「寝たきり度」は足で測る―外出できるかが分ける障害高齢者の日常生活自立度
第108回医師国家試験 E問題 第15問
国試問題にチャレンジ
介護保険制度における障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)の判定に用いる項目はどれか。
- a.外出
- b.失禁
- c.徘徊
- d.金銭管理
- e.コミュニケーション
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
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ドクターまとめ
介護保険の主治医意見書では、「障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)」と「認知症高齢者の日常生活自立度」という2つの指標で高齢者の状態を評価します。寝たきり度は移動に着目した指標で、独力で外出できればランクJ、介助で外出するならA、日中ベッド上が主体だが座位を保てればB、1日中臥床ならCと分類し、能力ではなく実際の生活の状態で判定します。一方、失禁・徘徊・金銭管理のミス・意思疎通の困難さは、認知症高齢者の日常生活自立度の判定の目安であり、徘徊のように身体的には歩ける人でも認知症の自立度が重くなることがあります。この2本の物差しを区別し、本人と家族から実際の生活ぶりを聞き取って評価できることは、要介護認定や地域包括ケアに携わる医師にとって基本となる力です。
解答・解説
正解はaです
介護保険で要介護認定を受ける際、主治医は「主治医意見書」を作成し、その中で高齢者の状態を二つの物差しで評価する。一つが「障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)」、もう一つが「認知症高齢者の日常生活自立度」である。両者は評価の視点がまったく異なるため、どの項目がどちらの判定に使われるかを区別できるかが本問のポイントである。 障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)は、身体の障害によってどの程度「寝たきり」に近いかを示す指標で、とくに「移動」に関わる状態像に着目して判定する。具体的には、独力で外出できるか、介助があれば外出できるか、屋内で離床して過ごせるか、ベッド上で座位を保てるか、寝返りを打てるか、といった観点で、ランクJ(生活自立)・A(準寝たきり)・B(寝たきり)・C(寝たきり)の4段階(各2区分、計8区分)に分類する。判定は「できるかどうか」という能力ではなく、実際にどのように生活しているかという「状態」に基づいて行う。 一方、認知症高齢者の日常生活自立度は、認知症による症状・行動や意思疎通の困難さが日常生活にどの程度支障をきたしているか、どの程度の介護が必要かを評価する指標である。徘徊・失禁・金銭管理のミス・意思疎通の困難さといった項目は、こちらの判定の目安に用いられる。 選択肢のうち、移動(外出)という身体機能・活動の状態を表すものは「外出」のみであり、これが寝たきり度の判定に用いられる項目である。
選択肢考察
- ○a. 外出
寝たきり度では、外出の可否とその方法がランクを分ける中心的な基準である。独力で外出できればランクJ(交通機関を使って外出できればJ1、隣近所までならJ2)とされる。屋内の生活はおおむね自立しているが介助なしには外出しない場合はランクA(介助により外出し日中はほとんど離床していればA1、外出頻度が少なく日中も寝たり起きたりならA2)となる。ランクB・Cは日中の大半をベッド上で過ごす状態であり、外出は判定の前提から外れる。このように外出は寝たきり度の判定に用いられる項目である。
- ×b. 失禁
失禁は、認知症高齢者の日常生活自立度で、日常生活に支障をきたす症状・行動の例として挙げられている項目である(ランクⅢの例示に含まれ、これらが頻繁にみられ常に介護を要する場合はランクⅣとなる)。寝たきり度では、排泄を「ベッドから離れて行えるか」(ランクB1)や「介助を要するか」(ランクC)という移動・介助の状態として扱うが、失禁の有無そのものは判定項目ではない。
- ×c. 徘徊
徘徊は認知症の行動・心理症状(BPSD:behavioral and psychological symptoms of dementia)の一つであり、認知症高齢者の日常生活自立度で、日常生活に支障をきたす症状・行動の例(ランクⅢの例示、頻繁で常に介護を要すればランクⅣ)として用いられる。身体機能による移動の状態を評価する寝たきり度の判定項目ではない。むしろ徘徊がみられる人は身体的には歩行可能なことが多い。
- ×d. 金銭管理
金銭管理は、認知症高齢者の日常生活自立度でランクⅡa(家庭外で日常生活に支障をきたす症状・行動や意思疎通の困難さが多少みられても、誰かが注意していれば自立できる状態)の例として挙げられる。「たびたび道に迷う」「買物や事務、金銭管理などそれまでできていたことにミスが目立つ」といった状態である。手段的日常生活動作(IADL)に関わる認知機能の評価であり、寝たきり度の判定には用いない。
- ×e. コミュニケーション
コミュニケーション(意思疎通)の困難さは、認知症高齢者の日常生活自立度で各ランクを判定する軸の一つである。ランクⅡでは「意思疎通の困難さが多少みられても誰かが注意していれば自立」、ランクⅢでは「ときどきみられ介護を必要とする」、ランクⅣでは「頻繁にみられ常に介護を必要とする」というように、その程度と頻度によってランクが分かれる。寝たきり度の判定項目ではない。
障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)
・ランクJ(生活自立):何らかの障害はあるが日常生活はほぼ自立しており、独力で外出する。 J1:交通機関などを利用して外出する。J2:隣近所へなら外出する。 ・ランクA(準寝たきり):屋内での生活はおおむね自立しているが、介助なしには外出しない。 A1:介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する。A2:外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活をしている。 ・ランクB(寝たきり):屋内での生活に何らかの介助を要し、日中もベッド上の生活が主体であるが座位を保つ。 B1:車椅子に移乗し、食事・排泄はベッドから離れて行う。B2:介助により車椅子に移乗する。 ・ランクC(寝たきり):1日中ベッド上で過ごし、排泄・食事・着替えに介助を要する。 C1:自力で寝返りを打つ。C2:自力では寝返りも打たない。
認知症高齢者の日常生活自立度
・Ⅰ:何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内および社会的にほぼ自立している。 ・Ⅱ:日常生活に支障をきたす症状・行動や意思疎通の困難さが多少みられても、誰かが注意していれば自立できる。Ⅱa は家庭外(道に迷う、買物・事務・金銭管理のミスなど)、Ⅱb は家庭内でも(服薬管理ができない、電話や訪問者への対応など一人で留守番ができないなど)みられる。 ・Ⅲ:日常生活に支障をきたす症状・行動や意思疎通の困難さがときどきみられ、介護を必要とする(着替え・食事・排泄が上手にできない、徘徊、失禁、大声・奇声、火の不始末、不潔行為など)。Ⅲa は日中、Ⅲb は夜間を中心とする。 ・Ⅳ:上記の症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁にみられ、常に介護を必要とする。 ・M:著しい精神症状や周辺症状、あるいは重篤な身体疾患がみられ、専門医療を必要とする。
要介護認定の流れ
市町村への申請後、認定調査員による訪問調査(74項目の基本調査)の結果をもとにコンピュータによる一次判定が行われる。これに主治医意見書と調査の特記事項を加え、介護認定審査会で二次判定を行い、要支援1・2、要介護1〜5、非該当(自立)のいずれかが決まる。上記二つの日常生活自立度は、主治医意見書と認定調査票の双方に記載する項目である。
POINT
・主治医意見書には「障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)」と「認知症高齢者の日常生活自立度」の2つを記載する。 ・寝たきり度は「移動」に着目し、外出・離床・座位保持・寝返りなどの状態でJ・A・B・Cに分類する(能力ではなく状態で判定)。 ・独力で外出→J、介助で外出→A、日中ベッド上だが座位可→B、1日中臥床→C。 ・徘徊、失禁、金銭管理、意思疎通(コミュニケーション)は認知症高齢者の日常生活自立度の判定の目安である。
