針の次は「道しるべ」―セルジンガー法で読み解く血管造影の第一歩
第107回医師国家試験 B問題 第26問
国試問題にチャレンジ
血管造影検査を行う際,動脈を穿刺し血液の逆流を確認した後,次に用いるのはどれか。
- a.コイル
- b.ステント
- c.バルーン
- d.カテーテル
- e.ガイドワイヤ
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
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ドクターまとめ
血管造影でカテーテルを血管内に導入する標準的な方法がセルジンガー法で、穿刺針で動脈を穿刺し、血液の逆流で針先が内腔にあることを確認したら、次に針の内腔を通してガイドワイヤを挿入します。その後、針を抜いてワイヤに沿ってダイレーター・シースを入れ、カテーテルを目的血管まで進めて造影します。細く硬い針からは直接カテーテルを入れられず、ワイヤで経路を確保して器具を入れ替えるのがこの手技の核心です。コイル・ステント・バルーンはIVR(画像下治療)で用いる治療用デバイスで、穿刺直後に使うものではありません。セルジンガー法は中心静脈カテーテル留置や経皮的ドレナージにも共通する基本手技であり、ワイヤの保持や穿刺部合併症の観察といった安全管理とあわせて理解しておくことが重要です。
解答・解説
正解はeです
本問は、血管造影でカテーテルを血管内へ導入する標準的な手技であるセルジンガー法(Seldinger法)の手順を問うている。
セルジンガー法の流れ(経皮的動脈穿刺の場合)
1. 穿刺部位(多くは大腿動脈、ほかに橈骨動脈・上腕動脈など)を消毒し、局所麻酔を行う。 2. 穿刺針で動脈を穿刺し、針の後端から拍動性の血液が逆流してくることで、針先が動脈内腔にあることを確認する。 3. 針の内腔を通してガイドワイヤ(柔軟な細い金属線)を血管内へ進める。 4. ガイドワイヤを血管内に残したまま穿刺針だけを抜き、穿刺部を圧迫して止血しておく。 5. ガイドワイヤに沿わせてダイレーター(拡張器)を入れて皮下組織と血管壁の穿刺孔を広げ、シース(止血弁付きの短い外套管)を留置する。シースを使わずにカテーテルを直接進める場合もある。 6. ガイドワイヤに沿ってカテーテルを目的の血管まで進め、ガイドワイヤを抜去したのちに造影剤を注入して撮影する。 つまり、穿刺針から血液の逆流を確かめた「直後」に行うのは、針の内腔を通してガイドワイヤを挿入することである。穿刺針は細く硬いため、そのままでは太いカテーテルを血管内へ入れられない。まずガイドワイヤで血管内への「道筋」を確保し、その道筋を頼りに器具を入れ替えていく、というのがこの手技の考え方である。
選択肢考察
- ×a. コイル
コイルは主にプラチナなどでできた金属製の塞栓物質で、カテーテルを通して標的血管内に置き、血栓を形成させて血管を閉塞させる目的で用いる。動脈瘤の塞栓術や出血血管の止血など、血管造影の手技を応用した治療(IVR)で使う器具であり、診断目的の血管造影で穿刺直後に用いることはない。
- ×b. ステント
ステントは狭窄した血管などを内側から支えて内腔を保つための網目状の筒で、冠動脈や末梢動脈の狭窄に対する血管形成術などの治療で留置する。使用する場合もカテーテル(ガイドワイヤ)を目的部位まで進めた後の段階であり、穿刺直後に使うものではない。
- ×c. バルーン
バルーンカテーテルは、狭窄部の拡張(経皮的血管形成術)や血流の一時的な遮断などに用いる治療用デバイスである。バルーン閉塞下での造影など特殊な検査に用いることもあるが、いずれもガイドワイヤやシースで血管内への経路を確保した後に挿入するもので、血液の逆流を確認した直後に用いることはない。
- ×d. カテーテル
カテーテルは血管造影で造影剤を目的の血管に注入するための主役となる器具であり、検査では必ず用いる。しかし、穿刺針の内腔を通して直接カテーテルを入れることはできず、まずガイドワイヤを血管内に進め、穿刺針を抜いてからガイドワイヤ(またはシース)を介して挿入する。したがって「逆流確認の次」に用いるものではない。
- ○e. ガイドワイヤ
逆流によって針先が動脈内腔にあると確認できたら、穿刺針の内腔を通してガイドワイヤを血管内へ進める。ガイドワイヤが血管内に留まっていれば、針を抜いても血管内への経路は失われず、これに沿わせてダイレーター・シース・カテーテルを順に安全に挿入できる。これがセルジンガー法の核心であり、本問の正解である。
セルジンガー法
1953年にスウェーデンの放射線科医Sven-Ivar Seldingerが考案した、針・ガイドワイヤ・カテーテルを順に入れ替えて血管内にカテーテルを導入する方法である。血管を外科的に露出(カットダウン)せずに経皮的にカテーテルを挿入できるようにした画期的な手技で、現在は血管造影に限らず、中心静脈カテーテル留置、経皮的ドレナージ、IVR(画像下治療)など、多くの手技の基本となっている。
主な器具の役割
・穿刺針:血管を穿刺し、逆流で内腔にあることを確認する。 ・ガイドワイヤ:針の内腔を通して血管内に進め、器具交換の道筋を確保する。 ・ダイレーター:穿刺孔を拡張する。 ・シース:止血弁付きの外套管。カテーテルの交換を繰り返しても穿刺部からの出血や血管損傷を少なくできる。 ・カテーテル:目的血管まで進め、造影剤を注入する。 ・コイル、ステント、バルーン:主にIVR(塞栓術、血管形成術など)で用いる治療用デバイス。
穿刺部位と合併症
動脈穿刺は、圧迫止血しやすい大腿動脈(鼠径靱帯より遠位で大腿骨頭上)が古くから標準であり、近年は患者負担の少ない橈骨動脈穿刺も広く行われている。合併症として穿刺部血腫、仮性動脈瘤、動静脈瘻、血管解離、血栓塞栓症、造影剤によるアレルギー反応や腎障害などがある。
POINT
・血管造影でのカテーテル挿入はセルジンガー法で行う。 ・手順:穿刺針で穿刺 → 血液の逆流確認 → ガイドワイヤ挿入 → 穿刺針抜去 → ダイレーター・シース → ガイドワイヤに沿ってカテーテル挿入。 ・逆流確認の直後に用いるのはガイドワイヤである。 ・コイル・ステント・バルーンはIVR(治療)で用いるデバイスである。
