一年中止まらない鼻水―「何に反応しているか」を突き止めるアレルギー性鼻炎の検査選び
第104回医師国家試験 I問題 第62問
国試問題にチャレンジ
26歳の男性。水様性鼻漏と鼻閉とを主訴に来院した。6年前から通年性に水様性鼻漏,鼻閉およびくしゃみを認めていたが,6か月前から増悪した。鼻粘膜は蒼白で,中等度に腫脹している。副鼻腔エックス線写真で異常を認めない。 診断に有用なのはどれか。2つ選べ。
- a.皮内テスト
- b.鼻汁細菌検査
- c.特異的IgE検査
- d.鼻腔通気度検査
- e.鼻汁中好中球検査
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
くしゃみ・水様性鼻漏・鼻閉の三主徴と、蒼白で浮腫状の鼻粘膜は、Ⅰ型アレルギーによるアレルギー性鼻炎を示唆し、通年性ならハウスダストやダニが代表的な原因抗原です。診断では、鼻汁中の好酸球増加でアレルギー性炎症であることを確かめ、皮内テストなどの皮膚テストや血清特異的IgE検査、鼻誘発テストで原因抗原を同定します。鼻汁細菌検査や好中球の増加は感染を示唆するもので、鼻腔通気度検査は鼻閉の程度評価には有用でも、アレルギーかどうかの診断には使えません。血管運動性鼻炎や好酸球増多性鼻炎との鑑別にも原因抗原の検索が欠かせず、同定された抗原は抗原回避の指導や舌下免疫療法といった治療選択に直結します。「アレルギーであることの確認」と「原因抗原の同定」という2つの軸で検査を整理することが、アレルギー疾患全般の診療の基本となります。
解答・解説
正解はa, cです
所見の整理
・26歳の男性で、6年前から季節を問わず(通年性に)水様性鼻漏、鼻閉、くしゃみが続いている。この3つはアレルギー性鼻炎の三主徴と呼ばれる症状である。 ・鼻鏡所見では鼻粘膜が蒼白で腫脹している。アレルギー性鼻炎では下鼻甲介の粘膜が浮腫状となり、蒼白〜淡紫色にみえるのが特徴であり、感染性の鼻炎でみられる発赤とは異なる。 ・副鼻腔エックス線写真に異常がなく、副鼻腔炎(膿性鼻漏や後鼻漏、頬部痛などを伴い、副鼻腔の陰影を認める)は否定的である。
診断へのプロセス
以上からアレルギー性鼻炎、なかでも通年性アレルギー性鼻炎が最も考えられる。通年性の原因抗原(アレルゲン)としては、ハウスダスト・ダニが代表的で、ほかにペットの毛・フケ、真菌(カビ)などがある。季節性(花粉症)であればスギやヒノキなど特定の時期に症状が集中する。 アレルギー性鼻炎はⅠ型(即時型)アレルギーである。吸入した抗原が鼻粘膜の肥満細胞に結合した抗原特異的IgE抗体を架橋し、ヒスタミンやロイコトリエンなどが放出されてくしゃみ・鼻漏・鼻閉が起こる。
設問の考え方
アレルギー性鼻炎の診断では、①アレルギーによる鼻炎であることの確認(鼻汁中の好酸球増加)と、②原因抗原の同定(皮膚テスト、血清特異的IgE抗体検査、鼻誘発テスト)を行う。典型的な症状があり、これらの検査のうち2つ以上が陽性であれば確定診断とされる。選択肢のうちⅠ型アレルギーの有無と原因抗原を直接確かめられるのは、皮内テストと特異的IgE検査の2つである。
選択肢考察
- ○a. 皮内テスト
皮膚テストは、皮膚の肥満細胞上に抗原特異的IgEが存在するかを調べる検査で、Ⅰ型アレルギーの原因抗原の同定に用いる。皮内テストでは抗原液を約0.02 mL皮内に注射し、15〜20分後に紅斑と膨疹の大きさで判定する(ガイドラインでは紅斑20 mm以上または膨疹9 mm以上を陽性とする)。感度が高く結果がその場でわかる利点があるが、まれに全身性のアレルギー反応を起こすことがあるため、救急対応の準備を整えて行う。抗ヒスタミン薬を内服中は反応が抑えられるので、検査前に休薬が必要である。皮膚テストにはほかに、より安全性の高いスクラッチテストやプリックテストがある。
- ×b. 鼻汁細菌検査
鼻汁の細菌培養は、急性鼻副鼻腔炎などの細菌感染症で起炎菌や薬剤感受性を調べる検査である。アレルギー性鼻炎は感染症ではなく、鼻汁は水様性であり、細菌検査はその診断には寄与しない。
- ○c. 特異的IgE検査
血清中の抗原特異的IgE抗体を測定する検査で、Ⅰ型アレルギーの原因抗原の同定に用いる。代表的な測定法の名称からRAST(radioallergosorbent test)と呼ばれることも多い。採血のみで行え、多数の抗原を同時に調べられ、患者が抗ヒスタミン薬を内服していても結果に影響しないのが利点である。一方、皮膚テストに比べて感度はやや劣り、結果が出るまで時間がかかる。通年性鼻炎ではハウスダストやダニ(ヤケヒョウヒダニなど)に対する特異的IgEが陽性となることが多い。なお総IgE値(非特異的IgE)は原因抗原の特定には使えない。
- ×d. 鼻腔通気度検査
鼻腔通気度検査は鼻腔の空気の通りやすさ(鼻腔抵抗)を数値化する検査で、鼻閉の程度の客観的評価や治療効果の判定に用いられる。しかし鼻腔抵抗は鼻中隔弯曲症や肥厚性鼻炎、鼻茸などでも上昇し、アレルギー性かどうかは区別できない。したがってアレルギー性鼻炎の診断そのものには有用ではない。
- ×e. 鼻汁中好中球検査
鼻汁中で好中球が増えるのは主に細菌感染などによる炎症の場合である。アレルギー性鼻炎の診断に役立つのは鼻汁中の好酸球検査(鼻汁をスライドに塗抹し、ハンセル染色などで好酸球の増加を確認する)であり、好中球ではない。好酸球増加が確認できれば、アレルギー性の鼻炎であることの裏付けとなる。
アレルギー性鼻炎の分類
・通年性:ハウスダスト、ダニ、ペット(イヌ・ネコ)、真菌などが原因。一年中症状がある。 ・季節性(花粉症):スギ(2〜4月)、ヒノキ(3〜5月)、イネ科(5〜8月)、ブタクサ・ヨモギ(8〜10月)など。花粉症では結膜炎症状(眼のかゆみ)を伴うことが多い。
診断の流れ
1.問診:くしゃみ・水様性鼻漏・鼻閉の三主徴、発症時期、季節性の有無、家族歴や他のアレルギー疾患(気管支喘息、アトピー性皮膚炎、結膜炎)の有無。 2.鼻鏡検査:下鼻甲介粘膜の蒼白浮腫状腫脹、水様性分泌物。 3.鼻汁好酸球検査:アレルギー性炎症であることの確認。 4.原因抗原の検索:皮膚テスト(スクラッチ・プリック・皮内テスト)、血清特異的IgE抗体検査、鼻誘発テスト(抗原を染み込ませたディスクを下鼻甲介に置き、症状の誘発をみる)。 有症者でこれらのうち2つ以上が陽性であれば、アレルギー性鼻炎と確定診断できる。
鑑別すべき疾患
・血管運動性鼻炎:症状は似るが、鼻汁好酸球や特異的IgEは陰性。寒暖差などが誘因となる。 ・好酸球増多性鼻炎:鼻汁好酸球は増加するが、原因抗原が同定されない。 ・急性鼻炎(かぜ症候群)や副鼻腔炎:膿性〜粘性鼻漏、粘膜の発赤、副鼻腔陰影。
治療の概要
抗原の除去・回避(掃除、寝具の管理など)、薬物療法(第2世代抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、鼻噴霧用ステロイド薬など)、アレルゲン免疫療法(スギ花粉やダニに対する舌下免疫療法)、下鼻甲介手術などがある。
POINT
・くしゃみ・水様性鼻漏・鼻閉+蒼白浮腫状の鼻粘膜 → アレルギー性鼻炎(Ⅰ型アレルギー)。 ・通年性の原因抗原はハウスダスト・ダニが代表的。 ・診断に有用な検査:鼻汁好酸球検査、皮膚テスト(皮内テストなど)、血清特異的IgE検査、鼻誘発テスト。 ・鼻汁で増えるのは好酸球(好中球は感染を示唆)。 ・鼻腔通気度検査は鼻閉の程度評価には使えるが、アレルギーの診断には使えない。
