StudyMed医師国家試験

胎嚢が小さくても慌てない―月経周期が長い人の妊娠初期にすべきこと

第107回医師国家試験 H問題 第27問

国試問題にチャレンジ

第107回 H問題 第27問

25歳の既婚女性。月経周期は30~40日である。最終月経は昨年の12月1日から5日間で,今年の1月12日に市販のキットで妊娠検査を行ったところ陽性であったため同日受診した。腟鏡診で分泌物は白色少量である。子宮は鵞卵大で軟。経腟超音波像を別に示す。妊娠初期と診断し患者に伝えた。  現時点での対応についての説明として適切なのはどれか。

第107回 H問題 第27問の問題画像
  1. a.「経過観察とします」
  2. b.「止血薬を処方します」
  3. c.「子宮収縮抑制薬を処方します」
  4. d.「直ちに子宮内容除去術を行います」
  5. e.「本日もう少し診察して分娩予定日を決めます」

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、妊娠初期と診断した女性に、その日どう説明し、どう対応するかを考える問題だ。ポイントは2つ。1つは「月経周期が長い」ことが妊娠週数の見積もりにどう影響するか、もう1つは「今の時点で決められること・決められないこと」の区別だよ。
医学生医学生
最終月経から数えると、受診日は妊娠6週0日ですよね。超音波では子宮内に胎嚢があるけれど、6週にしては小さめに見えました。
ドクタードクター
よく計算できたね。経腟超音波では子宮内に径1cm程度の胎嚢が見えている。ここで「6週なのに小さい、育っていないのでは」と考えると判断を誤る。最終月経から数える週数は、28日周期で月経開始から14日目に排卵・受精したという前提で決められているんだ。
医学生医学生
この人は周期が30〜40日だから、排卵はもっと遅かったかもしれない、ということですね。
ドクタードクター
その通り。排卵が16〜26日目ごろだった可能性があり、実際の週数は計算より1〜2週ほど短いことがありうる。そう考えれば、妊娠5週前後の胎嚢として矛盾しない。周期が長い女性では、最終月経から計算すると週数を多く見積もりやすい、と覚えておこう。
医学生医学生
では、異常妊娠の可能性はどう考えればいいでしょうか。産婦人科の臨床実習で、異所性妊娠は見逃すと危ないと何度も言われました。
ドクタードクター
大事な視点だね。妊娠初期にまず確認すべきは、異所性妊娠、流産、胞状奇胎だ。今回は子宮内に胎嚢が見えているので、異所性妊娠は否定的だ。自然妊娠で子宮内外に同時に妊娠することは極めてまれだからね。出血も腹痛もないので切迫流産の所見もない。胞状奇胎に特徴的な、多数の小嚢胞が集まった像もない。子宮が鵞卵大で軟らかいのも妊娠2か月相当として合っている。
医学生医学生
正常な子宮内妊娠の初期と考えてよさそうですね。それなら、対応は経過観察でしょうか。
ドクタードクター
正解。今は治療的な介入が必要な所見はないし、行える治療もない。1〜2週間後に再診して、胎芽や胎児心拍が出てくるかを確認していく。ただし、今後流産となる可能性は否定できないから、出血や腹痛があれば早めに受診するよう伝えておくことが大切だ。
医学生医学生
止血薬は、出血がないので処方する理由がありませんね。
ドクタードクター
そう。そもそも妊娠初期に出血があっても、止血薬で流産を防げるという根拠は乏しいんだ。子宮収縮抑制薬はどう思う?
医学生医学生
流産予防になりそうな気もしますが、使うのは切迫早産のときだと薬理学の講義で習いました。
ドクタードクター
その理解でいい。リトドリンなどの子宮収縮抑制薬は主に妊娠中期以降の切迫早産に用いるもので、妊娠初期には通常使わない。妊娠12週未満の早期流産の多くは胎芽側の染色体異常が原因だから、子宮の収縮を抑えても防げないんだ。
医学生医学生
子宮内容除去術は、流産が確定したときや胞状奇胎のときの処置ですよね。
ドクタードクター
そう。正常に続く可能性が十分ある妊娠に今行えば、継続できたはずの妊娠を終わらせてしまう。絶対に選んではいけない対応だ。流産の診断は、日を空けて再検査し、胎芽や心拍が出てこないことを確かめて慎重に行う。
医学生医学生
分娩予定日を今日決めるのも、まだ早いということですか。最終月経からNaegeleの概算法で出せそうですけど。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。Naegeleの概算法も28日周期を前提にしているから、周期が不規則で排卵日がわからないこの人では正確でない可能性が高い。こういう場合は超音波で頭殿長、つまりCRLを測って予定日を決めるんだけど、今はまだ胎芽が小さいか見えないので測れない。
医学生医学生
CRLはいつ測るのがいいんですか。
ドクタードクター
CRLが14〜41mmの時期、おおむね妊娠8週0日から11週0日に相当する頃の計測値で決めることが推奨されている。この人なら2〜3週間後が目安だね。なお、基礎体温などで排卵日がはっきりしている場合は、排卵日を妊娠2週0日として計算する方法もある。
医学生医学生
今日は「正常妊娠と考えてよいけれど、まだ決められないこともある」と伝えて、再診で一つずつ確認していくわけですね。
ドクタードクター
その通り。超音波の目安として、胎嚢は4〜5週ごろ、卵黄嚢は5週後半〜6週ごろ、胎芽と心拍は6〜7週ごろに見えてくる。ただし排卵が遅れれば所見も遅れるので、1回の検査だけで異常と決めつけず、間隔をあけて再評価することが臨床ではとても大切なんだ。

まとめ

月経周期が長く不規則な女性では排卵が遅れることが多く、最終月経から数えた妊娠週数は実際より多く見積もられやすいため、胎嚢がやや小さく見えても直ちに異常とは判断しません。子宮内に胎嚢が確認でき、出血や腹痛、胞状奇胎を示す所見がなければ、正常な子宮内妊娠の初期として経過観察とし、再診で胎芽・胎児心拍の出現を確認します。止血薬や子宮収縮抑制薬を予防的に用いる意義はなく、正常妊娠の可能性がある段階で子宮内容除去術を行ってはなりません。分娩予定日は、排卵日が不明な場合はCRLが14〜41mm(おおむね妊娠8〜11週相当)の時期の計測値で決定します。妊娠週数の前提を理解し、1回の所見で結論を急がない姿勢は、妊娠初期管理の基本です。

解答・解説

正解はaです

所見の整理

・25歳の既婚女性。月経周期は30〜40日と、標準(28日前後)より長く不規則である。 ・最終月経開始日は12月1日。受診日の1月12日は、そこから数えて42日目にあたり、最終月経から計算すると妊娠6週0日となる。 ・市販の妊娠検査薬(尿中hCG:ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が陽性。 ・腟分泌物は白色少量で、性器出血はない。 ・子宮は鵞卵大(ガチョウの卵ほどの大きさ)で軟らかく、妊娠2か月相当の大きさと性状である。 ・経腟超音波像では子宮内に胎嚢(GS:gestational sac)が確認できる(径約1cm程度)。

妊娠週数の考え方

最終月経から数えた妊娠週数は、「月経開始から14日目に排卵・受精した」という28日周期の前提で決められている。本例は月経周期が30〜40日と長いため、排卵は最終月経開始から16〜26日目ごろであった可能性があり、実際の妊娠週数は最終月経からの計算より最大で1〜2週程度短いことがありうる。したがって胎嚢の大きさが妊娠6週0日としてはやや小さくても、実際は妊娠5週前後に相当すると考えれば矛盾しない。

鑑別の考え方

妊娠初期に確認すべき異常は、異所性妊娠、流産、胞状奇胎などである。 ・子宮内に胎嚢が確認できているので、異所性妊娠は否定的である(子宮内外同時妊娠は自然妊娠では極めてまれ)。 ・性器出血や腹痛がなく、切迫流産・進行流産の所見はない。 ・胞状奇胎に特徴的な、子宮内に多数の小嚢胞が集まった像はみられない。 以上から、現時点では正常な子宮内妊娠の初期と考えてよい。

設問の考え方

妊娠5〜6週の段階では、胎芽(将来の胎児)や心拍がまだ確認できないことも多く、正常に経過するかどうか、また正確な分娩予定日は、この時点ではまだ決められない。治療的な介入を必要とする所見はないので、1〜2週間後に再診して胎芽・胎児心拍の出現を確認し、胎児頭殿長(CRL)が測定できる時期に分娩予定日を確定するという「経過観察」が適切な対応である。

選択肢考察

  1. ○a.  「経過観察とします」

    子宮内に胎嚢があり、出血・腹痛もなく、現時点で異常を示す所見はない。胎嚢がやや小さく見えても、月経周期が長いことによる排卵の遅れで説明できる範囲である。この段階で行える治療的介入はなく、また必要もないため、再診して胎芽・胎児心拍の出現と発育を確認していく経過観察が適切である。ただし今後流産となる可能性は否定できないので、出血や腹痛があれば早めに受診するよう説明しておく。

  2. ×b.  「止血薬を処方します」

    性器出血はなく、腟分泌物も白色少量であるため、止血薬を処方する根拠がない。なお、仮に妊娠初期に出血があっても、止血薬で流産を防げるという根拠は乏しい。

  3. ×c.  「子宮収縮抑制薬を処方します」

    本例には腹痛も出血もなく、切迫流産を疑う所見はない。そもそも妊娠12週未満の早期流産の多くは胎芽側の染色体異常が原因であり、子宮収縮抑制薬で予防できるものではない。子宮収縮抑制薬(リトドリンなど)は主に妊娠中期以降の切迫早産に用いられ、妊娠初期には通常使用しない。

  4. ×d.  「直ちに子宮内容除去術を行います」

    子宮内容除去術は、流産が確定した場合(稽留流産・不全流産)や胞状奇胎などで子宮内容物を取り除く処置である。本例は正常妊娠の可能性が十分にあり、今の時点で子宮内容除去術を行えば、継続できたはずの妊娠を終わらせてしまう。絶対に選んではならない対応である。流産の診断は、日を空けた再検査で胎芽・心拍が出現しないことなどを確認して慎重に行う。

  5. ×e.  「本日もう少し診察して分娩予定日を決めます」

    本例は月経周期が不規則で排卵日が不明なため、最終月経から計算した予定日は正確でない可能性が高い。このような場合は超音波で胎児頭殿長(CRL:頭頂から殿部までの長さ)を測定して予定日を決めるが、妊娠5〜6週相当の本例ではまだ胎芽が小さいか確認できず、CRLによる評価ができない。CRLが14〜41mmの範囲にある時期(おおむね妊娠8週0日〜11週0日に相当)に改めて測定し、予定日を確定するのが適切である。本例では2〜3週間後がその目安となる。

分娩予定日の決め方

・最終月経から:最終月経開始日を妊娠0週0日とし、280日目(40週0日)を分娩予定日とする。簡便な計算法としてNaegele(ネーゲレ)概算法がある(最終月経の月から3を引く〔または9を足す〕、日に7を足す)。これは28日周期で14日目に排卵することを前提としている。 ・排卵日が明らかな場合(基礎体温や不妊治療など):排卵日を妊娠2週0日とし、そこから266日後を予定日とする。 ・月経周期が不規則・排卵日が不明な場合:妊娠初期の超音波計測で決定する。最も信頼性が高いのはCRLで、CRLが14〜41mmの時期(おおむね妊娠8週0日〜11週0日に相当)の計測値を用いることが推奨されている。CRL 14mmは約8週0日、41mmは約11週0日に対応する。それ以降は児頭大横径(BPD)なども用いられる。 ・月経周期が長い女性や排卵が遅れた女性では、最終月経から計算すると妊娠週数を実際より多く見積もることになる。

妊娠初期の経腟超音波所見の目安

・妊娠4〜5週ごろ:子宮内に胎嚢が見え始める。 ・妊娠5週後半〜6週ごろ:胎嚢内に卵黄嚢が見える。 ・妊娠6〜7週ごろ:胎芽と胎児心拍が確認できるようになる。 ※週数はあくまで目安であり、排卵の遅れにより実際の所見が遅れることがある。1回の検査だけで異常と判断せず、間隔をあけて再評価する。

妊娠初期に鑑別すべき主な異常

・異所性妊娠:hCG陽性なのに子宮内に胎嚢が確認できない場合に疑う。卵管妊娠が大部分を占め、破裂すると腹腔内出血を来す。 ・流産:妊娠22週未満の妊娠の中絶。妊娠12週未満の早期流産が大部分を占め、主な原因は胎芽側の染色体異常である。 ・胞状奇胎:絨毛が水腫状に変化し、超音波で子宮内に多数の小嚢胞像(いわゆるvesicular pattern)を示す。hCGが異常高値となる。

子宮の大きさの目安

妊娠2か月(4〜7週):鵞卵大、3か月:手拳大、4か月:小児頭大。

POINT

・月経周期が長い・不規則な女性では排卵が遅れるため、最終月経から数えた妊娠週数は過大評価されやすい。 ・子宮内に胎嚢があり出血・腹痛がなければ、妊娠初期は経過観察として再診で胎芽・心拍を確認する。 ・分娩予定日が不確かな場合は、CRL(頭殿長)が14〜41mmの時期(おおむね妊娠8〜11週)の計測値で決定する。 ・正常妊娠の可能性がある段階で子宮内容除去術を行ってはならない。 ・妊娠初期に止血薬や子宮収縮抑制薬を予防的に投与する意義はない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。