StudyMed医師国家試験

「静」の国勢調査、「動」の人口動態―人口統計の2本柱を見分ける

第107回医師国家試験 E問題 第6問

国試問題にチャレンジ

第107回 E問題 第6問

国勢調査について誤っているのはどれか。

  1. a.全数調査である。
  2. b.自記式で行われる。
  3. c.外国人も対象となる。
  4. d.人口動態調査である。
  5. e.5年に1度実施される。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は国勢調査の性格を問う問題だ。「誤っているもの」を選ぶ形式なので、国勢調査がどんな調査なのか、そして似た名前の統計とどう違うのかを整理するのが着眼点になる。まず、人口統計が大きく2種類に分けられることは覚えているかな。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、人口静態統計と人口動態統計があると習いました。でも正直、どっちがどっちか混ざりがちです。
ドクタードクター
イメージで覚えるといいよ。静態は「ある一瞬の写真」。一時点で人口を切り取って、人数や性・年齢・世帯構成などを把握する。動態は「一定期間の動画」。1年間に起こった出生・死亡・死産・婚姻・離婚という人口の出入りを数えるんだ。
医学生医学生
写真と動画ですか。だとすると、10月1日時点の人口を数える国勢調査は写真のほう、静態統計ですね。
ドクタードクター
その通り。国勢調査は人口静態統計の代表で、総務省統計局が統計法に基づいて行う。一方の人口動態調査は厚生労働省の所管で、市区町村に出された出生届や死亡届などをもとに作る別の統計だ。だから「国勢調査は人口動態調査である」という記述が誤り、これが正解になる。
医学生医学生
名前に「人口」が付くので、なんとなく同じ仲間に思えてしまいました。所管の省庁も違うんですね。
ドクタードクター
そこが引っかけどころだね。「静態=国勢調査=総務省」「動態=人口動態調査=厚生労働省」とセットで押さえよう。では残りの記述も確認していこう。国勢調査は標本調査かな、全数調査かな。
医学生医学生
CBTの勉強で、国勢調査は全員が対象の悉皆調査だと覚えました。患者調査や国民生活基礎調査は標本調査ですよね。
ドクタードクター
よく整理できているね。国勢調査は日本に住むすべての人と世帯が対象の全数調査で、だからこそ死亡率や出生率を計算するときの分母人口や、標本調査を設計する基礎として使われる。次に調査の方法はどうだろう。
医学生医学生
実家に調査員の方が調査票を持ってきて、家族が自分で書いていた気がします。
ドクタードクター
そう、世帯の人が自分で記入する自記式だ。今はインターネットでのオンライン回答や郵送での提出もできる。調査員が聞き取って書き込む他記式ではない、という点を覚えておこう。
医学生医学生
外国人も対象になるというのは少し意外でした。国の調査なので日本国籍の人だけかと思っていました。
ドクタードクター
そう考える人は多いね。でも国勢調査は国籍を問わず、日本に常住している人、つまり3か月以上住んでいるか住む予定の人が対象なんだ。日本で暮らす人の実態を把握するのが目的だから、外国人を除いてしまうと地域の人口や行政需要を正しくつかめない。例外は外交官や外国軍隊の軍人とその家族くらいだね。
医学生医学生
実施間隔は5年ごとでしたよね。2020年に行われたのを覚えています。
ドクタードクター
正解。1920年が第1回で、以後は西暦の末尾が0と5の年の10月1日現在で実施される。末尾0の年は項目の多い大規模調査、末尾5の年は項目を絞った簡易調査になる。国勢調査のない年は、国勢調査人口を基準に出生・死亡・移動を加減した人口推計が総務省から毎年出されるんだ。
医学生医学生
なるほど。じゃあ、ほかの保健統計の周期もまとめて覚えたほうがよさそうですね。
ドクタードクター
試験では頻出だからね。患者調査は3年ごとで医療施設が対象の標本調査、国民生活基礎調査は3年ごとに大規模調査を行う世帯対象の標本調査、国民健康・栄養調査は健康増進法に基づき毎年行う標本調査だ。いずれも厚生労働省の所管だね。それから国勢調査は統計法で基幹統計に指定されていて、回答は義務とされている。
医学生医学生
国勢調査の結果は、医療の現場ではどう役立っているんですか。
ドクタードクター
たとえば地域の高齢化率や世帯構成を知ることは、病床の整備や在宅医療・介護の計画を立てる基礎になる。将来推計人口の基準人口にもなるし、衆議院の選挙区割りや地方交付税の算定にも使われる。地域医療を考えるとき、まず「その地域にどんな人が何人住んでいるか」がわからなければ始まらないんだ。
医学生医学生
統計は暗記ものだと思っていましたが、写真と動画の違いで考えると筋が通りますね。
ドクタードクター
その感覚が大事だよ。静態で分母をつくり、動態で分子を数えて率を出す。2つの統計は対立するものではなく、組み合わせて使うものなんだ。

まとめ

人口統計は、一時点の人口の大きさと構成を把握する人口静態統計と、一定期間の出生・死亡・死産・婚姻・離婚を把握する人口動態統計に大別されます。国勢調査は人口静態統計の代表で、総務省が5年ごと(西暦末尾0・5の年)の10月1日現在で、国籍を問わず日本に常住するすべての人を対象に自記式の全数調査として実施します。一方、人口動態調査は厚生労働省が届出をもとに毎年集計する別の統計であり、国勢調査を人口動態調査とする記述は誤りです。国勢調査の人口は死亡率や出生率の分母、将来推計人口の基準などとして使われ、静態と動態を組み合わせることで地域の健康指標が算出されます。患者調査や国民生活基礎調査などの周期・対象とあわせて整理しておくと、公衆衛生の統計問題に強くなります。

解答・解説

正解はdです

国勢調査の性格を問う一般問題で、「誤っているもの」を選ぶ形式である。 人口統計は大きく2種類に分けられる。1つは、ある一時点で人口を切り取り、その大きさや構成(性・年齢・配偶関係・就業状態・世帯構成など)を把握する人口静態統計である。もう1つは、一定期間内に起こった人口の変動(出生・死亡・死産・婚姻・離婚)を把握する人口動態統計である。 国勢調査は前者の代表であり、総務省(統計局)が統計法に基づいて、5年ごとの10月1日午前0時現在の状態について、日本に住むすべての人と世帯を対象に行う全数調査である。調査票は原則として世帯が自ら記入(またはインターネットで回答)する自記式である。 一方、人口動態調査は厚生労働省が所管し、市区町村に出された出生届・死亡届などの届出をもとに作成される統計で、国勢調査とはまったく別の調査である。 「静態=国勢調査(総務省)」「動態=人口動態調査(厚生労働省)」という対応を確実に押さえておけば、誤りの選択肢はすぐに判別できる。

選択肢考察

  1. ×a.  全数調査である。

    記述は正しい。国勢調査は標本(サンプル)を抽出して行う調査ではなく、調査時点で日本国内に住むすべての人と世帯を対象とする全数調査(悉皆調査)である。国内の人口・世帯の実態を最も正確に把握できる統計であり、各種の率を算出する際の分母人口や、標本調査の設計の基礎として用いられる。

  2. ×b.  自記式で行われる。

    記述は正しい。国勢調査では調査員が各世帯に調査票を配布し、世帯の人が自分で記入する自記式(自計式)がとられている。記入後の調査票は調査員が回収するほか、郵送による提出や、インターネットによるオンライン回答も可能になっている。調査員が聞き取って記入する他記式ではない。

  3. ×c.  外国人も対象となる。

    記述は正しい。国勢調査は国籍を問わず、日本国内に常住している人(調査時点で3か月以上住んでいる、または住むことになっている人)を対象とする。したがって日本に住む外国人も含まれる。ただし外国政府の外交使節団・領事機関の構成員とその家族、外国軍隊の軍人・軍属とその家族は対象から除かれる。

  4. ○d.  人口動態調査である。

    誤っており、これが正解である。国勢調査は一時点の人口の大きさと構成を調べる人口静態統計である。人口動態調査は厚生労働省が所管する別の調査で、戸籍法などに基づいて市区町村に届け出られた出生・死亡・婚姻・離婚の届出と、死産の届出に関する規程による死産届をもとに、出生票・死亡票・死産票・婚姻票・離婚票の5種類の調査票を作成して集計するものである。

  5. ×e.  5年に1度実施される。

    記述は正しい。国勢調査は1920年(大正9年)に第1回が行われ、以後原則として5年ごとに、西暦の末尾が0と5の年の10月1日現在で実施されている。末尾が0の年は調査項目の多い大規模調査、末尾が5の年は項目を絞った簡易調査として行われる。

人口静態統計と人口動態統計の比較

・人口静態統計  代表:国勢調査  所管:総務省(統計局)  内容:一時点(10月1日現在)の人口・世帯の規模と構成  方法:全数調査、自記式、5年ごと  国勢調査のない年は、国勢調査人口を基準に出生・死亡・移動を加減した人口推計(毎年10月1日現在)が総務省から公表される。 ・人口動態統計  代表:人口動態調査  所管:厚生労働省  内容:1年間の出生・死亡・死産・婚姻・離婚の件数と内訳  方法:届出に基づく全数の集計、毎年(月報・年報)

国勢調査の利用

・衆議院小選挙区の区割り、地方交付税の算定、各種行政計画の策定などの基礎資料 ・死亡率・出生率など人口動態統計の率を計算する際の分母 ・将来推計人口(国立社会保障・人口問題研究所)の基準人口 ・民間企業の事業計画や学術研究 国勢調査は統計法で「基幹統計」に指定されており、回答は義務とされている。

その他の主な保健統計

・患者調査:厚生労働省、3年ごと、医療施設を対象とした標本調査 ・国民生活基礎調査:厚生労働省、3年ごとに大規模調査、世帯を対象とした標本調査 ・国民健康・栄養調査:厚生労働省、毎年、健康増進法に基づく標本調査

POINT

・国勢調査は人口静態統計である(人口動態統計ではない)。 ・総務省が5年ごと(西暦末尾0・5の年)の10月1日現在で実施する。 ・国籍を問わず日本に常住するすべての人を対象とする全数調査で、自記式。 ・人口動態統計は厚生労働省所管で、出生・死亡・死産・婚姻・離婚の届出に基づく。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。