熱が下がったら発疹が出た―「解熱と入れ替わる発疹」が教える突発性発疹
第119回医師国家試験 D問題 第33問
国試問題にチャレンジ
10か月の男児。発疹を主訴に両親に連れられて来院した。3日前から38℃台の発熱が持続し,本日解熱した直後に全身の発疹が出現したため受診した。発熱時には機嫌は良く,軽度の軟便があった。解熱後は不機嫌であった。身長68cm,体重9kg。体温36.5℃。脈拍112/分,整。血圧98/52mmHg。呼吸数30/分。SpO2 98%(room air)。体幹部を中心に斑状の紅色丘疹を認める。全身状態は良好であり,眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。咽頭は軽度の発赤を認める。口唇の紅潮は認めない。頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦,軟で,肝・脾を触知しない。 考えられる原因ウイルスはどれか。
- a.風疹ウイルス
- b.麻疹ウイルス
- c.パルボウイルスB19
- d.ヒトヘルペスウイルス6
- e.Epstein-Barr〈EB〉ウイルス
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
ドクター
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ドクター
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ドクターまとめ
乳児に高熱が3〜4日続き、解熱と入れ替わるように体幹中心の紅色斑状丘疹が出現したら、突発性発疹を考えます。原因はヒトヘルペスウイルス6(主にHHV-6B)で、HHV-7でも同様の病像を呈し、熱の割に機嫌が良く解熱後に不機嫌になること、軟便や永山斑を伴うことが特徴です。風疹は発熱と同時の発疹と耳介後部リンパ節腫脹、麻疹はカタル症状とKoplik斑・二峰性発熱、伝染性紅斑は頬の紅斑と四肢のレース状紅斑、伝染性単核球症は扁桃炎・リンパ節腫脹・肝脾腫と、発熱と発疹の時間関係や随伴所見で鑑別できます。乳幼児の発熱・発疹では川崎病の除外も欠かせず、突発性発疹では熱性けいれんや急性脳症の合併にも注意が必要です。時間軸で発疹性疾患を整理する考え方は、小児外来での初期対応の基本となります。
解答・解説
正解はdです
所見の整理
・生後10か月の乳児。 ・38℃台の発熱が3日間続いたが、発熱中も機嫌は良好であった。随伴症状は軽度の軟便のみ。 ・解熱した直後に、体幹を中心とした斑状の紅色丘疹が全身に出現した。解熱後はむしろ不機嫌になっている。 ・バイタルサインは年齢相応で、全身状態は良好。 ・眼球・眼瞼結膜に異常なし、口唇の紅潮なし、頸部リンパ節腫脹なし、肝脾腫なし。咽頭は軽度発赤のみ。
診断へのプロセス
小児の発熱・発疹性疾患の鑑別では「発熱と発疹の時間的関係」が最も重要な手がかりとなる。 ・発熱と同時に発疹:風疹 ・発熱がいったん下がりかけた後、再び高熱となるとともに発疹(二峰性発熱):麻疹 ・高熱が数日続き、解熱とともに発疹:突発性発疹 ・発熱は軽微で、頬の紅斑から始まる:伝染性紅斑 本例は「6か月~2歳頃の乳児」「3日ほどの高熱の割に機嫌が良い」「解熱と入れ替わるように体幹中心の発疹」「解熱後の不機嫌」という、突発性発疹の典型像をそろえている。軟便も突発性発疹でしばしばみられる随伴症状である。 また、結膜充血・口唇紅潮・頸部リンパ節腫脹がないことから、乳幼児の発熱+発疹で常に念頭に置くべき川崎病の主要症状も否定的であり、肝脾腫やリンパ節腫脹がないことから伝染性単核球症も考えにくい。
設問の考え方
突発性発疹と診断できれば、その原因であるヒトヘルペスウイルス6(HHV-6、主にHHV-6B)を選べばよい。各ウイルスと疾患の対応、およびそれぞれの発熱・発疹のパターンを整理しておくことが重要である。
選択肢考察
- ×a. 風疹ウイルス
風疹ウイルスは風疹(三日はしか)の原因である。風疹では発熱とほぼ同時に淡い紅色の小斑状丘疹が顔面から全身へ広がり、耳介後部・後頸部・後頭部のリンパ節腫脹が特徴的である。発疹は約3日で色素沈着を残さず消える。本例は解熱後に発疹が出現しており、リンパ節腫脹も認めないため合致しない。なお妊娠初期の感染では、児に白内障・心奇形(動脈管開存症など)・感音難聴を特徴とする先天性風疹症候群を起こすことが重要である。
- ×b. 麻疹ウイルス
麻疹ウイルスによる麻疹は、潜伏期(約10~12日)の後、発熱とカタル症状(咳・鼻汁・結膜充血・眼脂)で始まり、頬粘膜にKoplik斑が出現する。いったんやや解熱した後に再び高熱となり、同時に発疹が出現する(二峰性発熱)。発疹は融合傾向を示し、消退後に色素沈着を残す。本例は結膜所見やカタル症状がなく、解熱後に発疹が出ている点で麻疹とは異なる。
- ×c. パルボウイルスB19
パルボウイルスB19は伝染性紅斑(りんご病)の原因である。好発は幼児~学童で、両頬の平手打ち様の紅斑に続いて、四肢(上腕・大腿の伸側など)にレース状・網目状の紅斑が出現する。発疹が出る時期にはウイルス排泄はほぼ終わっている。発熱は目立たないことが多く、本例のように高熱が3日続いた後に体幹中心の発疹が出る経過とは異なる。成人では関節痛・関節炎を、溶血性貧血患者では無形成発作(aplastic crisis)を、妊婦では胎児水腫を起こしうる。
- ○d. ヒトヘルペスウイルス6
ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)の初感染は突発性発疹の主な原因であり、ヒトヘルペスウイルス7(HHV-7)の初感染でも同様の病像を呈する。生後6か月~2歳頃に好発し、3~4日の高熱が続いた後、解熱とともに体幹を中心とした紅色斑状丘疹が出現する。発熱中も比較的元気であるが、発疹出現頃に不機嫌となることが多い。軟便・下痢、大泉門膨隆、発熱期に口蓋垂の両脇にみられる粘膜疹(永山斑)も知られている。本例の年齢・経過・所見はすべてこれに一致する。
- ×e. Epstein-Barr〈EB〉ウイルス
EBウイルスの初感染では伝染性単核球症を生じることがある。発熱、白苔を伴う咽頭扁桃炎、後頸部を中心とするリンパ節腫脹、肝脾腫、異型リンパ球の増加が特徴である。アンピシリンなどのペニシリン系抗菌薬を投与すると高率に発疹が出るため、使用は避ける。本例はリンパ節腫脹や肝脾腫がなく、咽頭所見も軽度の発赤のみで、合致しない。乳幼児期の初感染は不顕性あるいは軽症で終わることも多い。
突発性発疹の概要
・原因:HHV-6B(主)、HHV-7の初感染。多くは唾液を介して、すでに感染している家族(主に親)から感染する。 ・好発年齢:生後6か月~2歳。移行抗体が消える乳児期後半に多く、乳児にとって「初めての高熱」となることが多い。 ・経過:潜伏期は約10日。突然の高熱が3~4日持続→解熱とともに体幹から顔面・四肢へ広がる紅色斑状丘疹→数日で色素沈着を残さず消退する。 ・随伴症状:軟便・下痢、大泉門膨隆、眼瞼浮腫、頸部リンパ節の軽度腫脹、永山斑(口蓋垂の両側にみられる紅色の粘膜疹)。解熱後の不機嫌が目立つ。 ・合併症:熱性けいれんの頻度が高い。まれに急性脳症を起こすことがある。 ・治療:特異的治療はなく、対症療法で自然治癒する。 ・HHV-6は初感染後に潜伏感染し、造血幹細胞移植後などの免疫抑制状態で再活性化して脳炎を起こすことがある。
小児の発疹性ウイルス感染症の整理
・麻疹(麻疹ウイルス):カタル期→Koplik斑→二峰性の高熱とともに融合傾向のある発疹→色素沈着。 ・風疹(風疹ウイルス):発熱と同時に発疹、耳介後部・後頭部リンパ節腫脹。色素沈着なし。 ・突発性発疹(HHV-6/7):高熱3~4日→解熱とともに発疹。 ・伝染性紅斑(パルボウイルスB19):頬の紅斑→四肢のレース状紅斑。 ・水痘(水痘・帯状疱疹ウイルス):紅斑→丘疹→水疱→痂皮が混在する。 ・手足口病(エンテロウイルス属:コクサッキーA16、エンテロウイルス71など):手掌・足底・口腔内の水疱。 ・伝染性単核球症(EBウイルス):発熱、咽頭扁桃炎、頸部リンパ節腫脹、肝脾腫。
鑑別として忘れてはならない疾患
乳幼児の発熱と発疹では川崎病を必ず考える。発熱、両側眼球結膜充血、口唇の紅潮・いちご舌、不定形発疹、四肢末端の変化、非化膿性頸部リンパ節腫脹が主要症状であり、本例ではこれらが否定されている。
POINT
・「乳児の高熱が3~4日続き、解熱とともに発疹」は突発性発疹であり、原因はHHV-6(およびHHV-7)である。 ・発熱中は比較的元気で、解熱後に不機嫌となるのが特徴的。合併症として熱性けいれんが多い。 ・発熱と発疹の時間関係で鑑別する:風疹は発熱と同時、麻疹は二峰性発熱の2回目の発熱とともに、突発性発疹は解熱とともに発疹が出る。 ・パルボウイルスB19は伝染性紅斑、EBウイルスは伝染性単核球症の原因である。
