考察が書けない夜の「コピペ」―症例報告に潜むひょう窃(盗用)の落とし穴
第107回医師国家試験 F問題 第15問
国試問題にチャレンジ
研修医が学会での症例報告の原稿を準備している。発表は明後日に迫っている。症例の記述,診断手順,実施された治療などの執筆は問題なく終了した。しかし,考察で何を論じればよいか全くわからなかった。指導医師は明日朝一番で予行演習を行うよう指示した。研修医は今まで集めた論文の考察部分から段落ごと文章を抜き出し,参考文献として言及することなく自分自身の考察として記述した。 このまま発表する場合に該当する不正行為はどれか。
- a.偽造
- b.捏造
- c.二重投稿
- d.ひょう窃(盗用)
- e.ギフト・オーサーシップ
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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医学生
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医学生
ドクターまとめ
他者の論文の文章を段落ごと抜き出し、出典を示さずに自分の考察として発表する行為は、ひょう窃(盗用、plagiarism)にあたります。研究不正の中核は捏造(存在しないデータを作る)、改ざん(データや過程を事実と異なるものに変える)、盗用の3つでFFPと呼ばれ、文部科学省のガイドラインで特定不正行為とされています。このほか、同じ成果を重複して発表する二重投稿、実質的な貢献のない人を著者に加えるギフト・オーサーシップ、貢献者を外すゴースト・オーサーシップなども不適切な行為として区別しておく必要があります。他者の知見を使うときは引用部分を明示するか自分の言葉で要約し、必ず出典を示すことが原則です。学会発表や論文執筆は研修医にとって身近な機会であり、正しい引用の作法と研究倫理を早くから身につけることが、医師としての信頼の基盤になります。
解答・解説
正解はdです
研究・発表における不正行為(研究不正)の用語を正しく理解しているかを問う問題である。 本問の研修医が行ったことを整理すると、①症例の記述・診断手順・治療内容は自分で書いており、データを偽ったり作り出したりはしていない、②考察部分では、集めた論文から段落単位で文章をそのまま抜き出している、③その際に引用元を参考文献として示さず、自分の考察として記述している、という3点になる。問題となるのは②と③であり、他人の文章やアイデアを出典を示さずに自分のものとして用いる行為は「ひょう窃(盗用)」にあたる。 研究不正の中核は、捏造(Fabrication)、改ざん(Falsification)、盗用(Plagiarism)の3つで、頭文字をとってFFPと呼ばれる。文部科学省の「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(2014年)でも、この3つが「特定不正行為」と定められている。本問ではデータの作成や変更は行われていないので捏造・改ざん(偽造)には該当せず、投稿の重複や著者の記載の問題もないので二重投稿・ギフト・オーサーシップにも該当しない。 なお、学会の口頭発表ではスライドや原稿に論文ほど細かく出典を付けないこともあるが、他者の文章を段落ごと写して自分の考察として発表することが倫理的に許されないことに変わりはない。他者の知見を用いる場合は、自分の言葉で要約したうえで出典を明示する必要がある。
選択肢考察
- ×a. 偽造
該当しない。偽造とは本物に似せて偽物を作ることであり、研究の文脈では、データや記録・資料を事実と異なるものに作り変えること(改ざん)や、存在しないデータを作ること(捏造)と近い意味で用いられる。本問の研修医は症例のデータや経過を偽ったわけではなく、他人の文章を無断で転用しているだけであるため、偽造にはあたらない。
- ×b. 捏造
該当しない。捏造(fabrication)とは、実際には存在しないデータや研究結果を作り上げることである。例えば、行っていない実験や調査の結果を架空に記載する、存在しない症例を報告するといった行為がこれにあたる。本問では症例の記述・診断・治療は実際の内容に基づいて書かれており、架空の事実を作り出してはいないので捏造ではない。
- ×c. 二重投稿
該当しない。二重投稿とは、同じ(または実質的に同じ)内容の論文を、複数の学術雑誌に同時に投稿したり、既に発表した内容を新しい成果であるかのように再度投稿したりすることである。同一の成果が重複して発表されると、業績の水増しやメタアナリシスでの重複計上などの問題を生じる。本問は一つの学会発表の原稿作成の問題であり、同じ成果を重複して発表しているわけではない。
- ○d. ひょう窃(盗用)
該当する。ひょう窃(盗用、plagiarism)とは、他の研究者のアイデア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文や用語などを、その研究者の了解や適切な出典表示なしに自分のものとして流用することである。本問の研修医は、他の論文の考察から段落ごと文章を抜き出し、参考文献として示さずに自分の考察として記述しているため、まさにひょう窃にあたる。他者の文章をそのまま使う場合は引用であることを明示し、内容を参考にする場合は自分の言葉で書いたうえで出典を示さなければならない。
- ×e. ギフト・オーサーシップ
該当しない。ギフト・オーサーシップ(名誉著者)とは、研究の立案・実施・解析や論文の執筆などに実質的に関与していない人物を、上司であるなどの理由で著者に加えることである。反対に、実質的に貢献した人物を著者から外すことはゴースト・オーサーシップと呼ばれる。本問では著者の記載方法は問題になっていない。
研究不正の分類
・特定不正行為(FFP):捏造(Fabrication:存在しないデータ・結果を作る)、改ざん(Falsification:資料・機器・過程を変更したり、データや結果を真正でないものに加工したりする)、盗用(Plagiarism:他者のアイデアや文章などを了解・出典表示なく流用する)。文部科学省のガイドラインで特定不正行為とされている。 ・その他の不適切な行為:二重投稿、不適切なオーサーシップ(ギフト・オーサーシップ、ゴースト・オーサーシップ)、利益相反の不開示、研究倫理審査を経ない研究の実施など。
正しい引用のしかた
他者の文章をそのまま用いる場合は、引用部分を明確に区別し(かぎ括弧で囲むなど)、出典を示す。引用はあくまで自分の論述の補助にとどめ、主従関係を明確にする。内容を参考にする場合も、自分の言葉で要約・言い換えを行い、出典を明示する。
症例報告の考察の組み立て方
考察では、本症例のどこが稀で教育的価値があるのかを明確にし、関連する既報を検索して本症例と比較し、診断や治療で得られた教訓を自分の言葉でまとめる。既報の内容を用いる場合は、必ず参考文献として挙げる。
POINT
・研究不正の中核はFFP:捏造(Fabrication)、改ざん(Falsification)、盗用(Plagiarism)。 ・他人の文章やアイデアを出典を示さずに自分のものとして使う行為はひょう窃(盗用)。 ・二重投稿は同じ成果を重複して発表すること、ギフト・オーサーシップは貢献のない人物を著者に加えること。 ・学会の口頭発表であっても、他者の文章の無断転用は許されない。
