StudyMed医師国家試験

「3P」に入らないのはどれ?―MEN1型とMEN2型を遺伝子から見分ける

第106回医師国家試験 D問題 第6問

国試問題にチャレンジ

第106回 D問題 第6問

多発性内分泌腫瘍〈MEN〉Ⅰ型を構成しないのはどれか。

  1. a.プロラクチノーマ
  2. b.原発性副甲状腺機能亢進症
  3. c.甲状腺髄様癌
  4. d.Zollinger-Ellison症候群
  5. e.副腎皮質腫瘍

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は多発性内分泌腫瘍症、いわゆるMENの病型分類の問題だ。複数の内分泌臓器に腫瘍や過形成が起こる遺伝性疾患で、1型と2型では原因遺伝子も侵される臓器もまったく違う。その「組み合わせ」を正確に覚えているかがポイントだよ。
医学生医学生
内分泌の講義で「MEN1は3P」と習いました。副甲状腺、下垂体、膵臓でしたよね。
ドクタードクター
その通り。Parathyroid、Pituitary、Pancreasの頭文字だね。原因は11番染色体のMEN1遺伝子で、メニンという蛋白をコードする腫瘍抑制遺伝子だ。いずれも常染色体顕性遺伝だけど、2型の原因はRETというがん原遺伝子の機能獲得型変異で、性質が逆なんだ。
医学生医学生
腫瘍抑制遺伝子とがん原遺伝子……病理の総論で出てきた区別がここでつながるんですね。
ドクタードクター
そう。では選択肢を見ていこう。まず原発性副甲状腺機能亢進症。MEN1型で最も多い病変で、9割以上の患者に起こり、最初に見つかる病変になることも多い。
医学生医学生
副甲状腺機能亢進症なら、普通は単発の腺腫が多いと習いました。MENでも同じですか。
ドクタードクター
いい疑問だ。散発性は単発の腺腫が多いけれど、MEN1型では複数の腺が腫れる多腺性の過形成が特徴なんだ。だから手術では複数腺を切除する必要があり、術後の再発も多い。若い人の副甲状腺機能亢進症や多腺性病変を見たら、MEN1を疑うきっかけになる。
医学生医学生
下垂体のプロラクチノーマもMEN1型ですね。
ドクタードクター
うん。MEN1型の下垂体腫瘍では、プロラクチン産生腺腫が最も多い。無月経・乳汁漏出や性機能低下の原因になる。続いてZollinger-Ellison症候群はどうかな。
医学生医学生
ガストリノーマで胃酸が出すぎて、難治性の潰瘍ができる病気です。膵臓の腫瘍なので3PのPancreasに入りますね。
ドクタードクター
正解。MEN1型の膵・消化管神経内分泌腫瘍のうち、機能性で最も多いのがガストリノーマだ。実は膵臓より十二指腸に小さな腫瘍が多発する形で見つかることが多い。インスリノーマや非機能性腫瘍もみられるよ。
医学生医学生
副腎皮質腫瘍は3Pに入っていないので、これが答えかと一瞬思いました。
ドクタードクター
そこが引っかけだね。副腎皮質の腺腫や過形成は、主要3病変ほどではないけれどMEN1型の2〜4割にみられる随伴病変なんだ。多くは非機能性だよ。注意してほしいのは、同じ副腎でも髄質由来の褐色細胞腫はMEN2型の病変だということ。皮質ならMEN1、髄質ならMEN2と区別しよう。
医学生医学生
となると、甲状腺髄様癌がMEN1型を構成しないものですね。
ドクタードクター
その通り。髄様癌は甲状腺の傍濾胞細胞、つまりC細胞由来の癌で、カルシトニンやCEAを産生する。MEN2型のほぼ全例に発生する中心的病変で、原因はRET遺伝子だ。MEN2Aは髄様癌に褐色細胞腫と副甲状腺機能亢進症、MEN2Bは髄様癌と褐色細胞腫に粘膜神経腫やMarfan様体型が加わる。
医学生医学生
副甲状腺はMEN1にもMEN2Aにも出てくるんですね。そこが紛らわしいです。
ドクタードクター
そうなんだ。だから「髄様癌と褐色細胞腫があればMEN2」と、2型にしかない病変を軸に覚えるのがコツだよ。臨床で大事なのは、髄様癌を見つけたらRET遺伝子検査で遺伝性かどうかを確認し、褐色細胞腫を必ず検索すること。両方あれば褐色細胞腫を先に切除する。
医学生医学生
褐色細胞腫を残したまま甲状腺の手術をすると、麻酔や手術侵襲で高血圧クリーゼを起こすからですね。外科実習で麻酔科の先生に念押しされました。
ドクタードクター
よく覚えているね。さらにRET変異の保因者には、変異のリスクに応じて小児期に予防的甲状腺全摘を考慮する。遺伝性疾患なので、家族への遺伝カウンセリングも欠かせない視点だよ。

まとめ

MEN1型はMEN1遺伝子(腫瘍抑制遺伝子)の変異により、副甲状腺・下垂体・膵(消化管)神経内分泌腫瘍の「3P」を主病変とし、副腎皮質腫瘍も随伴します。最多病変は多腺性過形成による原発性副甲状腺機能亢進症で、下垂体ではプロラクチノーマ、機能性膵・消化管腫瘍ではガストリノーマ(Zollinger-Ellison症候群)が最も多くみられます。一方、甲状腺髄様癌と褐色細胞腫はRET遺伝子変異によるMEN2型の病変であり、MEN1型の構成要素ではありません。副腎皮質はMEN1、副腎髄質はMEN2と区別し、髄様癌をみたらRET遺伝子検査と褐色細胞腫の検索、合併時は褐色細胞腫の先行切除を忘れないことが重要です。原因遺伝子と病変の組み合わせを理解することは、患者本人だけでなく家族のスクリーニングや予防的治療を考えるうえでも土台となります。

解答・解説

正解はcです

テーマ

多発性内分泌腫瘍症(MEN: multiple endocrine neoplasia)は、複数の内分泌臓器に腫瘍や過形成が同時にまたは時期を変えて発生する遺伝性疾患である。常染色体顕性(優性)遺伝で、原因遺伝子と侵される臓器の組み合わせによって1型と2型に大別される。

MEN1型とMEN2型の違い

・MEN1型: 腫瘍抑制遺伝子MENIN(MEN1遺伝子)の変異による。「副甲状腺・下垂体・膵(膵・消化管神経内分泌腫瘍)」の3臓器が主病変で、頭文字をとって「3P(Parathyroid、Pituitary、Pancreas)」と覚える。 ・MEN2型: がん原遺伝子RETの機能獲得型変異による。甲状腺髄様癌をほぼ全例に認め、これに褐色細胞腫、原発性副甲状腺機能亢進症(2A型)または粘膜神経腫・Marfan様体型(2B型)が加わる。

設問への考え方

選択肢のうち、プロラクチノーマ(下垂体)、原発性副甲状腺機能亢進症(副甲状腺)、Zollinger-Ellison症候群(膵・十二指腸のガストリン産生腫瘍)はMEN1型の主病変であり、副腎皮質腫瘍も随伴病変としてみられる。甲状腺髄様癌はMEN2型を特徴づける病変であり、MEN1型の構成病変ではない。

選択肢考察

  1. ×a.  プロラクチノーマ

    MEN1型を構成する。MEN1型の下垂体腫瘍は患者の3〜4割程度にみられ、その中で最も多いのがプロラクチン産生腺腫(プロラクチノーマ)である。無月経・乳汁漏出や性機能低下の原因となる。次いで非機能性腺腫、成長ホルモン産生腺腫(先端巨大症)などがある。

  2. ×b.  原発性副甲状腺機能亢進症

    MEN1型を構成する。MEN1型で最も頻度の高い病変で、ほぼ全例(9割以上)に認められ、初発病変となることも多い。複数の副甲状腺が腫大する多腺性病変(過形成)が特徴で、単発の腺腫が多い散発性の原発性副甲状腺機能亢進症とは異なる。そのため手術では複数腺を切除する必要があり、術後の再発も多い。高カルシウム血症、尿路結石、骨量減少などをきたす。

  3. ○c.  甲状腺髄様癌

    MEN1型を構成しない。甲状腺髄様癌は甲状腺の傍濾胞細胞(C細胞)に由来し、カルシトニンやCEAを産生する癌で、MEN2型のほぼ全例に発生する中心的病変である。原因はRET遺伝子の変異であり、MEN1型の原因であるMEN1遺伝子とは異なる。髄様癌をみたら、RET遺伝子検査でMEN2型(遺伝性)かどうかを確認し、褐色細胞腫の合併を検索する。

  4. ×d.  Zollinger-Ellison症候群

    MEN1型を構成する。Zollinger-Ellison症候群はガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ)により胃酸が過剰に分泌され、難治性・再発性の消化性潰瘍や下痢をきたす病態である。MEN1型の膵・消化管神経内分泌腫瘍の中で機能性腫瘍として最も多いのがガストリノーマで、十二指腸に多発する小腫瘍として見つかることが多い。インスリノーマや非機能性腫瘍もみられる。

  5. ×e.  副腎皮質腫瘍

    MEN1型を構成する。主要3病変ほど多くはないが、MEN1型では副腎皮質の腺腫や過形成が2〜4割程度に認められる。多くはホルモンを産生しない非機能性病変だが、まれにコルチゾール産生(Cushing症候群)やアルドステロン産生の腫瘍、副腎皮質癌もみられる。なお、副腎髄質由来の褐色細胞腫はMEN2型の病変であり、区別して覚える。

MEN1型(Wermer症候群)

原因: 11番染色体上のMEN1遺伝子(腫瘍抑制遺伝子、蛋白名メニン)の変異。 主病変: ・原発性副甲状腺機能亢進症(9割以上、多腺性過形成) ・膵・消化管神経内分泌腫瘍(ガストリノーマ、インスリノーマ、非機能性腫瘍など) ・下垂体腺腫(プロラクチノーマが最多) 随伴病変: 副腎皮質腫瘍、胸腺・気管支・胃の神経内分泌腫瘍(カルチノイド)、皮膚の顔面血管線維腫・コラーゲノーマ、脂肪腫など。

MEN2型

原因: 10番染色体上のRET遺伝子(がん原遺伝子)の機能獲得型変異。 ・MEN2A(Sipple症候群): 甲状腺髄様癌(ほぼ全例)、褐色細胞腫(約半数、両側性が多い)、原発性副甲状腺機能亢進症(1〜2割程度)。 ・MEN2B: 甲状腺髄様癌(ほぼ全例、若年発症で進行が速い)、褐色細胞腫(約半数)、口唇・舌などの粘膜神経腫、腸管神経節腫症、Marfan様体型。副甲状腺機能亢進症はまれ。近年の分類ではMEN2BをMEN3と呼ぶこともある。 RET変異保因者には、変異の部位(リスク分類)に応じて小児期に予防的甲状腺全摘術を考慮する。

手術の順序に関する注意

MEN2型で甲状腺髄様癌と褐色細胞腫が合併している場合、先に褐色細胞腫を切除する。未治療の褐色細胞腫があるまま甲状腺手術などを行うと、麻酔・手術侵襲によるカテコールアミン大量放出で高血圧クリーゼを起こす危険があるためである。

覚え方

・MEN1型: 3P(Parathyroid、Pituitary、Pancreas) ・MEN2A型: 甲状腺髄様癌+褐色細胞腫+副甲状腺(2つのC: Calcitonin産生癌とCatecholamine産生腫瘍+P) ・MEN2B型: 甲状腺髄様癌+褐色細胞腫+粘膜神経腫・Marfan様体型

POINT

・MEN1型=副甲状腺・膵(消化管)神経内分泌腫瘍・下垂体の「3P」。原因はMEN1遺伝子(腫瘍抑制遺伝子)。 ・MEN1型で最多は原発性副甲状腺機能亢進症(多腺性過形成)、下垂体ではプロラクチノーマ、膵・消化管の機能性腫瘍ではガストリノーマが最多。 ・甲状腺髄様癌と褐色細胞腫はMEN2型の病変。原因はRET遺伝子。 ・副腎皮質腫瘍はMEN1型、副腎髄質の褐色細胞腫はMEN2型。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。