リング状に欠ける視野―輪状暗点が指し示す「網膜」という答え
第105回医師国家試験 H問題 第6問
国試問題にチャレンジ
輪状暗点を生じ得る病変部位はどれか。
- a.網膜
- b.視交叉
- c.視放線
- d.後頭葉
- e.外側膝状体
対話形式の解説
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ドクターまとめ
輪状暗点は固視点を取り囲むリング状の暗点で、正中線を境界としない同心円状の視野異常であることから、視路の上流、特に網膜の病変を示唆します。代表疾患の網膜色素変性症では、桿体が密に分布する中間周辺部から障害されるため、夜盲で始まり、輪状暗点から求心性視野狭窄へと進行し、眼底の骨小体様色素沈着やERGの減弱・消失を伴います。一方、視交叉の病変では両耳側半盲、視索・外側膝状体・視放線・後頭葉の病変では反対側の同名半盲と、視交叉以降は正中線を境界とする半盲型の障害となります。視放線ではマイヤーループの障害で上1/4同名半盲、後頭葉では黄斑回避を伴う同名半盲が特徴です。視野の形と正中線の関係から病変部位を推定する考え方は、眼科・神経内科・脳神経外科にまたがる局在診断の基本です。
解答・解説
正解はaです
テーマ
視野異常のパターンから病変部位を推定する、視路の局在診断の問題である。
輪状暗点とは
輪状暗点は、固視点(視野の中心)を取り囲むようにリング状に生じる暗点で、中心部の視野と最周辺部の視野は保たれる。網膜の視細胞のうち、暗所視を担う桿体細胞は中心窩にはほとんど存在せず、中心から約20°前後の中間周辺部に最も密に分布している。このため桿体が主に障害される疾患では、まずこの中間周辺部に暗点が生じ、それが連なって輪状暗点となる。代表疾患が網膜色素変性症であり、進行すると暗点が周辺へ広がって求心性視野狭窄となる。
正解を導く考え方
視路は「網膜→視神経→視交叉→視索→外側膝状体→視放線→後頭葉(一次視覚野)」とつながる。視交叉では両眼の鼻側網膜由来の線維が交叉し、それより後方(視索以降)では左右の眼からの線維が合流して、同じ側の視野(反対側の視野半分)の情報を運ぶ。したがって視交叉以降の病変では、垂直経線(正中線)を境界とする「半盲」型の視野障害が両眼に生じるのが原則である。これに対し、輪状暗点のように正中線を境界としない同心円状の視野異常は、視路の上流、特に網膜の病変を考える。
選択肢考察
- ○a. 網膜
網膜色素変性症では、主に桿体細胞が障害されるため、桿体密度の高い中間周辺部(中心から約20°前後)から視野が欠け、輪状暗点を生じる。病変が進むと暗点は周辺側へ拡大し、求心性視野狭窄となる。夜盲が初発症状であることが多い。網膜の病変は正中線に縛られないため、このような同心円状の視野異常をつくり得る。
- ×b. 視交叉
視交叉では両眼の鼻側網膜からの線維(耳側視野の情報を運ぶ)が交叉する。下垂体腺腫などで視交叉の正中部が下方から圧迫されると、交叉線維が障害されて両耳側半盲となる。内頸動脈瘤などで視交叉が外側から圧迫されると、同側の耳側網膜線維が障害されて鼻側の視野欠損が生じ得る。いずれも正中線を境界とする視野障害であり、輪状暗点は生じない。
- ×c. 視放線
視放線は外側膝状体から後頭葉へ向かう線維束で、病変の反対側の同名半盲を生じる。視放線のうち下方網膜の線維(上方視野を担う)は側頭葉を回り込むマイヤー(Meyer)ループを通るため、側頭葉病変では反対側の上1/4同名半盲、頭頂葉を通る上方の線維の病変では反対側の下1/4同名半盲となる。輪状暗点は生じない。
- ×d. 後頭葉
後頭葉の一次視覚野の病変では反対側の同名半盲を生じる。後大脳動脈領域の梗塞では、中心視野の領域が中大脳動脈からの側副血流も受けるため、黄斑回避(中心部の視野が保たれる)を伴うことが多い。両側の後頭葉が障害されれば皮質盲となる。輪状暗点は生じない。
- ×e. 外側膝状体
外側膝状体は視索の線維が中継される視床の核で、左右の眼からの線維が層ごとに分かれて投射している。病変では反対側の同名半盲を生じ、左右の欠損の形が一致しない不調和な半盲や、楔形の視野欠損(セクター状欠損)となることがある。輪状暗点は生じない。
視路の病変部位と視野障害の対応
・網膜:病変の位置・範囲に応じた暗点(中心暗点、輪状暗点、求心性視野狭窄など)。片眼の病変なら片眼のみの異常。 ・視神経:片眼の視力低下と中心暗点(視神経炎など)、盲点中心暗点など。 ・視交叉:両耳側半盲(下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫など)。 ・視索:反対側の不調和な同名半盲。 ・外側膝状体:反対側の同名半盲(不調和、セクター状欠損)。 ・視放線:側頭葉(マイヤーループ)では反対側上1/4同名半盲、頭頂葉では反対側下1/4同名半盲。 ・後頭葉:反対側の調和性同名半盲(黄斑回避を伴うことが多い)。
網膜色素変性症
視細胞(主に桿体、進行すると錐体も)が進行性に変性する遺伝性疾患で、常染色体顕性(優性)・潜性(劣性)・X連鎖性などの遺伝形式をとる。夜盲で始まり、輪状暗点から求心性視野狭窄へと進行し、晩期には中心視力も低下する。眼底では骨小体様色素沈着、網膜血管の狭細化、視神経乳頭の蝋様萎縮がみられ、網膜電図(ERG)は早期から減弱ないし消失(non-recordable)する。
その他の輪状暗点
網膜疾患のほか、無水晶体眼に対する強い凸レンズ眼鏡を装用した際には、レンズ辺縁のプリズム作用によって光学的な輪状暗点が生じることが知られている。
POINT
・輪状暗点は網膜病変、特に網膜色素変性症でみられる(桿体が密な中間周辺部から障害される)。 ・網膜色素変性症:夜盲→輪状暗点→求心性視野狭窄、ERGの減弱・消失。 ・視交叉病変では両耳側半盲、視交叉より後方(視索・外側膝状体・視放線・後頭葉)の病変では反対側の同名半盲。 ・視交叉以降の病変は正中線を境界とする半盲型の視野障害となる。
