器具を入れる前に見よ―頸管妊娠は「超音波」で見抜く
第105回医師国家試験 H問題 第8問
国試問題にチャレンジ
頸管妊娠の診断に有用なのはどれか。
- a.子宮鏡検査
- b.超音波検査
- c.腹腔鏡検査
- d.hCG定量検査
- e.Douglas窩穿刺
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
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ドクターまとめ
頸管妊娠は子宮頸管に着床する異所性妊娠で、頸管は収縮力に乏しく血流が豊富なため、診断が遅れて掻爬を行うと止血困難な大出血を起こしうる病態です。診断の中心は経腟超音波検査で、子宮体部に胎嚢がなく頸管内に胎嚢を認め、子宮が砂時計状に見えることが手がかりとなり、進行流産とは内子宮口の閉鎖、圧迫で胎嚢がずれないこと、周囲の豊富な血流で区別します。子宮鏡は出血を誘発する危険があり、腹腔鏡やDouglas窩穿刺は頸管内を評価できず、hCG定量は妊娠の評価には有用でも着床部位は特定できません。早期診断によりメトトレキサート投与や子宮動脈塞栓術など子宮温存治療が可能になったため、妊娠初期の出血では「掻爬の前にまず超音波で部位確認」という原則が臨床上きわめて重要です。
解答・解説
正解はbです
テーマ
頸管妊娠は、受精卵が子宮頸管内に着床した異所性妊娠である。異所性妊娠全体の1%未満とまれだが、頸管は筋層が薄く収縮力に乏しいうえ血流が豊富なため、診断が遅れて内容除去(掻爬)などを行うと、止血困難な大出血を起こし子宮全摘を要することがある。したがって、出血を誘発しない方法で、早期に着床部位を特定することが重要である。
正解を導く考え方
妊娠の「部位」を非侵襲的に確認できる検査が求められている。経腟超音波検査は、子宮体部内に胎嚢(GS)がないこと、胎嚢が内子宮口より下方の頸管内にあること、頸部が膨隆して子宮全体が砂時計状(ひょうたん状)に見えることなどを、出血のリスクなく確認できる。これにより、無症状の妊娠初期に診断できるようになり、保存的治療を選択できる例が増えた。 一方、器具を頸管に挿入する検査は出血を誘発する危険があり、腹腔内を観察する検査や、血中・尿中のホルモン量を測る検査では頸管内の着床部位は特定できない。
選択肢考察
- ×a. 子宮鏡検査
子宮鏡は頸管を通して子宮内腔に内視鏡を挿入する検査であり、妊娠が疑われる場合には原則として行わない。頸管妊娠では挿入操作そのものが着床部位を損傷し、大出血を招く危険が高い。診断目的に用いるべきではない。
- ○b. 超音波検査
経腟超音波検査は非侵襲的かつ簡便で、頸管妊娠の診断の中心となる。子宮体部内に胎嚢がなく、内子宮口より下方の頸管内に胎嚢(ときに胎児心拍)を認め、頸部が膨大して子宮が砂時計状に見える場合に疑う。進行流産で胎嚢が頸管へ下降してきた状態との鑑別には、内子宮口が閉じていること、プローブで軽く圧迫しても胎嚢がずれないこと(sliding sign陰性)、カラードプラで胎嚢周囲に豊富な血流を認めることが参考になる。
- ×c. 腹腔鏡検査
腹腔鏡は腹腔側から子宮・卵管・卵巣などの表面を観察する検査で、卵管妊娠など腹腔内の病変の診断と治療には有用である。しかし頸管内の着床は腹腔側からは観察できず、頸管妊娠の診断には役立たない。
- ×d. hCG定量検査
hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)定量は妊娠の有無の確認、妊娠週数の推定、治療(メトトレキサート投与など)後の効果判定の指標として重要である。また、hCG値が経腟超音波で子宮内に胎嚢が見えるはずの水準(おおむね1,500~2,000 mIU/mL程度)に達しているのに子宮内に胎嚢がなければ異所性妊娠を疑う根拠となる。しかし着床部位を特定することはできず、頸管妊娠の診断そのものには単独では有用でない。
- ×e. Douglas窩穿刺
Douglas窩(直腸子宮窩)穿刺は、腹腔内に貯留した液体が血液か腹水か膿かを調べる検査で、かつては卵管妊娠破裂による腹腔内出血の診断に用いられた。頸管妊娠の出血は腟からの外出血が主体で腹腔内出血は通常起こらないため、診断的意義はない。現在は腹腔内出血の評価にも主に超音波検査が用いられる。
異所性妊娠の部位
異所性妊娠の大部分は卵管妊娠(特に膨大部)であり、そのほか卵巣妊娠、腹膜妊娠、間質部妊娠、頸管妊娠、帝王切開瘢痕部妊娠などがある。頸管妊娠の危険因子としては、人工妊娠中絶や掻爬などの頸管・子宮内膜への操作歴、生殖補助医療(体外受精・胚移植)などが挙げられる。
頸管妊娠の臨床像
無月経に続く無痛性の性器出血で気づかれることが多い。内診では子宮頸部が膨大して軟らかく、外子宮口がやや開大していることがある。以前は流産や人工妊娠中絶の手術中に大出血を起こして初めて診断されることが多く、止血のために子宮全摘に至ることもまれではなかった。
治療
超音波検査の普及で妊娠初期に診断できるようになり、子宮を温存する保存的治療が主流となった。メトトレキサート(MTX)の全身投与や胎嚢内への局所注入、胎児心拍がある場合の塩化カリウム局所注入、出血予防や止血のための子宮動脈塞栓術、頸管内バルーンによる圧迫などを組み合わせる。これらでコントロールできない大出血では子宮全摘術が必要となる。
進行流産との鑑別(経腟超音波)
・頸管妊娠:内子宮口閉鎖、胎嚢の形が保たれ、圧迫でずれない、胎嚢周囲に豊富な血流。 ・進行流産:内子宮口開大、胎嚢が変形・扁平化し、圧迫で移動する(sliding sign陽性)、周囲の血流に乏しい。
POINT
・頸管妊娠の診断には経腟超音波検査が有用(子宮体部は空虚、頸管内に胎嚢、砂時計状の子宮)。 ・子宮鏡や安易な掻爬は大出血を招くため避ける。 ・hCG定量は妊娠の有無・経過の評価に有用だが、着床部位は特定できない。 ・早期診断により、MTX投与や子宮動脈塞栓術などで子宮を温存した治療が可能となった。
