「あーん」で見える挿管の難しさ―Mallampati分類で困難気道を見抜く
第106回医師国家試験 E問題 第22問
国試問題にチャレンジ
全身麻酔の術前診察で,口を大きく開けて挺舌するよう促したときの模式図を示す。 挿管困難が最も予想されるのはどれか。

- a.
- b.
- c.
- d.
- e.
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
修正Mallampati分類は、座位で最大開口・最大挺舌させたときに咽頭構造がどこまで見えるかで挿管困難を予測する方法で、口蓋垂全体が見えるClass Iから、硬口蓋しか見えないClass IVまでに分かれます。Class IIIとIVは舌が口腔に対して相対的に大きく喉頭展開で声門を視認しにくいため、挿管困難の予測因子です。口蓋垂の大きさや扁桃肥大、舌の長さは判定基準ではなく、本問では硬口蓋しか見えない図が最も挿管困難を示します。実際には開口制限、甲状オトガイ間距離の短縮、頸部可動域制限、肥満、巨舌なども合わせて評価し、挿管時の視野はCormack-Lehane分類で記録します。術前の簡便な診察で困難気道を予測し、器具と手順を準備しておくことは、麻酔の安全を守る基本となります。
解答・解説
正解はcです
全身麻酔の術前診察では、気管挿管が難しくなりそうな患者(挿管困難)をあらかじめ見つけ出し、気道確保の準備(ビデオ喉頭鏡、声門上器具、気管支ファイバースコープなど)を整えておくことが重要である。本問は、座位で口を最大限に開けて舌を突き出させたときに咽頭の構造物がどこまで見えるかで挿管の難しさを予測する Mallampati(マランパチ)分類(Samsoon と Young による修正版)を題材としている。
修正 Mallampati 分類
・Class I:軟口蓋、口峡、口蓋垂全体、口蓋弓(前・後口蓋弓)が見える ・Class II:軟口蓋、口峡、口蓋垂は見えるが、口蓋垂の先端が舌の奥に隠れる ・Class III:軟口蓋と口蓋垂の基部しか見えない ・Class IV:軟口蓋も見えず、硬口蓋しか見えない class が上がるほど、舌が口腔内で占める割合が相対的に大きく、喉頭展開の際に舌を十分に押しのけられないため、声門の視認(Cormack-Lehane 分類で評価)が困難になりやすい。class III・IV は挿管困難の予測因子とされる。 図を見ると、a・b・d・e はいずれも口蓋垂が先端まで見えており Class I に相当する。c だけは舌が口腔内を埋めて口蓋垂も軟口蓋も見えず、硬口蓋しか観察できない Class IV であり、最も挿管困難が予想される。口蓋垂や扁桃の大きさ、舌の大きさそのものは本分類の判定基準ではない点に注意する。
選択肢考察
- ×a.
軟口蓋、口蓋垂の先端まで全体、口蓋弓が明瞭に見えており、修正 Mallampati 分類 Class I に相当する。舌が咽頭の視野を妨げておらず、この所見からは挿管困難は予想されない。
- ×b.
a と比べて挺舌した舌が短く小さく描かれているが、口蓋垂は先端まで完全に見えており Class I に相当する。Mallampati 分類は舌の長さではなく、挺舌時に咽頭構造がどこまで観察できるかで判定するため、この図から挿管困難は予想されない。
- ○c.
挺舌しても舌が口腔内を占め、口蓋垂も軟口蓋も全く見えず、硬口蓋しか観察できない。修正 Mallampati 分類 Class IV に相当し、選択肢の中で最も挿管困難が予想される。口腔の容積に対して舌が相対的に大きいため、喉頭鏡のブレードで舌を圧排しても喉頭が視野に入りにくい(Cormack-Lehane 分類で高グレードになりやすい)。このような患者ではビデオ喉頭鏡や声門上器具、気管支ファイバースコープなどを準備し、困難気道への対応計画を立てておく。
- ×d.
口蓋垂が大きく描かれているが、口蓋垂は先端まで完全に見えており Class I に相当する。口蓋垂の大きさ自体は Mallampati 分類の判定項目ではなく、この図から挿管困難は予想されない。
- ×e.
口蓋垂の両側に大きな口蓋扁桃が描かれており、扁桃肥大を示している。しかし口蓋垂は先端まで完全に見えており Class I に相当する。扁桃肥大は小児の閉塞性睡眠時無呼吸の原因となり、マスク換気に影響しうるが、Mallampati 分類の判定には関係せず、選択肢の中で最も挿管困難が予想されるものではない。
挿管困難を予測する主な因子
・修正 Mallampati 分類 Class III・IV ・開口制限(上下切歯間距離がおおむね3 cm=3横指未満) ・甲状オトガイ間距離の短縮(頸部伸展時におおむね6 cm未満)、小顎症(Pierre Robin 症候群など) ・頸部の可動域制限(関節リウマチ、強直性脊椎炎、頸椎固定後など) ・短く太い頸(猪首)、肥満、巨舌(先端巨大症、Down 症候群、甲状腺機能低下症など) ・上顎前歯の突出、動揺歯 ・頸部・口腔・咽頭の腫瘍や放射線治療後、気道の外傷・熱傷
関連する分類
・Cormack-Lehane 分類:喉頭展開時に実際に見える声門の範囲を Grade 1〜4 で評価する(Grade 1:声門のほぼ全体が見える、Grade 2:声門の後方のみ見える、Grade 3:喉頭蓋のみ見える、Grade 4:喉頭蓋も見えない)。Mallampati 分類が術前の「予測」であるのに対し、Cormack-Lehane 分類は挿管時の「実際の視野」の評価である。
Mallampati 分類の観察法
座位で頭部を中間位に保ち、発声させずに最大開口・最大挺舌させて観察する。単独での予測精度は高くないため、他の指標と組み合わせて総合的に評価する。
POINT
・Mallampati 分類は挺舌時に見える咽頭構造で挿管困難を予測する ・Class I:口蓋垂全体が見える → Class IV:硬口蓋しか見えない ・Class III・IV は挿管困難の予測因子である ・口蓋垂の大きさ、扁桃肥大、舌の長さそのものは判定基準ではない ・開口制限、甲状オトガイ間距離短縮、頸部可動域制限、肥満、小顎症なども挿管困難の予測因子
