その一行が命を守る―食品のアレルギー表示「義務」と「推奨」の境界線
第107回医師国家試験 G問題 第9問
国試問題にチャレンジ
アレルギー物質を含む食品の原材料表示が義務付けられていない品目はどれか。
- a.えび
- b.小麦
- c.そば
- d.米
- e.乳
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
加工食品のアレルギー表示では、発症数が多いもの(卵・乳・小麦・えび・かに・くるみ)と、重篤な症状を起こしやすいもの(そば・落花生)が特定原材料として表示を義務付けられており、出題当時は7品目、現在はくるみを加えた8品目です。大豆、ごま、牛肉などは「特定原材料に準ずるもの」として表示が推奨されるにとどまり、米はいずれにも含まれないため表示義務はありません。現在の根拠法は食品表示法(所管は消費者庁)で、対象は容器包装された加工食品と添加物に限られ、外食や量り売りには表示義務がありません。表示制度の範囲と限界を理解しておくことは、食物アレルギー患者への生活指導や誤食予防に直結します。
解答・解説
正解はdです
食物アレルギーをもつ人が加工食品を安全に選べるよう、原因となりやすい食品を含む場合には容器包装への表示が法律で求められている。表示が「義務」となる食品を特定原材料と呼び、表示が「推奨」にとどまる食品(特定原材料に準ずるもの)と区別される。 特定原材料は、①発症数(症例数)が多いもの、②発症した場合に重篤な症状(アナフィラキシーなど)を起こしやすいもの、という観点から選ばれている。本問の出題当時は、卵、乳、小麦、えび、かに、そば、落花生の7品目が特定原材料であった。現在はこれにくるみが加わり、8品目となっている。 選択肢のうち、えび・小麦・そば・乳はいずれも特定原材料に含まれる。米は特定原材料にも、表示が推奨される品目にも含まれていないため、表示義務のない品目は米である。
選択肢考察
- ×a. えび
えびは特定原材料であり、表示が義務付けられている。甲殻類アレルギーは学童期以降や成人でも新たに発症しやすく、発症数が多い。えびに含まれる主要なアレルゲンは筋肉たんぱく質のトロポミオシンで、加熱しても抗原性が失われにくい。
- ×b. 小麦
小麦は特定原材料であり、表示が義務付けられている。乳幼児の食物アレルギーの主要な原因食品の一つである。また、小麦を食べた後に運動をすると発症する食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)の原因食品として最も多い。
- ×c. そば
そばは特定原材料であり、表示が義務付けられている。発症数は卵・乳・小麦ほど多くないが、ごく微量でもアナフィラキシーショックなどの重篤な症状を起こしやすいことから義務表示の対象になっている。同じ理由で落花生も義務表示の対象である。
- ○d. 米
米は特定原材料(義務表示)にも、特定原材料に準ずるもの(推奨表示)にも含まれていない。米によるアレルギーの報告はあるものの頻度は低く、重篤な例も少ないためである。したがって、アレルギー表示が義務付けられていない品目は米であり、これが正解である。
- ×e. 乳
乳は特定原材料であり、表示が義務付けられている。鶏卵に次いで乳幼児に多い原因食品である。カゼインやβ-ラクトグロブリンが主要なアレルゲンで、牛乳だけでなくチーズ、バター、ヨーグルトなどの乳製品や、乳成分を含む加工食品も表示の対象となる。
アレルギー表示の制度
加工食品のアレルギー表示は、かつては食品衛生法に基づいて行われていた。2015年に食品表示法が施行され、現在はその下の食品表示基準で定められ、消費者庁が所管している。表示の対象は、容器包装された加工食品と添加物である。店頭で量り売りする惣菜や、外食の料理には表示義務がない。
特定原材料(表示義務)
現在は、えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生の8品目である。くるみは近年症例数が増えたため、2023年に追加された(経過措置期間は2025年3月末まで)。 ・発症数が多いことが主な理由: 卵、乳、小麦、えび、かに、くるみ ・症状が重篤になりやすいことが主な理由: そば、落花生
特定原材料に準ずるもの(表示推奨)
アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マカダミアナッツ、もも、やまいも、りんご、ゼラチンなどが指定されている。表示は推奨にとどまり、義務ではない。対象品目は、実態調査の結果に応じて見直されている(カシューナッツを特定原材料に加える見直しも進められている)。
表示の方法
アレルゲンは原則として、原材料ごとにそれぞれ表示する(個別表示)。例外的に、原材料表示の最後にまとめて表示する方法(一括表示)も認められている。含有量が微量(数μg/g程度)であっても表示の対象となる。一方、「入っているかもしれない」という可能性表示は認められていない。
原因食品の頻度
日本の即時型食物アレルギーでは、鶏卵、牛乳、木の実類(くるみなど)、小麦の順に多い。乳幼児では鶏卵・牛乳・小麦が多く、学童期以降では甲殻類、果物、木の実類、魚類、そばなどの割合が増える。
POINT
・アレルギー表示が義務付けられているのは特定原材料で、えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生の8品目である(本問の出題当時はくるみを除く7品目)。 ・選ばれる基準は、発症数が多いこと(卵・乳・小麦・えび・かに・くるみ)と、症状が重篤になりやすいこと(そば・落花生)である。 ・大豆、ごま、牛肉などは表示が推奨されるにとどまり、義務ではない。米はどちらにも含まれない。 ・現在の根拠法は食品表示法で、所管は消費者庁である。
