StudyMed医師国家試験

日本・アメリカ・中国―乳児死亡率で読み解く「国の健康力」

第107回医師国家試験 E問題 第67問

国試問題にチャレンジ

第107回 E問題 第67問

アメリカ,中国および日本の2010年の乳児死亡率を低い順に左から示しているのはどれか。

  1. a.アメリカ < 中国  < 日本
  2. b.アメリカ < 日本  < 中国
  3. c.中国  < アメリカ < 日本
  4. d.中国  < 日本  < アメリカ
  5. e.日本  < アメリカ < 中国
  6. f.日本  < 中国  < アメリカ

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は乳児死亡率の国際比較の問題だ。数値を正確に覚えているかよりも、「この指標が何を映しているのか」と「2010年当時の各国の状況」をイメージできるかが問われている。まずは乳児死亡率の定義から確認しよう。
医学生医学生
生後1年未満で亡くなった子どもの数を、出生千あたりで表した値ですよね。公衆衛生学の講義で、分母が出生数だと何度も強調されました。
ドクタードクター
その通り。乳児は外部環境の影響をとても受けやすいから、この指標は母子保健だけでなく、衛生状態、栄養、医療提供体制、経済状況まで総合的に反映する。だから国の健康水準を比べる代表的な物差しとして使われるんだ。
医学生医学生
日本は世界でもトップクラスに低いと習いました。そこは自信があります。
ドクタードクター
そう、2010年の日本の乳児死亡率は出生千対2.3で、世界最低水準のグループに入っている。だから日本を最も高い位置に置いている並びや、中国より上に置く並びはまず外れる。問題はアメリカと中国の順番だね。
医学生医学生
正直そこで迷いました。中国は経済成長が著しいし、アメリカは格差社会と聞くので、もしかしたらアメリカのほうが高いのかな、と。
ドクタードクター
その迷いは自然だよ。確かにアメリカは先進国の中では乳児死亡率が比較的高く、2010年でおおよそ6前後、日本の2倍以上だ。背景には人種や所得による格差、医療保険へのアクセスの不均等、早産や低出生体重児の多さがあると言われている。
医学生医学生
じゃあ中国はそれよりもさらに高かったんですか。
ドクタードクター
当時の中国は国際機関の推計で十数程度、およそ13〜16前後とされていた。急速に改善してはいたけれど、都市と農村の医療格差が大きく、日米と比べるとまだ明らかに高かったんだ。だから低い順に並べると、日本、アメリカ、中国となる。
医学生医学生
なるほど。アメリカと日本を逆にした並びは、「先進国同士なら同じくらい」と思い込むと引っかかりそうですね。
ドクタードクター
そう、アメリカが日本より低いという並びは誤り。また中国とアメリカを入れ替えた並びも、2010年時点の実態とは逆だ。中国を一番低くしている並びは論外だね。細かい数値を覚えていなくても、日本が最低水準であること、当時の中国は地域格差が大きく先進国水準に届いていなかったこと、この2点を押さえれば正解にたどり着ける。
医学生医学生
日本がここまで低くなった理由は何でしょうか。戦後すぐは高かったと聞いた気がします。
ドクタードクター
戦後直後は出生千対で60を超えていたんだ。それが生活水準の向上、上下水道などの衛生環境の改善、感染症対策、そして周産期・新生児医療の進歩で急速に下がった。母子健康手帳や乳幼児健診といった母子保健施策も大きな役割を果たしている。
医学生医学生
小児科の臨床実習でNICUを見学したとき、超低出生体重児が元気に退院していくと聞いて驚きました。
ドクタードクター
まさにそれが日本の強みの一つだね。今の日本の乳児死亡は新生児期の死亡が大きな割合を占めていて、主な死因は先天奇形・変形及び染色体異常や、周産期に特異的な呼吸障害などだ。感染症で亡くなる乳児が多かった時代とは、死因の構造そのものが変わっているんだ。
医学生医学生
関連する指標も整理しておきたいです。新生児死亡と周産期死亡がいつもごちゃごちゃになります。
ドクタードクター
CBTでも国試でも頻出だから整理しよう。新生児死亡は生後4週、つまり28日未満の死亡で、早期新生児死亡は生後1週未満。周産期死亡は妊娠満22週以後の死産と早期新生児死亡を合わせたもので、分母は出生数に妊娠満22週以後の死産数を加えたものになる。妊産婦死亡率は出産10万対で表すのが一般的だ。
医学生医学生
周産期死亡率だけ分母に死産が入るんですね。そこが混乱の原因でした。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。最後に注意点を一つ。国際比較は年次によって順位が変わりうる。中国はその後も乳児死亡率が大きく下がっていて、統計によってはアメリカと同程度とする報告もある。だから問題で指定された年次を意識して答えることが大切だよ。

まとめ

乳児死亡率は生後1年未満の死亡数を出生千対で表した指標で、衛生・栄養・医療・経済状況を総合的に反映するため、国の健康水準の国際比較に広く用いられます。2010年の値は日本が2.3と世界最低水準、アメリカが約6、中国が十数程度であり、低い順に日本<アメリカ<中国となります。アメリカは先進国の中では社会経済的格差や早産の多さから比較的高く、中国は当時、都市と農村の医療格差が大きく日米より明らかに高い水準でした。日本の低さは衛生環境の改善や周産期・新生児医療の進歩、母子健康手帳や乳幼児健診などの施策に支えられています。新生児死亡・早期新生児死亡・周産期死亡の定義や分母の違いもあわせて整理し、年次によって国際的な順位が変わりうることを意識して統計を読む姿勢が重要です。

解答・解説

正解はeです

問われているテーマ

乳児死亡率の国際比較である。乳児死亡率とは、生後1年未満で死亡した児の数を、同じ年の出生数1,000あたりで表した値(出生千対)である。乳児は外部環境の影響を強く受けるため、この指標は母子保健の水準だけでなく、その国の衛生状態・栄養・医療提供体制・経済状況を総合的に反映する代表的な健康指標とされる。

正解を導く考え方

2010年前後の値(出生千対)はおおよそ次のとおりである。 ・日本:2.3(人口動態統計による実数)。世界でも最低水準のグループに属する。 ・アメリカ:約6。先進国の中では比較的高く、人種・所得による格差、医療保険へのアクセスの不均等、早産・低出生体重児の割合の高さなどが背景に挙げられる。 ・中国:十数程度(国際機関の推計で13〜16前後)。急速に改善していたものの、都市と農村の医療格差が大きく、当時は日米より明らかに高かった。 したがって、低い順に並べると日本<アメリカ<中国となる。 細かい数値を覚えていなくても、(1)日本の乳児死亡率が世界トップクラスに低いこと、(2)2010年当時の中国は医療・衛生の地域格差が大きく先進国の水準には達していなかったこと、の2点から、日本が最も低く中国が最も高い並びを選ぶことができる。

選択肢考察

  1. ×a.  アメリカ < 中国  < 日本

    日本を最も高いとしている点が誤りである。日本の乳児死亡率は2010年に2.3(出生千対)で、世界で最も低い国々の一つである。また中国がアメリカより低いという並びも、当時の実態(中国は十数、アメリカは約6)と逆である。

  2. ×b.  アメリカ < 日本  < 中国

    中国を最も高いとする点は合っているが、日本とアメリカの順序が逆である。アメリカの乳児死亡率は約6で、日本(2.3)の2倍以上であり、先進国の中では高い部類に入る。

  3. ×c.  中国  < アメリカ < 日本

    実際の順序(日本<アメリカ<中国)をちょうど逆にした並びであり誤りである。日本が最も低く、中国が最も高い。

  4. ×d.  中国  < 日本  < アメリカ

    中国を最も低いとしている点が誤りである。2010年当時の中国の乳児死亡率は十数(出生千対)で、日本(2.3)やアメリカ(約6)を大きく上回っていた。

  5. ○e.  日本  < アメリカ < 中国

    2010年の乳児死亡率は日本2.3、アメリカ約6、中国十数(いずれも出生千対)であり、低い順に日本<アメリカ<中国となる。日本は周産期・新生児医療の充実や母子健康手帳制度・乳幼児健診などの母子保健施策により世界最低水準を保っている。アメリカは先進国ではあるが社会経済的格差や早産の多さから日本より高く、中国は当時、農村部を中心に医療・衛生環境の整備が途上であったため3か国で最も高かった。

  6. ×f.  日本  < 中国  < アメリカ

    日本を最も低いとする点は正しいが、中国とアメリカの順序が逆である。2010年時点では中国(十数)はアメリカ(約6)よりかなり高かった。

母子保健に関する主な指標の定義

・乳児死亡率=年間の生後1年未満の死亡数 ÷ 年間出生数 × 1,000 ・新生児死亡率=年間の生後4週(28日)未満の死亡数 ÷ 年間出生数 × 1,000 ・早期新生児死亡:生後1週(7日)未満の死亡 ・周産期死亡率=(妊娠満22週以後の死産数+早期新生児死亡数)÷(出生数+妊娠満22週以後の死産数)× 1,000 ・妊産婦死亡率:出産(出生+死産)10万対で表すのが一般的である。

日本の乳児死亡率の推移

日本の乳児死亡率は第二次世界大戦直後には出生千対で60を超えていたが、生活水準の向上、衛生環境の改善、感染症対策、周産期・新生児医療の進歩によって急速に低下し、2010年には2.3、近年は2を下回る水準にある。乳児死亡のうち新生児期の死亡が占める割合が大きく、主な死因は先天奇形・変形及び染色体異常、周産期に特異的な呼吸障害等である。

国際比較の見方

乳児死亡率は国の健康水準・社会経済状態を反映する指標として国際比較によく用いられる。先進国の中でもアメリカは比較的高い。中国はその後も急速に低下しており、国際比較では年次によって順位が変わりうるため、設問で指定された年次の状況を意識することが大切である。

POINT

・乳児死亡率=生後1年未満の死亡数/出生数(出生千対)。国の衛生・医療・経済水準を反映する代表的指標である。 ・日本の乳児死亡率は世界最低水準(2010年に2.3)。 ・2010年の比較では日本<アメリカ(約6)<中国(十数)。 ・新生児死亡は生後4週未満、早期新生児死亡は生後1週未満、周産期死亡は妊娠満22週以後の死産+早期新生児死亡。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。