StudyMed医師国家試験

生まれてすぐは黄色くない?―生理的黄疸の主役はグルクロン酸抱合の未熟性

第106回医師国家試験 E問題 第1問

国試問題にチャレンジ

第106回 E問題 第1問

新生児の生理的黄疸について正しいのはどれか。

  1. a.出生直後から存在する。
  2. b.人工乳は黄疸を増悪させる。
  3. c.直接型ビリルビン優位である。
  4. d.生後8日以上存在するのは異常である。
  5. e.グルクロン酸抱合酵素の未熟性が原因である。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は新生児の生理的黄疸についての知識問題だ。ポイントは、いつ出て、いつ消えるのか、どの型のビリルビンが増えるのか、そしてなぜ起こるのか。ビリルビン代謝の流れを思い出しながら考えると、選択肢はすべて筋道立てて判断できるよ。
医学生医学生
生化学の講義で習った流れだと、赤血球が壊れて間接ビリルビンができて、肝臓で抱合されて直接ビリルビンになる、でしたよね。
ドクタードクター
その通り。間接ビリルビンは水に溶けにくく、アルブミンと結合して肝臓に運ばれる。肝細胞でUDP-グルクロン酸転移酵素、UGT1A1によってグルクロン酸と抱合されると水溶性の直接ビリルビンになって胆汁に出ていく。新生児ではこの抱合酵素の活性が生まれた時点でまだ低いんだ。これが生理的黄疸の主な原因で、正解になる。
医学生医学生
処理が追いつかないから、抱合される前の間接ビリルビンがたまる、ということですね。
ドクタードクター
そう。だから直接型ビリルビン優位という選択肢は誤りだ。生理的黄疸は間接型優位。直接ビリルビンが上がっているなら、抱合した後の排泄経路に問題があることを意味する。
医学生医学生
小児科の臨床実習で、胆道閉鎖症は便の色が白っぽくなると教わりました。直接ビリルビンが上がる代表ですよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。胆道閉鎖症は早期の葛西手術が予後を左右するから、直接ビリルビン高値や灰白色便は見逃してはいけない。母子手帳に便色カードが付いているのもそのためだ。ところで、抱合能が低いなら、胎児のときはどうしていたと思う?
医学生医学生
うーん……胎児のときから黄色いわけではないので、お母さんに処理してもらっていた、とかですか。
ドクタードクター
正解。胎児期は間接ビリルビンを胎盤経由で母体に渡して処理してもらっている。抱合された水溶性のビリルビンはむしろ胎盤を通りにくいから、胎児の抱合能は低いままで都合がいいんだ。出生して胎盤のルートがなくなってから、未熟な肝臓で処理しなければならなくなる。
医学生医学生
だから出生直後から黄疸がある、というのは誤りなんですね。生まれた瞬間はまだビリルビンが上がっていない。
ドクタードクター
その理解でいい。生理的黄疸は生後2〜3日で目に見えるようになり、正期産児では4〜5日頃にピーク、1〜2週間で消えていく。逆に生後24時間以内に出る早発黄疸は、血液型不適合による溶血性疾患などの病的黄疸を強く疑うサインだ。
医学生医学生
1〜2週間で消えるなら、生後8日以上残っているのが異常、というのも言い過ぎですね。
ドクタードクター
そう。8日目にまだ黄疸が残っていてもおかしくない。臨床では、正期産児で生後2週間を超えて続くものを遷延性黄疸と呼んで原因検索の目安にする。母乳性黄疸が最も多いけれど、先天性甲状腺機能低下症や胆道閉鎖症などを見逃さないよう、直接ビリルビン、便の色、甲状腺機能を確認するんだ。
医学生医学生
母乳性黄疸ということは、人工乳が黄疸を増悪させるという選択肢は逆なんですね。
ドクタードクター
その通り。黄疸を強めたり長引かせたりしやすいのは母乳のほうだ。古くはプレグナンジオールが抱合を阻害するという説が有名だったけれど、今は母乳中のβ-グルクロニダーゼによる腸肝循環の増加や、UGT1A1遺伝子の多型など、複数の要因が関わると考えられている。多くは良性で、他の原因を除外できれば母乳を続けてよい。
医学生医学生
抱合の未熟性のほかにも、黄疸が出やすい理由はありますか。
ドクタードクター
大きく2つある。1つは産生の増加で、新生児は赤血球量が多く、赤血球の寿命も成人より短いから、壊れる赤血球が多い。もう1つは腸肝循環の亢進。腸内細菌が少なくてビリルビンがウロビリノゲンに変わりにくく、腸管のβ-グルクロニダーゼで間接型に戻されて再吸収されやすいんだ。
医学生医学生
作るのが多くて、処理が遅くて、戻ってくる量も多い、という3つの重なりですね。
ドクタードクター
きれいにまとまったね。最後に注意点を。間接ビリルビンは脂溶性で、アルブミンと結合していない遊離ビリルビンは血液脳関門を通過し、大脳基底核などに沈着して核黄疸を起こす。後遺症としてアテトーゼ型脳性麻痺や聴覚障害が残りうる。だから日齢や出生体重ごとの基準を超えたら光線療法を行い、間接ビリルビンを水溶性の異性体に変えて排泄させる。重症例では交換輸血も考える。
医学生医学生
生理的だからと油断せず、出る時期、型、続く期間で病的なものを拾い上げることが大事なんですね。

まとめ

新生児の生理的黄疸は、肝臓のグルクロン酸抱合酵素(UGT1A1)の未熟性を主因とし、赤血球破壊によるビリルビン産生の増加と腸肝循環の亢進が加わって起こる間接ビリルビン優位の黄疸です。生後2〜3日に出現し、正期産児では4〜5日頃にピーク、1〜2週間で消えるのが典型的な経過で、出生直後には存在しません。黄疸を強めたり長引かせたりしやすいのは人工乳ではなく母乳であり、母乳性黄疸の多くは良性です。生後24時間以内の早発黄疸、急激な上昇、2週間を超える遷延、直接ビリルビンの上昇は病的黄疸を疑う目安で、溶血性疾患や胆道閉鎖症の早期発見につながります。生理的な経過を正確に知ることは、核黄疸を防ぎ病的黄疸を見逃さないための新生児診療の基本です。

解答・解説

正解はeです

テーマ

新生児の生理的黄疸は、ほぼすべての新生児にみられる一過性の高ビリルビン血症である。臨床的に目で見てわかる黄疸は、正期産児の多くに出現する。問われているのは、生理的黄疸の「出現時期」「経過」「ビリルビンの種類」「原因」「栄養法との関係」である。

ビリルビン代謝の基本

赤血球が壊れるとヘモグロビンからビリルビンが作られる。このビリルビンは水に溶けにくい「間接(非抱合型)ビリルビン」で、アルブミンと結合して肝臓に運ばれる。肝細胞内でUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT1A1)によってグルクロン酸と結合(抱合)されると、水溶性の「直接(抱合型)ビリルビン」となり、胆汁中に排泄される。

新生児で間接ビリルビンが増える理由

1. ビリルビン産生の増加:新生児は赤血球量が多く(多血傾向)、赤血球の寿命も成人より短い(成人の約120日に対し、正期産児では70〜90日程度)ため、壊れる赤血球が多い。 2. 肝臓での処理能力の未熟性:グルクロン酸抱合酵素(UGT1A1)の活性が生後しばらく低く、肝細胞への取り込みに関わる蛋白(リガンディン)も少ない。 3. 腸肝循環の亢進:腸内細菌叢が未発達で直接ビリルビンがウロビリノゲンに変わりにくいうえ、腸管のβ-グルクロニダーゼが直接ビリルビンを間接ビリルビンに戻し、再吸収されやすい。 これらが重なって血中に間接ビリルビンがたまり、黄疸となる。生後数日して酵素活性が成熟するにつれ自然に消えていく。

正解を導く考え方

生理的黄疸は「生後2〜3日に出現し、4〜5日頃にピークとなり、1〜2週間で消える間接ビリルビン優位の黄疸」であり、主な原因は肝臓のグルクロン酸抱合能の未熟性である。この経過から外れるもの(生後24時間以内の出現、急激な上昇、長引く黄疸、直接ビリルビンの上昇など)は病的黄疸を疑う手がかりとなる。

選択肢考察

  1. ×a.  出生直後から存在する。

    生理的黄疸は出生直後にはみられず、生後2〜3日頃に目で見てわかるようになり、正期産児では生後4〜5日頃にピークを迎える(早産児ではピークがやや遅く、程度も強くなりやすい)。胎児期には間接ビリルビンが胎盤を通って母体側で処理されるため、出生時点ではまだビリルビンは高くない。出生後に胎盤という処理ルートがなくなり、新生児自身の未熟な肝臓で処理しなければならなくなって、はじめてビリルビンが上昇してくる。逆に生後24時間以内に出現する黄疸(早発黄疸)は、血液型不適合による溶血性疾患などの病的黄疸を強く疑う所見である。

  2. ×b.  人工乳は黄疸を増悪させる。

    黄疸を強めたり長引かせたりしやすいのは、人工乳ではなく母乳である。母乳性黄疸と呼ばれ、母乳栄養児では生理的黄疸が生後2週以降、ときに1〜2か月まで続くことがある。機序としては、古くは母乳中のプレグナンジオール(ステロイド代謝産物)がグルクロン酸抱合を阻害するという説が有名であったが、現在では母乳中のβ-グルクロニダーゼによる腸肝循環の増加、母乳中の脂肪酸などによる抱合の抑制、さらにUGT1A1遺伝子の多型(日本人を含む東アジア人に多い)など、複数の要因が関わると考えられている。また生後早期に哺乳量が不足すると、腸の動きが少なく排便が遅れて腸肝循環が増えるため、黄疸が強くなる。母乳性黄疸の多くは良性で、他の原因を除外できれば母乳を続けてよい。

  3. ×c.  直接型ビリルビン優位である。

    生理的黄疸は、肝臓でのグルクロン酸抱合が追いつかないことによる黄疸であり、抱合を受ける前の間接型(非抱合型)ビリルビンが優位となる。直接型(抱合型)ビリルビンが上昇している場合は、抱合後の排泄経路の障害を意味し、胆道閉鎖症、新生児肝炎、先天性代謝異常、感染症などの病的状態を疑う。とくに胆道閉鎖症は早期の手術(葛西手術)が予後を左右するため、直接ビリルビン高値や灰白色便は見逃してはならない所見である。

  4. ×d.  生後8日以上存在するのは異常である。

    生理的黄疸は通常1〜2週間で消えていくため、生後8日の時点で黄疸が残っていても異常とはいえない。臨床的には、正期産児で生後2週間を超えて続く黄疸を遷延性黄疸と呼び、原因検索の目安とする。遷延性黄疸で最も多いのは母乳性黄疸であるが、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)、胆道閉鎖症などの直接ビリルビン上昇をきたす疾患、溶血性疾患などを見逃さないよう、直接ビリルビン、便の色、甲状腺機能などを確認する。

  5. ○e.  グルクロン酸抱合酵素の未熟性が原因である。

    新生児の肝臓は、間接ビリルビンを直接ビリルビンに変えるUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT1A1)の活性が出生時に低い。胎児期には間接ビリルビンをそのまま胎盤経由で母体に渡して処理してもらうため、胎児自身の抱合能は低い状態に保たれている(抱合された水溶性の直接ビリルビンは胎盤を通過しにくい)。出生後、この酵素活性は数日から1〜2週間かけて成熟していくが、それまでの間は、多い赤血球の破壊によるビリルビン産生の増加や腸肝循環の亢進と相まって、処理が追いつかず間接ビリルビンが血中にたまる。これが生理的黄疸の主な原因である。

生理的黄疸と病的黄疸の見分け方

病的黄疸を疑う目安は次のとおりである。 ・早発黄疸:生後24時間以内に出現する黄疸(血液型不適合による溶血性疾患などを疑う)。 ・重症黄疸:血清ビリルビン値が日齢・出生体重・在胎週数に応じた治療基準を超えるもの、あるいは急激に上昇するもの。 ・遷延性黄疸:正期産児で生後2週間(早産児では3週間程度)を超えて続く黄疸。 ・直接ビリルビンの上昇:直接ビリルビンが一定の値(概ね1.5〜2 mg/dL以上、または総ビリルビンの一定割合以上)を超える場合。胆道閉鎖症などを疑う。

主な病的黄疸の原因

・間接ビリルビン優位:血液型不適合(Rh式、ABO式)による溶血性疾患、遺伝性球状赤血球症、G6PD欠乏症、頭血腫などの閉鎖腔出血、多血症、先天性甲状腺機能低下症、Crigler-Najjar症候群、母乳性黄疸など。 ・直接ビリルビン優位:胆道閉鎖症、新生児肝炎、胆道拡張症、先天性代謝異常(シトリン欠損症など)、先天性感染症、敗血症など。

高ビリルビン血症の危険性

間接ビリルビンは脂溶性で、アルブミンと結合していない遊離(アンバウンド)ビリルビンは血液脳関門を通過し、大脳基底核などに沈着して核黄疸(ビリルビン脳症)を起こす。後遺症としてアテトーゼ型脳性麻痺、聴覚障害などが残る。早産、低アルブミン血症、アシドーシス、感染症、アルブミンとの結合を競合する薬剤などは危険を高める。

治療

・光線療法:光(青〜青緑色光)をあてると、皮膚の間接ビリルビンが水溶性の異性体に変化し、抱合を受けずに胆汁や尿から排泄できるようになる。 ・交換輸血:光線療法で不十分な重症例や、溶血性疾患による急速な上昇例で行う。 ・治療開始の判断には、日齢・出生体重(在胎週数)ごとの基準値を用いる。

POINT

・生理的黄疸は生後2〜3日に出現し、正期産児では4〜5日頃にピーク、1〜2週間で消える。 ・間接(非抱合型)ビリルビン優位。主因はグルクロン酸抱合酵素(UGT1A1)の未熟性。 ・ほかに赤血球量の多さ・寿命の短さによる産生増加と、腸肝循環の亢進が関与する。 ・黄疸を増強・遷延させるのは母乳(母乳性黄疸)で、人工乳ではない。 ・病的黄疸を疑う目安:生後24時間以内の出現、急激な上昇・高値、2週間を超える遷延、直接ビリルビンの上昇。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。