口のどこにできた?―「奥のアフタ」が教えるヘルパンギーナ
第105回医師国家試験 I問題 第22問
国試問題にチャレンジ
ヘルパンギーナのアフタが好発する部位はどれか。
- a.舌
- b.口角
- c.口唇
- d.頬粘膜
- e.軟口蓋
対話形式の解説
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ドクターまとめ
ヘルパンギーナは主にA群コクサッキーウイルスによる乳幼児の夏かぜで、突然の高熱とともに軟口蓋を中心に口蓋垂・口蓋弓・咽頭など口腔の奥に、発赤に囲まれた小水疱やアフタができるのが特徴です。口唇・歯肉・舌など口腔の前方に病変が広がれば単純ヘルペスによる疱疹性歯肉口内炎、口腔内の病変に手掌・足底の水疱を伴えば手足口病、頬粘膜の白色小斑点なら麻疹のKoplik斑と、病変の部位から鑑別を進められます。治療は対症療法が中心で、乳幼児では嚥下痛による脱水に注意し、まれな無菌性髄膜炎や心筋炎の合併、回復後も続く便中へのウイルス排泄にも気を配ります。口腔内の「どこに」病変があるかに注目する視点は、小児の発熱診療で日常的に役立つ基本技術です。
解答・解説
正解はeです
ヘルパンギーナの口腔病変がどこにできるかを問う一般問題である。 ヘルパンギーナは、主にA群コクサッキーウイルスをはじめとするエンテロウイルスによって起こる急性のウイルス性咽頭炎で、乳幼児を中心に夏季に流行する「夏かぜ」の代表である。突然の高熱とともに、口腔の奥、すなわち軟口蓋から口蓋垂、口蓋弓(前口蓋弓)、咽頭にかけて、周囲が赤く縁取られた小水疱が出現し、これが破れて浅い潰瘍(アフタ)となる。口の奥に病変が集まるのが特徴で、口腔の前方(口唇・歯肉・舌の前方)には通常みられない。 この「口腔の奥か、前方か」という分布の違いは、同じく口腔に水疱・アフタをつくる疾患との鑑別に役立つ。口腔前方の歯肉・口唇・舌・頬粘膜に広く病変をつくるのは単純ヘルペスウイルスによる歯肉口内炎であり、口腔病変に加えて手掌・足底などに水疱が出るのは手足口病である。以上から、ヘルパンギーナのアフタの好発部位は軟口蓋である。
選択肢考察
- ×a. 舌
ヘルパンギーナの好発部位ではない。舌にアフタや水疱がみられるのは、単純ヘルペスウイルス1型による疱疹性歯肉口内炎や、手足口病である。手足口病では舌・頬粘膜・口唇の内側など口腔内の広い範囲に病変が出やすく、手掌・足底・殿部などの皮疹を伴う点でヘルパンギーナと区別できる。
- ×b. 口角
ヘルパンギーナの好発部位ではない。ヘルパンギーナの病変は口腔の奥に集まり、口の入り口にあたる口角にはみられない。口角に亀裂やびらんを生じる代表は口角炎で、カンジダなどの感染やビタミンB2(リボフラビン)欠乏、鉄欠乏などが原因となる。単純ヘルペスの口唇ヘルペスが口角周囲に及ぶこともある。
- ×c. 口唇
ヘルパンギーナの好発部位ではない。口唇に水疱・びらんが出る代表的疾患は単純ヘルペスウイルス感染症である。初感染の疱疹性歯肉口内炎では口唇・歯肉・舌など口腔前方に多数の病変ができ、歯肉の腫脹・出血を伴う。再発例では口唇やその周囲の皮膚に小水疱が集まってできる口唇ヘルペスとなる。
- ×d. 頬粘膜
ヘルパンギーナの好発部位ではない。頬粘膜に病変が出る疾患としては、単純ヘルペスによる歯肉口内炎、手足口病が挙げられる。また、麻疹のカタル期に臼歯に面した頬粘膜に出現する白色小斑点(Koplik斑)も頬粘膜の所見として重要である。
- ○e. 軟口蓋
正しい。ヘルパンギーナでは、軟口蓋を中心に口蓋垂、前口蓋弓、咽頭後壁など口腔の奥に、発赤に囲まれた直径1〜2 mm程度の小水疱が複数出現し、破れてアフタとなる。病変の痛みのため嚥下痛や流涎が強くなり、乳幼児では哺乳・摂食不良から脱水をきたすことがある。この部位分布がヘルパンギーナの最大の特徴である。
ヘルパンギーナの概要
・病原体:エンテロウイルス属、特にA群コクサッキーウイルス。B群コクサッキーウイルスやエコーウイルスなどでも起こる。 ・疫学:乳幼児(主に1〜4歳)に多く、初夏から夏季(5〜8月頃)に流行する。 ・感染経路:飛沫感染、接触感染、糞口感染。回復後も便中に数週間ウイルスが排泄される。 ・潜伏期:2〜4日程度。 ・症状:突然の38〜40℃の発熱、咽頭痛、軟口蓋周辺の小水疱・アフタ。発熱は2〜4日で下がり、口腔病変も1週間程度で治癒する。 ・合併症:まれに無菌性髄膜炎、心筋炎。 ・治療:特異的な治療はなく、解熱鎮痛薬などの対症療法と水分補給が中心である。
口腔内に水疱・アフタを生じる小児の代表的疾患
・ヘルパンギーナ:軟口蓋・口蓋弓など口腔の奥。皮疹なし。 ・手足口病:舌・頬粘膜・口唇内側など口腔内の広い範囲。手掌・足底・殿部などに水疱。コクサッキーA16、エンテロウイルス71などが原因。 ・疱疹性歯肉口内炎:単純ヘルペスウイルス1型の初感染。歯肉・口唇・舌・頬粘膜など口腔前方。歯肉の腫脹・出血、高熱、頸部リンパ節腫脹を伴う。
エンテロウイルスが起こす主な疾患
ヘルパンギーナ、手足口病、無菌性髄膜炎、心筋炎・心膜炎、急性出血性結膜炎(エンテロウイルス70、コクサッキーA24変異株)、ポリオ(急性灰白髄炎)など。エンテロウイルスは腸管で増殖するウイルスの総称で、夏から秋にかけて流行し、流行する型は年ごとに異なる。
POINT
・ヘルパンギーナ=A群コクサッキーウイルス、乳幼児、夏季、高熱+軟口蓋周辺の小水疱・アフタ。 ・病変は口腔の奥(軟口蓋・口蓋垂・口蓋弓)に集まる。 ・口腔前方(歯肉・口唇・舌)なら単純ヘルペス性歯肉口内炎、手足にも水疱があれば手足口病。
