StudyMed医師国家試験

内腔から届くか、取り切れるか―経尿道的手術の適応を前立腺の「場所」で見抜く

第106回医師国家試験 E問題 第21問

国試問題にチャレンジ

第106回 E問題 第21問

経尿道的手術の適応とならないのはどれか。

  1. a.尿管結石
  2. b.膀胱結石
  3. c.膀胱癌
  4. d.前立腺肥大症
  5. e.前立腺癌

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は経尿道的手術の適応を問う問題だ。考えるべきは2点。病変に尿路の内腔側から到達できるかどうか、そして内腔側からの処置で治療目的を果たせるかどうかだよ。
医学生医学生
経尿道的手術は、尿道から内視鏡を入れて、皮膚を切らずに処置する手術ですよね。
ドクタードクター
そう。膀胱鏡や尿管鏡、切除鏡を外尿道口から入れて、尿路の内側から病変を処置する。だから内腔にある結石、粘膜から内腔に突き出す腫瘍、尿道を取り囲んで内腔を狭める組織が良い適応になる。
医学生医学生
結石ならどちらも内腔にあるので適応ですね。泌尿器科の実習で、尿管鏡でレーザー砕石するのを見学しました。
ドクタードクター
いい経験だね。尿管結石には経尿道的尿管砕石術(TUL)を行い、主にホルミウム・ヤグレーザーで砕いてバスケット鉗子で回収する。体外衝撃波結石破砕術と並ぶ標準治療で、最近は軟性尿管鏡で腎結石まで届く。膀胱結石も膀胱鏡下で砕石できる。
医学生医学生
膀胱結石は前立腺肥大症に合併しやすいと講義で習いました。
ドクタードクター
その通り。残尿が背景にあることが多いので、原因の前立腺肥大症の手術を同時に行うこともある。では膀胱癌はどうかな。
医学生医学生
TUR-BTですよね。でも癌を内視鏡で削るだけで大丈夫なのか、少し不安です。
ドクタードクター
良い疑問だ。TUR-BTは治療であると同時に、組織型や異型度、筋層浸潤の有無を病理で確定する診断手技でもある。筋層非浸潤性ならTUR-BTが根治的治療になり、再発・進展リスクに応じてBCGや抗癌剤の膀胱内注入を追加する。筋層浸潤があれば膀胱全摘除術などに進むんだ。
医学生医学生
まず切除して深達度を決める、ということですね。前立腺肥大症はTUR-Pがあるので適応、と。
ドクタードクター
そう。前立腺肥大症は尿道周囲の移行域に発生して尿道を圧迫する。薬物療法で効果不十分な場合や、尿閉・膀胱結石・水腎症などの合併症があれば手術を考え、TUR-PやHoLEPなどの経尿道的手術が標準だ。尿道を取り囲む腺腫を内側から削ったり、くり抜いたりするイメージだね。
医学生医学生
同じ前立腺なのに、前立腺癌はなぜだめなんでしょう。肥大症と同じように削れそうな気がします。
ドクタードクター
そこがこの問題の核心だ。前立腺癌は約7割が尿道から離れた辺縁域に発生する。根治にはがんを残さず切除する必要があるから、前立腺と精嚢を一塊にして摘出する前立腺全摘除術が行われる。尿道側から削っても被膜側の癌は取り切れない。だから適応とならないのは前立腺癌だ。
医学生医学生
直腸診で前立腺癌が触れやすいのも、辺縁域が直腸側にあるからですね。OSCEの練習で直腸診の手順を確認したのを思い出しました。
ドクタードクター
よくつながったね。肥大症は移行域、癌は辺縁域、という区域の違いがそのまま治療法の違いになっている。ただし注意点として、進行前立腺癌で尿閉や出血が強いときに、症状緩和のために経尿道的切除を行うことはある。これはあくまで対症療法で、癌そのものの治療ではないよ。
医学生医学生
根治治療としては適応外、ということですね。全摘は今も開腹が中心ですか。
ドクタードクター
現在はロボット支援腹腔鏡下手術が主流で、開腹や腹腔鏡下でも行われる。限局性前立腺癌では、リスク分類や年齢、期待余命に応じて監視療法、放射線療法、内分泌療法なども選択肢になる。
医学生医学生
経尿道的手術そのもので気をつける合併症はありますか。
ドクタードクター
代表がTUR症候群だ。単極式のTURでは非電解質の灌流液を使うので、それが血管内に吸収されると希釈性低ナトリウム血症を起こし、意識障害などにつながることがある。生理食塩水を使う双極式ではこのリスクが小さい。術中・術後の意識状態や血清ナトリウムの変化には注意しよう。

まとめ

経尿道的手術は外尿道口から内視鏡を挿入し、尿路の内腔側から病変を処置する手術で、尿管結石・膀胱結石の砕石、膀胱癌に対するTUR-BT、前立腺肥大症に対するTUR-PやHoLEPが代表です。TUR-BTは治療であると同時に深達度診断の手技でもあり、筋層非浸潤性膀胱癌では根治的治療となります。前立腺癌は尿道から離れた辺縁域に好発するため内腔からは取り切れず、根治手術は前立腺と精嚢を一塊に摘出する前立腺全摘除術で、現在はロボット支援手術が主流です。進行癌の排尿障害に対する経尿道的切除は対症療法にすぎず、また単極式TURでは灌流液の吸収による低ナトリウム血症(TUR症候群)に注意が必要です。病変の局在と「内腔から届くか・取り切れるか」という視点は、泌尿器科手術の選択を理解する基本になります。

解答・解説

正解はeです

経尿道的手術とは、外尿道口から内視鏡(膀胱鏡・尿管鏡・切除鏡など)を挿入し、皮膚を切開せずに尿路の内腔側から病変を処置する手術の総称である。したがって適応となるのは、尿路の内腔から到達でき、内腔側からの処置で治療目的を果たせる病変である。 ・尿路内腔にある異物(結石)の破砕・摘出 → 尿管結石、膀胱結石、腎結石 ・尿路粘膜から発生し内腔に突出する腫瘍の切除 → 膀胱癌(筋層非浸潤性) ・尿道を取り囲んで内腔を狭める組織の切除・核出 → 前立腺肥大症(移行域の腺腫) 一方、前立腺癌は多くが尿道から離れた辺縁域(外腺)に発生し、根治のためには前立腺と精嚢を一塊として摘出する(前立腺全摘除術)必要がある。尿道側から前立腺を削る方法では癌を取り切ることができないため、根治治療としての経尿道的手術の適応にはならない。

選択肢考察

  1. ×a.  尿管結石

    尿管結石には経尿道的尿管砕石術(transurethral ureterolithotripsy:TUL)が行われる。経尿道的に尿管鏡を尿管内へ進め、レーザー(主にホルミウム・ヤグレーザー)などで結石を破砕し、バスケット鉗子などで摘出する。近年は軟性尿管鏡の進歩により、尿管結石だけでなく腎結石にも経尿道的アプローチ(f-TUL、RIRS)が用いられている。体外衝撃波結石破砕術(ESWL)と並ぶ標準的治療であり、適応となる。

  2. ×b.  膀胱結石

    膀胱結石には経尿道的膀胱砕石術が行われる。膀胱鏡下に砕石鉗子、レーザー、超音波・圧縮空気式砕石装置などで結石を細かく砕いて体外に排出する。膀胱結石の多くは前立腺肥大症などによる下部尿路閉塞(残尿)を背景に生じるため、原因となる前立腺肥大症の経尿道的手術を同時に行うこともある。適応となる。

  3. ×c.  膀胱癌

    膀胱癌に対しては、まず経尿道的膀胱腫瘍切除術(transurethral resection of bladder tumor:TUR-BT)を行う。これは治療であると同時に、組織型・異型度(low grade / high grade)と深達度(筋層浸潤の有無=T分類)を病理学的に確定する診断手技でもある。筋層非浸潤性膀胱癌ではTUR-BTが根治的治療となり、再発・進展リスクに応じて抗癌剤やBCG(カルメット・ゲラン桿菌)の膀胱内注入療法を追加する。筋層浸潤性であれば膀胱全摘除術などへ進む。適応となる。

  4. ×d.  前立腺肥大症

    前立腺肥大症は尿道周囲の移行域に発生し、尿道を圧迫して排尿障害を起こす。薬物療法(α1遮断薬、PDE5阻害薬、5α還元酵素阻害薬など)で効果不十分な場合や、尿閉・膀胱結石・水腎症などの合併症がある場合に手術を行う。標準術式は経尿道的前立腺切除術(transurethral resection of the prostate:TUR-P)であり、ほかにホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)や光選択的前立腺レーザー蒸散術(PVP)などの経尿道的手術がある。適応となる。

  5. ○e.  前立腺癌

    前立腺癌は約7割が辺縁域(外腺)に発生し、尿道から離れた被膜側に病変が存在することが多い。限局性前立腺癌の根治手術は前立腺全摘除術(前立腺と精嚢を一塊として摘出し、膀胱と尿道を吻合する)であり、現在はロボット支援腹腔鏡下手術が主流で、開腹(恥骨後式)や腹腔鏡下でも行われる。尿道側から削る経尿道的手術では癌を根治的に切除できないため、癌治療としての適応とならない。ただし進行癌で尿閉などの排尿障害や出血が強い場合に、症状緩和目的で経尿道的切除(いわゆるチャネルTUR)を行うことはある。これはあくまで対症療法であり、癌の治療ではない。

主な経尿道的手術

・TUR-BT(経尿道的膀胱腫瘍切除術):膀胱癌の診断・治療 ・TUR-P(経尿道的前立腺切除術)、HoLEP(ホルミウムレーザー前立腺核出術)、PVP(光選択的前立腺レーザー蒸散術):前立腺肥大症 ・TUL(経尿道的尿管砕石術):尿管結石・腎結石 ・経尿道的膀胱砕石術:膀胱結石 ・内尿道切開術:尿道狭窄

前立腺の区域と疾患

・移行域(尿道周囲、内腺):前立腺肥大症の好発部位 ・辺縁域(被膜側、外腺):前立腺癌の好発部位(直腸診で触れやすい) ・中心域:射精管周囲

限局性前立腺癌の主な治療

PSA監視療法(監視療法)、前立腺全摘除術(ロボット支援・腹腔鏡・開腹)、放射線療法(外照射・密封小線源療法)、内分泌療法など。リスク分類・年齢・期待余命に応じて選択する。

TUR関連の合併症

灌流液に非電解質液(D-ソルビトールなど)を用いる単極式TURでは、灌流液の血管内吸収による希釈性低ナトリウム血症(TUR症候群)に注意する。生理食塩水を灌流液とする双極式(バイポーラ)TURではこのリスクが小さい。

POINT

・経尿道的手術の代表:TUR-BT(膀胱癌)、TUR-P(前立腺肥大症)、TUL(尿管結石)、膀胱砕石術(膀胱結石) ・前立腺癌は辺縁域に好発し、根治手術は前立腺全摘除術(現在はロボット支援手術が主流)で、経尿道的手術は根治治療にならない ・前立腺肥大症は移行域、前立腺癌は辺縁域に好発する ・進行前立腺癌の排尿障害に対する経尿道的切除は対症療法にすぎない

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。