StudyMed医師国家試験

「〜鏡」五つ並べて一つを選べ―L字の器具が開く声門への道

第117回医師国家試験 E問題 第6問

国試問題にチャレンジ

第117回 E問題 第6問

写真(A)~(E)を示す。  気管挿管に用いる器具はどれか。

第117回 E問題 第6問の問題画像
  1. a.A
  2. b.B
  3. c.C
  4. d.D
  5. e.E

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、診察や処置で使う「〜鏡」と名のつく器具の写真から、気管挿管に使うものを選ぶ問題だ。着眼点は2つ。それぞれの器具が「体のどの入口を、どうやって広げるか」と、気管挿管という手技で何を見る必要があるか、だよ。
医学生医学生
挿管って、要は口からチューブを気管に入れる手技ですよね。でも、どうやって食道じゃなくて気管に入れるのか、実はよく分かっていません。
ドクタードクター
大事な疑問だね。口の奥では気管の入口である声門と食道が隣り合っていて、ふつうは舌と喉頭蓋に隠れて見えない。そこで器具を口に入れて舌をよけ、喉頭蓋を持ち上げて声門を直接見えるようにする。これを喉頭展開といって、見えた声門にチューブを通すんだ。
医学生医学生
麻酔科の臨床実習で見学したとき、先生がL字形の金属の器具を左手で持って、口に差し込んでいました。
ドクタードクター
それが喉頭鏡だ。電池の入った持ち手のハンドルと、先端にライトの付いたへら状のブレードがL字に組み合わさっている。写真の中でこの形をしたものが正解になる。ブレードで舌を左によけながら持ち上げ、声門を見ながらチューブを進めるわけだ。
医学生医学生
ほかの器具も「中を見るための鏡」という点では似ていますよね。形で見分けるコツはありますか。
ドクタードクター
対象の部位を思い浮かべると覚えやすいよ。まず鼻鏡は、短い2枚のへらを外鼻孔に入れて、持ち手を握ると左右に開く。前鼻鏡検査や鼻腔異物の摘出で使う器具だ。
医学生医学生
腟鏡も2枚のくちばしが開くタイプでしたよね。産婦人科の実習で子宮頸部の細胞診のときに使っていました。
ドクタードクター
そう、クスコ腟鏡が代表だ。鼻鏡よりずっと長いくちばし状のブレードを腟内に入れて上下に開き、子宮頸部を観察する。同じ「開く」器具でも、長さと開く方向が違う。
医学生医学生
肛門鏡は筒状でしたっけ。消化器外科で痔核の診察を見たことがあります。
ドクタードクター
その通り。筒の中に内筒を入れた状態で挿入し、内筒を抜いて肛門管や下部直腸の粘膜を見る。内痔核や裂肛、痔瘻の開口部の診断に使う。そして耳鏡は先が細くなった漏斗状で、外耳道に入れて鼓膜を観察する。
医学生医学生
OSCEの練習で耳鏡を使いました。急性中耳炎だと鼓膜が赤く膨らんで見える、と習いました。
ドクタードクター
よく覚えているね。こうして整理すると、鼻鏡・腟鏡・肛門鏡・耳鏡はどれも体の入口から内部を観察する器具で、気管挿管には使わない。ハンドルと光源付きブレードのL字形をしているのは喉頭鏡だけだ。
医学生医学生
喉頭鏡のブレードにも種類がありましたよね。曲がったものとまっすぐなものを見た気がします。
ドクタードクター
曲型のマッキントッシュ型は、先端を舌根と喉頭蓋の間の喉頭蓋谷に置いて、喉頭蓋を間接的に持ち上げる。成人で一般的だね。直型のミラー型は喉頭蓋を直接すくい上げるタイプで、喉頭蓋が大きく柔らかい乳幼児でよく使われる。
医学生医学生
最近はモニターを見ながら挿管している場面も多かったです。
ドクタードクター
ビデオ喉頭鏡だね。ブレード先端のカメラで喉頭を画面に映すので、口・咽頭・喉頭の軸を一直線にそろえなくても声門が見えやすい。挿管困難が予想される患者で特に有用だ。ほかにも、チューブの形を整えるスタイレット、声門が見えにくいときにガイドとして先に気管へ入れるブジー、カフを膨らませるシリンジなども準備する。
医学生医学生
挿管できたかどうかは、胸の上がりと聴診で確認するんですよね。
ドクタードクター
それに加えて、呼気終末二酸化炭素の検出が確実な確認方法だ。食道挿管に気付かないと命に関わるから、視診・聴診だけに頼らず、カプノグラフィで呼気中のCO2が継続して検出されることを必ず確かめよう。

まとめ

気管挿管では、口から入れた喉頭鏡で舌と喉頭蓋を持ち上げて声門を直接見えるようにする喉頭展開を行い、そこへ気管チューブを通します。喉頭鏡はハンドルと先端に光源の付いたブレードがL字形に組み合わさった器具で、成人で一般的な曲型のマッキントッシュ型と、乳幼児で使われることの多い直型のミラー型があります。鼻鏡(短い2枚のへらを左右に開く)、腟鏡(長いくちばし状のブレードを上下に開く)、肛門鏡(筒状で内筒を使う)、耳鏡(先細りの漏斗状)は、形と観察部位で見分けられます。挿管ではビデオ喉頭鏡・スタイレット・ブジーなどの補助具も用いられ、留置後は呼気終末二酸化炭素の検出で気管内にあることを確認します。器具の形と用途を結び付けて覚えておくことは、救急・麻酔の現場で素早く正しく準備するための基本になります。

解答・解説

正解はeです

診察や処置で使う「〜鏡」と呼ばれる器具の外観を見分け、そのうち気管挿管に使うものを選ぶ問題である。 写真の器具は、A:鼻鏡、B:腟鏡、C:肛門鏡、D:耳鏡、E:喉頭鏡である。いずれも体腔の入口を広げたり光を当てたりして内部を直接見るための器具だが、対象となる部位と形が違う。 気管挿管では、口から入れた器具で舌と喉頭蓋を持ち上げ、声門(声帯の間のすき間)を直接見えるようにする「喉頭展開」を行い、そこへ気管チューブを通す。この操作に使うのが、L字形でハンドル(電池が入る持ち手)とブレード(先端にライトの付いた舌圧子状の部分)からなる喉頭鏡である。したがって、L字形の器具の写真Eを選べばよい。

選択肢考察

  1. ×a.  A

    鼻鏡である。2枚の短いへら(嘴部)を外鼻孔に入れ、持ち手を握って鼻孔を左右に開き、鼻腔の中を観察する。前鼻鏡検査のほか、鼻腔異物を取り出すときや、経鼻内視鏡を入れる前に鼻腔の状態を確かめるときに用いる。気管挿管には使わない。

  2. ×b.  B

    腟鏡(クスコ腟鏡など)である。くちばし状の2枚のブレードを腟内に入れて上下に開き、腟壁や子宮頸部を観察する。子宮頸がん検診の細胞診の検体採取、腟分泌物の採取、子宮頸部の処置などで開口を保つのに使う。気管挿管には使わない。

  3. ×c.  C

    肛門鏡である。筒状の器具を肛門から挿入し、肛門管や下部直腸の粘膜を直接観察する。内痔核、裂肛、痔瘻の開口部などの診断に使う。気管挿管には使わない。

  4. ×d.  D

    耳鏡である。先が細くなった漏斗状の器具(イヤースペキュラ)を外耳道に入れ、外耳道や鼓膜を観察する。急性中耳炎での鼓膜の発赤・膨隆、滲出性中耳炎、鼓膜穿孔などの確認に用いる。気管挿管には使わない。

  5. ○e.  E

    喉頭鏡である。ハンドルとブレードがL字形に組み合わさり、ブレード先端にライトが付く。口から入れたブレードで舌を左へよけながら喉頭蓋を持ち上げ(曲型のマッキントッシュ型では先端を喉頭蓋谷に置く)、声門を直接見えるようにする。この喉頭展開を行ったうえで、声門を見ながら気管チューブを気管内へ進める。気管挿管に欠かせない器具であり、これが正解である。

気管挿管で使う主な器具

・喉頭鏡:ハンドルとブレードからなる。ブレードには曲型のマッキントッシュ型(先端を喉頭蓋谷に入れ、喉頭蓋を間接的に持ち上げる)と、直型のミラー型(喉頭蓋を直接すくい上げる。乳幼児でよく使う)がある。 ・ビデオ喉頭鏡:ブレード先端にカメラがあり、喉頭を画面で見ながら挿管する。口・咽頭・喉頭の軸を一直線にそろえなくても声門が見えるため、挿管困難が予想される患者で有用であり、使用が広がっている。 ・気管チューブ:先端近くにカフ(ふくらませて気管とのすき間をふさぐ風船)が付く。 ・スタイレット:チューブ内に入れて形を整え、挿管しやすくする芯(金属などの細い棒)である。 ・カフ用シリンジ、バイトブロック、固定用テープなど。 ・ブジー(ガムエラスティックブジー):声門がよく見えないときに先に気管へ入れ、それをガイドにしてチューブを進める。 ・挿管の確認:胸の動きや聴診に加え、呼気終末二酸化炭素(EtCO2)の検出が確実な確認方法である。

「〜鏡」の見分け方

・鼻鏡:短い2枚の嘴部を左右に開く。 ・腟鏡:長めのくちばし状ブレードを上下に開く。 ・肛門鏡:筒状で、中に内筒(オブチュレーター)を入れて挿入する。 ・耳鏡:先が細い漏斗状。光源付きのものもある。 ・喉頭鏡:ハンドルとブレードがL字形をつくり、ブレード先端に光源がある。

POINT

・気管挿管では、喉頭鏡で喉頭展開をして声門を確認し、そこへ気管チューブを入れる。 ・喉頭鏡はL字形(ハンドル+光源付きブレード)。曲型のマッキントッシュ型と直型のミラー型がある。 ・鼻鏡・腟鏡・肛門鏡・耳鏡は形と使う部位で見分ける。 ・挿管の補助具としてスタイレット、ブジー、ビデオ喉頭鏡も押さえておく。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。