StudyMed医師国家試験

診察室の外にある医療―多職種と家族で支える在宅医療の基本

第106回医師国家試験 B問題 第7問

国試問題にチャレンジ

第106回 B問題 第7問

在宅医療について正しいのはどれか。

  1. a.薬剤師は訪問服薬指導を行うことができる。
  2. b.家族は酸素吸入量を調整することができない。
  3. c.介護者への精神的支援は在宅医療の対象でない。
  4. d.プライバシー保護のため患者の生活には立ち入らない。
  5. e.医師は訪問診療を行うことを都道府県へ届け出る必要がある。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は在宅医療の基本的な考え方を問う問題だ。在宅医療は、通院が難しい患者さんの自宅や入居施設に医療者が出向いて、生活の場で医療を提供するもの。病院医療と何が違うのか、誰が担い手なのか、という視点で選択肢を見ていこう。
医学生医学生
在宅医療というと、医師が自宅に行って診察するイメージが強いです。
ドクタードクター
多くの人がそう思うんだけど、実際はチーム医療の色合いがとても濃い。医師のほかに訪問看護師、薬剤師、歯科医師、リハビリ職、管理栄養士、ケアマネジャー、ホームヘルパーなど、多くの職種が関わっているんだ。
医学生医学生
薬剤師さんも家まで行くんですか。薬局で薬を渡す仕事だと思っていました。
ドクタードクター
行けるんだ。そしてそれが今回の正解になる。薬剤師は医師の処方に基づいて患者さんの自宅や施設を訪問し、薬の管理や服薬指導を行える。医療保険では在宅患者訪問薬剤管理指導、介護保険では居宅療養管理指導として制度化されているよ。
医学生医学生
訪問して具体的には何をするんでしょう。
ドクタードクター
残薬を確認して整理したり、一包化やお薬カレンダーで飲み忘れを防いだり、副作用や相互作用をチェックしたり、飲み込みの力に合わせて剤形を提案したりする。その結果を医師やケアマネジャーに報告するんだ。
医学生医学生
地域医療実習で訪問診療に同行したとき、引き出しから飲み残しの薬が大量に出てきたお宅がありました。ああいう場面で力を発揮するんですね。
ドクタードクター
まさにそう。多剤併用の高齢者や、認知症で自己管理が難しい人では特に重要だ。では他の選択肢も確認しよう。家族は酸素吸入量を調整できない、というのはどうかな。
医学生医学生
酸素は薬と同じ扱いなので、医師しか変えられないと思っていましたが……違いますか。
ドクタードクター
よくある誤解だね。在宅酸素療法では、医師が安静時・労作時・睡眠時など場面ごとの流量を指示して、その範囲内で患者さん本人や家族が切り替えて使う。歩くときや入浴時に労作時の流量へ上げる、といった調整は日常的に家族が担っているんだ。
医学生医学生
指示の範囲内なら調整してよい、ということですね。逆に勝手に大きく上げるのは危ないですか。
ドクタードクター
その通り。COPDなどでは酸素を上げすぎるとCO2ナルコーシスを招くおそれがある。だから医師があらかじめ調整の範囲をはっきり示しておくことが大切だ。それから、酸素は燃焼を助けるので、使用中の喫煙や火気は火災の原因になり厳禁だよ。次に、介護者への精神的支援は対象でない、という選択肢は。
医学生医学生
これは違う気がします。介護する家族が倒れたら在宅療養が続けられませんよね。
ドクタードクター
その通り。在宅療養が続くかどうかは介護者の負担に大きく左右される。介護疲れや介護うつを防ぐために話を聴いて不安を受け止めることや、ショートステイ、デイサービス、レスパイト入院で休息をとってもらう配慮も在宅医療の大事な役割だ。患者さんが亡くなった後のグリーフケアも含まれる。
医学生医学生
プライバシー保護のため生活に立ち入らない、というのも違いますか。配慮としては大事そうですけど。
ドクタードクター
プライバシーや本人の意思を尊重して、必要以上に踏み込まない配慮は確かに大切だ。でも在宅医療は生活の場で行う医療だから、食事や排泄、服薬状況、段差や手すりといった住環境、家族の介護力を把握しないと適切な治療や指導はできない。全く関わらないのでは成り立たないんだ。
医学生医学生
最後の、訪問診療には都道府県への届出が必要、というのは自信がありません。何か手続きが要りそうな気もして。
ドクタードクター
迷いやすいところだね。保険医療機関の医師なら、訪問診療そのものに都道府県への届出は不要だ。一方、24時間の往診・連絡体制などの基準を満たして在宅療養支援診療所や在宅療養支援病院として診療報酬上の評価を受ける場合は、地方厚生局への届出が必要になる。これは報酬上の手続きで、届出がなくても訪問診療自体は行えるんだ。
医学生医学生
届出が要るのは報酬上の施設基準の話で、しかも届出先は地方厚生局なんですね。整理すると、正しいのは薬剤師の訪問服薬指導だけになります。
ドクタードクター
よくまとまったね。発展として、往診と訪問診療の違いも押さえておこう。往診は患者さんや家族の求めに応じて臨時に出向くこと、訪問診療は計画を立てて定期的に訪問することだ。また医師は、訪問看護指示書の交付や要介護認定のための主治医意見書の作成など、チームの起点となる役割も担っている。
医学生医学生
医師が全部やるのではなく、各職種がつながるハブになるイメージですね。
ドクタードクター
その感覚が大切だ。在宅では病気だけでなく、その人の暮らし全体を診る視点が求められる。将来どの診療科に進んでも、退院支援や在宅移行で必ず関わる分野だから、今のうちにしっかり理解しておこう。

まとめ

在宅医療は、通院困難な患者の生活の場に医療者が出向いて行う医療で、医師・訪問看護師・薬剤師・歯科医師・リハビリ職・ケアマネジャーなどの多職種連携が基本です。薬剤師は医師の処方に基づき訪問服薬指導を行うことができ、残薬整理や一包化、副作用の確認などで服薬管理を支えます。在宅酸素療法の流量は医師の指示の範囲内で患者や家族が調整し、介護者の精神的支援やレスパイトケア、生活環境の把握も在宅医療の重要な要素です。訪問診療に都道府県への届出は不要で、在宅療養支援診療所・病院として報酬上の評価を受ける場合に地方厚生局へ届け出ます。生活全体を支えるという在宅医療の視点は、退院支援や地域包括ケアを担うすべての医師に必要な基礎となります。

解答・解説

正解はaです

在宅医療の基本的な考え方と、それを支える職種・制度の知識を問う一般問題である。

在宅医療の基本的な考え方

在宅医療は、通院が難しい患者の自宅や入居施設に医療者が出向き、その人の生活の場で医療を提供するものである。病院医療と比べると、次の特徴がある。 ・多職種連携:医師だけでなく、訪問看護師、薬剤師、歯科医師、理学療法士・作業療法士などのリハビリテーション職、管理栄養士、ケアマネジャー(介護支援専門員)、ホームヘルパーなどがチームとして関わる。 ・生活の支援:病気だけでなく、住環境、食事、服薬、家族関係など患者の生活全体を把握したうえで医療を行う。 ・家族(介護者)も支援の対象:在宅療養が続けられるかどうかは介護者の負担に大きく左右されるため、介護者のケアも在宅医療の重要な役割である。 ・患者・家族による医療行為の担い手化:医師の指示の範囲内で、患者本人や家族が酸素流量の調整、吸引、経管栄養などを日常的に行う。 これらの特徴に照らして各選択肢を検討すると、薬剤師による訪問服薬指導が正しい記述として残る。訪問診療は、保険医療機関であれば特別な届出なしに行える点も押さえておきたい。

選択肢考察

  1. ○a.  薬剤師は訪問服薬指導を行うことができる。

    正しい。薬剤師は、医師の指示(処方)に基づいて通院困難な患者の自宅や施設を訪問し、薬の管理・服薬指導を行うことができる。医療保険では在宅患者訪問薬剤管理指導、介護保険では居宅療養管理指導として制度化されている。訪問時には、残薬の確認と整理、一包化やお薬カレンダーなどによる飲み忘れ対策、副作用や相互作用の確認、嚥下機能に合わせた剤形の提案などを行い、その結果を医師やケアマネジャーに報告する。多くの薬を服用している高齢者や、認知症で自己管理が難しい患者で特に役立つ。

  2. ×b.  家族は酸素吸入量を調整することができない。

    誤り。在宅酸素療法(HOT:home oxygen therapy)では、医師が安静時・労作時・睡眠時などの場面ごとに酸素流量を指示し、その指示の範囲内で患者本人や家族が流量を切り替えて使用する。入浴や歩行などで息切れが強まるときに労作時の流量へ上げるといった調整は、在宅療養では日常的に家族が担っている。ただし、指示を超えて流量を大きく上げることは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などでCO2ナルコーシス(高二酸化炭素血症による意識障害)を招くおそれがあるため、医師があらかじめ調整の範囲を明確にしておく必要がある。

  3. ×c.  介護者への精神的支援は在宅医療の対象でない。

    誤り。在宅療養は家族などの介護者に支えられており、介護者が心身ともに疲れ果てて(介護疲れ・介護うつ)しまうと在宅生活そのものが続けられなくなる。そのため、介護者の話を聴いて不安や悩みを受け止める精神的支援や、ショートステイ(短期入所)・デイサービス・レスパイト入院などで介護者が休息をとれるようにする配慮は、在宅医療の重要な役割である。患者の死後に家族を支えるグリーフケア(遺族ケア)も含まれる。

  4. ×d.  プライバシー保護のため患者の生活には立ち入らない。

    誤り。在宅医療は患者の生活の場で行う医療であり、食事や排泄、服薬の状況、住環境(段差、手すり、ベッドの配置など)、家族の介護力といった生活の実態を把握しなければ、適切な治療や療養指導はできない。患者のプライバシーや意思を尊重し、必要以上に踏み込まない配慮は大切であるが、生活に全く関わらないのでは在宅医療は成り立たない。治療の一環として生活指導や環境調整を行うことが求められる。

  5. ×e.  医師は訪問診療を行うことを都道府県へ届け出る必要がある。

    誤り。保険医療機関の医師は、訪問診療を行うにあたって都道府県への届出は不要である。一方、24時間の往診・連絡体制などの施設基準を満たして「在宅療養支援診療所」や「在宅療養支援病院」として診療報酬上の評価を受ける場合には、地方厚生局(厚生労働省の地方支分部局)への届出が必要となる。これは報酬上の評価を受けるための手続きであり、届出がなくても訪問診療自体は行える。

往診と訪問診療の違い

・往診:患者や家族の求めに応じて、臨時に(不定期に)自宅へ出向いて診療すること。 ・訪問診療:通院困難な患者に対し、あらかじめ計画を立てて定期的に訪問して診療すること(例:月2回など)。

在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院

在宅医療を中心的に担う医療機関として診療報酬上で評価される仕組みである。24時間連絡を受けられる体制、24時間の往診体制、訪問看護の提供体制、緊急時に入院できる病床の確保(連携を含む)などが要件となり、地方厚生局に届け出る。在宅療養支援病院は、原則として許可病床200床未満の病院(または半径4km以内に診療所がない病院)が対象である。

在宅医療に関わる主な職種と役割

・医師:訪問診療・往診、在宅での看取り、要介護認定のための主治医意見書の作成、訪問看護指示書の交付など。 ・訪問看護師:病状観察、医療処置(点滴、褥瘡処置、カテーテル管理など)、療養上の世話、家族指導。 ・薬剤師:訪問による服薬指導・薬剤管理。 ・歯科医師・歯科衛生士:訪問歯科診療、口腔ケア(誤嚥性肺炎の予防にも重要)。 ・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士:訪問リハビリテーション。 ・ケアマネジャー:介護保険サービスのケアプラン作成と調整。

在宅酸素療法(HOT)の要点

慢性呼吸不全(COPD、間質性肺炎など)や慢性心不全などで適応となる。酸素濃縮装置や携帯用酸素ボンベを使い、医師が場面ごとの流量を指示する。酸素は燃焼を助けるため、使用中の喫煙や火気の使用は火災の原因となり厳禁である。

POINT

・在宅医療は多職種連携で行い、薬剤師による訪問服薬指導(在宅患者訪問薬剤管理指導・居宅療養管理指導)もその一部である。 ・在宅酸素療法の流量は、医師の指示の範囲内で患者本人や家族が調整する。 ・介護者(家族)の心身の支援やレスパイトケアも在宅医療の対象である。 ・在宅医療では患者の生活に踏み込み、生活全体を踏まえた療養指導を行う。 ・訪問診療に都道府県への届出は不要。在宅療養支援診療所・病院として報酬上の評価を受ける場合に地方厚生局へ届け出る。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。