StudyMed医師国家試験

誰が認め、誰が指定するのか―救急医療体制は「主体」と「階層」と「動向」で解ける

第107回医師国家試験 E問題 第4問

国試問題にチャレンジ

第107回 E問題 第4問

救急医療について正しいのはどれか。

  1. a.救急救命士は知事が認定する資格である。
  2. b.救命救急センターは総務省消防庁が指定する。
  3. c.救急指定病院数は最近10年間で増加している。
  4. d.休日夜間急患センターの多くは地域医師会が協力している。
  5. e.ドクターヘリを運用する都道府県数は最近5年間で減少している。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は救急医療の制度と最近の動きを問う公衆衛生の問題だ。解くカギは3つ。資格や施設を「誰が」認めたり指定したりしているのかという主体、初期・2次・3次という救急医療の階層、そして救急病院やドクターヘリが増えているのか減っているのかという動向だよ。まずは救急救命士から考えてみようか。
医学生医学生
救急救命士は消防の救急隊員がなるイメージなので、都道府県知事が認める資格なのかなと思いました。
ドクタードクター
そう感じる人は多いね。でも救急救命士は1991年の救急救命士法で定められた国家資格で、国家試験に合格すると厚生労働大臣が免許を与えるんだ。医師や看護師と同じく、国の免許だと考えていい。
医学生医学生
知事免許の資格もありましたよね。公衆衛生の講義で准看護師がそうだと習いました。
ドクタードクター
その通り。准看護師は知事免許だから、ひっかけとして混同しやすいところだね。ちなみに救急救命士は、医師の具体的な指示、つまりオンラインメディカルコントロールの下で、心肺停止患者への器具を使った気道確保や静脈路確保と輸液、アドレナリン投与などを行えるんだ。
医学生医学生
次に救命救急センターですが、救急車を運用しているのが消防なので、消防庁が指定してもおかしくない気がします。
ドクタードクター
ここも主体の取り違えがポイントだ。総務省消防庁が所管しているのは、救急隊による搬送のほうなんだ。救命救急センターは重篤な患者を24時間受け入れる3次救急の医療機関で、都道府県が医療計画に基づいて整備し、指定する。医療機関の指定は消防の役割ではないんだよ。
医学生医学生
搬送は消防、病院の体制づくりは都道府県と分けて覚えればいいんですね。高度救命救急センターも同じですか。
ドクタードクター
そう。高度救命救急センターは、救命救急センターのうち広範囲熱傷や指肢切断、急性中毒などの特殊な疾病にも対応できる施設で、これも都道府県が指定する運用になっている。では階層の話をしよう。初期、2次、3次救急の違いは説明できるかな。
医学生医学生
初期は入院不要の軽症、2次は入院が必要な中等症、3次は命に関わる重篤な患者ですよね。臨床実習で救命救急センターを回ったとき、3次の患者さんは心肺停止や多発外傷ばかりでした。
ドクタードクター
完璧だ。そして初期救急の代表が休日夜間急患センターと在宅当番医制。休日夜間急患センターの多くは市町村が設置して、地域医師会に所属する開業医の先生たちが交代で出務することで運営されている。医師会に運営を委託している施設も多い。だから、地域医師会が協力しているという記述が正しいんだ。
医学生医学生
在宅当番医制も、医師会の診療所が持ち回りで休日に開けている仕組みでしたね。地域医療実習でお世話になった開業医の先生も、月に一度は急患センターに出ていると話していました。
ドクタードクター
まさにそういう支えで初期救急は成り立っているんだ。残りは動向の2つ。救急指定病院の数はどうなっていると思う?
医学生医学生
高齢化で救急搬送は増えていると聞くので、救急病院も増えているのでは……。
ドクタードクター
そこが落とし穴だね。搬送件数は確かに増えているけれど、救急告示病院、いわゆる救急指定病院は減少傾向なんだ。救急を担う勤務医の不足、夜間休日の負担、診療報酬上の採算性の悪さなどから、指定を返上する病院が相次いできた。需要は増えるのに受け入れ先は減る、だから受け入れ困難事案が社会問題になっているんだよ。
医学生医学生
需要と供給が逆向きに動いているんですね。ではドクターヘリはどうですか。
ドクタードクター
こちらは逆に増加の一途だ。2001年度に国の事業として本格運航が始まり、2007年のドクターヘリ特別措置法で財政支援が整うと、導入する道府県が急増した。今ではほぼすべての都道府県で運航されていて、減少したことはない。医師が現場に飛んで治療開始を早められるのが最大の利点だね。
医学生医学生
救急病院は減少、ドクターヘリは増加、休日夜間急患センターは医師会が支える初期救急、と整理できました。
ドクタードクター
いいまとめだ。最後に周辺知識も押さえておこう。救急医療は医療計画の中で、5疾病6事業の「事業」の一つに位置づけられていて、だからこそ救急医療施設の整備は都道府県の仕事になる。また救急搬送人員の半数以上は高齢者が占めている。臨床に出ると、軽症患者が3次の施設に集中したり、受け入れ先がなかなか決まらなかったりする現場に必ず出会う。階層構造を理解しておくと、患者さんや家族にどこを受診すればよいかを説明するときにも役立つよ。

まとめ

救急医療の制度問題は、「誰が認め・指定するか」「どの階層か」「増えているか減っているか」の3軸で整理すると解きやすくなります。救急救命士は厚生労働大臣が免許を与える国家資格であり、救命救急センターは医療計画に基づいて都道府県が指定し、総務省消防庁は救急隊による搬送を所管します。休日夜間急患センターや在宅当番医制は初期救急を担い、多くは市町村と地域医師会の協力によって運営されています。一方、救急告示病院は医師不足や採算性の問題から減少傾向にあり、ドクターヘリは特別措置法による財政支援を背景にほぼ全都道府県へ広がりました。こうした制度と動向の理解は、受け入れ困難事案など救急現場の課題を考え、患者に適切な受診先を案内するための基礎になります。

解答・解説

正解はdです

わが国の救急医療体制に関する制度と動向を問う一般問題である。押さえるべき軸は3つある。 1つ目は「誰が資格を与え、誰が施設を指定するか」という制度上の主体である。医療職の国家資格は厚生労働大臣が免許を与え、医療計画に基づく救急医療施設(救命救急センターなど)は都道府県が整備・指定する。総務省消防庁は救急搬送(消防機関の救急隊)を所管する官庁であり、医療機関の指定は行わない。 2つ目は救急医療の階層構造である。初期(1次)救急は軽症の外来患者、2次救急は入院を要する中等症患者、3次救急は生命に危険が及ぶ重篤患者を担当する。休日夜間急患センターや在宅当番医制は1次救急に位置づけられ、地域の開業医を中心とする医師会の協力で成り立っている。 3つ目は最近の動向である。救急告示病院(いわゆる救急指定病院)は医師不足や採算性の問題から減少傾向にあり、一方でドクターヘリは法整備と財政支援を背景に配備が急速に拡大してきた。 これらを踏まえると、制度的にも実態的にも正しい記述は休日夜間急患センターと地域医師会の関係を述べたものである。

選択肢考察

  1. ×a.  救急救命士は知事が認定する資格である。

    誤り。救急救命士は1991年制定の救急救命士法に基づく国家資格であり、国家試験に合格した者に厚生労働大臣が免許を与える。知事が免許を与える資格ではない(准看護師のように知事免許の資格もあるので混同しないこと)。救急救命士は医師の具体的指示(オンラインメディカルコントロール)の下で、心肺停止患者への器具を用いた気道確保、静脈路確保と輸液、アドレナリン投与などの救急救命処置を行うことができる。

  2. ×b.  救命救急センターは総務省消防庁が指定する。

    誤り。救命救急センターは3次救急医療を担う施設で、都道府県が医療計画に基づいて整備し指定する。救命救急センターのうち、広範囲熱傷・指肢切断・急性中毒などの特殊疾病にも対応できるものが高度救命救急センターである。総務省消防庁は救急隊による搬送体制を所管しており、医療機関を指定する立場にはない。

  3. ×c.  救急指定病院数は最近10年間で増加している。

    誤り。救急指定病院(救急病院等を定める省令に基づき都道府県知事が告示する救急告示病院・診療所)は、医師、特に救急を担う勤務医の不足、夜間休日診療の負担、診療報酬上の採算性の悪さなどから指定を返上する施設が相次ぎ、長期的に減少傾向にある。一方で救急搬送件数は高齢化に伴って増加しており、受け入れ先の確保が課題となっている。

  4. ○d.  休日夜間急患センターの多くは地域医師会が協力している。

    正しい。休日夜間急患センターは、休日や夜間に軽症患者を外来で診る初期(1次)救急医療施設であり、多くは市町村が設置し、地域医師会に所属する開業医などが交代で出務することで運営されている。医師会への運営委託の形をとる施設も多い。同じく1次救急を担う在宅当番医制も、医師会員の診療所が持ち回りで休日診療を行う仕組みである。

  5. ×e.  ドクターヘリを運用する都道府県数は最近5年間で減少している。

    誤り。ドクターヘリは救急医療用の医療機器を装備し、医師・看護師が搭乗して現場へ向かうヘリコプターである。2001年度に国の事業として本格運航が始まり、2007年にいわゆるドクターヘリ特別措置法(救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法)が施行されて財政支援が整うと、導入する道府県が急増した。現在ではほぼすべての都道府県で運航されており、減少したことはない。

救急医療体制の階層

・初期(1次)救急:入院不要の軽症患者を外来で診療。休日夜間急患センター、在宅当番医制。市町村と地域医師会が中心。 ・2次救急:入院や手術を要する中等症患者を担当。病院群輪番制病院、共同利用型病院。 ・3次救急:重篤な救急患者(心肺停止、多発外傷、重症熱傷など)を24時間体制で受け入れる。救命救急センター、高度救命救急センター。都道府県が指定。

関連する主体の整理

・救急救命士の免許:厚生労働大臣 ・救命救急センターの指定:都道府県(医療計画の救急医療に位置づけ) ・救急告示病院の告示:都道府県知事 ・救急隊による搬送:市町村の消防機関(国レベルでは総務省消防庁)

救急医療の現状

・救急搬送人員は高齢化に伴い増加傾向で、搬送者の半数以上を高齢者が占める。 ・救急告示病院は減少傾向で、受け入れ困難事案が問題となっている。 ・ドクターヘリは全国で配備が進み、現場への医師派遣による治療開始時間の短縮が図られている。 ・医療計画では救急医療は5疾病6事業(2024年度以降)の「事業」の一つとして位置づけられている。

POINT

・救急救命士は国家資格で、厚生労働大臣が免許を与える。 ・救命救急センター(3次救急)は都道府県が指定する。消防庁ではない。 ・休日夜間急患センターは1次救急で、地域医師会の協力で運営される。 ・救急指定病院は減少傾向、ドクターヘリは増加傾向。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。