骨を育てるのはどのビタミン?―オステオカルシンをGla化するビタミンKの力
第105回医師国家試験 H問題 第7問
国試問題にチャレンジ
骨形成を促すのはどれか。
- a.ビタミンA
- b.ビタミンB1
- c.ビタミンB12
- d.ビタミンE
- e.ビタミンK
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
ビタミンKはγ-カルボキシル化の補酵素として、骨芽細胞が産生するオステオカルシンをGla化し、骨基質の石灰化を助けることで骨形成を促します。同じ仕組みで肝臓の凝固因子II、VII、IX、XのGla化にも必要であり、欠乏すると新生児ビタミンK欠乏性出血症などの出血傾向を生じます。ビタミンK2製剤(メナテトレノン)は骨粗鬆症治療薬として用いられますが、ワルファリン服用中は禁忌で、納豆の摂取も控えるよう指導します。他のビタミンは、Aが視覚(過剰で骨吸収亢進)、B1が糖代謝と神経、B12がDNA合成と造血・神経、Eが抗酸化を主に担い、骨に関わるものとしてはDとKをセットで覚えることが大切です。ビタミンごとの作用と欠乏症を体系的に整理しておくことは、骨粗鬆症診療や抗凝固療法の安全管理に直結します。
解答・解説
正解はeです
テーマ
各ビタミンの主な生理作用と欠乏症を整理し、骨代謝に関与するものを選ぶ問題である。
正解を導く考え方
骨代謝に直接かかわるビタミンとして押さえておくべきものは、ビタミンDとビタミンKである。選択肢にビタミンDはないため、ビタミンKを選ぶ。 ビタミンKは、特定のタンパク質のグルタミン酸残基をγ-カルボキシグルタミン酸(Gla)に変換する酵素(γ-グルタミルカルボキシラーゼ)の補酵素として働く。この反応を受けるタンパク質の代表が、肝臓でつくられる血液凝固因子(II、VII、IX、X)と、骨芽細胞がつくるオステオカルシンである。Gla化されたオステオカルシンはカルシウムやハイドロキシアパタイトと結合できるようになり、骨基質の石灰化に関与する。このためビタミンKは骨形成を促す方向に働き、ビタミンK2製剤(メナテトレノン)は骨粗鬆症の治療薬として用いられている。 その他の選択肢は、視覚(ビタミンA)、糖代謝と神経機能(ビタミンB1)、核酸合成と造血・神経(ビタミンB12)、抗酸化(ビタミンE)が主な役割であり、骨形成の促進は主作用ではない。
選択肢考察
- ×a. ビタミンA
ビタミンA(レチノール)は網膜の視細胞で視物質ロドプシンの構成成分となるほか、皮膚・粘膜上皮の分化維持にかかわる。欠乏すると夜盲症、眼球乾燥症(角膜乾燥症)、皮膚の角化異常が生じる。骨形成を促す作用はなく、むしろ過剰摂取では骨吸収が亢進し、骨密度低下や骨折リスクの上昇と関連すると報告されている。
- ×b. ビタミンB1
ビタミンB1(チアミン)は、ピルビン酸脱水素酵素などの補酵素(チアミン二リン酸)として糖質代謝に不可欠で、神経機能の維持に重要である。欠乏すると脚気(末梢神経障害、心不全)やウェルニッケ脳症を生じる。豚肉、穀類の胚芽、豆類などに多く含まれる。骨形成には直接関与しない。
- ×c. ビタミンB12
ビタミンB12(コバラミン)は葉酸とともにDNA合成に必要で、欠乏すると巨赤芽球性貧血のほか、亜急性連合性脊髄変性症や末梢神経障害などの神経障害を生じる。メチルコバラミン製剤は末梢神経障害の治療にも用いられる。骨形成を促すビタミンではない。
- ×d. ビタミンE
ビタミンE(トコフェロール)は脂溶性の抗酸化物質で、細胞膜の脂質がフリーラジカルにより過酸化されるのを防ぐ。欠乏は稀だが、脂肪吸収障害などで溶血性貧血や脊髄小脳変性様の神経障害を生じ得る。骨形成の促進は主作用ではない。
- ○e. ビタミンK
ビタミンKはγ-カルボキシル化の補酵素として、骨芽細胞が産生するオステオカルシンをGla化し、骨基質へのカルシウム沈着(石灰化)を助ける。これにより骨形成を促進する。また肝臓での凝固因子(II、VII、IX、X)の活性化にも必要で、欠乏すると出血傾向(新生児ビタミンK欠乏性出血症など)を生じる。ビタミンK2製剤(メナテトレノン)は骨粗鬆症治療薬として用いられる。
ビタミンK
天然型にはビタミンK1(フィロキノン:緑黄色野菜に多い)とビタミンK2(メナキノン類:納豆などの発酵食品や、腸内細菌による産生)がある。凝固因子II、VII、IX、X、プロテインC、プロテインS、そして骨のオステオカルシンなどが、ビタミンK依存性にGla化されて機能を発揮する。ワルファリンはビタミンKの再利用(ビタミンKエポキシド還元酵素)を阻害して抗凝固作用を示すため、ワルファリン服用中の患者にはビタミンK2製剤は禁忌であり、納豆の摂取も避けるよう指導する。
骨代謝にかかわる主なビタミン
・ビタミンD:腎で活性型(1,25-ジヒドロキシビタミンD)となり、腸管からのカルシウム・リン吸収を促進して骨の石灰化を支える。欠乏で小児のくる病、成人の骨軟化症。 ・ビタミンK:オステオカルシンのGla化を介して骨の石灰化・骨形成を促す。 ・ビタミンA:過剰で骨吸収亢進。 ・ビタミンC:コラーゲン合成(プロリン・リシンの水酸化)に必要で、欠乏すると壊血病となり、骨・歯の形成障害を伴う。
骨粗鬆症治療薬の大まかな分類
・骨形成促進薬:副甲状腺ホルモン(PTH)製剤(テリパラチド、間欠投与で骨形成を促す)、抗スクレロスチン抗体(ロモソズマブ、骨形成促進と骨吸収抑制を併せ持つ) ・骨吸収抑制薬:ビスホスホネート、抗RANKL抗体(デノスマブ)、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)など ・その他:活性型ビタミンD3製剤、ビタミンK2製剤(メナテトレノン)、カルシウム製剤など
POINT
・骨形成を促すビタミンはビタミンK(とビタミンD)。 ・ビタミンKはオステオカルシンや凝固因子II、VII、IX、XのGla化(γ-カルボキシル化)に必要。 ・ビタミンK2製剤(メナテトレノン)は骨粗鬆症治療薬。ワルファリン服用中は禁忌。 ・欠乏症の整理:A→夜盲症、B1→脚気・ウェルニッケ脳症、B12→巨赤芽球性貧血・亜急性連合性脊髄変性症、E→溶血性貧血・神経障害、K→出血傾向、D→くる病・骨軟化症。
