輸血直後の急変、家族にまず語るのは誰か―第一報は「いちばん知っている医師」から
第105回医師国家試験 H問題 第5問
国試問題にチャレンジ
輸血開始直後の急変に際し,最初に患者家族に説明をする者として適切なのはどれか。
- a.医療安全管理室長
- b.リスクマネジャー
- c.輸血部長
- d.担当医
- e.病院長
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
輸血開始直後の急変では、家族に最初に説明するのは患者の病状と経過を把握し急変対応にあたっている担当医(主治医)であり、不在時は対応した医師が説明します。医療安全管理室長、リスクマネジャー、輸血部長、病院長は、医療事故が疑われる場合の原因調査や組織としての説明・対外対応を担う立場で、急変直後の第一報を伝える役ではありません。説明では未確定のことを断定せず、事実・処置・現状を客観的に伝え、内容・時刻・同席者を診療録に記録します。医学的には不適合輸血やアナフィラキシーを疑って直ちに輸血を中止し、使用した製剤を保管して原因検索に用いること、開始後5分間と15分後の観察が重要であることも合わせて押さえておくと、急変時の診療と説明責任を一体として理解できます。
解答・解説
正解はdです
問われていること
輸血を始めた直後に患者の容体が急変した場面で、家族に最初に説明するのは誰か、という医療現場での説明責任と役割分担を問う問題である。
考え方
急変時に家族がまず知りたいのは「何が起きたのか」「今どのような治療をしているのか」「治療への反応はどうか」という具体的で最新の情報である。これを正確に伝えられるのは、患者の病状と経過を把握し、実際に急変対応にあたっている医師である。通常は主治医(担当医)がこの役割を担い、主治医がすぐに対応できない場合は、急変時に処置を担当した医師が説明する。 医療安全管理部門や病院管理者は、医療事故や過誤が疑われる場合に組織として事後対応(原因調査、再発防止、行政・警察・報道への対応、家族への組織としての説明など)を行う立場であり、急変直後に家族へ第一報を伝える役ではない。
説明の際の注意
急変直後は原因が確定していないことが多い。確実でない事柄を断定せず、起きた事実、行った処置、現在の状態を客観的に伝えることが大切である。説明の内容と時刻、同席者は診療録に記録しておく。
選択肢考察
- ×a. 医療安全管理室長
医療安全管理室(医療安全管理部門)は、医療事故や医療過誤が疑われる事例について、報告の集約、原因分析、再発防止策の策定などを組織的に行う部署である。その長が関与するのは事故の可能性が判明した後の段階であり、急変直後に家族へ最初に説明する者ではない。
- ×b. リスクマネジャー
リスクマネジャー(医療安全管理者)は、インシデント・アクシデント報告の収集と分析、職員教育などを通じて医療事故の防止を担う職種である。事故が疑われる場合には現場からまず報告を受ける窓口となるが、患者の病状や治療経過を直接把握している立場ではなく、家族への第一報を担う者ではない。
- ×c. 輸血部長
輸血部長は院内の輸血医療(血液製剤の管理、検査、副作用対策など)の責任者である。輸血による副作用や輸血過誤が判明すれば、原因究明や説明に関与することになる。しかし急変直後の時点では原因は未確定であり、患者を直接診療しているわけでもないため、最初に家族へ説明する者としては適切でない。
- ○d. 担当医
患者の病状と経過を最もよく知り、急変時に実際の対応にあたる担当医(主治医)が、家族に最初に説明するのが原則である。急変の事実、行っている治療、それに対する反応といった情報を最も正確に伝えられるのは担当医だからである。主治医がすぐに説明できない状況であれば、急変対応を担当した医師が説明する。
- ×e. 病院長
病院長は病院の最高責任者であり、医療事故が明らかになった場合には、警察・行政機関・報道機関への対応や、組織としての家族への説明・謝罪を担う。しかし急変直後に病状を説明する立場ではなく、最初に説明する者としては不適切である。
輸血開始直後の急変で考えること
輸血開始直後の急変では、輸血副作用、特にABO型不適合輸血による急性溶血反応や、アナフィラキシーショックなどの即時型反応を疑う。輸血による反応が疑われれば直ちに輸血を中止し、ルートは生理食塩液などに切り替えて静脈路を確保したうえで、循環・呼吸の管理を行う。使用していた血液製剤(バッグ)や輸血セットは廃棄せず保管し、患者血液とともに原因究明の検査に用いる。
輸血開始後の観察
厚生労働省の「輸血療法の実施に関する指針」では、重篤な副作用を早期に発見するため、輸血開始後5分間はベッドサイドで患者の状態を観察し、開始後15分程度経過した時点で再度観察することとされている。ABO型不適合輸血やアナフィラキシーは開始直後から短時間のうちに起こりやすいためである。
院内の医療安全体制
医療機関には医療安全管理のための体制整備が求められており、医療安全管理部門(医療安全管理室など)や医療安全管理者(リスクマネジャー)が置かれる。現場で事故が疑われる事象が生じた場合には、患者の救命処置を最優先に行いつつ、所定の手順に従って上司・リスクマネジャーなどへ報告する。家族への説明は、急変直後は担当医が行い、事故が疑われる場合は組織として(管理者の同席などを含めて)改めて説明する、という段階的な対応となる。
POINT
・急変時に家族へ最初に説明するのは担当医(主治医)であり、不在なら急変対応した医師が説明する。 ・説明では確定していないことを断言せず、事実・処置・現状を客観的に伝え、内容を診療録に記録する。 ・医療安全管理室、リスクマネジャー、病院長は、医療事故が疑われる場合の組織的対応を担う。 ・輸血反応が疑われたら直ちに輸血を中止し、使用した血液製剤は廃棄せず原因検索に用いる。 ・輸血開始後5分間はベッドサイドで観察し、15分後にも再度観察する。
