白いリングを貫く一本の線―超音波で見抜く児頭大横径の計測断面
第105回医師国家試験 E問題 第24問
国試問題にチャレンジ
妊娠中の超音波写真(①~⑤)を別に示す。 児頭大横径〈BPD〉の計測断面を示しているのはどれか。

- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
ドクター
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ドクターまとめ
妊娠中の超音波検査では、時期に応じて計測部位が異なり、初期は胎嚢や頭殿長(CRL)で子宮内妊娠と妊娠週数を確認し、中期以降は児頭大横径(BPD)・腹囲・大腿骨長で胎児発育を評価します。BPDは、楕円形の頭蓋骨エコーの中央を正中線エコーが左右対称に走り、透明中隔腔や四丘体槽が描出される胎児頭部の水平断面で、正中線に垂直に計測します。腹部横断面は胃泡と脊椎、大腿骨長は直線状の高エコーの長管骨で見分けられます。BPD・腹囲・大腿骨長からは推定胎児体重が算出され、胎児発育不全や巨大児の評価につながります。各画像が胎児のどこをどう切った断面かを読み取る力は、妊婦健診の超音波所見を理解する土台になります。
解答・解説
正解はcです
妊娠中の超音波検査では、妊娠時期に応じて異なる部位を計測し、妊娠週数の確認や胎児発育の評価に用いる。5枚の画像がそれぞれどの計測に用いる断面かを識別する問題である。
画像の読み取り
・①:子宮内に黒く抜けた(無エコーの)袋状構造と、その中に小さなリング状構造がみられる。妊娠初期の胎嚢と卵黄嚢であり、胎嚢径(GS)の計測に用いる。 ・②:羊水腔の中に頭部と体幹を持つ胎芽(胎児)全体が縦断像として描出されている。妊娠初期の頭殿長(CRL)の計測像である。 ・③:楕円形の白いリング状の頭蓋骨エコーの中央を、正中線エコーが左右対称に横切っている。胎児頭部の水平断面であり、児頭大横径(BPD)の計測断面である。 ・④:円形の断面内に、脊椎や胃(胃泡)などの腹部臓器がみられる。胎児腹部の横断面であり、腹囲(AC)や躯幹前後径・躯幹横径の計測に用いる。 ・⑤:直線状の強い高エコーを示す長管骨が描出されている。大腿骨長(FL)の計測像である。 BPDは頭部の左右径であり、頭蓋骨の輪郭と正中線エコー(大脳鎌・半球間裂による線)が明瞭に写る水平断面で計測する。したがって③が正解である。
選択肢考察
- ×a. ①
①は子宮内の胎嚢(GS:gestational sac)と、その内部の卵黄嚢を示す妊娠ごく初期の像である。胎嚢は妊娠4〜5週頃から経腟超音波で確認でき、正常な子宮内妊娠の確認や妊娠初期の週数推定に用いられる。胎児の頭部は描出されておらず、BPDの計測断面ではない。
- ×b. ②
②は羊水腔内に胎児全体が矢状断に近い形で描出された妊娠初期(妊娠9週前後)の像で、頭殿長(CRL:crown-rump length、頭頂から殿部までの長さ)を計測する画像である。CRLは個体差が小さく、妊娠8〜11週頃の妊娠週数の確認(分娩予定日の修正)に最も信頼性の高い指標である。BPDの計測断面ではない。
- ○c. ③
③では、胎児頭部が楕円形の頭蓋骨エコーとして描出され、その中央を正中線エコーが左右対称に走行している。これはBPD(biparietal diameter、児頭大横径)を計測する水平断面である。BPDの計測では、正中線エコーが中央に位置し、透明中隔腔や四丘体槽(視床の周辺)が描出される断面を選び、正中線に垂直な方向で頭蓋骨の最大横径を測る。日本では手前側頭蓋骨の外側から奥側頭蓋骨の内側までを測る方法(outer-inner法)が標準である。
- ×d. ④
④は胎児腹部の横断面で、内部に胃泡(胃の中の液体による無エコー域)や脊椎が確認できる。腹囲(AC)、躯幹前後径(APTD)、躯幹横径(TTD)の計測に用いる断面であり、腹囲は胃泡と臍静脈の肝内部分が描出される、脊椎に垂直な断面で計測する。頭部ではないためBPDの計測断面ではない。
- ×e. ⑤
⑤は直線状に強い高エコーを示す長管骨で、大腿骨長(FL:femur length)の計測像である。FLは大腿骨の骨化した骨幹部の両端を結ぶ長さとして計測する。BPDの計測断面ではない。
妊娠時期と主な計測項目
・妊娠初期:胎嚢径(GS)→ 妊娠4〜5週頃から観察でき、子宮内妊娠の確認に用いる。頭殿長(CRL)→ 妊娠8〜11週頃の週数確認に用いる最も正確な指標で、最終月経から算出した予定日とずれがあれば、CRLに基づいて分娩予定日を修正する。 ・妊娠中期以降:児頭大横径(BPD)、腹囲(AC)、大腿骨長(FL)を計測し、胎児の発育評価と推定胎児体重(EFW)の算出に用いる。
推定胎児体重
日本ではBPD・AC・FLを用いた式(EFW=1.07×BPD³+0.30×AC²×FL、単位はcmとg)が広く用いられている。推定体重を妊娠週数ごとの基準値と比べ、胎児発育不全(FGR)や巨大児の評価を行う。
BPD計測断面の条件
・頭蓋骨の輪郭が左右対称の楕円として描出される。 ・正中線エコーが中央に位置する。 ・透明中隔腔と四丘体槽(視床付近)が描出される。 ・正中線に垂直な方向で、手前側頭蓋骨の外側から奥側頭蓋骨の内側までを計測する。
POINT
・BPDは、正中線エコーが中央にあり透明中隔腔・四丘体槽が見える胎児頭部の水平断面で計測する。 ・妊娠初期はGS・CRL(週数確認はCRLが最も正確)、中期以降はBPD・AC・FLで発育を評価する。 ・腹囲は胃泡と臍静脈の肝内部分が見える腹部横断面、FLは大腿骨の骨化部分の長さで測る。 ・BPD・AC・FLから推定胎児体重を算出する。
