StudyMed医師国家試験

病棟を横断する「食べる」の専門家集団―NSTの対象と役割を押さえる

第107回医師国家試験 B問題 第27問

国試問題にチャレンジ

第107回 B問題 第27問

栄養サポートチーム〈NST〉について誤っているのはどれか。

  1. a.医師の参加が必要である。
  2. b.外来患者が主な対象である。
  3. c.診療科を越えて栄養管理を行う。
  4. d.院内感染対策チームとも連携する。
  5. e.終末期癌患者の栄養管理にも関与する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はチーム医療の一つ、栄養サポートチーム、通称NSTについての問題だ。「誤っているもの」を選ぶ形式なので、NSTが「誰で構成され」「誰を対象に」「どう動くのか」という基本像を描けるかがポイントになるよ。
医学生医学生
NSTは名前は知っていますが、管理栄養士さんが中心のチームというイメージで、医師が必ず入るのかは自信がないです。
ドクタードクター
そこは押さえておきたいところだね。NSTは医師・看護師・薬剤師・管理栄養士を中心とした多職種チームで、輸液や経腸栄養剤の処方など、栄養療法の方針決定には医師の関与が欠かせない。診療報酬上の栄養サポートチーム加算でも、所定の研修を修了した常勤医師がチームに入ることが求められているんだ。だから医師の参加が必要という記述は正しい。
医学生医学生
臨床実習の病棟で、医師や薬剤師、言語聴覚士の方まで一緒に回診しているのを見たことがあります。あれがNST回診だったんですね。
ドクタードクター
そうだね。臨床検査技師、理学療法士、歯科医師・歯科衛生士なども加わることがある。では、そのNST回診で回っていたのはどんな患者さんだった?
医学生医学生
病棟なので入院患者さんでした。……あ、外来患者が主な対象、というのはおかしいですね。
ドクタードクター
その通り、それが今回の正解だ。NSTの活動の中心は入院患者なんだ。入院中は病気そのものや手術・化学療法の侵襲、絶食期間、嚥下障害などで低栄養に陥りやすい。入院時に栄養スクリーニングをしてリスクのある人を拾い上げ、必要エネルギー量や投与経路を検討して、効果を再評価していく。
医学生医学生
低栄養だと、傷の治りが遅くなったり感染しやすくなったりしますよね。
ドクタードクター
そう。創傷治癒の遅延、感染症や褥瘡の増加、在院日数の延長、さらには死亡率の上昇にもつながる。退院後の在宅栄養への橋渡しに関わることはあっても、主な対象は外来ではなく入院患者だと覚えておこう。次に、「診療科を越えて栄養管理を行う」はどうかな。
医学生医学生
特定の科に所属しているのではなく、病院全体で動くチームなので正しいと思います。
ドクタードクター
正解。複数の疾患を抱えていくつもの科がかかわる患者でも、NSTが横断的に関わることで一貫した栄養管理ができる。では、感染対策チームとの連携はなぜ必要だと思う?
医学生医学生
栄養状態が良いほうが免疫力が保たれるから、でしょうか。
ドクタードクター
それが一つ。もう一つは中心静脈栄養だね。カテーテル関連血流感染症のリスクがあるから、不要な静脈栄養を減らして経腸栄養へ移すことは、それ自体が感染対策になる。ICTのほか、褥瘡対策チームや摂食嚥下チームとも連携しているんだ。
医学生医学生
生化学や消化器の講義で「腸が使えるなら腸を使え」と習いました。腸管粘膜の萎縮を防いでbacterial translocationを抑えるという話でしたね。
ドクタードクター
よく覚えているね。それがNSTの基本原則の一つだ。最後に、終末期癌患者の栄養管理への関与はどうだろう。
医学生医学生
終末期だと栄養を頑張っても改善しにくいので、NSTの出番はなさそうな気もしますが……。
ドクタードクター
そこが誤解しやすいところだ。終末期は癌悪液質で食欲低下や体重減少が進み、栄養状態の改善そのものより、苦痛の緩和やQOLの維持が目標になる。過剰な輸液は浮腫や胸腹水、気道分泌物を増やして、かえって苦しさを強めることがあるんだ。だからこそ病期に応じて投与量や経路を見直す必要があり、NSTは緩和ケアチームと協力して関わる。
医学生医学生
「たくさん入れる」だけが栄養管理ではなく、「減らす判断」も含めてNSTの役割なんですね。
ドクタードクター
その理解はとても大切だよ。臨床では、体重変化や食事摂取量、血清アルブミンなどを組み合わせて栄養状態を評価し、患者の目標に合わせて計画を立てる。研修医になったら、自分の受け持ち患者の栄養を「誰かがやってくれる」と思わず、NSTに相談しつつ主治医として考える姿勢を持ってほしいね。

まとめ

栄養サポートチーム(NST)は、医師・看護師・薬剤師・管理栄養士を中心に多職種で構成され、診療科の枠を越えて病院全体の栄養管理を担うチームであり、主な対象は外来患者ではなく低栄養リスクを抱えた入院患者です。入院時の栄養スクリーニングでリスク患者を抽出し、アセスメント、栄養療法の提案、モニタリングと再評価を行います。栄養状態の改善や静脈栄養から経腸栄養への移行は感染予防にもつながるため、感染対策チームや褥瘡対策チーム、緩和ケアチームなどと連携して活動します。終末期癌患者では、悪液質を踏まえて過剰な輸液を避け、QOLを重視した栄養管理を行う点も重要です。チーム医療の具体像を理解しておくことは、国試対策だけでなく、研修医として多職種と協働する際の基礎になります。

解答・解説

正解はbです

本問は「誤っているもの」を選ぶ問題である。 栄養サポートチーム(NST:nutrition support team)は、医師・看護師・薬剤師・管理栄養士を中心に、臨床検査技師、リハビリテーション職(理学療法士・言語聴覚士など)、歯科医師・歯科衛生士などの多職種が集まり、患者の栄養状態を評価して適切な栄養療法を提案・実施・モニタリングするチームである。主治医や所属診療科の枠を越えて、病院全体として栄養管理の質を高めることを目的とする。 NSTの活動の中心は、低栄養や栄養障害のリスクを抱えた入院患者である。入院時に栄養スクリーニングを行い、リスクのある患者を抽出して、必要エネルギー量・蛋白質量の算定、経口・経腸・静脈栄養の選択、投与内容の調整、効果判定を行う。診療報酬上の「栄養サポートチーム加算」も、栄養障害の状態にある入院患者を対象として算定される。 したがって、NSTの主な対象を「外来患者」とする記述が誤りである。NSTの基本的な構成(医師を含む多職種)、診療科横断的な活動、他のチームとの連携、終末期患者を含む幅広い対象、という4つの特徴を押さえておけば、残りの選択肢はいずれも正しいと判断できる。

選択肢考察

  1. ×a.  医師の参加が必要である。

    正しい記述である。NSTは多職種チームであり、栄養療法の方針決定や処方(輸液・経腸栄養剤の指示など)には医師の関与が欠かせない。診療報酬の栄養サポートチーム加算の施設基準でも、栄養管理に関する所定の研修を修了した常勤の医師・看護師・薬剤師・管理栄養士でチームを構成することが求められており、医師の参加は必須である。

  2. ○b.  外来患者が主な対象である。

    誤った記述であり、本問の正解である。NSTの主な対象は入院患者である。入院患者は疾患そのもの、手術・化学療法などの侵襲、絶食期間、摂食嚥下障害などにより低栄養に陥りやすく、低栄養は創傷治癒の遅延、感染症や褥瘡の増加、在院日数の延長、死亡率の上昇につながる。こうした患者を入院中にスクリーニングし介入することがNSTの中心的な役割である。退院後や在宅療養へ向けた栄養管理の支援に関わることはあるが、主な対象ではない。

  3. ×c.  診療科を越えて栄養管理を行う。

    正しい記述である。NSTは特定の診療科に属するのではなく、病院全体を横断して活動する。主治医からの依頼や栄養スクリーニングで抽出された患者に対し、診療科・職種の枠を越えて栄養評価と栄養療法の提案を行う。複数の疾患を抱え、複数の診療科が関わる患者でも、一貫した栄養管理を行える点が利点である。

  4. ×d.  院内感染対策チームとも連携する。

    正しい記述である。栄養状態の改善は免疫能の維持に直結し、感染症の予防・治癒促進に寄与する。また中心静脈栄養ではカテーテル関連血流感染症が問題となり、不要な静脈栄養を減らして経腸栄養へ移行することは感染対策にもつながる。そのためNSTは感染対策チーム(ICT)のほか、褥瘡対策チーム、摂食嚥下チーム、緩和ケアチームなど他の院内チームと連携して活動する。

  5. ×e.  終末期癌患者の栄養管理にも関与する。

    正しい記述である。終末期の癌患者は癌悪液質(がん悪液質)により食欲低下や体重減少をきたしやすい。この時期は栄養状態の改善そのものよりも、苦痛の緩和や生活の質(QOL)の維持が目標となり、過剰な輸液が浮腫・胸腹水・気道分泌物を増やして苦痛を強めることもある。病期に応じて投与量や投与経路を見直す必要があり、NSTは緩和ケアチームとも協力して、終末期患者の栄養管理にも関与する。

NSTの構成と役割

・構成職種:医師、看護師、薬剤師、管理栄養士が中心。臨床検査技師、理学療法士、言語聴覚士、歯科医師・歯科衛生士なども加わる。 ・主な業務:栄養スクリーニング(リスク患者の抽出)→ 栄養アセスメント(身長・体重・体重変化、食事摂取量、血清アルブミンなどの検査値、身体所見)→ 栄養療法の計画・提案(投与経路、エネルギー・蛋白質量)→ モニタリングと再評価。 ・院内の他職員への栄養管理の教育・啓発も担う。

栄養投与経路の基本

「腸が使えるなら腸を使う」が原則である。経口摂取が困難でも消化管が機能していれば経腸栄養(経鼻胃管、胃瘻など)を選ぶ。経腸栄養は腸管粘膜の萎縮を防ぎ、腸管のバリア機能を保つことで細菌が腸管外へ移行するbacterial translocationを抑え、中心静脈カテーテル関連感染のリスクも避けられる。消化管が使えない場合や経腸栄養だけでは不足する場合に静脈栄養を用いる。

診療報酬との関係

栄養サポートチーム加算は、所定の研修を修了した医師・看護師・薬剤師・管理栄養士からなるチームが、栄養障害の状態にある、または栄養管理をしなければ栄養障害に陥るおそれのある入院患者に対し、回診やカンファレンスを通じて栄養管理を行った場合に算定される。

院内の主なチーム医療

NST(栄養サポート)、ICT(感染対策)、褥瘡対策チーム、緩和ケアチーム、呼吸ケアサポートチーム(RST)、摂食嚥下支援チームなどがあり、互いに連携して活動する。

POINT

・NSTは医師・看護師・薬剤師・管理栄養士などからなる多職種チームで、医師の参加は必須である。 ・主な対象は入院患者であり、外来患者ではない。 ・診療科・職種の枠を越えて病院全体で栄養管理を行う。 ・ICT、褥瘡対策チーム、緩和ケアチームなど他チームと連携する。 ・終末期癌患者の栄養管理にも関わり、病期に応じてQOLを重視した方針をとる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。