StudyMed医師国家試験

夜明け前に体温は底をつく―体内時計が刻む体温の日内変動

第108回医師国家試験 C問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第108回 C問題 第3問

健常成人において体温が最も低い時間はどれか。

  1. a.午前0時
  2. b.午前6時
  3. c.正午
  4. d.午後6時
  5. e.午後9時

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は体温の日内変動を問う問題だ。体温は一日中一定ではなく、約24時間周期のリズムで上下している。いつ最低になり、いつ最高になるのか、そしてその理由まで押さえておこう。
医学生医学生
寝ている間は活動しないので、夜中の0時ごろにはもう一番低くなっていそうな気がします。
ドクタードクター
直感的にはそう思うよね。でも深夜0時は、まだ夕方の最高値から下がっていく途中なんだ。体温は入眠後もさらに下がり続けて、最も低くなるのは睡眠の後半から目覚める少し前、おおむね午前4〜6時ごろだ。だから選択肢の中では午前6時が正解になる。
医学生医学生
思ったより遅い時間なんですね。では一番高いのはいつですか。
ドクタードクター
午後遅くから夕方、おおむね午後4〜7時ごろだ。だから午後6時は最高に近い時間帯で、最低とは正反対だね。正午は早朝の最低点から上がっていく途中、午後9時は最高値から下がり始めたところにあたる。
医学生医学生
朝が底で、夕方が山という一つの波で覚えればいいわけですね。変動の幅はどのくらいなんですか。
ドクタードクター
健常成人ではおよそ0.5〜1℃未満で、ふつう1℃を超えることはない。この数字は熱型を判断するときの目安にもなるから覚えておこう。
医学生医学生
生理学の講義で、概日リズムの中枢は視床下部の視交叉上核だと習いました。体温のリズムもそこで決まっているんですか。
ドクタードクター
その通り。視交叉上核の体内時計がリズムをつくっている。夜間はメラトニンの分泌が高まって皮膚の血管が拡張し、手足から熱が逃げやすくなる。さらに睡眠中は筋肉の活動も食事による熱産生もなく、代謝が最も低い水準になる。熱産生の低下と熱放散の増加が重なるから、明け方に体温が底をつくんだ。
医学生医学生
眠くなると手足が温かくなるのは、熱を逃がしているからなんですね。赤ちゃんが眠いと手が温かくなるという話を、小児科の実習で聞いたのを思い出しました。
ドクタードクター
いい結びつけ方だね。そして起床して活動を始め、交感神経活動が高まり、食事をとることで、体温は午前中から上がっていくわけだ。
医学生医学生
臨床ではこの知識はどう役立つんでしょうか。
ドクタードクター
まず発熱の評価だ。同じ37.2℃でも、本来一番低いはずの早朝なら「高め」と解釈できる。病棟で検温表を見るときは、測定時刻も一緒に見る習慣をつけてほしい。それから、日内変動の幅が1℃以上ある熱型は弛張熱や間欠熱を考える手がかりになる。
医学生医学生
産婦人科の講義で出てきた基礎体温を朝起きてすぐ測るのも、日内変動の影響を減らすためですか。
ドクタードクター
そうだよ。朝目覚めてすぐ、安静のまま測ることで条件をそろえるんだ。女性では排卵後の黄体期にプロゲステロンの作用で体温が約0.3〜0.5℃上がるから、その変化を正確にとらえるためにも測定条件の統一が大切になる。
医学生医学生
測定部位でも値が違いますよね。OSCEの練習では腋窩で測っていました。
ドクタードクター
直腸温、口腔温、腋窩温の順に高く、深部体温に近いのは直腸温や鼓膜温だ。腋窩温は外気の影響を受けやすい。ほかにも、小児は代謝が活発で高め、高齢者は低めで、感染症があっても発熱しにくいことがある。年齢、性周期、活動、環境なども含めて、体温は「いつ、どこで、誰を」測ったかと合わせて解釈しよう。
医学生医学生
数字だけでなく、背景の条件を考えて読むことが大事なんですね。

まとめ

健常成人の体温は視床下部の視交叉上核にある体内時計のもとで概日リズムを示し、睡眠後半から目覚める前後の早朝(おおむね午前4〜6時)に最も低く、午後遅くから夕方に最も高くなります。早朝に最低となるのは、夜間のメラトニン分泌による皮膚血管拡張で熱放散が増え、睡眠中の代謝低下で熱産生が減るためで、変動幅はおよそ0.5〜1℃未満です。体温は測定部位(直腸温>口腔温>腋窩温)、年齢、性周期、活動や環境の影響も受けます。測定時刻を踏まえた発熱の評価や熱型の判断、基礎体温の測定など、日内変動の理解は日常診療で体温を正しく読み解くための基礎となります。

解答・解説

正解はbです

ヒトの体温は一日中一定ではなく、約24時間周期のリズム(概日リズム、サーカディアンリズム)に従って上下している。これを体温の日内変動という。その幅は健常成人でおよそ0.5〜1℃未満であり、1℃を超えることはふつうない。

変動のパターン

・最低:睡眠の後半から早朝、目覚める少し前(おおむね午前4〜6時ごろ) ・上昇:起床して活動を始める午前中に上がっていく ・最高:午後遅くから夕方(おおむね午後4〜7時ごろ) ・下降:夜になると下がりはじめ、就寝後さらに低下する

なぜ明け方に最も低いのか

体温のリズムは、視床下部の視交叉上核にある体内時計によってつくられている。夜間はメラトニンの分泌が高まって皮膚の血管が拡張し、手足から熱が逃げやすくなる。さらに睡眠中は筋肉の活動や食事による熱産生(食事誘発性熱産生)がなく、代謝も最も低い水準になる。こうした熱産生の低下と熱放散の増加が重なり、明け方に体温が最も低くなる。 選択肢のうち、この「早朝の最低点」に最も近いのは午前6時である。

選択肢考察

  1. ×a.  午前0時

    誤り。深夜0時ごろは、夕方の最高値から体温が下がっていく途中である。入眠後も体温はさらに下がり続け、最低になるのはこれより数時間後の明け方である。

  2. ○b.  午前6時

    正しい。健常成人の体温は、睡眠の後半から目覚める前後の早朝にかけて一日で最も低くなる。夜間は熱産生が減り、皮膚からの熱放散が増えるためである。その後は起床と活動の開始、交感神経活動の高まりとともに体温が上がっていく。選択肢の中では午前6時が最低点に最も近い。

  3. ×c.  正午

    誤り。正午は、早朝の最低点から体温が上がっていく途中にあたる。起床後の身体活動や食事による熱産生が加わって体温は上昇を続けるが、まだ最高には達していない。

  4. ×d.  午後6時

    誤り。夕方の午後6時前後は、体温が一日で最も高くなる時間帯(午後遅く〜夕方)に含まれる。最低点とは正反対の時間帯である。

  5. ×e.  午後9時

    誤り。午後9時は、夕方の最高値から体温が下がり始めたところである。夜に向けてメラトニン分泌が増え、熱放散が高まることで体温は低下していくが、最低になるのは翌朝の明け方である。

体温に影響する主な因子

・時刻(日内変動):早朝に最低、夕方に最高。変動幅はおよそ0.5〜1℃未満。 ・測定部位:直腸温>口腔温>腋窩温の順に高い。深部体温(核心温)に近いのは直腸温や鼓膜温で、腋窩温は外気の影響を受けやすい。 ・年齢:小児は代謝が活発で高め、高齢者は低めで、感染症があっても発熱しにくいことがある。 ・性周期:女性では排卵後の黄体期にプロゲステロンの作用で体温が約0.3〜0.5℃上がる(基礎体温の高温相)。 ・身体活動、食事、精神的緊張、飲酒・喫煙、薬物、室温・着衣などの外部環境。

体温調節のしくみ

体温調節の中枢は視床下部にあり、熱産生(骨格筋の活動、ふるえ、褐色脂肪組織での産熱など)と熱放散(皮膚血管の拡張、発汗など)のバランスによって、体温を一定の範囲に保っている。概日リズムの中枢は視床下部の視交叉上核である。

臨床での意味

・発熱の評価では測定時刻を考慮する。同じ37.2℃でも、早朝であれば体温が高めと解釈できる。 ・弛張熱・間欠熱などの熱型を判断する際も、日内変動の幅(生理的には1℃未満)を目安にする。 ・基礎体温は、日内変動の影響を最小にするため、朝目覚めてすぐ安静のまま測る。

POINT

・健常成人の体温は早朝(目覚める前後)に最も低く、午後遅く〜夕方に最も高い。 ・日内変動の幅はおよそ0.5〜1℃未満。 ・リズムの中枢は視床下部の視交叉上核(体内時計)。 ・体温は測定部位、年齢、性周期(黄体期に上昇)、活動、環境などの影響も受ける。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。