最初のひとさじは「なめらか」に―卵黄から始める離乳初期の指導ポイント
第106回医師国家試験 G問題 第3問
国試問題にチャレンジ
初期離乳食に関する母親への指導で適切なのはどれか。
- a.開始時期は生後7か月とする。
- b.卵は卵黄のみを用いる。
- c.穀類は粥ではなく軟飯を与える。
- d.硬さは歯茎でつぶせる程度にする。
- e.人工乳栄養児の場合は牛乳に変更する。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
離乳は乳児の摂食機能の発達に合わせて進めるもので、開始は生後5〜6か月ごろ、なめらかにすりつぶしたつぶし粥を1日1回1さじから始めます。形状は初期=なめらかなすりつぶし、中期=舌でつぶせる、後期=歯茎でつぶせる、完了期=歯茎で噛める、と段階的に硬くし、軟飯は後期以降が目安です。卵はアレルゲンが卵白に多いため、初期は固ゆでの卵黄を少量から始めて全卵へ進めるのが適切です。飲み物としての牛乳は鉄欠乏性貧血予防のため、はちみつは乳児ボツリヌス症予防のため、いずれも1歳以降とします。開始を遅らせてもアレルギー予防にはならないという最新の知見も含め、保護者に具体的で根拠のある指導ができることは、小児医療に携わるうえでの基本となります。
解答・解説
正解はbです
問われていること
離乳の始めの時期(離乳初期)に、保護者へどのような具体的指導をするかを問う問題である。わが国の離乳の進め方は、厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」(最新は2019年改定版)に示されている。
離乳の考え方
離乳とは、母乳や育児用ミルク(乳汁)だけの栄養から、幼児食へ移っていく過程である。乳児の摂食機能は、乳汁を吸う動き(哺乳反射による吸啜)から、口を閉じて飲み込む→舌で押しつぶす→歯茎でつぶす→歯茎で噛む、という順に発達していく。離乳食の形状(なめらかさ・硬さ)はこの発達段階に合わせて段階的に変えていく。
離乳の段階ごとの目安(授乳・離乳の支援ガイド2019)
・離乳初期(生後5〜6か月ごろ):なめらかにすりつぶした状態(ポタージュ状)。1日1回1さじずつから。つぶし粥(10倍粥をすりつぶしたもの)から始め、慣れたら野菜、さらに豆腐・白身魚・固ゆでした卵黄などを試す。栄養の大部分はまだ乳汁から摂り、乳汁は子どもが欲しがるだけ与える。 ・離乳中期(7〜8か月ごろ):舌でつぶせる硬さ。1日2回。 ・離乳後期(9〜11か月ごろ):歯茎でつぶせる硬さ。1日3回。 ・離乳完了期(12〜18か月ごろ):歯茎で噛める硬さ。1日3回の食事と1〜2回の補食。 この流れを押さえると、各選択肢のうち、初期に適切なのは「卵は卵黄のみ」だけであることが分かる。卵は固ゆでした卵黄から始め、慣れてから全卵へ進める。
選択肢考察
- ×a. 開始時期は生後7か月とする。
離乳の開始は生後5〜6か月ごろが適当とされている。開始の目安となる発達の様子は、首がしっかりすわり、支えれば座れる、食べ物に興味を示す、スプーンを口に入れても舌で押し出すことが少なくなる(哺乳反射が弱まる)、などである。7か月まで遅らせる理由はなく、離乳を遅らせることは食物アレルギーの予防にならない(開始を遅らせる必要はない)ことも示されている。遅れすぎると、エネルギー・鉄などの不足や摂食機能の発達の遅れにつながりうる。なお、かつては生後4〜6か月とされていた時期もある。
- ○b. 卵は卵黄のみを用いる。
卵のアレルギーの原因となる主なたんぱく質(オボムコイド、オボアルブミンなど)は卵白に多く含まれ、卵黄はアレルギーを起こしにくい。また十分に加熱するとアレルギーを起こす力(抗原性)が弱まる。そのため離乳初期に卵を使う場合は、固ゆでにした卵黄をごく少量から始め、慣れてきたら中期以降に全卵へと進めるのがよいとされている。したがって初期の指導として適切である。
- ×c. 穀類は粥ではなく軟飯を与える。
離乳初期の乳児はまだ噛むことができず、なめらかな形状のものを口を閉じて飲み込む段階である。穀類はつぶし粥(10倍粥をすりつぶしたもの)から始める。粥は中期に全粥、後期に全粥〜軟飯、完了期に軟飯〜ご飯と段階的に硬くしていく。軟飯は後期〜完了期の形状であり、初期に与えるのは不適切である。
- ×d. 硬さは歯茎でつぶせる程度にする。
歯茎でつぶせる硬さ(熟したバナナ程度)は離乳後期(9〜11か月ごろ)の目安である。離乳初期はなめらかにすりつぶしたポタージュ状、中期(7〜8か月ごろ)は舌と上あごでつぶせる硬さ(豆腐程度)とし、口の動きの発達に合わせて硬さを上げていく。初期から歯茎でつぶす硬さにするのは早すぎる。
- ×e. 人工乳栄養児の場合は牛乳に変更する。
離乳初期は栄養の大部分をまだ乳汁から摂る時期であり、育児用ミルクで育っている乳児はそのまま育児用ミルクを続ける。牛乳は鉄の含有量が少なく吸収も悪いうえ、たんぱく質やミネラル(ナトリウムなど)の量が乳児の腎臓には負担が大きい。また乳児では腸管からの微量な出血を起こすこともあり、鉄欠乏性貧血の原因となる。このため牛乳を飲み物として与えるのは1歳を過ぎてからが望ましいとされている(離乳食の調理に少量使うことは中期以降可能とされる)。
離乳の進め方の要点(授乳・離乳の支援ガイド2019)
・開始:なめらかにすりつぶした食物を初めて与えたときを離乳の開始という。果汁やイオン飲料を与えることは離乳の開始ではなく、離乳前に果汁を与える必要はない。 ・進め方:新しい食品は1日1さじから、子どもの様子(下痢・湿疹など)を見ながら少しずつ増やす。初期はアレルギーの心配の少ないつぶし粥から始める。 ・完了:形のある食物を噛みつぶせるようになり、エネルギーや栄養素の大部分を乳汁以外の食物から摂れるようになった状態で、生後12〜18か月ごろである。完了は母乳や育児用ミルクを飲んでいない状態を意味するものではない。
1歳未満で避けるもの
・はちみつ:ボツリヌス菌の芽胞を含むことがあり、腸内細菌叢が未熟な乳児では腸管内で菌が増えて毒素を産生し、乳児ボツリヌス症(便秘、哺乳力低下、筋力低下など)を起こしうる。1歳を過ぎるまで与えない。 ・飲み物としての牛乳:鉄欠乏性貧血の予防のため1歳以降とする。
鉄の補給
母乳は鉄の含有量が少なく、生後6か月ごろには胎児期に蓄えた鉄が減ってくる。とくに母乳で育つ乳児では、離乳が進むにつれて赤身の魚・肉、レバーなど鉄の多い食品を取り入れることが推奨される。
食物アレルギーとの関係
以前は、アレルギーを起こしやすい食品の摂取開始を遅らせることで予防できると考えられていたが、現在ではそうした効果は否定されている。医師の指示がない限り、特定の食品の開始を遅らせる必要はない。一方で卵のように卵白の抗原性が高い食品は、固ゆで卵黄→全卵と段階を踏み、少量から進める。
POINT
・離乳開始は生後5〜6か月ごろ(なめらかにすりつぶした状態、1日1回1さじから)。 ・形状の目安:初期=なめらかにすりつぶす、中期(7〜8か月)=舌でつぶせる、後期(9〜11か月)=歯茎でつぶせる、完了期(12〜18か月)=歯茎で噛める。 ・穀類はつぶし粥から始め、軟飯は後期〜完了期。 ・卵は固ゆで卵黄から始め、全卵へ進める(アレルゲンは主に卵白)。 ・牛乳を飲み物として与えるのは1歳以降(鉄欠乏性貧血予防)。はちみつも1歳まで与えない。
