」で成熟度や障害を評価するわけだ。原始反射は、出るべき時期に出ない、左右差がある、消えるべき時期を過ぎても残る、のいずれも異常のサインになる。
医学生医学生
乳児健診では逆に、原始反射が消えているかを見るんですね。
ドクタードクター
そう、時間軸で見ることが大事なんだ。最後に臨床での注意点も触れておこう。新生児診察は保温された環境で、児が落ち着いているときに裸にして、身体計測から頭部、顔面・口腔、呼吸、循環、腹部、外陰部・肛門、四肢・股関節・脊椎、神経へと系統立てて進める。泣き出すと心音が聴きにくくなるから、静かなうちに聴診を先に済ませるのがコツだね。あわせて、新生児マススクリーニングや聴覚スクリーニング、ビタミンK投与も生後早期に行われる。
医学生医学生
診察の順番にも理由があるんですね。系統立てて見落としを防ぐ、という考え方は大人の診察と同じだと感じました。

まとめ

生後早期の新生児診察は、胎外生活への適応を確認し、先天性心疾患や神経筋疾患、頭蓋内異常、先天奇形などを早期に見つけることを目的とし、身体計測から各臓器系、神経へと系統的に進めます。心音聴取は先天性心疾患の発見に、大泉門の診察は頭蓋内圧亢進・脱水・頭蓋骨早期癒合症の評価に欠かせません。新生児の神経学的評価は姿勢・筋緊張・自発運動・原始反射が柱で、Moro反射の欠如や左右差は中枢神経障害や腕神経叢麻痺・鎖骨骨折の手がかりになります。一方、膝蓋腱反射などの深部腱反射は正常新生児でも個人差が大きく、通常の新生児診察の項目には含めません。成人とは異なる「新生児用の物差し」を理解しておくことは、小児の発達評価や乳児健診での判断の土台になります。

解答・解説

正解はeです

出生後まもない新生児の診察は、胎外生活への適応が順調に進んでいるかを確認し、先天異常や疾患の徴候をできるだけ早く見つけることを目的とする。多くの新生児は健康であるが、先天性心疾患、神経筋疾患、頭蓋内の異常、先天奇形などは生後早期の診察で初めて疑われることが少なくない。 診察は、保温された適切な環境で、児が安静にしているときに衣服を脱がせて行う。身体計測(体重・身長・頭囲・胸囲)と全身状態・皮膚色の観察に始まり、頭部(大泉門・縫合・頭血腫や産瘤など)、顔面・口腔(口唇口蓋裂など)、呼吸(呼吸数・陥没呼吸・呻吟)、循環(心音・心雑音・大腿動脈の拍動)、腹部(肝脾腫・腫瘤・臍)、外陰部・肛門、四肢・脊椎・股関節、そして姿勢・筋緊張・自発運動・原始反射を中心とした神経学的診察へと、視診・聴診・触診の順に系統立てて進める。 新生児の神経学的評価で重視されるのは、姿勢と筋緊張、自発運動、Moro反射・吸啜反射・把握反射などの原始反射であり、これらによって中枢神経系の成熟度や障害の有無を判断する。これに対し、膝蓋腱反射などの深部腱反射は新生児では出方にばらつきが大きく、正常児でも強弱や誘発のしやすさが一定しないため評価の意義が乏しく、生後1日の通常の新生児診察の項目には含めない。本問は、新生児診察で確認すべき基本項目と、成人の神経診察で重視される項目との違いを問うている。

選択肢考察

  1. ×a.  心音の聴取

    心音の聴取は新生児診察に欠かせない。先天性心疾患は出生児のおよそ1%にみられ、心雑音、心音の異常(Ⅱ音の分裂や単一Ⅱ音など)、心拍数・リズムの異常から発見されることが多い。出生直後は動脈管や卵円孔が閉じる途中であり、肺血管抵抗の低下に伴って生後数日かけて心雑音が明らかになることもあるため、繰り返し聴取する。チアノーゼの有無や大腿動脈の拍動(大動脈縮窄症の手がかり)とあわせて評価する。診察に含まれる項目である。

  2. ×b.  筋緊張の確認

    正期産の健康な新生児は、四肢を屈曲させた姿勢(屈曲優位の姿勢)をとり、適度な筋緊張をもつ。四肢を伸展させてだらりとした姿勢(蛙様肢位など)は筋緊張低下を示し、低酸素性虚血性脳症などの中枢神経障害、脊髄性筋萎縮症などの神経筋疾患、Down症候群、低血糖、敗血症などを疑う手がかりとなる。逆に筋緊張の亢進や後弓反張も異常所見である。引き起こし反応や腹位での水平挙上(ventral suspension)などで確認し、新生児の神経学的診察の中心となる項目である。

  3. ×c.  大泉門の診察

    大泉門は前頭骨と左右の頭頂骨の間にある菱形の膜性部で、通常1歳半ごろまでに閉鎖する。触診で大きさ・緊張度を確認し、膨隆・緊満は頭蓋内圧亢進(頭蓋内出血、水頭症、髄膜炎など)を、陥凹は脱水を示唆する。大泉門が異常に小さい・すでに閉じている場合や縫合の隆起がある場合は頭蓋骨早期癒合症(狭頭症)を、逆に著しく大きい場合は先天性甲状腺機能低下症や骨形成異常などを考える。あわせて縫合の開離、産瘤・頭血腫の有無も確認する。診察に含まれる項目である。

  4. ×d.  Moro反射の確認

    Moro反射は、仰臥位の児の頭部を支えて軽く持ち上げ、急に少し落とすなどして刺激すると、両上肢を伸展・外転させて手を開き、続いて抱きつくように上肢を内転・屈曲させる原始反射である。反射中枢は脳幹にあり、出生時からみられ生後4〜6か月ごろまでに消失する。反射の欠如や減弱は中枢神経系の障害や全身状態の不良を、左右差は分娩麻痺(腕神経叢麻痺)や鎖骨骨折を示唆するため、新生児の神経学的診察の基本項目である。なお、出生直後は反応が弱いことがあり、生後2〜3日の覚醒時に改めて確認するのが望ましいとする立場もある。

  5. ○e.  膝蓋腱反射の確認

    膝蓋腱反射は大腿四頭筋の伸張反射で、反射中枢は腰髄(L2〜L4、主にL3〜L4)にある深部腱反射である。成人の神経診察では錐体路障害(亢進)や末梢神経障害(減弱・消失)の評価に重要であるが、新生児では正常でも出方の個人差が大きく、亢進気味であったり誘発しにくかったりするため、単独の所見で異常を判断しにくい。新生児の神経評価は姿勢・筋緊張・自発運動・原始反射で行うのが基本であり、膝蓋腱反射は生後1日の通常の新生児診察には含まれない。したがって本肢が正解である。

新生児の診察項目(系統的な流れ)

・身体計測:体重、身長、頭囲、胸囲。在胎週数に対して大きさが適切か(SGA、LGA など)を評価する。 ・全身状態・皮膚:活気、啼泣、皮膚色(チアノーゼ、黄疸、蒼白)、母斑、浮腫。 ・頭頸部:大泉門・小泉門、縫合、産瘤・頭血腫、眼(赤色反射、結膜)、耳の形態、口唇口蓋裂、頸部腫瘤。 ・呼吸:呼吸数(正常はおよそ40〜60回/分)、陥没呼吸、鼻翼呼吸、呻吟。 ・循環:心拍数(正常はおよそ120〜160回/分)、心雑音、大腿動脈の拍動、末梢循環(毛細血管再充満時間)。 ・腹部:肝脾腫、腫瘤、臍帯の状態、腹部膨満。 ・外陰部・肛門:停留精巣、尿道下裂、鎖肛。 ・四肢・脊椎:先天性股関節脱臼(発育性股関節形成不全)の開排制限・クリック、多指症、二分脊椎を示唆する腰仙部の皮膚所見。 ・神経:姿勢、筋緊張、自発運動、啼泣の強さ、原始反射。

主な原始反射と消失時期の目安

・Moro反射:出生時からみられ、生後4〜6か月ごろに消失する。 ・吸啜反射・探索反射:生後4〜6か月ごろまで。 ・手掌把握反射:生後3〜6か月ごろに消失する。 ・足底把握反射:生後9〜12か月ごろに消失する。 ・非対称性緊張性頸反射(ATNR):生後4〜6か月ごろに消失する。 原始反射が本来の時期にみられない、左右差がある、あるいは消失すべき時期を過ぎても残存する場合は、中枢神経系の異常を疑う。

新生児期のスクリーニング

身体診察に加え、新生児マススクリーニング(先天代謝異常症・先天性甲状腺機能低下症など、タンデムマス法を含む)、新生児聴覚スクリーニング、ビタミンK投与による新生児ビタミンK欠乏性出血症の予防などが生後早期に行われる。

POINT

・新生児の神経学的診察は、姿勢・筋緊張・自発運動・原始反射(Moro反射など)で評価する。 ・膝蓋腱反射などの深部腱反射は新生児では個人差が大きく、通常の新生児診察の項目には含めない。 ・心音聴取(先天性心疾患)、大泉門の触診(頭蓋内圧亢進・脱水・頭蓋骨早期癒合症)は必須の診察項目である。 ・Moro反射は脳幹レベルの原始反射で、生後4〜6か月ごろに消失する。欠如・左右差は異常所見である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。