StudyMed医師国家試験

増えすぎても、減りすぎても―骨を削るホルモンを「過剰」と「欠乏」で仕分ける

第104回医師国家試験 I問題 第23問

国試問題にチャレンジ

第104回 I問題 第23問

分泌過剰によって骨密度が低下するのはどれか。2つ選べ。

  1. a.エストロゲン
  2. b.カルシトニン
  3. c.抗利尿ホルモン
  4. d.副甲状腺ホルモン
  5. e.副腎皮質ホルモン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、分泌過剰によって骨密度が下がるホルモンを選ぶ問題だ。ポイントは「多すぎて骨を減らすホルモン」と「足りなくて骨を減らすホルモン」をきちんと区別すること。その前提として、骨がどうやって維持されているかを確認しておこう。
医学生医学生
骨は破骨細胞が壊して骨芽細胞がつくる、骨リモデリングを繰り返していると生理学で習いました。
ドクタードクター
その通り。骨密度は骨吸収と骨形成のバランスで決まり、吸収が形成を上回る状態が続けば骨密度は下がる。だから「過剰で骨密度を下げる」のは、骨吸収を促すか、骨形成を抑えるホルモンということになる。
医学生医学生
そうすると、エストロゲンも骨粗鬆症と関係が深いので候補になりそうですが……。
ドクタードクター
そこが本問の一番のひっかけだ。エストロゲンは破骨細胞の分化・活性化を抑える、骨を守るホルモンなんだ。問題になるのは過剰ではなく欠乏で、閉経後にエストロゲンが急に減ると骨吸収が亢進して閉経後骨粗鬆症が起こる。
医学生医学生
なるほど、「骨粗鬆症と関係がある」だけで選んではいけないんですね。では副甲状腺ホルモンはどうですか。
ドクタードクター
これは正解だ。PTHは血中カルシウムを上げるホルモンで、骨芽細胞に作用してRANKLの発現を高め、間接的に破骨細胞を活性化する。その結果、骨からカルシウムとリンが動員される。原発性副甲状腺機能亢進症のようにPTHが持続的に過剰になると骨吸収が優位となり、骨密度が下がるんだ。
医学生医学生
内分泌の講義で、指の骨の骨膜下吸収像のX線写真を見ました。
ドクタードクター
よく覚えているね。重症例では骨膜下吸収や嚢胞性線維性骨炎がみられ、骨密度低下は橈骨遠位端のような皮質骨で目立ちやすい。もう一つの正解は副腎皮質ホルモン、特に糖質コルチコイドだ。
医学生医学生
ステロイドの長期投与で骨粗鬆症になる、というのは膠原病内科の実習でも何度も聞きました。
ドクタードクター
臨床で最も頻繁に出会う続発性骨粗鬆症だね。PTHと違って、主な機序は骨芽細胞の増殖・機能を抑える骨形成の低下なんだ。さらに腸管からのカルシウム吸収低下、腎からの排泄増加、性腺機能の抑制も加わる。Cushing症候群でも同じことが起こり、椎体圧迫骨折を起こしやすい。骨密度が比較的保たれていても骨質が落ちて骨折しやすい点も特徴だ。
医学生医学生
カルシトニンは骨吸収を抑えるんですよね。だから過剰でも骨は減らない、と考えていいですか。
ドクタードクター
その理解でいい。カルシトニンは甲状腺の傍濾胞細胞から出て、破骨細胞に直接作用して骨吸収を抑える。薬としては高カルシウム血症の治療や骨粗鬆症の疼痛に使われる。ただ、ヒトでの生理的な役割は小さく、カルシトニンを大量に産生する甲状腺髄様癌でも骨密度の異常はみられない。いずれにしても過剰で骨が減るホルモンではないね。
医学生医学生
抗利尿ホルモンは水の再吸収のホルモンなので、骨とは関係なさそうです。
ドクタードクター
そう、ADHは下垂体後葉から出て腎集合管で水の再吸収を促すホルモンで、骨・カルシウム代謝の主要な調節因子ではない。SIADHなどの慢性低ナトリウム血症と骨折リスクの関連を示す報告はあるけれど、ADH自体の骨作用として扱うものではないよ。
医学生医学生
整理すると、過剰で骨を減らすのがPTHと糖質コルチコイド、欠乏で骨を減らすのがエストロゲン、ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。過剰側には甲状腺ホルモンも加えておこう。骨代謝回転が亢進して吸収が優位になるから、Basedow病や甲状腺ホルモン薬の過量でも骨密度は下がる。欠乏側にはテストステロンや成長ホルモン、活性型ビタミンDも入る。
医学生医学生
PTHといえば、テリパラチドはPTH製剤なのに骨粗鬆症の治療薬ですよね。矛盾している気がして混乱していました。
ドクタードクター
いい疑問だ。PTHは持続的に高いと骨吸収が優位になるけれど、1日1回などの間欠的投与だと骨形成が優位になって骨密度が増える。投与パターンで作用が逆転するという、国試でも狙われやすいポイントだ。臨床では、骨粗鬆症を診たら閉経だけで片づけず、副甲状腺機能亢進症、Cushing症候群、甲状腺機能亢進症、ステロイドなどの薬剤といった続発性の原因を必ず探す習慣をつけておこう。

まとめ

骨密度は破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成のバランスで決まり、分泌過剰で骨密度を下げるのは骨吸収を促すか骨形成を抑えるホルモンです。副甲状腺ホルモンは持続的過剰でRANKLを介して破骨細胞を活性化し、糖質コルチコイドは主に骨芽細胞を抑えて骨形成を低下させるため、いずれも続発性骨粗鬆症の原因となります。一方、エストロゲンは骨を守るホルモンで欠乏により骨密度が低下し、カルシトニンは骨吸収抑制作用をもち、抗利尿ホルモンは骨代謝の主要な調節因子ではありません。PTH製剤の間欠的投与は逆に骨形成を促す点も重要です。「過剰で減らすか、欠乏で減らすか」を整理することは、骨粗鬆症診療で続発性の原因を見逃さないための基礎になります。

解答・解説

正解はd, eです

骨は常に「骨吸収(破骨細胞が古い骨を溶かす)」と「骨形成(骨芽細胞が新しい骨をつくる)」を繰り返しており、これを骨リモデリングという。骨密度は両者のバランスで決まり、骨吸収が骨形成を上回る状態が続くと骨密度は低下する。 本問では「そのホルモンが過剰に分泌されたときに骨密度が下がるもの」を選ぶ。考え方の軸は次のとおりである。 ・過剰で骨を減らすホルモン:骨吸収を促す、あるいは骨形成を抑えるもの(副甲状腺ホルモン、糖質コルチコイド、甲状腺ホルモンなど)。 ・不足で骨を減らすホルモン:本来は骨を守る方向に働くもの(エストロゲン、アンドロゲンなど)。 「欠乏すると骨密度が下がるホルモン」と「過剰になると骨密度が下がるホルモン」を混同させるのが本問の狙いである。エストロゲンは前者の代表であり、副甲状腺ホルモン(PTH)と副腎皮質ホルモン(とくに糖質コルチコイド)が後者に当たる。

選択肢考察

  1. ×a.  エストロゲン

    エストロゲンは破骨細胞の分化・活性化を抑え、骨吸収を抑制する骨保護的なホルモンである。問題となるのは過剰ではなく欠乏であり、閉経後にエストロゲンが急減すると骨吸収が亢進して骨密度が低下する(閉経後骨粗鬆症)。したがって分泌過剰で骨密度が低下するホルモンには当たらない。

  2. ×b.  カルシトニン

    カルシトニンは甲状腺の傍濾胞細胞(C細胞)から分泌され、破骨細胞に直接作用して骨吸収を抑える。このため薬理量のカルシトニン製剤は高カルシウム血症の治療や骨粗鬆症に伴う疼痛に用いられる。ただしヒトの生理的な骨代謝への寄与は小さく、長期投与では効果が減弱する(エスケープ現象)。実際、カルシトニンを大量に産生する甲状腺髄様癌でも骨密度の異常はみられない。いずれにしても、過剰で骨密度が下がるホルモンではない。

  3. ×c.  抗利尿ホルモン

    抗利尿ホルモン(ADH、別名アルギニンバソプレシン:AVP)は下垂体後葉から分泌され、腎集合管での水の再吸収を促して体液量・血漿浸透圧を調節する。カルシウム・骨代謝の主要な調節因子ではなく、分泌過剰で骨密度が低下するホルモンには含めない。なお、ADH不適切分泌症候群(SIADH)などによる慢性の低ナトリウム血症が骨折リスクの上昇と関連するという報告はあるが、ADHそのものの骨作用として扱われる事項ではない。

  4. ○d.  副甲状腺ホルモン

    副甲状腺ホルモン(PTH)は血中カルシウム濃度を上げるホルモンである。骨芽細胞に作用してRANKL(破骨細胞分化因子)の発現を高め、間接的に破骨細胞を活性化して骨吸収を促し、骨からカルシウムとリンを動員する。原発性副甲状腺機能亢進症のようにPTHが持続的に過剰となると骨吸収が優位となり、骨密度が低下する(特に橈骨遠位端など皮質骨で目立つ)。重症例では線維性骨炎(嚢胞性線維性骨炎)や骨膜下吸収像を呈する。なお、PTH製剤(テリパラチド)を1日1回などの間欠的投与で用いると骨形成が優位となり骨密度が増加する点は、持続的過剰との対比で重要である。

  5. ○e.  副腎皮質ホルモン

    副腎皮質ホルモンのうち糖質コルチコイド(コルチゾール)の過剰は、骨芽細胞の増殖・機能を抑えて骨形成を低下させることが主たる機序であり、さらに腸管からのカルシウム吸収低下、腎でのカルシウム排泄増加、性腺機能の抑制などを通じて骨量を減らす。Cushing症候群や長期のステロイド薬投与でみられる続発性骨粗鬆症(ステロイド性骨粗鬆症)が代表で、椎体圧迫骨折を起こしやすい。骨密度が比較的保たれていても骨折しやすい(骨質の低下)ことも特徴である。

骨代謝に影響する主なホルモン

・過剰で骨密度低下:副甲状腺ホルモン(持続的過剰)、糖質コルチコイド、甲状腺ホルモン(骨代謝回転が亢進し吸収が優位) ・欠乏で骨密度低下:エストロゲン、テストステロン、成長ホルモン・IGF-1、活性型ビタミンD(くる病・骨軟化症) ・骨吸収を抑える方向:カルシトニン(ヒトでの生理的意義は小さい)、エストロゲン

続発性骨粗鬆症の主な原因

内分泌性:副甲状腺機能亢進症、Cushing症候群、甲状腺機能亢進症、性腺機能低下症、糖尿病 薬剤性:ステロイド薬、ヘパリン、ワルファリン、抗てんかん薬、甲状腺ホルモン薬の過量、GnRHアゴニスト、アロマターゼ阻害薬など その他:長期臥床(不動)、関節リウマチ、胃切除後、慢性腎臓病、アルコール多飲、喫煙

PTHの投与法と骨への作用

持続的に高値 → 骨吸収優位 → 骨密度低下 間欠的投与(テリパラチド)→ 骨形成優位 → 骨密度増加(骨粗鬆症治療薬)

POINT

・分泌過剰で骨密度が下がる代表:副甲状腺ホルモン(持続的過剰)、糖質コルチコイド、甲状腺ホルモン。 ・エストロゲンは「欠乏」で骨密度が低下する(閉経後骨粗鬆症)。 ・カルシトニンは骨吸収抑制作用をもつが、ヒトでの生理的意義は小さく、甲状腺髄様癌でも骨密度異常はない。 ・ADHは骨・カルシウム代謝の主要な調節因子ではない。 ・ステロイド性骨粗鬆症は骨形成抑制が主体で、椎体骨折が多い。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。