StudyMed医師国家試験

その部品、何のため?―点滴セットを「流れ」でたどれば迷わない

第106回医師国家試験 F問題 第15問

国試問題にチャレンジ

第106回 F問題 第15問

輸液セットの写真を別に示す。  各部の操作・機能の説明で正しいのはどれか。

第106回 F問題 第15問の問題画像
  1. a.①:キャップを外して静脈を穿刺する。
  2. b.②:急速輸液の場合に圧迫を繰り返す。
  3. c.③:輸液の流量を調節する。
  4. d.④:薬剤を輸液ボトル内に注入する。
  5. e.⑤:刺入後に翼状部分を取り除く。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、点滴に使う輸液セットの各部品の名前と役割を問う問題だ。病棟では毎日目にする器具だけど、部品ごとの働きを正しく説明できるかがポイントになる。コツは、輸液ボトル側から患者側へ、液体の流れに沿って順番に見ていくことだ。
医学生医学生
写真の一番上、キャップが付いた尖った部品が針に見えるので、これで静脈を刺すのかと思ってしまいました。
ドクタードクター
そこが最初の引っかけだね。いちばん上にあるのはびん針、ボトル針とも呼ぶ部品だ。キャップを外して輸液バッグのゴム栓に刺し、セットとボトルをつなぐためのもの。太くて先端も鈍いから、静脈を刺すには使わない。静脈を穿刺するのは、回路の反対側の端にある翼状針だよ。
医学生医学生
なるほど、両端に針があるから混同しやすいんですね。その下の透明な筒は何でしょうか。
ドクタードクター
点滴筒、ドリップチャンバーだ。輸液が1滴ずつ落ちるのを目で見て、滴下数を数えたり、きちんと流れているかを確かめたりする部分だね。
医学生医学生
急いで入れたいときに、ここを何度も押していた看護師さんを見た気がします。押すと速く入るんじゃないですか。
ドクタードクター
よくある誤解だね。点滴筒を押しても、筒の中にたまる液が増えるだけで、患者への輸液速度が持続的に上がるわけではない。点滴筒をつまむのは、準備のときに筒の3分の1から2分の1程度まで液をためるためなんだ。そうすると滴下が観察しやすく、回路に空気も入りにくくなる。急速輸液が必要なら、クレンメを全開にする、加圧バッグでバッグを外から押す、太い留置針を使う、といった方法をとる。
医学生医学生
では、その下のローラーが付いた部品がクレンメですね。
ドクタードクター
そう、これが正解だ。クレンメはローラークランプとも呼ばれ、ローラーを動かすとチューブを押しつぶす程度が変わって内腔の太さが変わり、流量を調節できる。最後まで締めれば流れは止まる。実際には、点滴筒で1分間の滴下数を数えながらクレンメで合わせるんだ。
医学生医学生
基礎看護の実習で、時計を見ながら滴下数を数えて、ローラーを少しずつ動かした記憶があります。思った以上に微調整が難しかったです。
ドクタードクター
最初はみんなそうだよ。次は、コックの付いた分岐部分、三方活栓だ。これは何に使う?
医学生医学生
薬を入れるところですよね。ここから入れるとボトルの中に薬が混ざるんでしょうか。
ドクタードクター
惜しいけれど違う。三方活栓は3方向の接続口をもつコックで、向きを変えて流路を切り替える。側管からシリンジで薬剤を注入する、いわゆる側注や、別の輸液をつないで並行投与・切り替えをするのに使う。ここから入れた薬は回路を通ってそのまま患者側へ流れていくから、上流のボトルの中には入らない。ボトルに薬を混ぜたいときは、ゴム栓にシリンジで直接注入するんだ。
医学生医学生
最後の翼状針は、刺したあと翼を外すのかと少し迷いました。
ドクタードクター
翼は外さないよ。穿刺するときに指でつまんで操作しやすくし、刺したあとはテープで皮膚に固定するための部分なんだ。そもそも取り外せる構造になっていない。ちなみに翼状針は金属針のまま血管内に留まるから、長時間の輸液や体動の多い患者では、穿刺後に金属の内針を抜いて柔らかい外筒だけを残す静脈留置針を使うことが多い。
医学生医学生
整理すると、ボトルにつなぐびん針、滴下を見る点滴筒、流量を決めるクレンメ、側注や切り替えの三方活栓、患者に刺す翼状針、という流れですね。
ドクタードクター
完璧だ。ここから発展として、滴下数の計算も押さえておこう。一般用の輸液セットは約20滴で1 mL、小児用は約60滴で1 mLになるように作られている。1分間の滴下数は、総輸液量に1 mLあたりの滴数をかけて、投与時間の分数で割ればいい。
医学生医学生
500 mLを2時間で一般用セットなら、500かける20を120で割って、1分間に約83滴ですね。CBTの対策でも似た計算をやりました。
ドクタードクター
正解。もう一つ大事なのが準備の手順だ。クレンメを閉じた状態でびん針を刺し、点滴筒に液をためてから、クレンメを緩めて回路の先端まで液を満たし、空気を完全に抜く。これは空気塞栓を防ぐためだ。正確な流量が必要な薬剤では輸液ポンプやシリンジポンプを使うし、輸血では凝集塊を取り除く濾過網の付いた専用セットを使う。器具の一つひとつに理由があると理解しておくと、臨床で迷わなくなるよ。

まとめ

一般的な輸液セットは、輸液ボトル側から順に、ゴム栓に刺して接続するびん針、滴下を観察・計数する点滴筒、チューブを圧迫して流量を調節するクレンメ(ローラークランプ)、側注や輸液の切り替えに用いる三方活栓、静脈を穿刺する翼状針で構成されます。流量を調節するのはクレンメであり、点滴筒を押しても輸液速度は持続的には上がらず、三方活栓から入れた薬剤はボトルではなく患者側へ流れ、翼状針の翼は固定用で取り外しません。一般用セットは約20滴/mL、小児用は約60滴/mLで、1分間の滴下数は総輸液量×1 mLあたりの滴数÷投与時間(分)で求めます。準備時には点滴筒に液をためたうえで回路内の空気を完全に抜き、空気塞栓を防ぐことが重要です。各部品の役割を液体の流れに沿って理解しておくことは、臨床実習や研修で安全に点滴を扱うための基本となります。

解答・解説

正解はcです

本問は、点滴静脈注射に用いる一般的な輸液セット(翼状針付き)の各部品の名称と役割を問うている。写真の各部は、輸液ボトル側から患者側へ順に次のとおりである。 ①びん針(瓶針): ボトル針ともよぶ。キャップを外し、輸液ボトル(バッグ)のゴム栓に刺して輸液セットをボトルに接続する部分である。 ②点滴筒(ドリップチャンバー): 輸液が1滴ずつ落ちる透明な筒。滴下の様子を目で見て、滴下数(流量)を数えたり、輸液が正しく流れているかを確認したりする。 ③クレンメ(ローラークランプ): ローラーを動かしてチューブを押しつぶす程度を変え、流量を調節する部品である。 ④三方活栓: 3方向の接続口をもつコック。コックの向きで流路を切り替え、側管から薬剤を注入したり、別の輸液を並行して投与したりするのに用いる。 ⑤翼状針: 翼(ウイング)の付いた注射針。翼をつまんで穿刺し、穿刺後は翼をテープで皮膚に固定する。

考え方

各部品が「どこに接続され、何のために使われるか」を具体的に思い浮かべられれば解ける。流量を調節するのは③のクレンメであり、これが正解である。病院実習で実際に点滴の準備に立ち会う際、各部品の名称と役割を確認しておくとよい。

選択肢考察

  1. ×a.  ①:キャップを外して静脈を穿刺する。

    誤り。①はびん針(ボトル針)であり、キャップを外して輸液ボトル(バッグ)のゴム栓に刺し、輸液セットとボトルを接続するための部品である。太く先端が鈍く、静脈穿刺には用いない。静脈を穿刺するのは回路の反対側の端にある⑤の翼状針(または静脈留置針)である。

  2. ×b.  ②:急速輸液の場合に圧迫を繰り返す。

    誤り。②は点滴筒(ドリップチャンバー)であり、滴下の様子を観察して流量を確認するための部分である。点滴筒を押しても、筒の中にたまる液量が増えるだけで、患者への輸液速度が持続的に上がるわけではない。点滴筒をつまんで押すのは、準備の段階で筒内に輸液を1/3〜1/2程度ためるとき(滴下を観察でき、かつ回路に空気が入りにくくするため)である。急速輸液が必要なときは、クレンメを全開にする、加圧バッグで輸液バッグを加圧する、太い留置針を用いる、などで対応する。

  3. ○c.  ③:輸液の流量を調節する。

    正しい。③はクレンメ(ローラークランプ)である。ローラーを動かすとチューブが押しつぶされる程度が変わり、内腔の太さが変化することで輸液の流量が調節される。ローラーを最後まで締めれば流れは止まる。実際には、②の点滴筒で1分間の滴下数を数えながらクレンメで調節する。一般用の輸液セットは約20滴で1 mL、小児用(微量用)は約60滴で1 mLとなるように作られている。

  4. ×d.  ④:薬剤を輸液ボトル内に注入する。

    誤り。④は三方活栓である。側管の接続口からシリンジで薬剤を注入したり(側注)、別の輸液を接続して同時投与や切り替えを行ったりするのに用いる。三方活栓から入れた薬剤は輸液回路に入り、そのまま患者側へ流れるのであって、上流の輸液ボトル内へ入るわけではない。薬剤をボトル内に混ぜる場合は、シリンジでボトルのゴム栓に直接注入する。三方活栓があれば、新たに針を刺さずに複数の薬剤を投与できる。

  5. ×e.  ⑤:刺入後に翼状部分を取り除く。

    誤り。⑤は翼状針である。翼状部分は、穿刺時に指でつまんで針を操作しやすくするとともに、穿刺後にテープで皮膚に固定するための部分であり、取り外す構造にはなっていない。なお、翼状針は金属針のままで血管内に留まるため、長時間の輸液や体動の多い患者では、穿刺後に金属の内針を抜いて柔らかい外筒(カテーテル)だけを残す静脈留置針が用いられることが多い。

点滴静脈注射の準備の流れ

①輸液ボトルのゴム栓を消毒し、クレンメを閉じた状態でびん針を刺す。 ②ボトルを吊るし、点滴筒をつまんで輸液を筒の1/3〜1/2程度までためる。 ③クレンメを緩めて回路の先端まで輸液を満たし、回路内の空気を完全に抜いてからクレンメを閉じる(空気塞栓の予防)。 ④患者の静脈を穿刺し、逆血を確認してから回路を接続し、翼(または留置針のハブ)をテープで固定する。 ⑤点滴筒の滴下数を数えながらクレンメで流量を合わせる。

滴下数の計算

1分間の滴下数 = 総輸液量(mL)× 1 mLあたりの滴数 ÷ 投与時間(分) 例: 500 mLを2時間(120分)で一般用セット(20滴/mL)を用いて投与する場合、500 × 20 ÷ 120 ≒ 83滴/分となる。

輸血用セットとの違い

輸血用のセットでは点滴筒の上部に濾過網(メッシュ)の入った濾過筒があり、血液中の凝集塊などを取り除く。1 mLあたりの滴数は約20滴である。

関連する器具

・輸液ポンプ: 一定の流量で正確に輸液するための機器。専用の輸液セットを用いる。 ・シリンジポンプ: 少量の薬剤を精密に持続投与する機器。 ・加圧バッグ: 輸液バッグを外から加圧して急速輸液を行う器具。

POINT

・①びん針: 輸液ボトルのゴム栓に刺して接続する(静脈は穿刺しない)。 ・②点滴筒: 滴下を観察・計数する。準備時に1/3〜1/2程度まで液をためる。 ・③クレンメ: チューブを圧迫して流量を調節する(正解)。 ・④三方活栓: 側管からの薬剤注入や他の輸液の併用・切り替えに用いる。 ・⑤翼状針: 翼で持ちやすくし、刺入後はテープで固定する(翼は外さない)。 ・一般用セットは約20滴/mL、小児用(微量用)は約60滴/mL。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。