「0-Ⅱc」を分解せよ―記号で読み解く胃癌の肉眼型分類
第106回医師国家試験 D問題 第8問
国試問題にチャレンジ
0-Ⅱc型胃癌はどれか。
- a.限局潰瘍型進行癌
- b.腫瘤型進行癌
- c.びまん浸潤型進行癌
- d.表面陥凹型早期癌
- e.表面隆起型早期癌
対話形式の解説
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医学生
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ドクターまとめ
胃癌取扱い規約の肉眼型分類では、0型が表在型(早期癌に多い形態)、1〜4型が進行型、5型が分類不能とされ、0-Ⅱcは「0=表在型、Ⅱ=表面型、c=陥凹」を意味する表面陥凹型で、早期胃癌で最も多い肉眼型です。表在型にはほかに0-Ⅰ(隆起型)、0-Ⅱa(表面隆起型)、0-Ⅱb(表面平坦型)、0-Ⅲ(陥凹型)があり、進行型は1型(腫瘤型)、2型(潰瘍限局型)、3型(潰瘍浸潤型、進行癌で最多)、4型(びまん浸潤型、スキルス胃癌)に分かれます。肉眼型は形態の分類であって深達度そのものではなく、早期胃癌は浸潤が粘膜下層までにとどまるものと定義されます。内視鏡では陥凹縁の蚕食像やヒダ先端の中断・先細り・癒合がⅡcを疑う手がかりとなり、ESDの適応判断にもつながるため、記号の意味を分解して理解しておくことが診断と治療の両面で役立ちます。
解答・解説
正解はdです
胃癌の肉眼型分類(胃癌取扱い規約)を問う問題である。肉眼型は、内視鏡や切除標本で見た腫瘍の形によって、0型から5型に分けられる。 大きな枠組みとして、0型は「表在型」と呼ばれ、癌の深達度が粘膜内または粘膜下層までにとどまる早期癌(T1)でよくみられる形態である。1~4型は「進行型」で、固有筋層以深に浸潤した進行癌でよくみられる形態である。5型はそのいずれにも分類できないものを指す。 0型はさらに、隆起しているか(Ⅰ・Ⅱa)、ほぼ平坦か(Ⅱb)、浅く陥凹しているか(Ⅱc)、深い陥凹(潰瘍)か(Ⅲ)で細分される。本問の「0-Ⅱc」は、0=表在型、Ⅱ=表面型、c=陥凹(concave の意味で覚えるとよい)を表すので、「表面陥凹型の早期癌」に対応する。記号の意味を分解して理解しておけば、ほかの型との対応もすぐに導ける。
選択肢考察
- ×a. 限局潰瘍型進行癌
潰瘍を形成し、その周囲を取り囲む周堤が明瞭で、周囲粘膜との境界がはっきりしている進行癌は2型(潰瘍限局型)である。0-Ⅱc 型のように粘膜面の浅いくぼみにとどまる形態ではない。なお、周堤の一部が崩れて境界が不明瞭になり、周囲へ浸潤性に広がるものは3型(潰瘍浸潤型)であり、進行胃癌で最も頻度が高い。
- ×b. 腫瘤型進行癌
明らかに隆起した腫瘤を形成し、周囲粘膜との境界が明瞭な進行癌は1型(腫瘤型)である。形態は隆起であり、陥凹を表す Ⅱc とは対照的である。表在型で隆起を示すのは0-Ⅰ型(隆起型)や0-Ⅱa 型(表面隆起型)であり、1型とは深達度が異なる。
- ×c. びまん浸潤型進行癌
明らかな潰瘍や周堤を作らず、癌が胃壁内をびまん性に浸潤して壁を硬く厚くする進行癌は4型(びまん浸潤型)である。胃全体に広がると胃が硬く縮んだ状態になり、スキルス胃癌(硬性癌)と呼ばれる。低分化腺癌や印環細胞癌が多く、腹膜播種を来しやすいため予後不良である。0-Ⅱc 型とは無関係である。ただし、スキルス胃癌の原発巣が小さな Ⅱc 様の陥凹として始まることがある点は知っておくとよい。
- ○d. 表面陥凹型早期癌
0-Ⅱc 型は表在型(0型)のうち、表面型(Ⅱ)で、粘膜面からわずかに陥凹しているもの(c)であり、表面陥凹型に相当する。0型の形態は主に粘膜内から粘膜下層までの早期癌でみられるので、「表面陥凹型早期癌」が該当する。0-Ⅱc 型は早期胃癌の中で最も頻度が高い肉眼型であり、内視鏡では周囲とわずかに色調の異なる浅いくぼみとして認められ、陥凹縁の蚕食像や集中するヒダの先端の中断・先細り・癒合などが悪性を示す所見となる。
- ×e. 表面隆起型早期癌
表在型のうち、周囲粘膜からわずかに(おおむね 2~3 mm 程度まで)隆起するものは0-Ⅱa 型(表面隆起型)である。隆起がそれより明らかに高いものは0-Ⅰ型(隆起型)とされる。いずれも「隆起」であり、陥凹を示す0-Ⅱc 型とは異なる。
胃癌の肉眼型分類(胃癌取扱い規約)
0型(表在型): 病変の肉眼形態が軽度な凹凸にとどまるもの。早期癌(T1: 粘膜内または粘膜下層まで)に多い ・0-Ⅰ型(隆起型): 明らかな腫瘤状の隆起 ・0-Ⅱa 型(表面隆起型): わずかな隆起 ・0-Ⅱb 型(表面平坦型): 周囲粘膜とほぼ同じ高さで、凹凸をほとんど認めない ・0-Ⅱc 型(表面陥凹型): わずかな陥凹(びらん程度)。早期胃癌で最も多い ・0-Ⅲ型(陥凹型): 明らかに深い陥凹(潰瘍)。単独はまれで、Ⅱc+Ⅲのように組み合わされることが多い ※複数の型が混在するときは、面積の広い方から順に「+」でつなぐ(例: 0-Ⅱc+Ⅲ、0-Ⅱa+Ⅱc)。 進行型: 固有筋層以深に浸潤した進行癌に多い ・1型(腫瘤型): 明らかに隆起した腫瘤、境界明瞭 ・2型(潰瘍限局型): 潰瘍と明瞭な周堤、境界明瞭 ・3型(潰瘍浸潤型): 潰瘍と、周囲へ浸潤して境界不明瞭な周堤。進行癌で最も多い ・4型(びまん浸潤型): 潰瘍や周堤が目立たず、壁がびまん性に肥厚・硬化。スキルス胃癌 ・5型(分類不能): 上記のいずれにも分類できないもの
早期胃癌の定義
早期胃癌は、リンパ節転移の有無にかかわらず、癌の浸潤が粘膜内(M)または粘膜下層(SM)までにとどまるもの(T1)をいう。肉眼型は形態による分類であり深達度そのものではないため、0型でも実際には固有筋層以深に浸潤していることがあり、その場合は深達度を併記して評価する。
治療との関連
分化型で潰瘍を伴わない粘膜内癌など、リンパ節転移の可能性がきわめて低い病変は、内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)の適応となりうる。0-Ⅱc 型は ESD の対象となることが多い形態である。
POINT
・0型=表在型(早期癌に多い)、1~4型=進行型、5型=分類不能 ・0-Ⅱa=表面隆起、0-Ⅱb=表面平坦、0-Ⅱc=表面陥凹(早期胃癌で最多) ・1型=腫瘤型、2型=潰瘍限局型、3型=潰瘍浸潤型(進行癌で最多)、4型=びまん浸潤型(スキルス) ・早期胃癌=深達度が粘膜下層まで(リンパ節転移の有無を問わない)
