声を守る光、内側から焼く薬―放射線治療の「使い分け」を一気に整理する
第105回医師国家試験 B問題 第10問
国試問題にチャレンジ
疾患と放射線治療の組合せで誤っているのはどれか。
- a.転移性脳腫瘍 ―― 定位放射線治療
- b.上咽頭癌 ―― 強度変調放射線治療
- c.喉頭癌 ―― 密封小線源治療
- d.甲状腺癌 ―― 放射性同位元素内用療法
- e.皮膚癌 ―― 電子線治療
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生まとめ
放射線治療は外部照射、密封小線源治療、放射性同位元素内用療法の3つに大別され、腫瘍の部位・深さ・大きさ・周囲臓器との関係で使い分けます。少数・小型の転移性脳腫瘍には定位放射線治療、重要臓器が密集する上咽頭癌など頭頸部癌にはIMRT、ヨウ素を取り込む甲状腺分化癌には131I内用療法、体表の皮膚癌には深部で線量が急減する電子線が用いられます。喉頭癌は早期声門癌を中心に放射線がよく効き声を温存できますが、方法はX線による外部照射であり、密封小線源治療は通常行いません。小線源治療の代表は子宮頸癌の腔内照射、前立腺癌の125Iシード、舌癌の組織内照射で、「放射線が効くか」と「どの方法で当てるか」を区別して整理することが、試験でも臨床での治療選択の理解でも重要です。
解答・解説
正解はcです
放射線治療にはいくつかの照射方法があり、腫瘍の部位・大きさ・深さ・周囲の正常組織との位置関係によって使い分ける。本問は代表的な疾患と、それに対して実際に選ばれる照射法の対応を問う。 照射方法は大きく次の三つに分けて考えると整理しやすい。 1. 外部照射:体外の装置から放射線を当てる方法。X線(光子線)、電子線、陽子線・重粒子線などの粒子線がある。X線治療には通常の照射に加え、定位放射線治療や強度変調放射線治療(IMRT)といった高精度照射がある。 2. 密封小線源治療(ブラキセラピー):放射性同位元素を金属容器などに封じた線源を、腫瘍の内部や近くに一時的または永久的に置いて照射する方法。線源の近くだけに高線量を与えられる。 3. 放射性同位元素内用療法(非密封RI治療):放射性医薬品を経口や静脈から投与し、病巣に取り込ませて体の内側から照射する方法。 解き方としては、各疾患で「標準的に行われる照射法かどうか」を一つずつ確認する。定位照射、IMRT、内用療法、電子線はそれぞれの疾患でよく用いられる組合せであるのに対し、喉頭癌の放射線治療は外部照射(X線)が標準であり、密封小線源治療は通常行わない。したがって誤っている組合せは c である。
選択肢考察
- ×a. 転移性脳腫瘍 ―― 定位放射線治療
正しい組合せである。定位放射線治療(SRT、1回で行うものは定位手術的照射SRSとよぶ)は、多方向から細いビームを病巣に集中させ、病巣には大線量を、周囲の脳には少ない線量しか当たらないようにする高精度照射である。ガンマナイフやサイバーナイフ、リニアック(直線加速器)を用いて行う。転移の個数が少なく(おおむね数個以内)、大きさが小さい(直径3cm程度まで)脳転移がよい適応で、全脳照射に比べて認知機能低下などの晩期障害を減らせる。多発例では全脳照射が選ばれることがある。
- ×b. 上咽頭癌 ―― 強度変調放射線治療
正しい組合せである。上咽頭癌は解剖学的に手術が難しく、また放射線感受性が高いため、放射線治療(進行例では化学療法との併用)が治療の中心となる。上咽頭の周囲には脳幹、脊髄、視神経、耳下腺などの重要臓器が密集しており、強度変調放射線治療(IMRT: intensity-modulated radiation therapy)で照射野内の線量の強弱を細かく調節し、腫瘍の形に合わせた線量分布をつくることで、腫瘍に十分な線量を与えつつ唾液腺障害(口腔乾燥)などの副作用を抑えられる。上咽頭癌を含む頭頸部癌はIMRTの代表的な適応である。
- ○c. 喉頭癌 ―― 密封小線源治療
誤っている組合せであり、これが正解である。喉頭癌、とくに早期の声門癌は放射線感受性が比較的良好で、発声機能を温存できる放射線治療が標準治療の一つとなっている。その方法はX線による外部照射であり、進行例では化学療法を併用した化学放射線療法として行う。喉頭は気道の一部で、線源を安全かつ確実に留置できる構造ではないため、密封小線源治療は通常行わない。密封小線源治療の代表的な適応は子宮頸癌(腔内照射)、前立腺癌(ヨウ素125シード線源の永久挿入)、舌癌などの口腔癌(組織内照射)であり、ほかに食道癌、気管支・肺癌、上顎癌、皮膚癌などにも用いられることがある。
- ×d. 甲状腺癌 ―― 放射性同位元素内用療法
正しい組合せである。甲状腺乳頭癌・濾胞癌などの分化癌の細胞は、正常な甲状腺細胞と同様にヨウ素を取り込む性質を残している。そこで甲状腺全摘術後に放射性ヨウ素(131I)を内服させ、残存甲状腺組織の破壊(アブレーション)や、肺・骨などの遠隔転移の治療を行う。131Iが放出するβ線は組織内での飛程が数mm程度と短いため、取り込んだ細胞を選択的に障害できる。なお、未分化癌や髄様癌はヨウ素を取り込まないため、この治療の効果は期待できない。
- ×e. 皮膚癌 ―― 電子線治療
正しい組合せである。電子線は体表からある深さまでで線量が急に低下するという特徴をもち、エネルギーを選ぶことで到達する深さを調節できる。そのため皮膚や皮下など体表近くの病変に十分な線量を与えながら、深部の正常組織への照射を避けることができる。皮膚癌(基底細胞癌、有棘細胞癌など)の放射線治療は電子線が主体であり、ほかにケロイドの術後照射や菌状息肉症の全身皮膚照射などにも用いられる。
放射線治療の方法の整理
1. 外部照射 ・X線(光子線):最も一般的。体の深部まで届く。 - 定位放射線治療:小さな病巣に多方向から集中照射。転移性脳腫瘍、早期肺癌(末梢型)、肝癌などに用いる。 - 強度変調放射線治療(IMRT):照射野内の線量強度を変化させ、複雑な形の腫瘍に線量を合わせる。頭頸部癌、前立腺癌などで多用される。 ・電子線:浅い部位で線量が落ちるため、皮膚癌やケロイドなどの表在病変に用いる。 ・粒子線(陽子線・重粒子線):ある深さで線量が最大(ブラッグピーク)となり、その奥ではほとんど線量がない。重粒子線は生物学的効果も高い。骨軟部腫瘍、頭頸部の非扁平上皮癌、前立腺癌などに用いられる。 2. 密封小線源治療 ・腔内照射:子宮頸癌(子宮腔・腟内にアプリケータを入れる)、食道癌、気管支癌など。 ・組織内照射:舌癌など口腔癌、前立腺癌(125Iシード永久挿入)など。 ・高線量率(192Irなど)と低線量率の方式がある。 3. 放射性同位元素内用療法(非密封RI治療) ・131I:甲状腺分化癌、バセドウ病。 ・223Ra(塩化ラジウム):骨転移のある去勢抵抗性前立腺癌。 ・177Lu標識薬剤:ソマトスタチン受容体陽性の神経内分泌腫瘍などに用いられる。 ・かつては89Sr(ストロンチウム)が骨転移の疼痛緩和に使われたが、国内では供給が終了している。
喉頭癌の治療
早期声門癌(T1〜T2)は放射線単独治療で高い局所制御率が得られ、喉頭(声)を温存できる。進行癌では化学放射線療法による喉頭温存か、喉頭全摘術を選択する。
POINT
・喉頭癌の放射線治療は外部照射(X線)で行い、密封小線源治療は用いない。 ・密封小線源治療の代表:子宮頸癌(腔内照射)、前立腺癌(125Iシード)、舌癌(組織内照射)。 ・転移性脳腫瘍(少数・小病変)→ 定位放射線治療。 ・頭頸部癌(上咽頭癌など)→ IMRTで唾液腺などの正常組織を守る。 ・甲状腺分化癌 → 131I内用療法。 ・皮膚癌など表在病変 → 電子線。
