StudyMed医師国家試験

その事項、根拠はどの法律?―医療計画が描く「地域医療の設計図」

第106回医師国家試験 G問題 第24問

国試問題にチャレンジ

第106回 G問題 第24問

医療計画に定められているのはどれか。

  1. a.保健所の設置
  2. b.医療監査の計画
  3. c.医療従事者の確保
  4. d.栄養摂取基準の設定
  5. e.臨床研修病院の指定

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は公衆衛生の制度問題で、医療計画に何が書かれているかを問うものだ。ポイントは、それぞれの事項が「どの法律に基づき、誰が決めているか」を見分けること。医療計画の目的がわかれば、選択肢はかなり絞れるよ。
医学生医学生
医療計画は医療法に基づいて都道府県が作る計画、というところまでは公衆衛生の講義で覚えました。でも中身までは自信がないです。
ドクタードクター
出発点としては十分だ。医療計画は、国が定める基本方針に沿って都道府県が作る、地域の医療提供体制の設計図だと考えるといい。住民が必要な医療を切れ目なく受けられるように、医療機関の役割分担と連携を整えるのが目的だ。現在は6年ごとに見直されている。
医学生医学生
設計図ということは、病院のベッド数をどうするか、といった話も含まれるんですか。
ドクタードクター
そう。医療圏の設定と基準病床数が代表的な記載事項だ。一次医療圏は市町村単位の日常的な医療、二次医療圏は入院を含む一般的な医療を完結させる単位、三次医療圏は原則都道府県単位で高度な医療を担う。既存の病床数が基準病床数を上回る地域では、病床の新設や増床が制限されるんだ。
医学生医学生
ほかに5疾病・5事業というのも聞いたことがあります。
ドクタードクター
今は6事業になっているから注意しよう。5疾病はがん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、精神疾患。事業は救急、災害、へき地、周産期、小児の5つに、2024年度からの第8次医療計画で新興感染症への対応が加わって6事業になった。在宅医療や地域医療構想も含まれる。そして、もう一つ大事なのが、医療の担い手の話だ。
医学生医学生
病床があっても医師や看護師がいなければ医療はできないから、医療従事者の確保も入るということですね。
ドクタードクター
その通り、それが正解だ。医療従事者の確保は医療計画に定める事項とされていて、2018年度からは医療計画の一部として医師確保計画も作られ、医師の地域偏在や診療科偏在の是正が図られている。では、ほかの選択肢がなぜ違うのか見ていこう。保健所の設置は?
医学生医学生
保健所は都道府県が設置するので、医療計画に入っていそうな気もしますが……。
ドクタードクター
設置主体が都道府県という点は合っているけれど、根拠は地域保健法だ。設置主体は都道府県のほか、政令指定都市、中核市などの政令で定める市、特別区になる。地域保健の拠点となる行政機関の話で、医療提供体制の設計図とは別物なんだ。
医学生医学生
医療監査の計画はどうでしょう。医療法には病院への立入検査の規定もあったと思います。
ドクタードクター
よく覚えているね。病院・診療所への立入検査は医療法に基づき都道府県知事などが行い、保険医療機関への指導・監査は健康保険法に基づいて行われる。どちらも監督行政の仕組みで、同じ医療法の中にあっても医療計画の記載事項ではない。「同じ法律に書いてある=医療計画の中身」ではないことに注意しよう。
医学生医学生
栄養摂取基準は健康増進法でしたよね。社会医学の実習で国民健康・栄養調査のデータを扱ったときに出てきました。
ドクタードクター
正解。健康増進法に基づいて厚生労働大臣が「日本人の食事摂取基準」として定め、おおむね5年ごとに改定している。最後に臨床研修病院の指定はどうかな。
医学生医学生
これから自分たちがマッチングで選ぶ病院ですね。研修は医師法で義務づけられているので、指定の根拠も医師法でしょうか。
ドクタードクター
その通り。卒後臨床研修は医師法に規定され、臨床研修病院の指定も医師法に基づく。2020年度からは指定権限が厚生労働大臣から都道府県知事に移ったので、都道府県が関わる点で紛らわしいけれど、医療計画の記載事項ではない。
医学生医学生
都道府県が関わるかどうかではなく、根拠法と目的で判断するんですね。
ドクタードクター
そういうことだ。整理すると、地域保健法は保健所、健康増進法は食事摂取基準や国民健康・栄養調査、医師法は免許と臨床研修、健康保険法は保険診療と指導・監査、医療法は病院の開設基準や立入検査、医療計画を扱う。臨床に出ると、救急の受け入れ体制や地域連携パスなど、医療計画に沿った仕組みの中で働くことになる。自分の病院がその地域でどんな役割を担っているかを意識できると、制度の知識が生きてくるよ。

まとめ

医療計画は医療法に基づき、国の基本方針に沿って都道府県が策定する地域医療提供体制の設計図で、現在は6年ごとに見直されます。主な記載事項は医療圏の設定、基準病床数、5疾病・6事業と在宅医療、地域医療構想、医療従事者の確保(医師確保計画を含む)、医療安全の確保です。保健所の設置は地域保健法、食事摂取基準は健康増進法、臨床研修病院の指定は医師法に基づき、医療機関への立入検査や保険医療機関の指導・監査は監督行政の枠組みであって医療計画の内容ではありません。制度問題は「どの法律に基づき、誰が、何の目的で定めるか」を整理すると解きやすくなり、臨床現場で自院が地域医療の中で担う役割を理解する土台にもなります。

解答・解説

正解はcです

医療計画とは

医療計画は、医療法に基づいて都道府県が策定する計画である。地域の実情に応じて医療機関の機能分担と連携を進め、住民が必要な医療を切れ目なく、過不足なく受けられる体制を確保することを目的とする。国(厚生労働大臣)が定める基本方針に即して都道府県が作成し、現在は6年ごとに見直される(かつては5年ごとであった)。

解き方

本問は「その事項がどの法律・どの主体によって定められているか」を問う問題である。医療計画に書かれる内容は、医療圏の設定、基準病床数、5疾病・6事業および在宅医療の体制、医療従事者の確保、医療安全の確保など、「地域の医療提供体制をどう整えるか」に関わるものである。これに該当するのは医療従事者の確保であり、そのほかの選択肢はそれぞれ別の法律(地域保健法、健康増進法、医師法など)に根拠がある事項である。

選択肢考察

  1. ×a.  保健所の設置

    保健所の設置は地域保健法(第5条)に定められている。設置主体は都道府県、政令指定都市、中核市、その他の政令で定める市および特別区である。保健所は地域保健の拠点となる行政機関であり、その設置は医療計画の記載事項ではない。

  2. ×b.  医療監査の計画

    医療機関に対する監督は医療計画の内容ではない。病院・診療所への立入検査(いわゆる医療監視)は医療法第25条に基づき都道府県知事や保健所設置市の長などが行うものであり、保険医療機関・保険医に対する指導や監査は健康保険法に基づいて厚生労働省(地方厚生局)が都道府県と共同で行う。いずれも監督行政の枠組みであり、地域の医療提供体制の整備を目的とする医療計画とは別物である。

  3. ○c.  医療従事者の確保

    医療法第5章「医療提供体制の確保」の医療計画の規定において、医師・看護師など医療従事者の確保に関する事項は医療計画に定める事項とされている。病床や医療機関を整備しても担い手がいなければ医療は提供できないため、医療計画の重要な柱となっている。2018年度からは医療計画の一部として「医師確保計画」も策定されるようになり、医師偏在の是正が図られている。

  4. ×d.  栄養摂取基準の設定

    国民の健康の保持・増進のために望ましいエネルギーや栄養素の摂取量の基準は、健康増進法に基づき厚生労働大臣が「日本人の食事摂取基準」として定め、おおむね5年ごとに改定している(かつては「栄養所要量」と呼ばれていた)。医療計画の記載事項ではない。

  5. ×e.  臨床研修病院の指定

    医師の卒後臨床研修(2年以上の必修)は医師法第16条の2に規定されており、臨床研修病院の指定もこの医師法に基づく。従来は厚生労働大臣が指定していたが、2020年度からは指定権限が都道府県知事に移譲されている。いずれにせよ根拠は医師法であり、医療計画に定められる事項ではない。

医療計画の主な記載事項

・医療圏の設定:一次医療圏(市町村単位の日常的な医療)、二次医療圏(入院を含む一般的な医療を完結させる単位)、三次医療圏(原則として都道府県単位、高度・特殊な医療) ・基準病床数:二次医療圏ごとの療養病床・一般病床、都道府県単位の精神病床・結核病床・感染症病床について定める。既存病床数が基準病床数を超える地域では病床の新設・増床が制限される。 ・5疾病:がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、精神疾患 ・6事業:救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療(小児救急を含む)、新興感染症発生・まん延時における医療(2024年度からの第8次医療計画で追加。それ以前は5事業) ・在宅医療 ・地域医療構想(2025年などの将来の医療需要を見据えた病床の機能分化・連携) ・医療従事者の確保(医師確保計画を含む)、外来医療に係る医療提供体制の確保(外来医療計画) ・医療の安全の確保

関連する法律と所管事項の整理

・地域保健法:保健所・市町村保健センターの設置 ・健康増進法:国民健康・栄養調査、食事摂取基準、受動喫煙対策、健康増進計画 ・医師法:医師免許、臨床研修 ・医療法:病院・診療所の開設や構造設備の基準、立入検査、医療法人、医療計画 ・健康保険法:保険診療、保険医療機関の指定・指導・監査

POINT

・医療計画は医療法に基づき都道府県が策定し、6年ごとに見直す。 ・主な記載事項は医療圏、基準病床数、5疾病・6事業と在宅医療、地域医療構想、医療従事者の確保、医療安全の確保である。 ・保健所の設置は地域保健法、食事摂取基準は健康増進法、臨床研修病院の指定は医師法に根拠がある。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。