StudyMed医師国家試験

「くじ引き」が最強の理由―エビデンスレベルの頂点に立つ無作為化比較対照試験

第105回医師国家試験 F問題 第2問

国試問題にチャレンジ

第105回 F問題 第2問

薬の効能を検証する研究方法で最もエビデンスレベルが高いのはどれか。

  1. a.無作為化比較対照試験
  2. b.症例対照研究
  3. c.コホート研究
  4. d.横断研究
  5. e.症例研究

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、薬が本当に効くのかを確かめる研究デザインのうち、どれが最も信頼できるかという問題だ。キーワードはエビデンスレベル。研究の「格付け」が何で決まるのかを理解すれば、丸暗記しなくても解けるよ。
医学生医学生
エビデンスレベルのピラミッドは公衆衛生の講義で見ました。一番上がメタアナリシスでしたよね。
ドクタードクター
その通り。ただし今回の選択肢にメタアナリシスはない。では、その格付けを決めている一番の要因は何だと思う?
医学生医学生
研究の規模、つまり対象者の数でしょうか。
ドクタードクター
数も大事だけど、それより本質的なのはバイアスと交絡をどこまで排除できるかなんだ。交絡というのは、結果に影響する第三の因子のせいで、見かけ上の関連が生まれてしまうことだよ。
医学生医学生
たとえば、薬を飲んでいる人がもともと健康意識の高い人ばかりだった、みたいなことですか。
ドクタードクター
まさにそう。観察研究では、薬を使うかどうかを医師や患者が決めるから、重症度や生活習慣に最初から差がある。その差が結果を左右してしまうんだ。そこで登場するのが無作為化比較対照試験、いわゆるRCTだ。研究者が対象者をくじ引きのように介入群と対照群に割り付ける。
医学生医学生
ランダムに分ければ、背景の違いが両群に均等にばらけるわけですね。
ドクタードクター
そう。しかも測定できる因子だけでなく、未知の因子まで均等になるのが最大の強みだ。さらに盲検化を組み合わせればプラセボ効果や評価者の思い込みも抑えられる。だから単一の研究としては因果関係を示す力が最も強く、正解は無作為化比較対照試験になる。新薬承認のための第Ⅲ相試験も通常はRCTで行われるよ。
医学生医学生
コホート研究も前向きに追跡するので、かなり強いと思っていました。
ドクタードクター
いい比較だね。コホート研究は曝露のある群とない群を追跡するから、時間の流れに沿って因果を考えられ、相対危険度も出せる。観察研究の中では上位だ。でも、曝露を研究者が割り付けたわけではないから、群間の背景の違いによる交絡は完全には除けない。そこがRCTとの決定的な差なんだ。
医学生医学生
症例対照研究は、病気のある人とない人を集めて過去をさかのぼる研究ですよね。CBTの勉強でオッズ比とセットで覚えました。
ドクタードクター
よく覚えているね。まれな疾患に向いていて、短期間・低コストでできるのが利点。ただ、過去の記憶に頼るので思い出しバイアスが入りやすく、対照群の選び方でも結果が変わる。コホート研究よりレベルは下がる。
医学生医学生
横断研究は一時点で調べるから、どちらが先かわからない、という弱点ですね。
ドクタードクター
その通り。有病率の把握や仮説づくりには役立つけれど、曝露と疾患の時間的な前後関係がわからないから、薬効の検証には向かない。症例研究、つまり症例報告や症例集積はどうだろう。
医学生医学生
対照群がないので、良くなったのが薬のおかげなのか自然に治ったのか区別できないですね。
ドクタードクター
そう。ただ、まれな副作用や新しい病気を最初に見つけるのは症例報告であることが多い。レベルは低くても、医学の出発点として重要な役割があることは忘れないでほしい。
医学生医学生
整理すると、メタアナリシス、RCT、非ランダム化比較試験、コホート研究、症例対照研究と横断研究、症例報告、専門家の意見の順ですね。
ドクタードクター
完璧だ。最後に発展知識を1つ。現在の診療ガイドライン作成では、GRADEの考え方が取り入れられていて、研究デザインだけで機械的にレベルを決めるのではなく、アウトカムごとにエビデンス全体の確実性を評価する。RCTでもバイアスのリスクや結果の非一貫性があれば評価は下がるし、観察研究でも効果が非常に大きければ上がることがある。
医学生医学生
RCTだから無条件に信頼できる、というわけではないんですね。論文抄読会で批判的吟味を練習した意味がわかった気がします。
ドクタードクター
その感覚がとても大事だ。デザインの序列を基本として押さえたうえで、個々の研究の質を自分の目で吟味できる医師を目指そう。

まとめ

エビデンスレベルは、研究デザインがバイアスと交絡をどこまで排除できるかによって序列化され、一般にRCTのメタアナリシス、RCT、非ランダム化比較試験、コホート研究、症例対照研究・横断研究、症例報告、専門家の意見の順となります。無作為化比較対照試験は、ランダム割り付けによって既知・未知の交絡因子を両群に均等に分布させられるため、単一研究としては薬効の因果関係を最も強く示せます。コホート研究や症例対照研究は観察研究であるため交絡を完全には除けず、横断研究は時間的前後関係が不明、症例研究は対照群を欠くという限界があります。近年はGRADEの考え方により、デザインだけでなく研究の質やエビデンス全体の確実性も評価されるようになっています。研究デザインの強みと限界を理解することは、論文を批判的に読み、根拠に基づいた診療を行うための基礎となります。

解答・解説

正解はaです

エビデンスレベルとは、ある研究の結果が「治療や曝露が結果を引き起こした」という因果関係をどれだけ信頼性高く示せるかを、研究デザインに基づいて序列化したものである。序列を決める最大の要因は、バイアス(系統的な偏り)と交絡(結果に影響する第三の因子による見かけの関連)をどこまで排除できるかである。

代表的な序列(高い順)

1. ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビュー・メタアナリシス 2. ランダム化比較試験(無作為化比較対照試験) 3. 非ランダム化比較試験 4. 分析疫学研究(コホート研究 > 症例対照研究・横断研究) 5. 記述研究(症例報告、症例集積) 6. 専門家の意見 観察研究では、治療を受ける人と受けない人が医師や患者の判断で分かれるため、もともと重症度や生活習慣などに差があり、それが結果に影響する(交絡)。ランダム化により、測定できる因子だけでなく未知・未測定の因子も含めて両群に均等に割り振られるため、群間の差を介入の効果とみなしやすくなる。さらに盲検化(患者や評価者に割り付けを知らせない)を組み合わせると、プラセボ効果や評価のバイアスも抑えられる。 選択肢にメタアナリシスはないため、薬の効能を検証する研究として最もエビデンスレベルが高いのは無作為化比較対照試験である。

選択肢考察

  1. ○a.  無作為化比較対照試験

    正しい。無作為化比較対照試験(randomized controlled trial:RCT)は、対象者を研究者が無作為(ランダム)に介入群(試験薬)と対照群(プラセボや標準治療)に割り付け、前向きに結果を比較する介入研究である。ランダム化により既知・未知の交絡因子が両群に均等に分布するため、群間の差を薬の効果によるものと推定でき、因果関係を示す力が単一研究の中では最も強い。Minds診療ガイドライン作成の手引き2007の分類ではレベルⅡに相当し、これより上位はRCTのメタアナリシス(レベルⅠ)のみである。新薬の承認に必要な第Ⅲ相臨床試験も通常RCTで行われる。

  2. ×b.  症例対照研究

    誤り。症例対照研究(ケースコントロール研究)は、疾患のある群(症例)とない群(対照)を集め、過去の曝露(服薬歴など)の頻度を後ろ向きに比較する観察研究である。オッズ比を算出でき、まれな疾患の研究に向き、短期間・低コストで実施できる。しかし、過去の記憶に頼るため思い出しバイアスが入りやすく、対照群の選び方による選択バイアスや交絡の影響も受けやすい。発生率を直接求められない点も弱点で、Minds 2007分類ではレベルⅣb(分析疫学研究)に位置づけられる。

  3. ×c.  コホート研究

    誤り。コホート研究は、曝露の有無(例: ある薬を服用しているか)で分けた集団を追跡し、その後の疾患発生を比較する観察研究である。時間の流れに沿って曝露→結果を観察できるため、罹患率や相対危険度・寄与危険度を求めることができ、症例対照研究よりエビデンスレベルは高い(Minds 2007分類でレベルⅣa)。しかし、曝露の有無は研究者が割り付けたものではないため、群間の背景の違いによる交絡を完全には除けず、RCTには及ばない。

  4. ×d.  横断研究

    誤り。横断研究は、ある一時点で集団の曝露と疾患の有無を同時に調べる観察研究である。有病率の把握や仮説の生成には有用だが、曝露と疾患のどちらが先に生じたかという時間的前後関係がわからないため、因果関係を示す力は弱い。Minds 2007分類ではレベルⅣbであり、薬効の検証には適さない。

  5. ×e.  症例研究

    誤り。症例研究(症例報告・症例集積)は、個々の患者や少数の患者の経過を記述する記述研究である。対照群をもたないため、改善が薬の効果か、自然経過や他の要因によるものかを区別できない。まれな副作用や新しい疾患の最初の発見・仮説の提示には重要な役割を果たすが、エビデンスレベルは低く、Minds 2007分類ではレベルⅤである(これより下は専門家の意見のみ)。

Minds診療ガイドライン作成の手引き2007によるエビデンスレベル分類

Ⅰ:システマティックレビュー/RCTのメタアナリシス Ⅱ:1つ以上のランダム化比較試験 Ⅲ:非ランダム化比較試験 Ⅳa:分析疫学的研究(コホート研究) Ⅳb:分析疫学的研究(症例対照研究、横断研究) Ⅴ:記述研究(症例報告やケースシリーズ) Ⅵ:患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見

現在の考え方

Minds 2014以降の手引きでは、研究デザインだけで機械的にレベルを決めるのではなく、GRADEシステムの考え方を取り入れ、アウトカムごとに複数の研究をまとめた「エビデンス総体」の確実性を評価する方式に移行している。RCTであってもバイアスのリスク、非一貫性、非直接性、不精確さ、出版バイアスによって評価が下がり、観察研究でも効果が非常に大きい場合などには評価が上がりうる。ただし、研究デザインの基本的な序列(RCT>観察研究>症例報告>専門家の意見)の理解は現在も基本である。

研究デザインの分類

・介入研究:ランダム化比較試験、非ランダム化比較試験 ・観察研究(分析疫学):コホート研究、症例対照研究、横断研究 ・観察研究(記述疫学):症例報告、症例集積、生態学的研究など

POINT

・エビデンスレベル:メタアナリシス(RCTのシステマティックレビュー)>RCT>非ランダム化比較試験>コホート研究>症例対照研究・横断研究>症例報告>専門家の意見。 ・RCTはランダム化により未知の交絡因子も含めて群間の偏りを除けるため、単一研究では最も因果関係を示す力が強い。 ・選択肢にメタアナリシスがなければRCTを選ぶ。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。