StudyMed医師国家試験

SaO2 70%で青くなる理由―チアノーゼは「割合」ではなく「量」で決まる

第105回医師国家試験 H問題 第4問

国試問題にチャレンジ

第105回 H問題 第4問

血中ヘモグロビン濃度が17 g/dLのCOPD患者が呼吸不全となった。  チアノーゼが出現し始める動脈血酸素飽和度〈SaO2〉に最も近いのはどれか。

  1. a.85%
  2. b.80%
  3. c.75%
  4. d.70%
  5. e.65%

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、チアノーゼがどのSaO2から現れ始めるかを計算で求める問題だ。ポイントは、チアノーゼが何によって決まるのかという定義と、ヘモグロビン濃度が与えられている意味。まずはチアノーゼの出現条件を確認しよう。
医学生医学生
還元ヘモグロビンが5 g/dL以上になると出る、と生理学の講義で習いました。
ドクタードクター
その通り。ここで大事なのは、5 g/dLが「割合」ではなく「絶対量」だということ。SaO2は総ヘモグロビンのうち酸素と結合しているものの割合だから、裏を返せば、酸素と結合していない還元ヘモグロビンの割合は100%からSaO2を引いた値になる。
医学生医学生
ということは、総ヘモグロビンが分かれば、還元ヘモグロビンの量を逆算できるわけですね。
ドクタードクター
そう。では実際に計算してみよう。総ヘモグロビンが17 g/dLで、そのうち5 g/dLが還元型になる瞬間のSaO2はどうなる?
医学生医学生
酸素化ヘモグロビンが17引く5で12 g/dLなので、12÷17で……約70.6%です。
ドクタードクター
正解。だから最も近いのは70%だ。念のため、ほかの値でも還元ヘモグロビン量を確かめておこう。SaO2 85%なら還元型は17×0.15で約2.6 g/dL、80%なら約3.4 g/dL。
医学生医学生
どちらも5 g/dLには全然届かないですね。80%ってかなりの低酸素血症なのに、まだ青くならないのは意外です。
ドクタードクター
そこが臨床的に大事な感覚なんだ。75%でも約4.3 g/dLで、まだわずかに足りない。逆に65%だと約6 g/dLで、チアノーゼははっきり出ているけれど「出現し始める」値としては低すぎる。
医学生医学生
境界にいちばん近いのが70%、ということですね。ちなみにCOPDの患者さんという設定には意味があるんですか。
ドクタードクター
いい質問だね。COPDのような慢性低酸素状態では、腎臓からのエリスロポエチン分泌が増えて二次性多血症になることがある。今回のヘモグロビン17 g/dLは成人男性の基準範囲の上限付近の値で、ヘモグロビンが多いほど還元型の絶対量は5 g/dLに達しやすい。つまり多血傾向の人ほどチアノーゼが早く出るんだ。
医学生医学生
逆に貧血の人だと、なかなか青くならないということですか。
ドクタードクター
その通り。例えばヘモグロビン8 g/dLなら、計算上SaO2がおよそ38%まで下がらないと還元型は5 g/dLに届かない。重篤な低酸素血症なのに顔色だけでは分からない、ということが起こりうる。チアノーゼがないことは、低酸素血症を否定する根拠にはならないんだ。
医学生医学生
救急科の実習で、パルスオキシメーターを必ず付けるように言われた理由が分かった気がします。
ドクタードクター
見た目だけに頼らず、SpO2や血液ガスで客観的に評価することが大切だね。発展として、チアノーゼの分類も押さえておこう。動脈血の酸素化が悪い中心性チアノーゼは、口唇や舌など体の中心部にも出る。原因はCOPDなどの呼吸器疾患や、ファロー四徴症のような右左短絡だ。一方、末梢性チアノーゼは動脈血の酸素化は正常で、寒冷や心拍出量低下で末梢の血流が遅くなり、組織での酸素の抜き取りが増えるために手指や鼻尖に限って出る。
医学生医学生
OSCEの身体診察で、爪床だけでなく口腔粘膜も見るよう指導されたのは、その区別のためなんですね。
ドクタードクター
まさにそう。それから異常ヘモグロビンにも注意。メトヘモグロビン血症では還元ヘモグロビンが少なくてもチアノーゼ様の色調になる。逆に一酸化炭素中毒ではCOヘモグロビンが鮮紅色なので、ひどい低酸素でもチアノーゼを呈しにくい。
医学生医学生
チアノーゼの有無と酸素化の程度が一致しない場面がいくつもあるんですね。
ドクタードクター
そう。最後に補足すると、5 g/dLという値は本来、皮膚の毛細血管内の平均的な還元ヘモグロビン量を指している。だから厳密には動脈血ではもう少し少ない量で気づかれうるけれど、試験では今回のように動脈血のヘモグロビンから5 g/dLを引いて概算する考え方を使う、と理解しておけば十分だ。

まとめ

チアノーゼは還元ヘモグロビンの割合ではなく絶対量が約5 g/dL以上になると出現するため、総ヘモグロビン濃度からSaO2を逆算できます。ヘモグロビン17 g/dLでは(17−5)÷17≒70%となり、SaO2がおよそ70%まで下がるとチアノーゼが出現し始めます。多血症ではチアノーゼが早く出やすい一方、貧血では重篤な低酸素血症でもみられないことがあり、チアノーゼがないことは低酸素血症の否定になりません。中心性と末梢性の区別や、メトヘモグロビン血症・一酸化炭素中毒のような例外も合わせて理解しておくと、見た目とパルスオキシメーター・血液ガスを組み合わせた酸素化の評価に役立ちます。

解答・解説

正解はdです

問われていること

チアノーゼが出現する条件を、ヘモグロビン(Hb)濃度と動脈血酸素飽和度(SaO2)の関係から定量的に考える問題である。

前提となる知識

・チアノーゼとは、皮膚や粘膜(口唇、爪床など)が青紫色にみえる状態であり、血液中の還元ヘモグロビン(酸素と結合していないデオキシヘモグロビン)の絶対量が約5 g/dL以上に増えると出現する。 ・SaO2は、動脈血の総Hbのうち酸素と結合したHb(酸化ヘモグロビン、オキシヘモグロビン)が占める割合である。  SaO2(%)=酸化Hb ÷ 総Hb × 100      =(総Hb − 還元Hb)÷ 総Hb × 100

計算

総Hb=17 g/dL、チアノーゼが出現し始める還元Hb=5 g/dL とすると、  酸化Hb=17 − 5=12 g/dL  SaO2=12 ÷ 17 × 100 ≒ 70.6% よって、SaO2がおよそ70%まで低下するとチアノーゼが出現し始めると考えられ、最も近いのは70%である。

解釈のポイント

チアノーゼは還元Hbの「割合」ではなく「絶対量」で決まる。そのため同じSaO2でも、Hbが多い患者(多血症、COPDに伴う二次性多血症など)では還元Hbが5 g/dLに達しやすくチアノーゼが早く出現し、Hbが少ない貧血患者では高度の低酸素血症でもチアノーゼが出にくい。本問のHb 17 g/dLは成人男性の基準範囲の上限付近の値である。

選択肢考察

  1. ×a.  85%

    SaO2 85%のとき、還元Hbは17 × 0.15 ≒ 2.6 g/dL にとどまり、チアノーゼ出現の目安である5 g/dLに達しない。この時点ではまだチアノーゼは出現し始めていないと考えられる。

  2. ×b.  80%

    SaO2 80%のとき、還元Hbは17 × 0.20=3.4 g/dL であり、5 g/dLには届かない。低酸素血症としては高度だが、計算上チアノーゼが出現し始める値にはまだ達していない。

  3. ×c.  75%

    SaO2 75%のとき、還元Hbは17 × 0.25 ≒ 4.3 g/dL であり、5 g/dLにわずかに届かない。70%よりも出現の境界から離れているため、最も近い値とはいえない。

  4. ○d.  70%

    SaO2 70%のとき、還元Hbは17 × 0.30 ≒ 5.1 g/dL となり、チアノーゼ出現の目安である5 g/dLにほぼ一致する。逆算しても、還元Hb 5 g/dLとなるSaO2は(17 − 5)÷ 17 × 100 ≒ 70.6%であり、選択肢の中で最も近いのは70%である。

  5. ×e.  65%

    SaO2 65%のとき、還元Hbは17 × 0.35 ≒ 6.0 g/dL となり、すでに5 g/dLを超えている。この値ではチアノーゼは明らかにみられるが、「出現し始める」値としては低すぎる。

チアノーゼの分類

・中心性チアノーゼ:動脈血そのものの酸素化が不十分なために生じる。口唇・口腔粘膜・舌など体の中心部にもみられる。原因は呼吸器疾患(COPD、間質性肺炎、肺水腫など)による低酸素血症、右左短絡を伴う先天性心疾患(ファロー四徴症など)、高地など。 ・末梢性チアノーゼ:動脈血の酸素化は正常だが、末梢の血流が遅くなり組織での酸素の抜き取りが増えるために生じる。手指・足趾・鼻尖など末梢に限局し、口腔粘膜にはみられにくい。原因は寒冷曝露、心拍出量低下(心不全、ショック)、レイノー現象、静脈閉塞など。 ・異常ヘモグロビンによるもの:メトヘモグロビン血症では、還元Hbが少なくても(メトHb約1.5 g/dL以上で)チアノーゼ様の色調を呈する。一方、一酸化炭素中毒ではCOヘモグロビンが鮮紅色であるためチアノーゼを呈しにくい。

Hb濃度とチアノーゼ

・多血症(Hb高値):還元Hbの絶対量が増えやすく、SaO2が比較的保たれていてもチアノーゼが出やすい。COPDなどの慢性低酸素状態では、エリスロポエチン分泌亢進による二次性多血症を伴うことがある。 ・貧血(Hb低値):還元Hbが5 g/dLに達しにくく、重篤な低酸素血症があってもチアノーゼがみられないことがある。例えばHb 8 g/dLでは、計算上SaO2が約38%まで下がらないと還元Hb 5 g/dLに達しない。チアノーゼがないことは低酸素血症の否定にはならない。

補足:5 g/dLの意味

厳密には、この5 g/dLは皮膚の毛細血管内の平均的な還元Hb量を指し、毛細血管では組織へ酸素を渡した分だけ動脈血より還元Hbが多い。そのため動脈血の還元Hbで考えると、実際には5 g/dLより少ない量でチアノーゼが気づかれうる。ただし、国家試験では本問のように、動脈血の総Hbから還元Hb 5 g/dLを差し引いてSaO2を概算する考え方が用いられる。

SaO2とPaO2の目安(酸素解離曲線)

SaO2 90%はPaO2 約60 Torr(呼吸不全の基準)、SaO2 75%はPaO2 約40 Torr(混合静脈血に相当)、SaO2 50%はPaO2 約27 Torr(P50)に対応する。

POINT

・チアノーゼは還元Hbが約5 g/dL以上で出現する(割合ではなく絶対量で決まる)。 ・SaO2=(総Hb − 還元Hb)÷ 総Hb × 100。本問では(17 − 5)÷ 17 ≒ 70%。 ・多血症ではチアノーゼが出やすく、貧血では出にくい(重症の低酸素血症でも見逃されうる)。 ・中心性チアノーゼ(低酸素血症、右左短絡)と末梢性チアノーゼ(末梢循環不全)を区別する。 ・一酸化炭素中毒ではチアノーゼを呈しにくく、メトヘモグロビン血症では少量でチアノーゼ様となる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。