StudyMed医師国家試験

「止める」のは誰か―学校医の役割と校長・設置者の権限を整理する

第105回医師国家試験 B問題 第19問

国試問題にチャレンジ

第105回 B問題 第19問

学校医の職務で誤っているのはどれか。

  1. a.職員の健康診断に従事する。
  2. b.学校保健計画の立案に参与する。
  3. c.校長の求めによって児童生徒の救急処置を行う。
  4. d.学校感染症に罹患した児童生徒の出席を停止する。
  5. e.健康診断結果に基づいて児童生徒の疾病の予防処置に従事する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は学校保健の問題だ。学校医が何をする人なのかを問われているけれど、カギは「医学的な実務と助言」と「学校運営上の決定」を誰が担うのか、という役割分担にある。誤っているものを選ぶ形式だから、主語の取り違えに注意して読んでいこう。
医学生医学生
学校医って、春の健康診断で聴診してくれる先生のイメージしかありませんでした。
ドクタードクター
多くの人がそうだと思う。でも実際の職務はもっと幅広くて、学校保健安全法施行規則に列挙されているんだ。健康診断、健康相談、保健指導、疾病や感染症の予防処置、救急処置、そして学校保健計画の立案への参与などが含まれる。
医学生医学生
公衆衛生の講義で学校保健安全法は習いましたが、条文の細かいところまでは覚えていないです。正直、どれも正しく見えてしまいます。
ドクタードクター
そういうときは「医師としての専門性を生かす仕事か、それとも学校の管理運営として何かを決める仕事か」で分けて考えるといい。まず職員の健康診断に従事する、という記述はどうだろう。
医学生医学生
学校医は児童生徒の担当だと思っていたので、教職員は産業医の領域かなと迷いました。
ドクタードクター
いい迷い方だね。ただ、職員の健康診断は学校の設置者に実施義務があって、学校医はその求めに応じて実務に従事することが職務として定められている。学校医は教職員の健康管理にも関わるんだ。だからこの記述は正しい。
医学生医学生
学校保健計画の立案に参与する、というのも正しそうですね。「参与」という言い方が絶妙です。
ドクタードクター
そこがポイント。学校保健計画は健康診断や環境衛生検査、保健指導などを年間で計画したもので、策定・実施するのは学校だ。学校医は医学的立場から立案に「参与」する。言葉の選び方がちゃんと権限の範囲に沿っている。
医学生医学生
校長の求めで救急処置を行う、健康診断の結果に基づいて予防処置に従事する、という2つも医師の仕事そのものですね。
ドクタードクター
その通り。どちらも施行規則に明記されている職務だ。日常の救急対応は養護教諭が中心だけど、必要に応じて学校医が担う。健診後に治療の勧告や保健指導、運動の軽減といった事後措置を行うのも学校保健の中心的な活動だよ。
医学生医学生
となると残るのは、感染症にかかった児童生徒の出席を停止する、という記述ですね。インフルエンザで出席停止になった記憶はありますが、誰が決めていたかは意識したことがなかったです。
ドクタードクター
ここが正解、つまり誤りの記述だ。出席停止を命じる権限は校長にある。学校医は出席停止が必要か、どのくらいの期間かについて医学的な意見を述べる立場で、その助言を受けて校長が決定する。決定権者を取り違えているから誤りなんだ。
医学生医学生
学校医は「判断材料を出す人」で、校長が「決める人」ということですね。では、学級閉鎖や学校全体の休校も校長が決めるんですか。
ドクタードクター
そこは一段上がって、感染症予防のための臨時休業を決めるのは学校の設置者だ。出席停止は校長、臨時休業は設置者、とセットで覚えておこう。ちなみに出席停止期間の基準は、感染症の種類ごとに施行規則で定められている。
医学生医学生
小児科の臨床実習で、保護者から「いつから登校できますか」と聞かれている場面を見ました。あれは基準を踏まえて医学的に答えていたんですね。
ドクタードクター
そうだね。臨床医は登校の目安を説明することはあっても、出席停止そのものを命じるわけではない。もう一つ、学校には学校医・学校歯科医・学校薬剤師のいわゆる学校三師を置くことになっている。飲料水や教室の空気、照度といった環境衛生検査は学校薬剤師が中心に担い、学校医はそれに協力して指導・助言する立場だ。
医学生医学生
健康診断にも実施主体の違いがありましたよね。
ドクタードクター
よく気づいたね。就学時健診は市町村の教育委員会、児童生徒の定期健診は学校、職員健診は学校の設置者が実施する。こうした「誰が実施し、誰が決めるか」の整理は、学校保健の問題で繰り返し問われるところだよ。

まとめ

学校医の職務は学校保健安全法施行規則に定められ、児童生徒や職員の健康診断、健康相談、保健指導、疾病・感染症の予防処置、校長の求めによる救急処置、学校保健計画の立案への参与など、医師の専門性を生かした実務と助言が中心です。一方、感染症に罹患した児童生徒の出席停止を命じるのは校長、感染症予防のための臨時休業を決めるのは学校の設置者であり、学校医はその判断に医学的意見を述べる立場にとどまります。学校には学校医・学校歯科医・学校薬剤師の学校三師が置かれ、環境衛生検査は主に学校薬剤師が担います。「学校医は助言と実務、校長・設置者は決定」と整理しておくと、学校保健の権限を問う問題に確実に対応でき、将来学校医や地域の臨床医として学校と連携する際の基礎にもなります。

解答・解説

正解はdです

学校医の職務範囲を問う一般問題で、「誤っているもの」を選ぶ形式である。

考え方

学校保健の担い手とその権限は学校保健安全法とその施行規則に定められている。学校医の職務は施行規則第22条(学校医の職務執行の準則)に列挙されており、健康診断・健康相談・保健指導・疾病や感染症の予防処置・救急処置など、医師としての専門性を生かした「実務と助言」が中心である。 一方、児童生徒の出席を止める、学校を臨時休業にするといった「学校運営上の決定」は、学校医ではなく校長や学校の設置者の権限である。 ・出席停止:校長が行う(学校保健安全法第19条) ・臨時休業:学校の設置者が行う(同法第20条) ・学校保健計画の策定・実施:学校が行い、学校医は立案に参与する したがって「学校医が出席を停止する」という記述は、決定権者を取り違えており誤りである。学校医は出席停止が必要かどうかを医学的に判断・助言する立場にあり、その助言を受けて校長が決定する、という役割分担を押さえることが解答の鍵となる。

選択肢考察

  1. ×a.  職員の健康診断に従事する。

    記述は正しい。学校医の職務には、学校の設置者(市町村教育委員会など)の求めにより職員の健康診断に従事することが含まれる。職員の健康診断の実施義務は学校の設置者にあり(学校保健安全法第15条)、学校医はその実務を担う。学校医は児童生徒だけでなく、教職員の健康管理にも関わる点を押さえておく。

  2. ×b.  学校保健計画の立案に参与する。

    記述は正しい。学校保健計画(健康診断、環境衛生検査、保健指導などを年間を通じて計画したもの)は学校が策定し実施するものであるが、学校医はその立案に医学的立場から参与する。学校安全計画の立案への参与も職務に含まれる。「参与する」のが学校医であり、計画を定めて実施する責任は学校(校長)にあるという区別が重要である。

  3. ×c.  校長の求めによって児童生徒の救急処置を行う。

    記述は正しい。施行規則には、校長の求めにより救急処置に従事することが学校医の職務として明記されている。学校内での急な傷病に対して、医師である学校医が応急的な処置を担うことは当然の役割である。なお、日常の救急処置は養護教諭が中心に行い、必要時に学校医や医療機関と連携する。

  4. ○d.  学校感染症に罹患した児童生徒の出席を停止する。

    記述は誤りであり、これが正解となる。感染症にかかっている、またはその疑いやおそれのある児童生徒に出席停止を命じる権限は校長にある(学校保健安全法第19条)。学校医は感染症の予防について指導・助言を行い、出席停止の要否や期間について医学的な意見を述べる立場にとどまる。なお、出席停止の期間の基準は施行規則第19条に感染症の種類ごとに定められている。また、感染症予防のために学校の全部または一部を臨時休業とするのは学校の設置者である。

  5. ×e.  健康診断結果に基づいて児童生徒の疾病の予防処置に従事する。

    記述は正しい。学校医は健康診断に従事するとともに、その結果に基づいて疾病の予防処置に従事する。健康診断で異常が見つかった児童生徒への治療の勧告、保健指導、運動や作業の軽減などの事後措置は、学校保健の中心的な活動である。感染症や食中毒の予防処置に従事することも学校医の職務である。

学校医の職務(学校保健安全法施行規則第22条の要旨)

1. 学校保健計画および学校安全計画の立案に参与すること 2. 学校の環境衛生の維持・改善について、学校薬剤師と協力して必要な指導・助言を行うこと 3. 健康相談に従事すること 4. 保健指導に従事すること 5. 児童生徒等の健康診断に従事すること 6. 疾病の予防処置に従事すること 7. 感染症の予防に関する指導・助言、ならびに感染症および食中毒の予防処置に従事すること 8. 校長の求めにより救急処置に従事すること 9. 市町村教育委員会または学校の設置者の求めにより、就学時の健康診断や職員の健康診断に従事すること 10. そのほか必要に応じ、学校保健・学校安全に関する専門的事項の指導に従事すること

学校保健に関わる主な権限の整理

・就学時の健康診断:市町村の教育委員会が実施 ・児童生徒等の定期健康診断:学校(校長)が実施 ・職員の健康診断:学校の設置者が実施 ・出席停止:校長 ・臨時休業:学校の設置者 ・学校環境衛生検査:学校薬剤師が中心に行う

学校三師

学校には学校医・学校歯科医・学校薬剤師を置くことが定められている(大学を除く)。学校薬剤師は飲料水や教室の空気・照度などの環境衛生検査を主に担う。

POINT

・学校医の職務は学校保健安全法施行規則第22条に規定される。 ・健康診断(児童生徒・職員)、健康相談、保健指導、疾病・感染症・食中毒の予防処置、救急処置、学校保健計画の立案への参与などが学校医の職務。 ・出席停止を決めるのは校長、臨時休業を決めるのは学校の設置者であり、学校医ではない。 ・学校医は「助言・実務」、校長・設置者は「決定」と整理する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。