痛みでも間隔でもない―陣痛の「効き目」は子宮口が教えてくれる
第105回医師国家試験 E問題 第15問
国試問題にチャレンジ
陣痛が有効と判断できるのはどれか。
- a.内診所見の進行
- b.陣痛周期が5分以内
- c.血性粘液性帯下の出現
- d.子宮収縮ごとの疼痛の訴え
- e.陣痛発作持続時間が1分以上
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
陣痛は子宮頸管を開大させ、胎児を下降・娩出させるための子宮収縮であり、その有効性は子宮口開大度や児頭の下降度などの内診所見(Bishopスコア)が経時的に進行しているかで判断します。陣痛発来は周期10分以内または1時間に6回以上の規則的な子宮収縮と定義され、進行に伴い周期は短く持続は長くなりますが、周期や持続時間は個人差の大きい目安にすぎません。産徴(血性粘液性帯下)は分娩が近い前駆徴候、痛みの訴えは主観的な所見であり、いずれも有効性の指標にはなりません。持続が長すぎる場合はむしろ過強陣痛を疑い、頸管無力症のように収縮なしで頸管が開く病態もあるため、内診所見は子宮収縮とあわせて解釈します。陣痛の性状と分娩の進行を区別して評価する考え方は、パルトグラムを用いた分娩管理や微弱陣痛・分娩停止の判断の基礎になります。
解答・解説
正解はaです
陣痛とは、分娩時に不随意に反復して起こる子宮収縮のことであり、その目的は子宮頸管を熟化・開大させ、胎児を産道に沿って下降・娩出させることにある。したがって「陣痛が有効かどうか」は、収縮の間隔・持続時間・強さ・妊婦の痛みの訴えといった陣痛そのものの性状ではなく、その結果として分娩が実際に進んでいるかどうかで判断するのが最も確実である。 分娩の進行は内診で評価する。子宮口の開大度、頸管の展退度(短縮の程度)、児頭の下降度(station)、頸管の硬さ、子宮口の位置を観察し、これらを点数化したものがBishopスコアである。経時的な内診で子宮口開大や児頭下降が進んでいれば、陣痛は有効に働いていると判断できる。逆に、規則的で痛みの強い収縮があっても内診所見が変化しなければ、有効な陣痛とはいえない(微弱陣痛や分娩停止、児頭骨盤不均衡などを考える)。 陣痛周期や発作持続時間には分娩の進行度に応じた目安があるが、個人差があり、それだけで有効性を決められるわけではない。本問では「判断できる」ものとして、分娩進行そのものを示す内診所見の進行を選ぶ。
選択肢考察
- ○a. 内診所見の進行
陣痛の働きは子宮口の開大と児頭の下降をもたらすことであり、内診で子宮口開大度・展退度・児頭の位置(station)などの所見が経時的に進行していれば、陣痛が分娩を進める力として有効に作用していると直接判断できる。Bishopスコアの上昇も同じ意味をもつ。ただし、頸管無力症のように子宮収縮がほとんどなくても頸管が開大してくる病態もあるため、内診所見は子宮収縮の状況とあわせて解釈する必要がある。
- ×b. 陣痛周期が5分以内
陣痛周期は発作の始まりから次の発作の始まりまでの時間である。分娩開始(陣痛発来)の目安は、周期10分以内(1時間に6回以上)の規則的な子宮収縮である。分娩が進行するにつれて周期は短くなり、子宮口開大4〜6 cmでおよそ3分、分娩第2期ではおよそ2分が標準的な値とされる。5分以内という条件だけでは分娩の進行を保証できず、有効な陣痛の根拠にはならない。
- ×c. 血性粘液性帯下の出現
血性粘液性帯下はいわゆる「産徴(おしるし)」である。子宮下部の伸展や頸管の開大に伴って卵膜が子宮壁から一部剝がれて生じた少量の出血が、頸管粘液と混じって排出されるものである。分娩が近いことを示す前駆徴候だが、出現してから陣痛発来までに数日かかることもあり、陣痛の有効性を示す所見ではない。
- ×d. 子宮収縮ごとの疼痛の訴え
痛みの訴えは主観的なものであり、痛みの感じ方には個人差が大きい。強い痛みを訴えても分娩が進行しない場合(微弱陣痛や前駆陣痛など)もあれば、痛みが軽くても順調に進む場合もある。したがって疼痛の訴えだけで陣痛の有効性は判断できない。
- ×e. 陣痛発作持続時間が1分以上
陣痛発作の持続時間は分娩の進行とともに延長し、活動期ではおおむね60〜70秒程度が標準とされる。1分前後の持続は有効な陣痛でみられることが多いが、持続が長すぎる場合(活動期で2分以上など)はむしろ過強陣痛となり、胎児への酸素供給低下や子宮破裂の危険が生じる。また、持続時間が長くても周期が長ければ分娩は進まない。「1分以上」という条件だけでは有効性を判断できない。
陣痛の評価項目
・陣痛周期:発作の開始から次の発作の開始までの時間。 ・陣痛発作持続時間:1回の収縮の持続時間(外測法では収縮曲線の立ち上がりから下降までを目安に評価)。 ・陣痛の強さ:子宮内圧で表す(内測法)。外測法(分娩監視装置のトコトランスデューサー)では強さの絶対値は測れない。
陣痛発来と分娩開始
周期10分以内、または1時間に6回以上の規則的な子宮収縮が始まった時点を陣痛発来とし、これを分娩開始とする。それ以前の不規則な収縮は前陣痛(前駆陣痛)と呼ばれる。
分娩進行度別の陣痛の目安(標準値)
・子宮口開大4〜6 cm:周期 約3分、持続 約70秒 ・子宮口開大7〜8 cm:周期 約2分30秒、持続 約70秒 ・子宮口開大9〜10 cm(分娩第2期):周期 約2分、持続 約60秒 周期が標準よりも著しく長い、または持続が短い・内圧が低い場合を微弱陣痛、周期が著しく短い、持続が長すぎる・内圧が高すぎる場合を過強陣痛という。
Bishopスコア
子宮口開大度、頸管展退度、児頭の位置(station)、頸管の硬さ、子宮口の位置の5項目を0〜3点(硬さと位置は0〜2点)で評価し、合計13点満点とする。一般に9点以上で頸管が熟化していると判断する。
陣痛の有効性の考え方
陣痛の性状(周期・持続・強さ)はあくまで目安であり、有効かどうかの最終的な判断は、子宮口開大と児頭下降が時間経過とともに進んでいるか(分娩経過図〈パルトグラム〉での評価を含む)による。
POINT
・陣痛の有効性は、子宮口開大・児頭下降などの内診所見(Bishopスコア)が進行しているかで判断する。 ・陣痛発来(分娩開始)の定義は、周期10分以内または1時間に6回以上の規則的な子宮収縮である。 ・産徴(血性粘液性帯下)や痛みの訴えは陣痛の有効性の指標にならない。 ・発作持続時間が長すぎる場合はむしろ過強陣痛を疑う。
